狩り人23
ゼパイルが帰村して半月近くが過ぎ去った。
ダリルは晶武具を扱うための鍛練を受け、どうにか実践にて扱えるレベルになっていた。
無論、鍛練だけを行っていた訳ではない。
獣竜ガルオーダの動向の偵察にも赴いている。
予想進行ルートに近い場所にて補足しており、迎撃ポイントの選定なども行われた。
町からの援軍である騎士やハンターも村に辿り着いている。
迎撃ポイント付近にガルオーダが現れるのも間近。
明日には迎撃ポイントへ向かい、村から出陣する事となるであろう。
迎撃に向けて集まった者達全てが村へ入れる訳ではない。
故に村外にて駐屯している状態だ。
そんな中で騒ぎが起こっていた。
高レベルハンター数人と騎士数人が苦情を申し立てているのだ。
何にかと言うと…
「何故、高ランクハンターである、このガルドラムで無く小僧が晶武具を下賜されるのだっ!」
「まったく、まったく、その通りだて!!
晶武具を扱うのは高ランクハンターが相応しい。
このゼムトの様になっ!」
それと同じ様に、数人のハンターも騒ぐ。
「なんのなんのっ!
晶武具ほどの武具を扱うのは騎士こそ相応しいと言えようぞっ!
このカーランこそ適任であろうよ」
「いやいや。
我、ランスロッタこそ、晶武具を使うに相応しい騎士と言えよう」
そう騎士の陣営でも騒ぎが。
原因はダリルが晶武具を扱う事が知れたためである。
若僧が村領主より晶武具を下賜された。
いや、本当は貸し与えただけなのだが…
そんな事よりもだっ!
自分より未熟な若僧が稀少な晶武具を扱うのが気に入らない。
稀少で強力な武具ならば、我が使うのに相応しい。
そう不満をぶちまけている訳だ。
まるで駄々っ子である。
そんな彼らに詰め寄られる村長が告げる。
「ほぅ。
相応しい使い手と言うが…
お主らは単独で虎くらいは狩れるのじゃな?」
ニマニマしながら告げる。
「ふん。
虎くらい、何時でも狩ってみせるわいっ!」
騒いでいた高ランクハンターが告げる。
すると村長が村人に合図して何かの毛皮を持って来させる。
それは巨大な虎の毛皮である。
それを見せた後で更に告げる。
「これは先程お主ら告げておった小僧が1人で狩った獲物じゃて。
獣竜に追われて現れてのぅ。
討伐の邪魔じゃて小僧に狩らせた訳じゃ。
鍛練の意味で単独にて狩らせた訳じゃが…
無論、ぬしらも狩れるわなぁ」
揶揄する様に。
ざわめくハンター達と騎士達。
「ふ、ふんっ!
そのてぇど、このガルドラムに掛かれば容易い事よっ!」
威勢良く告げる。
他のハンター達や騎士達も同様に。
すると…
「それは頼もしい!
実は同程度の虎が現れておるのじゃよ。
ガルドラム殿じゃったかな。
先ずは、お主から討伐に挑んで頂こうかのぅ」
告げられ…
「あっ、いや、うん。
そうしたい所ではあるが…
我らは一介のハンターであるしな。
ここは騎士様に栄誉を譲らねばなるまいて」
そう告げ「ガハハハハッ」っと笑う。
何気に蒼い顔で脂汗が浮いてますが…
大丈夫か、この男。
「ふん!
騎士は前座の獣など狩らぬわっ!
だが…
それ程の獣を単独で狩るなら勇者といえようぞ。
その勇気と技量を讃え、晶武具を扱う者と認めても良かろうて」
騎士長が騎士達を諭す様に告げる。
(いらぬ事を…)
ダリルが内心にて舌打ち。
正直ダリルは晶武具など持ちたくない。
当たり前である。
晶武具を扱う者ともなれば、獣竜との戦いで矢面に立たされる事となろう。
死地にて最前線である。
ハンターにも成ってない現在にての重責と言えよう。
替わってくれるなら替わって欲しい位である。
なので、馬鹿なハンターや騎士が騒ぎ始めた時にはシメたと思ったものだ。
まぁ…
晶武具を見付かる様に携えて村を態と歩いたからバレたのだが…
ダリルの思惑は村長により潰されそうである。
「ほうですかい。
しかし…
虎退治して頂かねば困りますのぅ。
そうじゃっ!
晶武具を扱うダリルの実力を見て貰うべきじゃなっ!
ダリルに再度討伐させますかのぅ」
ニタリと笑いながら告げる。
(げぇっ!)
ニタリと笑った村長の目はダリルをロックオンしている。
目は笑ってない。
どうやらダリルの企みはバレている様だ。
こうしてダリルは、余分に虎退治を課せられる事になるのであった。




