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狩り人42

一夜が明ける。

昨夜に先行して到着した輜重隊より支給された天幕と毛布にて休んだダリル。

マントに包まり野宿に比べたら雲泥の差であった。

お陰でシッカリと休めた様だ。

天幕を出ると、既に輜重隊による炊事が始まっていた。

村では朝夕2食のダリルだが、狩り場では成るべく3食を食す様にしている。

それは過酷な労働である狩りにて、いざと言った場合の体力保持の為でもある。

獲物を狩っている最中に空腹にて力が出ないなど洒落にもならない。

故に3食を量が少なくとも食す様にしているのだった。

そして朝は1日の活力としてシッカリとした食事を心掛けており、何時もの様に己の食事を支度する為に起き出したのだが…

「おや、早いですな。

 食事の支度は、まだ終わってはおりませぬぞ」

そう、輜重兵から声が掛かる。

「むっ?

 我らの分もですかな?」

昨夜のバリスタ設置に対する補助は従軍扱いであった。

だが基本的に村の狩人は軍とは別扱いとなっている。

報酬は村長から出されるが、命令系統は軍から独立しているのだ。

故に朝食が支給されるとは考えて無かったダリル。

自分達の分も用意されていると知り戸惑っている。

「ええ。

 本日もバリスタ設置支援や他の討伐用具搬入に尽力頂けるとか。

 その場合は従軍扱いですから、キチンと用意しております」

その様に。

「それは師匠…ゼパイルの分もですか?」

念の為に確認。

師の食事を支度するのも弟子の役目と言える。

故にゼパイルの朝食準備を行うつもりだったダリル。

なのでゼパイルの朝食が用意されていないとでもなれば、ゼパイルの朝食はダリルが準備せねばならないであろう。

彼が懸念する所以である。

だが、その心配は無い様で…

「無論、ゼパイル氏の朝食も用意しております」

その様に応え(いらえ)がある。

「では安心して御相伴に預かりましょう」

安心した様に受け答える。

そして…

「では、私も手伝いましょうか?」

などと。

「いえ。

 人手は足りております故に、作業が始まるまで身体を休められては?」

やんわりと断る。

それに対しダリルが頼む様に…

「いや…

 どの様に調理されているのか、後学の為にも手伝わせて頂きたいのです。

 特に、昨夜のフルフル、プルプルとした食感のアレ…

 正直、初めて食しました。

 あの様に私が知らぬ未知の味に対する調理方を知れるならば、十分に手伝う価値がありますので」

その様に告げると、輜重兵は困った様に…

「いや…

 プルミエは専門業社が作製してましてな。

 我々は乾燥プルミエを仕入れて調理したに過ぎんのですわ。

 アノ製法が知れるならば、私の方が知りたいですなぁ。

 ですが…

 猟師の方も調理に興味を持たれるのですな」

驚いた様な、感心した様な感じで告げる。

「そうですね。

 私達猟師は、獲物を得る為に数日ほど山へと籠もる事があります。

 その様な時には食べる事のみが楽しみといえます。

 それに食は基本にて活動の活力。

 ただ食べるだけで無く美味い物を食べるとモチベーションも上がりますから。

 それにより狩りの効率に違いが現れる程ですよ」

相手が兵で年上ゆえ、丁寧に応えるダリルである。

「ほっ。

 何を鯱張って言っておるのだ?」

ニヤニヤとした笑みを浮かべたゼパイルが天幕より現れる。

「師匠…

 そりゃ無いですよぉ~

 俺だってキチンとした対応位はできますって」

困った様に告げるが…

明らかに兵と話していた時とは言葉使いが違う。

そんな2人を面白そうに眺める輜重隊兵士達。

どうやら好感を持たれた様である。

その後、ゼパイルは射手兵ガリアンと打ち合わせる為に出掛ける。

ダリルは輜重兵に混ざり朝食の準備を始めた。

調理技術に対し、色々と教われた様だ。

ゼパイルが帰って来た時には、 かなり満足気な顔をしていたのだった。

朝食を終え、暫し食休み。

食後直ぐに急激な労働は身体に宜しくない。

作業の効率も落ち、事故も起こり易くなる。

急いだつもりで、かえって遅くなったりするものである。

その様な事をさせるのは、上辺しか見ない愚か者くらいであろう。

十分な食休み後には過酷なる労働が待っていた。

一番は、昨日に高台へと搬入したバリスタの内の1台を崖下の棚へと運び込む事だ。

結構、苛酷な作業であった様である。

早朝から活動を始めた為、朝の早い内に搬入が終わった。

バリスタの組み立ては工兵の仕事。

ダリルは、役目御免と思いホッと一息。

甘い。

その頃には本隊が宿泊地へと辿り着いていた。

つまり…

バリスタの補修材や交換部品などが届いたと言う事だ。

そうなると…

「マジかぁ~っ」

再び運び込む事になる荷を見て、心が萎えそうになる、ダリル達であった。

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