狩り人15
ダリルがゼパイルより装備を受け取ってから5日の日が過ぎ去った。
ダリルは休養しながら新たな武具を身体に馴染ませていた。
そうして武具も少しは馴染み、軽く近場にて狩りでも行おうかと考える。
師匠であるゼパイルは、まだ戻らない。
何処を調べに行ったのか…
最近は冬場に遠出しなかったゼパイルにしては珍しい事と言えよう。
独り立ちしたとはいえ、最後に一度は師匠と共に狩りを行いたいと考えているダリル。
ゼパイルの帰りを待って狩りへ赴く気だったのだが、帰る気配が無いため待たずに狩りへ行く事にしたようである。
干し肉と黒パンを購入。
革の水袋も忘れない。
傷薬や食中りの薬も補充だ。
丁度、薬師のセプタム婆さんが雑貨屋へ新しい薬を納品したばかりの様だ。
薬も劣化する。
故に新たに購入する事にした訳だ。
狩場では何が起こるか分からない。
用心にこした事は無いであろう。
必要な物を背嚢へ仕舞い、狩りへと向かう。
今日は山側へ半日ほど行った場所を目指す。
その場所からは川が近い。
ロープを持って行く事で、筏を組む事も可能。
荷物になるが、気を伐採するための斧も持参である。
狩りに出掛けるために村を歩いていると、チビ共が寄ってくる。
休養中もチビ共が纏わり付き、休養なのに逆に疲れた気もする。
でもチビ共には関係ない。
お構い無しに群がってくる。
なにせチビ共を相手をしてくれる稀有な存在。
逃してなるものかと来る訳である。
(これなら狩場へ出た方が楽だ)
そう彼が思うのも頷けると言うものだった。
チビ共が来るとダリルが告げる。
「今から狩りへ出掛ける。
だから相手は出来んぞ」
そう告げられ、チビ共は不満顔。
「えぇ~
もっと休養取れば良いじゃん!
遊んがぁ」
「うん、ダリル兄ぃ。
遊んがぁ」
我が儘を言うチビ共。
「これっ!
ダリルは今から仕事さね。
邪魔するんじゃ無いよっ!」
ダリルの母がチビ共の声を聞き叱る。
「母さん、ありがとう。
お前達も帰ったら相手してやるから」
ダリルがチビの1人の頭をポンポンと軽く撫でる様に叩く。
「絶対だからね!」
「約束だよっ!」
(やれやれ)
内心にて苦笑。
そんな彼へ母親が告げる。
「くれぐれも無茶おしで無いよ。
無事にねぇ」
心配そうだ。
森には肉食獣も現れる。
春になったとはいえ、冬眠明けや冬の飢えが癒えて無い獣は多いだろう。
安全な狩りなど有り得ないのだから。
「分かったよ。
十分、気を付けるさ」
そう言い残し歩み始める。
母親とは、そこで別れるが…
ぞろぞろと、チビ共が後ろをついて来る。
村人が面白そうに、それを見送る。
(毎度々…
見せ物じゃねぇっ!)
晒し者状態。
(何でこうなる!)
困り顔のダリル。
村から出てもついて来る。
「お前達!
遊びじゃないんだっ!
村へ帰れ!」
流石に叱る、ダリル。
「ちぇっ。
一寸くらい良いじゃんか」
拗ねる様に告げるが、大半のチビ助達が村へと引き返している。
気付かなかった残りのチビ達が、置いて行かれた事に気付き慌てる。
「置いてくなんて、酷いやっ!」
慌てて村へと駆けて行くのだった。
(ふぅ。
やれやれだな。
さて…
俺も気を引き締めないとな)
そう考え、移動を再開する。
そして、午後の早い時間帯に狩場へと着く。
狩場には、村の猟師達が造った猟師小屋がある。
先ずは、そこへ向かう。
ひと冬越えた猟師小屋は、少々ガタが来ていた。
小屋の状態を確認。
修理箇所を確認するのだった。
猟師の高齢化が進み、冬明けに猟師小屋を確認して回るのはゼパイルとダリルの仕事になっていた。
故に、この度の狩りは猟師小屋の確認作業も兼ねていたのであった。
今度来た時に持って来る補修材の目処を付ける。
応急処置が可能な箇所は補修だ。
意外と時間が掛かり、作業を終えた頃には夕闇が迫っていた。
(今日の狩りは無理だな)
そう考えたダリルは、近場で薪を拾う。
川の水を汲み、小屋に置いてある瓶を洗う。
そして水を汲み入れるのだった。
小屋の中で炊事の支度を始める。
干し肉と漬け物、来る時に採った野草や山菜。
それと黒パンにて調理を始める。
固くボソボソした黒パンはスープに溶かして食べるのが普通。
そうした方が、遥かに旨く食せるからだ。
貧困層の工夫と言うヤツだ。
手早くスープを作り、パンを溶かしてパン粥へ。
野草も良い味を醸し出す。
野草と言っても野菜と同意語の様な物。
春の七草の菘は蕪、蘿蔔は大根の事である。
この様に野草が野菜として扱われる様になったケースは多い。
ダリルが採取した野草も、それに準じた品であった。
作ったパン粥を食し、その日は早めに就寝。
明日は、この狩場にて狩りである。




