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狩り人32

翌朝…

討伐予定地に設けられた宿営地は死屍累々であった。

いや。

本当に死体で溢れている訳では無い。

ただ、呻き声を上げる男達がゴロゴロと転がっているだけである。

起きたダリルが辺りの有り様を見て驚いて告げる。

「なっ。

 何事だっ!」

すると横合いから諫める様な声が。

「落ち着け。

 別に大事ない故」

そう告げたのはゼパイルである。

「ですがっ!

 何かの流行り病であったらどうするのですかっ!」

医療技術がこの世界にて流感が発生した場合、その感染を防ぐ事どころか治療すら困難となる。

故に人々は病に対し過敏な程の反応を示すものなのである。

その事を知っているゼパイルであるが…

「だから落ち着け。

 これは病では無い故。

 むぅ。

 いや。

 一種の病とも言えるのやもな」

その言葉にハッとしてゼパイルを見るダリル。

そんな彼に苦笑してゼパイルが告げる。

「ほれ。

 村長が何時も掛かるアレだ、アレ」

そう告げられ、キョトンとするダリル。

そしてゼパイルが言わんとしている事を理解し…

呆れ果てた様に溜め息。

そして肩を竦めた後に首を左右に振り告げる。

「アレですかぁ?

 あの程度の酒を飲んで、どうして、こうなるんです?」

困った様に辺りを睥睨。

「さぁな。

 それは俺にも分からんさ」

困った様に。

そんな2人の遣り取りを聞きながら、ハンターの1人が尋ねる。

「うううっ…

 うぷっ。

 ぎゃ、逆に…

 何でアンタらは大丈夫なんだよぉ~」

なかなかに悲痛な声色である。

その問い掛けにゼパイルとダリルは顔を見合わせた後で告げる。

「いや…

 何でと言われてもなぁ」

「そうですよね。

 俺達の村では村長達以外、そんな事になりませんからねぇ」

「全くだ」

理解できないと言った風に。

それを聞いたハンター達は…

「「此処の村人達は化け物かっ!」」

眼を剥き告げる。

そんなハンター達へギルド職員が、苦笑いしながら告げる。

「火酒フォボスをでヤるからだ。

 アレは元来割って飲むか料理の下味に使う酒だ。

 普通は、その侭で飲む酒では無いからな」

苦笑して告げる彼だが…

その顔色は、よろしく無い。

彼自身も酒はイケる口。

多少セーブはした様だが、それでも二日酔いになっていた。

そう。

ハンター達が倒れていたのは、二日酔いが原因である。

彼の発言を聞き、ゼパイルが眉を顰めて告げる。

「フォボスを割って飲むのですかな?

 なんと勿体ない」

「そうですよ。

 アレを割って飲むなんて、とんでもない!

 あの味わいを損ねるだけですよ」

困った様に。

そんなゼパイルとダリルを、呆れた様に見て告げるギルド職員。

「そんな事が出来るのは、此処の村人くらいのものですよ。

 普通の者には、あの酒は強過ぎますから…

 確かに割らずに飲んだ方が美味い事は認めますがね」

弱々しく笑って告げる。

「そんなものなんですか?」

思わずゼパイルを見て尋ねる、ダリル。

「う~む。

 確かに現役時代の連れが、良くなっておったな。

 ヤツらが特別だと思っておったのだが…」

思い出す様に。

((それはぁっ!

  アンタらが異常なんじゃぁぁっ!!))

心の中の絶叫がハモるハンター達。

良くシンクロするヤツらである。

仲が良いのであろう。

そんな感じで二日酔いと言う患者で溢れる事となった宿営地。

実は、村長の思惑通りだったりする。

早めに宿営地へハンター達が辿り着いたとする。

初日は辺りを探索するのに異存はあるまい。

だが…

だがである。

2日目以降が問題だ。

飽きやすく刹那的な昨今のハンター達。

勝手に獣竜へちょっかいを出さないとも限らない。

獣竜を予定期日に目的地へ誘導するには、大変な労力と技術が必要だ。

邪魔をされては堪らない。

2日あれば本隊も宿営地へと辿り着くであろう。

ならば、1日ほどヤツらの時を浪費させれば良い。

此処の名産である火酒フォボス。

それは余所では高級品として知られる酒だ。

それにハンター達が飛び付かない筈が無い。

そうしたら1日は二日酔いにて動けまい。

村長自身の実体験からの判断だ。

そうなる事に間違いあるまい。

まぁ…

その思惑通りになった訳だが…

ゼパイルとダリルは呻き声を上げて転がるハンター達に呆れながら、獣竜の様子を窺いに赴くのであった。

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