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狩り人17

猪を狩り終えると、先ずは血抜きである。

脚にロープを掛けて、近場の木の枝を支点に吊す。

この作業が一仕事である。

血が流れる様に処置を行い血抜き。

子猪の処置も同様に。

血は地面に掘った穴へと流れていく。

その処置を終えると、猟師小屋へと獲物を運ぶ準備だ。

剣で近場の木を数本切り倒す。

幹が然程太くない木を選んだため、剣でも容易く切り倒す事ができた。

その木々をロープにて組み合わせる。

そして血抜きが終わった獲物をその上へ。

ロープにて簡易荷台へと固定した後で、荷台から伸ばしたロープを肩に掛け引き摺る事にする。

緩やかな斜面はダリルが先となり、引き摺りながら進む。

斜面の傾斜が厳しくなった場合、彼が上手になる。

木にロープを掛け、その木を支点として獲物をずり落す訳だ。

こうしないと獲物が痛んでしまうので、仕方ない処置と言えよう。

獲物を猟師小屋まで運び込む。

此処までも一苦労であったが、まだ解体作業が残っている。

皮を剥ぎ取り骨と肉とを分ける。

内臓も取り出し処置を。

無論、村まで持ち帰るなどは不可能。

部位によっては傷み始めている箇所もある。

大丈夫な部位を処理しておく。

今晩の食材だ。

皮剥、肉と骨の分離よりも内臓の処置の方が時間が掛かる。

とは言え、此方はダリル自身の楽しみでもある。

内臓が食せるのは狩った者の特権である。

命懸けにて狩った貴重な食材であり、傷み易いため現場でしか食せない。

そして鮮度が高く、適切な処置がなされた内臓は美味い。

更に栄養価にも優れている食材だ。

解体作業を途中で中断し、内臓の処置に移行するのも仕方ないと言えよう。

不要部位を切り捨て水洗い。

念入りに処置した食材を刻む。

香草と香辛作用のさる木の実と樹皮、塩を混ぜる。

子猪の腹身も混ぜ入れた。

これを親猪の腸へと入れ、その後で茹でる。

逸れを香木の煙りにて燻すのだ。

腸以外にも子猪の胃を使用した詰め物も作る。

残った食材は鍋で炒める。

それを小麦粉を練って作った生地に包み、その生地ごと焼き上げていく。

今夜の食事である。

生地の部分が少々焦げているのは、お愛嬌と言うもの。

パリッと香ばしい部分と、モッチリした部品のある生地。

その生地に包まれた各部位の内臓。

無論、野草や香草なども混ぜ込まれている。

カリコリとした食感。

サックリとした食感。

柔らか食感や弾力のある食感など…

様々な食感と味が楽しめる猟師料理と言えるであろう。

食事を終え、解体処理を再開する。

牙は持ち帰るが、骨は不要部位として破棄する。

獲物によっては脂部位も除去するが、猪のそれは非常に美味。

逆に脂身を除去した猪肉の価値は激減すると言って良いだろう。

故に脂身は身に残した侭にするのがコツである。

解体処置をある程度終える。

残りは明日にでも行えば良かろう。

そう考え就寝する事に。

一応、雨風が凌げる猟師小屋である。

野営するよりは遥かに楽と言えよう。

設置されていた毛皮の上に横になり、毛布へと包まる。

(そろそろ、この毛皮も替え時か…)

そんな事を考えながら、浅い眠りへと落ちるダリル。

熟睡はしない。

此処は村の中では無いのだ。

危険な生き物が現れない保証など無いのだから…

昨日、小屋の補修用に木々を集めた際、薪材も大量に仕入れていた。

故に遅くまで作業を行った訳だが…

そんなダリルが寝入って暫く。

外に生き物の気配が。

ピクリと反応するダリル。

薄目を開け、辺りの様子を窺う。

小屋内なので直ぐに危険は無いであろう。

だが、直ぐに外していた武具を装着し始めた。

念を入れておくに越した事はない。

鎧を付け、槍と剣を準備する。

弓は持たない。

この暗闇で遠距離を狙うのは不可能だ。

不要な道具を持つ事は、動きを余分に阻害されると言う事。

そんな不必要な事はしないに越した事あるまい。

そう判断した訳だ。

猟師小屋の周りを何かが彷徨いて窺っている。

気配でも分かるが…

小屋壁の板と板との間に生じた隙間から、焚き火の明かりが外に漏れている。

同時に、その隙間から外が窺えた。

狼である。

しかも数頭ほど居る。

群であろう。

猪を処置した時の香りに誘われたと思われる。

猟師小屋を打ち破って押し入る事は無いが…

おちおちと寝ている状態でもない。

まんじりとも出来ない夜が静かに更けていくのだった。

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