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狩り人27

虎を倒し一息吐いていると、後方から声を掛けられる。

「ふむ。

 こうも容易く倒すとはな」

半ば呆れた様な声色である。

「とんでもない。

 何、言ってるんですか師匠。

 これは俺の実力と言うより晶武具の力じゃないですか。

 晶武具の効力が切れたらと、ヒヤヒヤものですよ、こっちは」

困った様に。

「ふっ。

 それは、お前が晶武具制御にムラがある為だ。

 無駄に力を晶武具に吸われない様に制御ができとらんのだ。

 もっと精進せねばな」

そう諭す。

「それこそ無茶言わんで下さい。

 晶武具を扱い初めて間もないんですから…」

思わず溜め息。

そんな彼らにゼパイルの後方から現れた男が告げる。

「いんやぁ~

 晶武具っぅのは大したモンなやなぁ~

 こげにデケェ虎さ、あっちゅぅ間に倒したなや。

 さてんと…

 移動もせなならんでな。

 サッサと解体ば始めんべぇ」

男は告げると右手を横へ、肘を直角にして手を上げる。

すると男の後方より男達が現れ、虎へと群がり始めた。

男は村猟師の頭であるガルトである。

この度の獣竜討伐に猟師達を率いて参戦しているのだ。

まぁ…

倒された獲物の解体と搬送が主な役割とされ、直接戦闘へ関与する事は考えられていないが。

解体は猟師達に任せてダリルとゼパイルは移動する事とした様だ。

「頭。

 後は頼んます」

ダリルが軽く告げる。

「おぅ、任せなっ!

 ダリル坊が綺麗に倒した品だんべなや。

 恥ずかしくねぇ品ばなる様にさ解体しとくでよぉ」

笑いながら告げるガルト。

そんな彼にダリルが困った様に…

「そろそろ、子供扱いから卒業させてくれませんかね?」

困った様に。

それを聞き…

「ふんむぅ。

 坊扱いしても突っ掛からなくなっんけぇ。

 狩り人としての技量も1人前と言えんべぇか…

 確かに1人の男として扱っても良かんべぇか?」

腕を組み、顎に手をやるガルト。

「そうしてやってくれ。

 コイツにはこの間、皆伝をくれてやったばかりだ。

 もう1人前と言って良かろう」

そうゼパイルが促す。

「ほおぅ。

 ゼパイルの旦那から皆伝だべか。

 そら、もう子供扱いは出来んべな」

ゼパイルは引退したとは言え、一流どころのハンターだった男だ。

その男が1人前と認めたのだ。

並の猟師以上の力量を有していると言って過言あるまい。

晶武具の性能に頼った成果では無いと言う事だ。

「それにだ。

 1人前と認めん者へ村長も晶武具を貸し与えんからな」

ゼパイルがそう告げるとガルトも納得した様だ。

軽く頷くと納得した様に告げる。

「成る程、成る程。

 言われてみんば、そん通りだんべやなぁ~

 ダリルさぁ。

 済まんかったなや」

そう謝罪を入れた後、ガルトは解体作業へと加わる。

ダリルとゼパイルは、それを見送った後で移動を再開。

部隊本体との合流である。

道には荷車が待機している。

此方の荷車は、解体した虎を搬送するために待機している物である。

その脇を通り、道を進む。

獣竜を待ち受ける場所だが、この先にある渓谷下となる。

そこへ獣竜を誘い込み討伐するのだ。

とは言え、野生動物である獣竜が思惑通りに誘い出されてくれるのか…

甚だ疑わしい所であるのだが…

それに対しては心配は無い。

獣竜は南方竜種とは異なる生態を持つとは言え竜の1種には違いない。

そして竜種にはある特性がある事が知られている。

それは…

猫にマタタビ、竜に竜惑香。

そう呼ばれる香りを発する物がある。

複数の香木や薬草、茸を調薬して作り出さねばならないが、この薬品から発する香りは竜を惑わし魅了する。

竜種を誘き寄せたり隙を作るために用いられる事で知られる。

作成するための材料入手に労力を有し、調薬の難易度も高い。

更に熟成させる必要もあり、使える竜惑香を揃えるのは大変なのだ。

それでも万が一を考え、一定量を確保する事は領主の嗜みとされていた。

この度の獣竜も小出しにした竜惑香にて誘導している。

とは言え、村長の処にストックされていた量では、獣竜を誘導するには足りなかったであろう。

元来、竜惑香は、その希少性故に高価である。

大量にストックするのは困難なのである。

では、どの様にして揃えたのか。

それはゼパイルが関係している。

この男、ハンター時代に竜惑香の調薬を学び習得していたりする。

その技術を元に自分で集めた素材を元に調薬しているのだ。

そして本来は大樽にて熟成させるのを小樽にて行いストック。

それを偶に行商人や村長へ売り、小遣い稼ぎなどをしていたりする。

その彼がストックしていた竜惑香をも用いて誘導している訳だ。

この竜惑香素材の見極めや調薬の仕方は、ダリルも納めている。

っと言うか、ゼパイルの手伝いを弟子として行っている間に覚えたと言うのが正解か。

無論、手伝い賃は子供の小遣い程度しか得られない。

まぁ…

弟子の立場ならば、そんな所であろう。

さて、ゼパイルが獣竜を誘い出している渓谷であるが、獣竜の攻撃が届かない高台が渓谷左右崖上に存在する。

そこへバリスタを設置。

それにて迎え撃つ。

無論、崖上から岩を落としたりもする予定ではある。

ただ、それだけで倒せる程、獣竜は柔な存在ではあるまい。

落とし穴などを構築するには労力も時間も足りない。

倒せなかった場合は、晶武具を持った者が倒しに赴かねばなるまい。

そう。

ゼパイルやダリルも、その討伐隊の一員なのであった。

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