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狩り人56

逸れ狼を倒すと頭上から声が。

「ありがとぉ~

 助かったよっ」

線の細い美少年である。

とてもでは無いが、森へ狩りに来る者には思えない。

「おまえが俺に声を掛けるから、コイツに狙われた。

 故に迎え撃ったまでの事」

冷たく言い放つ。

ダリルとしては良い迷惑である。

「あっ!?

 ご、御免なさぁいっ!」

焦った様に頭を下げる。

いや、木の上にて頭を下げるのは如何なものかと。

それに対しては少年も直ぐに気付き、慌てて木から降りて来た。

その少年の身形を見て、ダリルが不機嫌そうに告げる。

「おまえ…

 森を舐めてるのか?

 そんな軽装で武具も纏わず、良く森へ来たものだ。

 何処の村の者だ?」

呆れた感じで告げられた少年が、慌ててワタワタしながら告げる。

「オイラ、採取専門なんだよ。

 これでもミューレルの初級ハンターさ。

 危険を察知して避けるのが得意でね。

 それで危険を避けながら採取してんのさ」

などと。

「ほぅ。

 それで、先程の様な様かね?」

辛辣極まる目にて少年を一瞥。

すると…

「ちゃうわいっ!

 あれは他のハンター達に狼を擦り付けられたんだやいっ!

 オイラが危険を察知して逃げ始めた音に気付いて、オイラの方に向かって来やがったんだ。

 追い付かれる前に木に登ったら…

 アイツら、オイラが登った木の根元へ干し肉とかを投げ込みやがったんだ」

悔しそうに。

「それで、さっきの状態か?」

ダリルが尋ねると、腹が収まらない感じにて頷く。

そんな少年を見てダリルが告げる。

「そやつらの特徴は覚えているのか?」

そう尋ねると、少年はダリルを見て頷く。

「アイツらさぁ。

 オイラの居る木に狼が居座ったのを離れて見てたんだよ。

 丸で嘲笑う様にさ」

拳を握り締め、耐える様に。

そんな少年へダリルが優しく告げる。

「そうか…

 ソヤツらの風体は分かる訳だな?」

頷くが…

「なんで?」

不思議そうに。

「ソヤツらはハンターギルド規約を著しく犯している。

 この度の件をギルドへ報告すれば、ソヤツらは罰せられるだろうさ」

何気なく告げるが…

「えっ!?

 ヤだよ、そんなの」

少年が拒絶。

「何故だね」

不思議そうに尋ねると…

「だってさぁ…

 そんな事したら、オイラが仕返しされるじゃんか」

拗ねた様に。

そんな少年を見てダリルが真剣に告げる。

「いや。

 この度の件は報告しないと拙い。

 俺は、まだハンター登録して無いから大丈夫だが…

 おまえには報告の義務が課せられている筈だ。

 後に未報告の件が露呈すれば、おまえが罰せられるぞ」

その様に。

少年は慌てて告げる。

「えっ!?

 マジ、マジィッ!?

 それって、本当にぃっ?」

ダリルは頷いた後で、呆れた様に告げる。

「本当の事だ。

 っと言うか…

 ハンターのおまえが、何故しらぬ」

「ヴっ…」

スィィッと視線を背ける。

「ハンター同士の私闘は禁じられている。

 故に、この度の件も該当する案件ではあるが…

 特に問題なのが、おまえの身形だ」

「おいらのぉ?」

何が悪いのか、仕切りに自分の衣服などの状態を確認。

そんな少年を微笑ましく見て告げる。

「別に、おかしな格好と言う訳ではない。

 一見、近隣の村人と間違われる様な姿だと言う事だ」

「それって…酷くない?」

思わずジト目でダリルを見る。

「フッ」

「な、なんだよぉっ!」

鼻で笑われ、思わず声を荒げたが…

「武具も纏わぬ者を、普通ハンターとは思うまい?」

そう告げられては…

「むぅ~っ」

不貞腐れた様に黙るしかあるまい。

そんな彼へダリルは続ける。

「つまりだ。

 ヤツらは、おまえがハンターでは無く村人だと思い狼を擦り付けた可能性がある。

 その場合、ハンターギルドに対する信頼を著しく損ねる行為と言えよう。

 これに対する罰則は、ハンター同士の私闘に対する罰則どころでは無い。

 極刑が課せられるだろうな」

まぁこれは、少年がハンターと知って行ったかが焦点となるが…

そこはギルドの方にて査定されるであろう。

「さてと。

 おまえは危険察知とかの力は分からんが、危険を避けて行動できる訳だ。

 ならば、もう良かろう」

そう告げ、話は終わったとばかりに倒した逸れ狼を引き攣りながら移動を。

少年を放置して立ち去る気なのだろう。

そんな彼に少年が慌てて告げる。

「待って、アニキっ!」

ダリルの動きがピタリと止まる。

そして振り返ると…

「そのアニキとは…俺の事かね?」

念の為っと言った感じで尋ねる。

すると…

「うんっ!」

非常に元気の良い返事が返って来る。

ダリルは苦虫を潰した様な顔で…

「迷惑だ。

 おまえみたいな弟を持った謂われら無い」

告げられた少年であるが…

「カリンだいっ!」

「んっ?」

「おまえじゃ無いやいっ!

 オイラの名前はカリンだやいっ!」

いや…論点が既にズレている。

ダリルは呆れて少年…カリンを見る。

「そうか。

 それは失礼した。

 ではな」

放っておく事にした様だ。

「待ってよぉ~」

放置したカリンがダリルの後を追う。

非常に迷惑である。

だが倒した狼の解体もだが、明るい内に野営地を決めてしまいたい。

逸れ狼との遭遇騒ぎとカリンの対応の為に遅れている。

これ以上の遅延は、御免こうむりたいダリルであった。

故に相手をせずに、黙々と進む。

自村から流れる川の方向から考え、下流に流れる川の方へと歩みを進める。

暫し歩む事となったが、ダリルの考えは合っていた様だ。

河辺前に広場が広がり、森と川を隔てている。

見通しが良い場所ではあるが、逆に隠れる場所は無いと言えよう。

だが、森の中は視界が効かず、かえって危険と判断。

此処にて野営とした様だ。

直ぐに薪を拾い集める。

それを石を組んだ簡易な焚き火窯へと組み込む。

風上より適度な風邪が焚き火へと当たる様に石を調整。

火口箱を用いて器用に火を点ける。

その後で狼を解体する。

兎は狩猟時、既に解体してある。

その肉と内臓は抗菌作用のある葉に包み兎の毛皮にて巻き込んだ後、背嚢へと。

それはそれで食べるとし、狼の肉はどうするか…

兎肉もあり、1人では食い切れまい。

これへ不味い狼肉を加える必要性は無いと判断。

毛皮を丁寧に剥がすと、肉と内臓など諸々は川へと破棄。

余分な匂いを出さぬ処置ではあるが…

(ふっ。

 今より調理するのだ。

 その香りを考えると今更だな)

苦笑いを浮かべながらも処理して行く。

そんなダリルを少し離れた場所から見ているカリン。

諦める気は無い様である。

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