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狩り人10

乾杯した後、村長ファルカ酒へと移行する。

ファルカ芋を醸造した酒でフォボスよりは度数の低い酒である。

それでも醸造酒としては度数が高いのだが…

杯を少々重ねていると料理が運ばれて来た。

小海老と野草、木の実を炒った品だ。

軽く香草と塩で味付けをしてある。

海老は川で捕れた川海老である。

捕れ立ては少々泥臭い。

故に川の清流を引き入れた瓶へと放ち、時間を掛けて泥抜きを行う。

そして泥抜きを終えた海老を、ファルカ酒を加えた水で満ちた壷へ。

程良くファルカ酒が回った小海老。

これを香草や薬草などを浸したフォボスへと。

浸すとビヂビヂと飛び跳ねる小海老。

空かさずフライパンへと。

ファルカ酒とフォボスが回った小海老を木の実と野草共に香ばしく焼き上げる訳だ。

小海老に含まれたファルカ酒とフォボスが、炒めたことにより芳ばしい芳香を漂わせるのである。

小振りの川海老の芳ばしい食感。

複数の木の実のカリカリ、コリコリ、サクッと…

野草の瑞々しい口当たりも良い。

酒が進むと言うもの。

次に出て来たのは川魚を骨ごと叩いて「つみれ」にした物を、香草と魚介の煮汁で煮た物だ。

この煮汁は醗酵調味料である。

少々臭みと癖があるが、調理へ加えると美味い。

ただ造るのには塩が必要な品。

無論、塩は塩湖より持って来た品な訳で…

正式には盗品となる塩を用いている事を知られる訳にはいけない。

故に調味液が村から持ち出される事は無い。

実は他の村にも秘伝の調味液が存在するそうだ。

それを使った料理を味わいたければ、その村へ行くしかないのだが。

ダリルは、この調味液に漬けてから焼き上げた、つみれ団子が大好物である。

「うむ。

 矢張り、この団子は美味いな。

 「つみれ」にした魚の種類により味が違ってくるのも良い」

ご満悦である。

そしてゼパイルだが…

横目で村長とヤムナを見て、さり気なく避けている。

酔った村長がヤムナへ盛大に絡んでのだ。

こうなった時の村長は、非常にウザイ。

何時もはダリルの役回り。

だが今日はダリルの祝いで、彼の奢りでもある。

仕方なくゼパイルは、その役所を引き受けるつもりだったのだが…

上手い具合に生け贄が…

ヤムナ。

ご愁傷様である。

ヤムナは助けて欲しそうにダリルとゼパイルを見るが、シレッとスルーされる。

タダ酒ほど高い物は無い。

身に滲みたヤムナであった。

そんなヤムナを放置し、ゼパイルがダリルへ告げる。

「明日なのだがな」

「はい?」

面倒臭くなる村長を避け、なんとかヤムナへ押し付けた。

ホッとしている所へ師匠から声掛けである。

少しキョトンとしてゼパイルを見る。

「用事が無ければ家へ来い」

その様に。

「はぁ…

 それは構わないですが…

 何かありましたか?」

狩りを終えた帰ったばかりである。

数日は、のんびりと過ごす予定。

別に用事は無いのである。

「お前に渡したい物がある。

 明日の朝にでも来るが良い」

(はて?

 俺に渡したい物って?)

訝しく思っていると…

「お待たせしました。

 野兎の香草焼き、雑穀詰めで御座います」

給仕のオバチャンが持ってくる。

胸が豊かで膨よかな…

腰回りや太腿、顎下も…

実に恰幅が良い宿屋の女将である。

因みに息子が3人、厨房で調理を手伝っている。

そちらはダリルと同い年と年上。

ホールは娘が手伝っているが…

8歳と7歳の少女。

色気と言ったものは皆無である。

「おお!!

 丸々と太った良い野兎だなっ!

 これは美味そうだ!!」

ダリルは香ばしく焼き上げられた野兎に嬉しそうだ。

村周辺部では春となり、草花が芽吹き咽せかえる程。

その自然の息吹きを享受し、動物達も丸々と肥え始めている。

特にこの兎は飢えから解放されて食べたのだろう。

少々肥え過ぎとも言える。

故に動きが鈍り狩られることとなったのだろう。

何事も程々にと言うことだ。

まぁ…

食すダリルにとっては良いことであるが。

ダリルが切り分け各自の皿へと。

実に良い香りである。

更に酒が進む。

そして村長は更に酔う。

故にヤムナは更に絡まれるのだった。

料理も出終え…

「そろそろ、お開きにしますか」

そう告げるダリル。

「うむ、そうだな」

ゼパイルも応じる。

ヤムナが嬉しそうに顔を輝かせ…

「女将さん。

 これで良いかな。

 村長は何時もの様に宜しく」

そう告げ、勘定を済ませるダリル。

「あいよっ!」

にこやかに女将が応じている。

ダリルが支払ったのは小銅貨数枚である。

以前に貨幣価値について触れたが…

コレに物価と言うものが関連してくる。

地方の農村部では飲食に関する物価が非常に安い。

まぁ…

通常は加工品である酒は高いのだが、此処の村では地元醸造であるために地酒は安いのだ。

故に貨幣価値が百倍となる。

赤石貨1円が百円の価値と考えて良いだろう。

小銅貨は百円が1万円相当の価値となる。

逆に家具や武具などは割高となる。

これは都会に行く程に逆転する事になるのだった。

支払いを終えたダリルは…

「では、お先に」

そうヤムナへ。

「えっ!?」

焦るヤムナ。

「では、私も…」

そう告げるが…

ガシッと肩が掴まれ…

恐る恐る振り返るとだ。

「何処へ行こうというのじゃ?

 まだまだ、話は終わってはおらぬぞぇ」

村長が、にこやかに。

ヤムナ、ムンクの叫び状態。

長い夜は、まだまだ続きそうである。

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