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狩り人166

(クダン)の洞窟へアンソニアを導いてから十数日の日々が過ぎ去っていた。

ダリル達は既に街へと帰還しており、持ち帰った干し肉をギルドへと納品済みだ。

(モット)も…持ち帰った燻製肉の品質の高さから納品時に大騒ぎになった様ではあるが…


そんな燻製肉は一部を自分達用に確保した以外は全てギルドへと収めている。

そして、その大半が領主により買い占められてしまう事態が発生。

街の権力者達の間で軋轢(アツレキ)が発生したのだとか…


そんな権力者達を招いてのパーティ等が(クダン)の品にて(アツ)えられた料理にて持て成され、騒ぎが収束へと。

そんな上流階級による騒ぎなどには巻き込まれなかったダリルは、今日平常運転である。

まぁ…(クダン)の場所へ向かった者の中でアンソニアだけが騒ぎに巻き込まれていた様ではあるが…それは、致し方ない事であろう。


街へ帰ったダリルはファマル達と行動を共にしていた。

近場の森へと赴き狩りや採取などを行いつつカリンの訓練である。

とは言え、十分な体力と筋力が身に付いて無い彼女に対してのトレーニングに多くの時間を割いている状態だが。


このトレーニングにはシムエルも参加している。

彼女は元々商家の娘であり、ハンターとなってからの日は浅いと言える。

流石にカリンよりは体力も筋力も身に付いてはいるが、一派的なハンター達よりは劣っていると言えよう。

ただ、彼女は護身術として簡単な槍術を身に付けており、ズブの素人たるカリンよりはマシと言えるだろう。


そんな日々を送るダリル達は、今日も一泊の野営にて森で得た獲物をギルドにて納品していたのだが…


「かぁ~っ!毎度々、良い品を入れてくんねぇぃ!」っとハゲルが己の禿頭(クトウ)を手の平でピシャリっと叩いた後で清算を。

そして続けてダリルへと告げる。

「そうそう、ダリルよぉぃ」

「むっ?なんだ?」

行き成り真面目な顔で告げられ訝しげな顔でハゲルを見るダリル。

そんな彼へハゲルが確認する様に。

「オメェィさんよぉぃ、晶武具を扱える、ってぇのはよぉぃ…本当けぇぃ?」っと。


行き成り問われ、戸惑った様に頷きつつダリルが応える。

「あ、ああ…確かに扱えるが…それが?」

確かにダリルは獣竜ガルオーダ討伐にて晶武具たる槍を用いていた。

それを扱うには適応能力と言うか才能が必要であり、誰でも扱える代物では無い。

更には晶武具自体が稀少な代物で且つ高価であるため、一般には出回っていない代物である。

とても一般のハンターに扱える代物では無く、此処で晶武具の話が出て来る事に首を傾げるダリル。


そんな彼へハゲルが告げる。

「いや、よぉぃ…オメェィをよぉぃ訪ねて来た御仁が居るんでぇぃ。

 その御仁がオメェィを紹介して欲しいってねぇぃ。

 ただ…オメィイさんの承諾を得ずに話は進めらんねぇぃかんよぉぃ。

 でぇっ、だぁ…どうするねぇぃ?」


興味深げにダリルを見て尋ねるハゲルにダリルは腕を組んで暫し考える。

彼のバックには、この国の公爵家に属するアンソニアが居り、迂闊な真似を仕出かす者は居るまい。

またハゲルも怪しげな者を紹介するとは思えない。

だが…それはそれとしても素性の分からぬ者と会うと言うのは別であろう。


「話の流れからして晶武具に関する話とは思うが…何者なのだ?」

「んっ?会ってみるのけぇぃ?」

「それは相手次第だな」


そう受けてハゲルも頷き応じる。

「そら、(モット)もだねぇぃ。

 でぇ、だぁっ。オメェィさんに会いたいてぇ言ってんのはよぉぃ、鍛冶師らしいぜぇぃ」


ハゲルの話に眉を(シカ)めるダリル。

彼としては晶武具を扱える彼の武力を目当てとした貴族などからによる勧誘かと思っていたのだが…どうやら杞憂(キユウ)に終わった様であった。

だが…それにしても鍛冶師が何故(ナニユエ)、彼に用があるのか…それが分からない。

しかし勧誘などの面倒事では無いと思われた。

故に…


「ふむ、何用かは分からぬが…話を聞いてみても良かろう」っと。

「おぅっ、そんならよぉぃ、早速渡りを付けんぜぇぃ」

その様に告げたハゲルはギルド員の1人へと指示を。

彼は彼で丁稚の小僧を使い、(クダン)の鍛冶師へと伝達させた様だ。


その後、ダリル達の一行はハゲルに案内されて彼の執務室へと。

そこでダリルへ面会を求めた鍛冶師と会う事となるのであった。


ハゲルの執務室へと入り暫し待つ。

ハゲルは、この街にて栽培されている茶葉を使用した茶を一行へと振る舞い待つ。

そんな彼へ、街で売られている焼き菓子を取り出した一行が振る舞い暫しの歓談を。


この焼き菓子だが、甘味料が貴重であるため甘味は少ない代物である。

摩り下ろした木の実やドライフルーツを湯にて練り上げて焼いた代物であり、自然な風合いがする庶民の食べ物と言ったところか。


この様な品は近場に豊かな実りを(モタラ)す森が存在する街にしか存在しない。

この街は、そんな街の1つであり、小金持ちである庶民に親しまれている…そんな焼き菓子であった。


そんな茶会らしきモノで寛ぎながら時を過しているとドアがノックされる。

どうやら待ち人が現れた様である。

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