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狩り人44

搬入作業を終え早めに夕食を摂ったダリル。

同じく早めの夕食を終えたハンター達と騎士達と同様に休息となった様だ。

明日は獣竜の討伐。

討伐を行う者には十分な休息を。

そう言う事であろう。

ならば、最初から討伐を実行する者達を作業に参加させねば良い事なのだが…

時間が差し迫っている為に人海戦術を採らざるを得なかったのである。

それも騎士達やハンター達が村へ至るのが予想よりも遅れた為でもある。

騎士達だけならば予定した日に到着していただろう。

問題はハンター達。

先ずは招集に応じたハンターが出立に遅参。

道中でも隊列を乱し行軍の移動速度が遅れる。

その様な原因にて村への到着が遅れたのだ。

今回の搬入作業に影響を及ぼした所以である。

そして村長がハンター達を先に討伐予定地へと向かわせた理由でもある。

個々の能力は別として、集団行動に慣れていないハンター達。

その様な者達と共に行軍するともなると、全体の行軍速度も落ちてしまう。

故に先に行かせる事に。

単純なハンター達ならば餌で釣れば行動を制し易い。

その様に考えた村長の作戦勝ちと言える。

だが、それでも予想以上の遅延による作業への皺寄せは大きかった様であるが…

食事を終え、軽く食休みを。

そして軽く晶武器である槍を扱き型を擦るダリル。

明日を考えると、少しでも身体を苛めたくなる様で…

「明日の事もある。

 その辺りにしておけ」

天幕より現れたゼパイルに制される。

そんなゼパイルをチラリと見てダリルが告げる。

「いよいよ、明日なんですよね」

槍にての型稽古は続けている。

「不安か?」

「そりゃぁ、そうですね。

 間近でヤツを何度も見てますが…

 本当に討伐できるんですか、あんなヤツ」

型稽古を取り止め、ゼパイルを見詰める。

そんなダリルに肩を竦めてゼパイルが告げる。

「そりゃ、分からん」

(をぉいっ!)

内心、ツッコミを入れるダリル。

責める様な表情になる弟子に苦笑。

そして呆れた様に…

「あのな、ダリル。

 絶対に安全で確実に狩れる狩りなど有り得んのだ」

「それは分かってますが…」

だが、無謀な試みを試みるのとは違う。

その様に思うが、流石に口にはしない。

此処には彼らだけが居る訳では無い。

辺りには、明日、彼らと同様に獣竜へと挑まねばならぬ者達が居る。

イタズラに不安を煽る発言は避けるべきであろう。

ダリルが告げたい事を察したゼパイルが告げる。

「アレは狩らねばならぬのだよ。

 アレが人里へと現れたらどうなるか…

 分からぬお前ではあるまい?

 なに、大丈夫だ。

 コレだけの準備を行い戦士も動員したのだからな。

 後は全力を尽くすのみ。

 その為には十分な休息も必要だ。

 休む時に休む。

 これもハンターには必要な資質と言えよう。

 できるな」

真っ直ぐな目でダリルを見て諭す。

不安が無くなる訳では無い。

無いが…

それを抑え休むのもハンターの技量と言われれば、それに従うしかあるまい。

(俺も、まだまだ未熟と言う事か…)

ダリルは内心で忸怩たる思いを抱きながら天幕へと。

そして心を静め抑えながら休憩するのだった。

そして…夜が…明ける。

猟師達は交代で休息を摂りながら見張りと伝令を続けていた。

彼らは討伐には参加しない。

流石に猟師達の装備と技量では、獣竜討伐への参加は無謀と言うもの。

故に彼らの仕事は、討伐予定地へ獣竜を誘い込むまでである。

いや…

彼らには更なる任務もある。

万が一の事だが…

討伐隊が獣竜に敗れ壊滅した場合、村に戻り村人を避難させる事。

そして事態を近隣の村や町、国へと伝える役目である。

縁起でも無い任務ではあるが、最悪な事態に対する備えは必要であろう。

ダリルが目覚めた時、獣竜は渓谷の入り口付近にまで達していた。

後は渓谷内へと誘い込み、討伐予定地へと誘き寄せるのみ。

渓谷内に設置された竜惑香の小樽は3つ。

1つは討伐予定地へと設置されている。

午前半ば辺りには獣竜が現れるであろう。

そして最後の竜惑香に取り付き、竜惑香の効果が切れるのが昼近くか…

そこからが討伐本番である。

間違っても竜惑香が効いている間に討伐を開始してはならない。

痛みを感じず肉体に対する制限の箍が外れた獣竜を相手取る羽目になるであろう。

その事は、全員に執拗い位に言い含められている。

間違っても指示前に攻撃を行う者など居ない筈である。

獣竜の歩みは竜惑香の小樽に取り付く度に止まる。

故に討伐者達は渓谷上から遠巻きに獣竜を確認。

その巨大さと偉容を知る事となる。

ハンター達の内の何人かは蒼い顔で及び腰に。

「アレ程の化け物だとは聞いてねぇぞっ、俺はっ!」

騒ぎ始める者達も。

それを見たギルド職員が冷静に告げる。

「ならば帰るかね?」

期待を込めた視線が彼へと。

「ただし、違約金と降格は免れんと覚悟する事だ。

 その事は契約時に誓約してある事柄ゆえにな」

冷たく言い放たれる。

だが…

それでも数人のハンター達が戦列から離脱。

自分達の力量では足手纏い。

そして無駄死にする可能性も。

そう考えての離脱である。

それが正しいかどうかは、誰にも分からない事であった。

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