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狩り人16

朝、日の出前に川で身支度を行い、その後で鍛練を。

干し肉と野草のスープへ大麦粉を水で溶いた物を流し入れる。

固めに溶いた大麦粉は茹でられて固まる。

スープを吸ったそれは薄く伸びた感じで固まり、ふるふるとした淡い食感を残しながら口の中で砕けるのだ。

穀物の粉は軽く嵩張らずに持ち運び易い。

水で溶き嵩ましすれば腹持ちも良い。

野営時などには重宝する品だ。

但し、水源が確保できねば食すのが厳しい品でもあるが…

出来たすいとん擬きを食す。

ゆるりと。

今から活動するのに胃に凭れては堪らない。

故に、シッカリと噛んで食す。

量も少な目。

少々空きっ腹の方が集中力が増す。

その様に考えているのだ。

食事を終え後片付けを行う。

そして暫しの食休み。

胃の腑を落ち着かせ、十分に体制を整える。

(さて…

 行くか)

軽く自分に気合いを入れ、ダリルは猟師小屋を後にする。

この度は川を使って持ち運ぶ予定だ。

故に狙いは大型の獣。

鹿か野豚、猪に山羊あたりか。

ケルプ、ドルドなどでも良かろう。

ケルプは鹿に似た生き物だ。

鹿よりは小型であるが肉質は肌理細かく柔らかい。

薫りも良く高級食材として扱われる品だ。

出来れば得たい獲物ではあるが警戒心が強く、この辺りへ現れるのも稀。

動きも早く、狩るのは困難であろう。

ドルドの方は大型の鳥類である。

此方も、この辺りへ現れるのは稀。

体高3メートルを越える飛べない大型鳥類だ。

動きはケルプほどではない。

だが、高所からの素速い突っ付きは脅威。

太い脚に蹴られでもしたら、タダでは済まないであろう。

ただ…

此方の肉は適度な歯応えがあり、非常に美味。

骨などからは良い出汁が出るため、非常に人気がある品だ。

どちらも滅多にお目に掛からない獲物なので、この度も恐らくは無理であろう。

小屋を出て森を進む。

途中で地面の状態などを見る。

見る者が見れば、地面には様々な情報が刻まれているものだ。

生き物が通った痕跡や糞、獲物が好みそうな植物の有無など様々。

それらを確認しながら進む。

兎や狸、穴熊などの痕跡は見付けた。

だが大型種の痕跡は見付からない。

まぁ、そんなに容易く見付けられれば苦労しないのだが。

森を移動していると猿の群が通った痕跡を見付ける。

(厄介だな)

嫌そうに眉を顰める。

猿は好奇心が旺盛で悪戯好き。

時には集団で襲って来る場合もある。

遅れを取る様な事は無いが、相手をするのは非常に面倒なのである。

出来たら出会いたく無い生き物だ。

痕跡から群が進んだ方向を推測する。

そちらを避けての移動とする。

暫く移動すると猿の群が通った痕跡が途絶える。

猿は獲物としては人気が無い生き物だ。

その割には厄介。

相手にしたく無い生き物なのである。

相手にせずに済み、ホッとするダリル。

更に森を進む。

移動は山手へ向かって斜面を上がる。

移動は困難ではあるが、獲物を獲た後は斜面を利用して獲物を搬送可能だ。

故に移動が少々困難となるが、山手、山手へと移動を続けている。

暫し進み…

(これは…

 猪か何かが芋か何かを漁った跡か?)

何物かが餌を漁った痕跡。

まだ新しい。

そう判断したダリルは、獲物が付けた跡を確認し始めた。

(どうやら彼方側だな)

目星を付けて移動を始める。

時々、地面の状態を確認。

風向きの確認も怠らない。

痕跡を辿りならが移動を続け…

(居たっ!)

木陰からチラリと姿を垣間見る。

これ以上の接近は気付かれる可能性がある。

辺りを見回すダリル。

そして、何かに気付いた様だ。

(確か、この先は…)

もう一度、猪の状態を確認。

子連れで子供を3頭ほど連れている。

この手の獣は警戒心が高く気が立っている。

非常に攻撃的と言えよう。


猪などにチョッカイを出せば、報いを受けさせるが如く襲い掛かって来るに違いない。

だが…

逆に、それを用いる手も。

ダリルは位置決めをするとコンジットボウを肩から外す。

矢を番え、キリキリと引き絞った。

ヒョウっとばかりに放たれる矢。

猪の肩辺りに突き刺さる。

【ギャブッ!?】

矢が突き刺さり、驚きの悲鳴が。

しかし…

流石はコンジットボウと言ったところか。

普通の弓にて放たれた矢ならば刺さりもせずに弾かれたであろう。

まぁ力量が足りて無ければ、引き絞る事も出来まい。

矢が突き刺さると猪がダリルに気付く。

【グモォォォッ】

怒りの声が上がる。

そして怒り狂って突進だ。

ダリルは素早く移動。

距離は見る見る内に縮まる。

ダリルは何気ない動きで跳躍。

そんなダリルの後方にて…

ドゥッ。

何かが倒れる音が。

この辺りの地形は地面に亀裂が入っている箇所がある。

知らずに移動すれば足を取られる事になるだろう。

冷静な猪ならば、こんな手に引っ掛かる事は無かった。

だが子育てにて気が立っている現在、自分達にチョッカイを出した小生意気な敵に容赦するつもりなど無い母猪。

頭に血が昇った彼女は、まさに猪突猛進。

足元が疎かになってしまった訳だ。

ダリルの計略勝ちとも言える。

だが、この手はダリルにとっても賭の要素が高い策でもある。

地面の亀裂は無数。

下生えに隠れ分かり難い。

もしダリルが亀裂に足を取られたら、ダリルの方が無事では済まなかったであろう。

ダリルは倒れた猪へと近寄る。

亀裂に嵌まった脚は、突進の勢いにより折れている。

倒れた時のダメージもある様だ。

背から外した槍を猪の目に目掛けて突き入れる。

【ブギャァッ】

悲鳴を上げる、母猪。

その後、剣で喉を掻き切る。

トドメを差し、ひと息入れる。

次は、子猪。

母猪を失った子猪が生き延びる事は出来まい。

此処でトドメを刺すのも情けである。

躊躇わず屠るのであった。

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