ようこそ。atelierへ
昔考えてたオリジナル作品。
徐々に進めようと思います
やぁ。御機嫌よう。
と言っても君と私は一度昔にあっているのだけれど…。
君はまだまだ幼い子供だったのだから覚えているはずもないか。
ならこういうとしよう。
初めまして幼かった君。
おやおや。
そんなに怯えてどうしたんだい?
何も怖がる事はないんだよ。
それならお話を聞かせてあげよう。
それに怖いお話じゃないだろう。
昔々のお話を。
きっと眠れるはずだよ。
かつんこつんと靴音を鳴らして血濡れの男は歩く。
十分な誘い文句だったはずだ。
娘は殺したけれど。
外は雨が降っていた。
雨で汚れた体が流されていく。
そしてそこには何もなかったかのように濡れ鼠の体で歩く男がいた。
この男には目的があった。
確固たる目的が。
傘を忘れて正解だったのに濡れるのは嫌だったらしく。
「直ぐに体を乾かさなくちゃだな。」
男は呟く。
まだ【試作品】が足りなかった。
【人間人形の試作品】が足りなかった。
家に着くと暖炉に火をつけた。
薪がパチパチと小気味のいい音を立てて燃える。
近寄りすぎないように。
そっと揺り椅子に腰をかけた。
「もう少しで完成するんだ。もう少しで彼女が。」
彼の視線の先には女性の姿。
人間そっくりに造り上げた至高の作品。
彼女は誰にも売らないつもりだった。
もちろんこれが成功したら。
彼は人間人形を造るのを辞めるつもりだった。
人間の時間は限られている。
だからこそ急がなければならなかった。
なんとしてでも。
造り上げなければならなかった。
そう簡単に足はつかないだろうけれど。
せめてあと少しだけ時間が欲しかった。
彼が住む国「ルーゼンフルック」は人形作りが盛んで500年以上も昔から人形の国として栄えていた。
ある時、人形の作り手が思いつきで人形に命を与え人形が勝手に動き出すということがあった。
たちまち噂になりその人形の作り手は国王に呼ばれ褒美を受け取った。
彼の書いた本はたちまち売れ他の作り手達の人作りの基礎となっていき人間人形が定着していった。
その後人形と人間の生活は順調なはずだった。
その考えや認識が甘かった。
丁度200年位昔の事。
国で暴動が起きた。
それは予期していなかった事で。
予想外の事だった。
国は暴徒と化した人形達を壊す事を決意。
そして人間人形を作ることを禁じた。
もし作れば斬首刑または幽閉が鉄則とされもし家族がいるならばそれもまた幽閉や斬首刑に処されていた。
時代は流れ。
王政が終焉を迎え。
気がつけば誰も人形に命を与えなくなって。
忘れ去られたそんな時。
彼は…見つけてしまったのだ。
人形に命を与え人間のようにする方法を。
彼の愛した女性が命の灯火を手放したその時に。
この方法を使えば彼女は生きられる。
そんな希望を。
そして彼は作り出した。
寝る間も惜しんで。
絶望したのはほんの1日だった。
何度も彼女を思い出し。
何度も木を削り。
少しでも生きている彼女を再現できるように。
その傍ら彼自身の仕事もこなしていた。
そして。
彼は試作品に、命を与えた。
一人目の幼い顔立ちの彼女には失望を。
二人目と三人目の双子の姉弟には禁断の恋を。
四人目の天使のような彼女には愛を。
五人目の少年には絶望を。
六人目の青年には裏切りを。
七人目の彼女には…もちろん彼女の全てを。
そして彼は。
随分年をとってしまっていた。
「あぁそうだ…やり残した…事…」
彼は最後の彼女に、心を与え忘れた。
彼がパタリと倒れたあと。
彼女はゆっくりと彼に近寄った。
「あなた…起きて…」
もう彼は息をしていなかった。
目を開くこともなかった。
「…わからないわ。あなたは…誰?」
気がつけば彼女は泣いていた。
無表情な彼女はただ涙を流していた。
彼は最後の一体を作って死んだって。
私の知っている限り。
そして私の手元にあるのは彼が残した遺品の人形達。
これから話すのはこの人形達のお話だ。
まぁゆっくりしていってくれ。
紅茶とコーヒーと茶菓子を用意してあげよう。
じゃあ最初は。
一人目の少女の話でも如何かな?