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狩り人14

躊躇しているダリルへゼパイルが押し付ける様に武具を渡す。

戸惑いながらも受け取るダリル。

「取り敢えず装備してみな。

 それと、コイツはおまけだ」

羊皮紙をダリルへと渡して来た。

「これは?」

戸惑いながら受け取る。

「ソイツは王都の鍛冶師への紹介状だ。

 店売りの武具の大半は数打ちの粗悪品でな。

 一流の鍛冶師が打った品となると目が飛び出る程に高い物だ。

 だがな。

 鍛冶師から直に買えば驚く程に安く買えるんだ。

 でもな。

 誰にでも売ってくれる訳じゃねぇ。

 少なくとも紹介者が必要でな。

 紹介状も持ってない者は門前払いになるのさ。

 お前もハンターを続けて行く内に、新たな武具が必要になるだろう。

 だから俺と村長の連名での紹介状を渡しておく。

 王都へ行く事があれば、鍛冶屋オリジスへ顔を出すがいい。

 まぁ…

 オリジスのオヤジに認められないと相手にもされんが…

 お前なら大丈夫だろ」

そう告げて、ニパッと笑う。

うん。

凶悪な笑みだ。

子供達が見たら、泣いて逃げ出すだろう。

本人に自覚が無いので質が悪い。

「し、師匠…」

ダリルは感極まった感じで絶句。

ゼパイルはそんな彼を見て、照れ臭そうにソッポを向く。

その後で武具を身に付けてみるダリル。

頭部には額を守る鉢金。

兜は視界を遮るし、頭部を全て覆うと風を感じられなくなるために被らない。

風を感じる。

これは相手に悟られない様にするためには必要な事である。

次に肩当て付き胸当てを着け、具足、手甲の順で身に付けていく。

そして腰に剣を。

背に槍と矢筒を背負う。

左の手甲には脱着可能な小型盾。

最後に肩へ弓を掛ける様に。

立派な若武者の出来上がりである。

この装備に背嚢を背負えば旅に出れるであろう。

「うむ。

 似合っておるぞ」

1人前となった弟子に、感慨一入といった所か。

「ありがとうございます」

照れ臭そうに。

「うむ。

 村長へも礼を告げておく様にな。

 さて…

 俺は今から一狩り行って来る。

 お前は休養であろ。

 ゆるりと休むが良い」

そう告げ立ち上がるゼパイル。

「今からですか?」

昼には間があるが、狩りへ向かうには遅い時間と言える。

「うむ。

 気になる事ができたのでな。

 暫く調査を兼ねた狩りへな。

 暫く留守にすると思う。

 村長へ、その様に伝えてくれ」

そう告げた後で支度を始めた。

「そうですか…

 何かあれば手伝います。

 声を掛けて下さい」

そう告げ、邪魔をしてはとゼパイル宅を後にするのだった。

ゼパイル宅を辞した ダリルは宿へと。

宿屋の朝は開店休業状態。

泊まり客が居ない宿は、そんなものだ。

村人が食堂を利用するのは午後。

いや、夕方近くからだろう。

なので朝は、のんびりしている。

そんな宿屋へとダリルは入って行く。

「お早う」

そう声を掛けて入ったダリルを見た宿屋のオヤジが…

「んっ?

 ダリル坊か。

 完全武装してどうした。

 おめえ、昨日狩りから帰って来たばかりだろうがよぅ」

そう声を投げ掛ける。

「師匠と村長からの皆伝祝いだ。

 で、な」

そう告げ、宿の食堂をチラリと見る。

合点がいったオヤジが頷き食堂を見て溜め息。

「起きて食堂に居るぞ。

 しかしなぁ~

 毎度々、あの程度の酒で、どうしてああなるかねぇ」

呆れて告げるオヤジ。

村長は昨夜は宿に泊まっている。

っと言うか…

酔い潰れて泊まり込んだと言うのが正解。

何時もの事である。

現在は二日酔いにて食堂で唸っている事であろう。

村長は騎士爵として、この地へ奉じられた者。

つまりは地の者では無い。

そのためこの地の者達の様な、異様な酒に対する強さは無い。

無いが…

王都周辺では酒豪で鳴らした事も…

うん。

この村の者達は、自分達の基準で酒に対する強弱を判断しない方が良いであろう。

ダリルは村長へと近寄り告げる。

「また、二日酔いとか言うヤツですか?」

呆れた様に。

「ううぅ。

 ダリルか…

 しかし、お主達は何故ケロッとしておるのじゃ?」

理不尽っと言った感じで告げる。

「いや…

 何故って言われても…

 逆に、何で二日酔いなんてものになるんです?」

心底不思議そうに。

後ろで宿屋一家の娘を除いた全員が、うんうんっと頷いている。

村長、絶句。

「そんな事よりですね」

軽く切り捨てて話始める。

困ったものだ。

「武具と王都鍛冶屋への紹介状、ありがとう御座いました。

 こんなに良い武具…

 本当に良かったんですか?」

告げると。

「ふむ。

 ダリルの報酬額の一部を積み立てて用いておる。

 故に気にせずとも良い」

「ですがこれだけの品は、その程度の額では買えませんよね?」

つい、告げる。

「ほうじゃのぅ。

 じゃが、儂の伝で王都鍛冶屋にて直接購入した品じゃて。

 故に普通より遥かに良い品が安く手には入ったでな。

 気にせずとも良いて」

つまりはだ。

村長の伝を用いなければ手には入らなかった品と言う事だ。

だがダリルは最早何も告げず、深々と首部を垂れるのだった。

そんなダリルを微笑んで見ていた村長が告げる。

「して、ゼパイルはどうしたのじゃ?」

彼もダリルへ渡した品に対して関わっている。

その彼の姿が見えない。

訝しそうに辺りを見回した。

「師匠ですか?

 師匠なら、何やら調査する事があるとかで出掛けましたよ。

 暫くは戻らないそうです」

告げると。

「そうか」

合点した様に頷く村長。

ダリルにはゼパイルが何を調査しに行ったのかは分からない。

ここら辺は経験の差というものであろう。

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