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狩り人158

洞窟を進んで行くと、途中から天井高が高くなり辺りの様相が異なって来た。

辺りへと石筍や岩氷柱などが現れ、百枚田などと呼ばれる様な代物もである。

そう、鍾乳洞へ呼ばれる場所へと分け入ったのだ。


ランタンの明かりにて照らされる鍾乳洞の景色と言う物は幻想的にて素晴らしいと言える。

そんな景観を見たシムエルが「ふぅふぁ~」っと感嘆の声を。

御嬢様気質のある彼女は芸術的な美的感覚が鋭い。

そんな感受性が高い彼女は、(イタ)く感じ入り魅了される様に辺りを見回していた。


辺りに気を取られ少々危うい歩みを進める彼女へファマルが困った様に告げる。

「ほらほら、ちゃんと足元を見て歩かないと危ないわよ」っと。

粗忽な妹を気に掛ける姉の様である。


もっとも、さり気無くシムエルの面倒を見ているのはガンレートの方だったりするのだが…

何だかんだ言いながらも仲が良いパーティだと言えるであろう。


そんな鍾乳洞もダリルが屈んで進まねばならぬ箇所もあり、アンソニアが(イタ)く苦労して抜けると言う場面もあった。

そんな道程(ドウテイ)を経て先へと進むと前方がボワァッと明るくなり始めた。


理由を知っているダリルとカリンは動じる事も無く歩みを進める。

そんな2人にエスコートされ困惑顔にてアンソニア達も続くのだった。


その様な道中にてアンソニアが光の正体に気付く。

「これは…光苔…でしようか?」っと。

彼の呟く様に発せられた言葉へとダリルが返す。

「ああ、此処ら周辺には光苔が群生していてな、明かり要らずで助かる」っと。

そんな事を告げつつ彼はランタンの明かりを消し始めた。

油は貴重品ゆえ、無駄な浪費を抑えたのである。


それに皆も倣いランタンの明かりを消す事に。

そして再び歩みを進めると…ついに目的地へと。


そう、ドーム状に刳り貫かれたかの様な巨大な洞窟内へと…


「ほぉ~」「うわぁ~」「す、げぇ~」「か、感動、で、っすわぁ~」


4人から各々感嘆の声が。

それも仕方有るまい。

先程の鍾乳洞の景色も素晴らしかったとは言えるが、矢張り閉塞空間であり開放感には乏しい場所であった。

確かに美しく幻想的ではあったが…此方の開放的な景色の方が、より彼らの心を打ったとみえる。


人1人抜けられる幅と高さの洞窟を抜け出て広がる広大な空間。

その洞窟の天井は崩落して抜けており、外からの柔らかい日差しが洞内へと降り注いでいる。

その光を得てか、陽が届かぬ場所にて光苔が淡々とした輝きを。

壁面の1部からは水が流れ出しており滝となっており、この滝の飛沫が陽の光を反射して輝いている。

水面も陽の光を受けキラキラと。

その流れ込んだ水が形成する川が洞内を流れており、対面の壁際にて穿たれた穴へと吸い込まれて行く。

地形に左右され蛇行する川にて発生した澱みが生み出した泉も景観に潤いを与えていると言えようか。

更には洞内であるにも関わらず小さな林が存在し花畑すら形成されている。


この景観を神職に携わる者が見たならば、(マサ)にエデン…神々の楽園っと称したやもしれぬ景観であった。


そんな洞窟の景観へと魅入られる一同へとダリルが告げる。


「此処が終着点である訳だが…

 此処の洞窟のお宝は鉱石っと言うよりは、この空間だな」

そう告げるダリルにアンソニアが頷き告げる。

「正しく…正しく、そうでしょう。

 この美しき景観に勝る宝は、無いっと言って良いでしょうね」

そう感じ入った様に。


そんなアンソニアに苦笑してダリルが告げる。

「いや、確かに景観は良いが…此処の価値は、それでは無い」

そう告げられ、アンソニアが訝しげにダリルを見る。


そんな彼を困った様に見ながらダリルが続ける。

「此処へは薬効茸や薬効苔に高級キノコのポルチーニ茸とか宴舞茸などがな。

 特薬草や解毒成分を含む草花もあるぞ。

 しかもだ。

 ブルー、レッド、グリーン、イエロー、パープルの通常とは異なる岩塩が豊富に存在しているんだ。

 破竹なども生えているが…水草や藻の類も豊富で水産物もソコソコに存在する。

 崖上には草食動物が群れている場所がある様だしな。

 洞窟内の土も肥えている感じだらか農作も可能だろう。

 上手く管理すれば長期滞在は勿論、此処で得た代物で稼ぐ事も出来るだろうさ」


ダリルが告げた事実に驚愕する一同。


鉱石だけでも一財産だと言える、いや…鍾乳洞が在ると言う事は、大理石も入手かのうだろう。

それだけでも莫大な利益を約束された様なモノだが…それは有限と言える資産と言えよう。

だが…動植物に対しては管理が適切であれば半永久的に富を生み出すと言える。


ただ、此処を適切に管理すると考えるならば個人では無理であろう。

そう考えるならば公爵家が管理するのは妥当だったとも言える。


その価値を実感して眩暈を覚える程に衝撃を受けたアンソニアであった。

雅に宝の宝庫である。

だが此処の資源を活用するに当たり問題が無い訳でもない。

それを、つい溢すアンソニア。

「しかし…出入りに難がありますねぇっと」


そんなアンソニアを見てダリルは首を傾げつつ尋ねる。

「何故だ」っと。

そんな彼を呆れてアンソニアが見るが…彼に見られたダリルはニヤリ笑いながら天井を指差すのであった。

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