表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/169

狩り人03

明け方。

囲炉裏の火が落ち掛け、寒さにて目覚めたダリル。

薪を焼べ、囲炉裏の火勢を増したが眠気からは覚めてしまっていた。

まだ日も上がらぬ時間帯である。

流石に移動を始めるには早過ぎると言えよう。

取り敢えずは残ったパン粥を解凍し煮やす事に。

流石に全てを食すには量が多いと言えよう。

残りは小振りの鍋へと移し替える。

中身を移した鍋を雪で清めてからソリへと。

小鍋は雪へと埋め、パン粥の残りを凍らせていく。

帰村途中で食べるか…

残れば家族への土産にしても良いであろう。

ダリルの家はカーラム村の小作農家である。

彼は、そこの3男である。

いや。

3男になったと言うのが正しいだろうか。

子供としては15番目に、8男として生まれた。

だが厳しい世の中である。

無事に育つ幼子は少ない。

更にダリルの直上の兄は、子が絶えた親戚の家へ養子として入る事に。

去年の事である。

それで4男から3男へと繰り上がったと言う訳である。

ダリルは元々独立心が強く、農作業よりも野山を駆け巡るのが好きな質であった。

通常は長男が家を継ぎ次男が家を助けながら後に分家するのが開拓村であるカーラム村の慣習である。

そうなるとだ。

3男以降は、いずれは家を出なくてはならなくなる。

通常は町へ奉公に出る。

だがダリルは狩り人として身を立てる志しを立てた。

村を訪れたハンターに憧れたのが切っ掛けであった。

村にはハンターギルドは無い。

口入れ屋すら存在しない村だ。

その様な仕組みすら存在しないのである。

小さな村だ。

共同体として助け合って暮らしているのだから、当然とも言えよう。

そんな村にも狩人はいる。

そして、元ハンターであるゼパイルと言う男も。

ダリルが親にも告げずに彼の戸口を叩いたのは6歳の頃であったか。

その幼くとも強気な顔でゼパイルに弟子入りを申し込んだものである。

丁度、所用にてゼパイル宅を訪れていた村長がそれを面白がりゼパイルに水を向ける。

ゼパイルも苦笑いしながら、こう告げたものだ。

「小僧。

 荷物持ちだ。

 それを遣るなら狩りに連れて行ってやろう」

その様に。

教える教えないでは無い。

荷物持ちとして連れ回すとだけ告げてきた。

なんとも巫山戯た話しではないか。

だが驚いた事にダリルは。

「うん、遣る」

そう応え、ニッカリと笑ったものである。

「ほほぉぅ。

 狩りを教えて貰えぬのに良いのかぇ?」

村長が顎髭を扱きながら尋ねたものだ。

「うん!

 着いて行けば狩場で狩りが見れるもん。

 何をしているのかも知らないでは成るにも成れないよね」

そんな事を応えたものだ。

村長とゼパイルは思わず顔を見合わせ…

「「うわはははっ」」

声を揃えて笑う。

「これは賢い坊じゃわい」

「うむ。

 坊主は何才だ?」

村長が感心しゼパイルが尋ねる。

「6歳だい」

これがダリルの狩り人としての一歩であった。

それから10年。

両親の許可を取り付けゼパイルに弟子入り。

剣に槍、弓を習い、解体や採取について学んだ。

野営の遣り方や簡易な調理方法などもだ。

ダリルを気に入った村長からは読み書き計算、馬術までも仕込まれる事に。

村長は領主に忠誠誓った騎士である。

主家より村の開拓を命じられ此の地へと。

生涯を掛けて村を切り開いている騎士爵であり、貴族の末席を汚す者でもあった。

とは言え、実質的な家督は既に息子に譲り名だけの村長である。

息子が騎士に任ぜられ次第に引退する心積もりである様だ。

故に暇だけは持て余しており、ダリルを構う事で憂さを払っているとも言えよう。

そんな2人に鍛えられたダリル。

皆伝の証として1人山へと籠もる事となった訳である。

ハンターギルドへの加入は15歳からである。

その意味では去年にはギルドへ加入できたのであるが…

ゼパイルからの許しが得られず未だに未加入である。

それが、この度の試練を無事に遣り遂げればギルド加入の許可を。

更にはゼパイルと村長からの推薦状も頂けるとか。

早く帰村したい気持ちを抑え、夜明けを待つダリルであった。

そんなダリルではあるが、この試練を終えたら村を出る事になる。

ハンターギルドが存在する町は村から遠い。

徒歩で15日ほどは距離が離れているのだ。

これまで狩り人としての修練において稼いだ金で路銀は足りている。

当座の生活費も大丈夫と言えよう。

それに町には口入れ屋も存在する。

子供の小遣い稼ぎ程度の仕事から日雇い人足や奉公先の斡旋まで行う人材派遣業とでも言うのであろうか。

所属ギルドでも仕事の斡旋はある。

だが町では口入れ屋の世話になる者も多い様だ。

故に口入れ屋を通じて仕事を得れば、取り敢えず糊口を凌ぐ程度の事は行える筈である。

それでもギルド加入者と、そうで無い者では斡旋される仕事の格差があるそうであるが…

それは仕方あるまい。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ