狩り人28
ダリルがゼパイルと共に本隊へと合流した頃には、村長達は既に本隊へと戻っていた。
ダリル達は進行方向を逆行する形で村方向へ戻る事になった訳だが…
それは、本隊が移動するのに障害となる可能性があった虎を退治して来ためである。
輜重隊を含み、移動に時間が掛かる本隊への合流となるのだから仕方在るまい。
自分の仕事を終えたダリル。
ゼパイルと共に、のんびり歩いての移動だった。
それに比べて村長達の大半は馬での移動だ。
ダリル達より早く帰投できるのは当然と言えよう。
ただし、同行した徒のハンター達は流石に疲れをみせているが。
「おお。
戻ったかぇ。
よくぞ虎を退治してくれたのぅ。
重畳、重畳」
嬉しそうに告げる、村長。
「それは、これが凄いだけですよ。
コイツが無ければ、とても俺1人では無理ですから」
困った様に。
「それは当たり前じゃてのぅ。
あの大きさの虎を罠にも嵌めずに単独狩猟など、普通は無理じゃて。
晶武具があって初めて可能と言えるわい。
じゃがのぅ。
晶武具を扱える者は稀少じゃて。
我が村では、お主を含めて4人しかおらぬからのぅ。
更にじゃ。
槍の穂先より炎の刃を顕現させるなど、儂は初めて見たわい。
確かに晶武具は強力な武具じゃて。
じゃがのぅ。
それも扱えてこそじゃて。
誰にでも行える事では無いでな。
もっと誇っても良いぞぇ」
その様に諭す。
「そんなものですかねぇ。
矢は1の矢しか通じませんでしたから…
最後に放った4の矢は胸元に突き立ったと思ったら、刺さりが浅かったのか簡単に抜けてましたし」
少し自信を無くした様に。
だが…
それを聞いた村長が驚いた様に告げる。
「なぁっ!
お主、あの一瞬に4連射しておったのかぇっ!?」
「えっ?
そうですけど…」
村長の大仰な言い草に戸惑う、ダリル。
「そのコンジットボウを扱うだけでも大した技量と言えよう。
それを4連射じゃとっ!!
速射すれば威力が落ちるのが自然の理と言えようぞ。
なのに4の矢を命中させ、虎の厚い毛皮に突き立たせたじゃとぉっ!?
ぬしゃぁ、何を恥入っとるのじゃ!」
驚き呆れる。
ハンター達はダリルが肩に掛けているコンジットボウに目が行く。
硬木や骨などを組み合わせて造られた複合弓だと思われる。
扱うには膂力もだが、相当の技量も要求されよう。
単純に引き絞るだけでも難しいと知れる。
その弓にて4連射。
((この村の狩人は化け物かっ!!))
町より参加したハンター達の内心にて発した言葉がハモった瞬間であった。
「そんなものですかねぇ?」
ダリルは首を捻る。
「そんなものじゃっ!!」
村長が呆れて告げるが…
「そう甘やかさんで下さい」
ゼパイルが否定する。
「確かに、コヤツが放った矢は4本。
ですが1本は毛皮に弾かれ、1本は刺さりが甘い。
確かに、あの虎はシュテイガー種。
通常に比べ、確かに毛皮は厚く強度がが高いと言えましょう。
ですがハンターを目指すならば5矢を放ち、全てにてダメージを与える位でなくてはダメでしょうな。
まだまだ精進不足と言えるでしょう」
そんな事を。
((お前が原因かぁっ!!
っか、そんな基準だったらハンターが潰えるわっ!))
再び、ハンター達の心の声が揃うのであった。
「う、うむ。
お主の指導方法には口はださんが…
(相変わらずの鬼畜指導じゃてのぅ)」
呆れた様に溜め息を吐くのだった。
その後、晶武具を試したいと言うハンター達や騎士達が、村長の許可を得てダリルの晶武具を借り受ける。
発動できたのが数人。
ただ…
「やったぁっ!!
発動できたぜっ!」
「………
穂先が生暖かくなった様だが…
これって意味があるのか?」
「………
うそぉ~ん」
とか。
「ふっ。
私に掛かれば、晶武具の起動な…」
バタン。
一応は穂先を高温にできたのだが…
力を使い果たし倒れる有り様。
起動できても使い物にならない者ばかりであった。
その様子を見て、ダリルが如何に並外れた事を行っていたかを実感するハンター達であった。
まぁ…
その様子を見てダリルが不思議そうにしていたのは余談。
(何を遊んでいるんだ?
俺程度ができるんだから、ハンターなら楽勝な筈なのだが?)
その様にも思っていた。
ゼパイルによる教育の賜物と言えよう。
良いのか。
それで?




