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7/売られた男、森羅の民と出会う

 空が明るくなりつつある頃、俺はリリィと一緒に隠れ家の裏手の川辺にいた。リリィの他にはヴェルメリオと数人の盗賊がいて、川に係留された小型蒸気船のメンテナンスをしている。


「目的地ってリリィの故郷なんだろ。どんなところなのか、ちょっと楽しみだな」


 メンテナンスが完了するまでは出発できないので、雑談をして時間を潰すことにする。昨日のうちにメンテナンスを済ませておけばとっくに出発できていたのだが、盗賊達は会議中の飲酒でアルコールが回っていたので、ほろ酔いのまま器材を扱うわけにもいかず、こうして早朝に手を付けることになったのだ。

 これを聞いたリリィが、また顔を赤くして怒ったのは言うまでもない。

 リリィとピュラリス達の関係は、何だか生真面目な委員長と不真面目な生徒のようだ。俺はとりとめもなくそんなことを思った。


「つまらないところよ。森くらいしかないもの」


 リリィはあっさりそう言った。

 確かに、故郷とは地元民にとってはそういうものだろう。旅行者にとっては魅力的な観光地も、現地に住んでいる人からすれば見慣れた風景に過ぎない。逆に言えば、リリィにとってはつまらなくても、俺にとってはそうではない可能性もある。

 どちらになるかは、現地に着いてからのお楽しみだ。


「おーい、もう手入れ終わったぞー!」


 ヴェルメリオが船の側で手を振っている。俺達は雑談を中断してそちらに向かった。

 小型の外輪船は昨日見たときよりも小奇麗になっていた。どうやらメンテナンスのついでに清掃もしたようだ。


「準備ができたのはいいんだけど。この船、乗れるのは四人くらいよね。私とユージは確定として、後は誰が乗るの? そっちからも誰か乗らないと動かす人がいないんだし」


 リリィの言うとおり、船に乗れるのは四人、詰めても五人といったところだ。船体自体が小さい上、後部に蒸気機関を積み込んでいるので、乗れるスペースが余計に狭くなっている。

 ヴェルメリオは腕を組んで考えながら、川岸に集まった部下達を見渡した。


「あたしが選んでいいのか? んー、そうだな。あたしと後は……ラール! レイズル! お前達だ!」


 呼ばれたのは、盗賊団の中でもひときわ幼い二人だった。

 ラールは髪を伸ばして長めのスカートを着用した、おとなしそうな印象の少女。

 レイズルは髪を短く切ってぶかぶか気味のズボンを履いた、険のある雰囲気の少年。

 髪と肌の色はどちらもピュラリス固有の色、銀髪と褐色肌だ。


「は、はいっ!」

「……分かった」


 二人とも、昨日以前に顔と名前を把握したことがある。ラールは広場の一件とその後でヴェルメリオ達と再会したときに。レイズルは今後の方針の話し合い中に地図を持ってきてくれた子だ。

 今まで気付かなかったが、ラールとレイズルは顔立ちも背格好も非常によく似ている。きっと兄妹か何かなのだろう。どちらが年長なのかは知らないが。


「まだ子供じゃない。大丈夫なの?」

「なぁに、良い経験さ。そろそろ冒険の一つでもさせてやろうと思ってね」

「……あんたがそれでいいっていうなら、私は別に文句は言わないけど」


 と、ラールが遠慮気味にこちらへ近付いてきた。


「あの……」

「……?」

「あ、あのときは、ありがとうございましたっ!」


 ラールは俺とリリィを見上げてから、小さな頭をぺこりと下げた。長い銀髪がさらりと揺れる。


「すぐにお礼したかったんですけど、できなくって……」

「え、えっと、私達はね?」

「カッコ良かったです!」


 無邪気なラールの笑顔に怯むリリィ。複雑な感情を抱く相手であるピュラリスの子供から、感謝と憧れの眼差しで見つめられるというシチュエーションに動揺を隠しきれていないようだ。

 慌てるリリィから助けを求める視線を送られたので、微笑ましい光景で済んでいるうちに助け舟を出すことにする。


「今日はよろしくな、ラール。あの船は乗ったことあるのか?」

「いいえ、わたしも初めてなんです。だからちょっと楽しみで……」

「ラールもそうなのか。実を言うと俺もわくわくしててさ」


 ラールをリリィから離すように誘導する形で、会話をしながら船の方へ歩いていく。リリィもホッとした様子で俺の後をついてきた。


「そら、乗った乗った!」


 ヴェルメリオに急かされて小さな外輪船に乗り込む。

 最前列には誘導役のリリィが座り、リリィの要望で俺もその隣に腰を下ろす。ラールはリリィの後ろで、レイズルは俺の後ろ、ヴェルメリオは船体後部の小型蒸気機関の前に陣取っている。


「んじゃ、ちょっくら行ってくるわ」


 ヴェルメリオは岸に残る盗賊達にひと声かけ、腰に下げた道具入れからライターのような道具を取り出した。ライターとは違って炎が出るノズル状のパーツはなく、燃料が入る部分はただの木製のグリップだ。ライターそのものというよりも、その着火装置だけを取り出した道具のように見える。


「それは?」

「ああ、これか? 火種用の道具だよ。ここを押すとバネ仕掛けで火打石を叩いて、火花をバチッと飛ばすんだ」


 実際にライターのように操作して、火花を飛ばすところを見せてもらう。確かに説明のとおりの道具のようだ。


「普通は焚き火とかに火をつけるための道具なんだが、精霊術師が使えばこのとおり」


 もう一度カチッとスイッチを押し込み、火花を散らせた瞬間、装置の付近で赤い精霊の光が瞬いて炎が燃え上がった。


「ま、元が火花なんで、一度に出せる炎はコブシ大が限度なんだけどな。こいつを幾つか動力部に放り込んでやれば、この船をしばらく動かせるだけの蒸気は出せる。消えかけたらその都度補充だ」


 ヴェルメリオは今しがた出したばかりの火を、動力機関に設けられた投入口らしきところから放り込んだ。比喩ではなく文字通りぽいっと放り込んでいる。火の玉をああいう風に扱えるのかと思ってしまうが、あれは精霊術で生み出された火なのだから、そういうものだと納得するしかない。

 放り込む火の玉が増えるにつれて、船体側面の水車型の推進器の回転も速くなり、船はやがて河の流れの速さにも負けない速度で進み始めた。


「んじゃ、まずは河を逆走だな。近くまで来たら教えろよ」


 ヴェルメリオが船体後部に設置された操舵輪を動かして、進行方向を川上に変更する。

 バラエナ河の流れは予想外に速い。俺も多少は泳げるつもりでいるが、この流れに放り出されたら溺れてしまいそうだ。


「わわっ、すごい水しぶきです!」


 ラールが歓声を上げた。

 外輪船は船の側面か後方に水車型の装置を設け、その回転力で水を掻いて進む仕組みの船だ。いわゆる黒船もこのタイプの蒸気船だったらしい。そんな仕組みなので、航行中は水車部分の回転に合わせて水しぶきが起き続けるのだ。

 それをラールは楽しげに眺めていたが、俺の後ろは至って静か。レイズルは表情ひとつ変えずにどこか遠くを見ていた。


「船は嫌いなのか?」

「別に。好きでも嫌いでもないよ」


 振り返って話し掛けてみたところ、あっさりした反応が返ってきた。

 ラールとレイズル、顔立ちは瓜二つなのに表情ひとつでここまで雰囲気が違うのかと、逆に感心しそうになる。


「そっか」

「そうだよ」


 水しぶきを上げ、船は上流へ。

 風景は牧歌的ともいえる平原からまばらな林に変わり、やがて多種多様な樹木の生い茂る森林へと変わっていく。


「気をつけて。そろそろ連中の縄張りに入るから」


 リリィは俺達にそう告げて、ポシェットから幾つかの精霊筒を取り出し俺に手渡した。濃い緑、薄緑、水色、青みがかった白。ここまでは分かる。それぞれ植物、風、水、氷の精霊筒だ。とするとこの赤銅色は土だろうか。


「そろそろ精霊筒の数も厳しくなってきたから、補充するまで頑張って。ユージは一度に一本使い切っちゃうみたいだから、尚更ね」

「普通は何回か使えるのか?」

「人によるわ。達人は一本で何十回も使いまわすそうだけど。ユージが特別消費が大きいのか、ただ不慣れなだけなのか、ブランクコードはそういうものなのか、その辺はよく分からないかな」


 五色の精霊筒を握り締める。俺が使った精霊筒は、使用後にスリット部分の色が消えて透明な覗き窓と化していた。

 筒の残量が多ければスリットの光も強く、残量がなくなれば光が消えてスリットからは空っぽの筒の内側が見えるだけ。シンプルな構造だがよく出来ている。


「というかさ、シルヴァの嬢ちゃん。ここを縄張りにしてる連中って何者なんだ? それくらいは前もって教えて貰わねぇと困るぜ?」

「それもそうね。この辺りは――」


 リリィがヴェルメリオの疑問に答えようとしたとき、前方で異変が起こる。

 森の一画が急に揺れ動いたかと思うと、大樹の枝が肥大化し、瞬く間に長さを増して、蛇のように鎌首をもたげたのだ。


「リリィ、前!」

「……! ヴェルメリオ、右に逸れて!」

「あいよっ!」


 即座に舵が切られ、船の進路が右に傾いていく。

 その直後、直進を続けていたら通過していたであろう場所を、巨大化した枝が薙ぎ払った。目と鼻の先で枝葉の塊が水面を吹き飛ばす。更に衝撃で横から波が押し寄せ、滝のような水しぶきが降り注ぐ。


「きゃあああっ!」

「うわっ、あああっ!」


 ラールとレイズルが悲鳴を上げる。ヴェルメリオは舌打ちをし、水が吹き飛ぶ音に負けない声を張り上げた。


「今の、樹の精霊術じゃねえか! ここを縄張りにしてる奴って……!」

「そうよ! 私の同族!」


 リリィは濃緑色の光を帯びた精霊筒を起動させ、溢れた光を手の平に集めた。

 光が弾け、手の平に細いツタが絡み合った野球ボール大の球が残る。リリィは振り向きざまにそれを投げ、なおもこちらを襲おうとする大樹の枝に当てた。

 球を構成するツタが一瞬で広がり、枝の一部に絡みつく。ツタは瞬く間に大樹の枝全体へ伸び広がり、大樹の枝をがんじがらめにして動きを止めた。巨大な枝がのたうつ様子は網に捕らえられた大蛇のようだ。


「説明は後でするから!」

「今やれ!」

「……簡潔に話すわよ!」


 リリィは残りの精霊筒を選別しながら答える。


「私達シルヴァは集落単位で森中に散らばってるわ。私はサンダノン郷の出身だから、外ではリリィ・サンダノンと名乗ってるの。それで、あいつらはエベノス郷のシルヴァ達。私達、サンダノンのシルヴァとは考え方が違う連中よ」

「考え方って?」


 今度は俺が疑問を口にする。


「ガウディウム共和国への対応よ。私達サンダノン郷は徹底抗戦。あちらのエベノス郷は敵対放棄。だからこうして邪魔をしてくるわけ! それと皆、左岸注意して!」


 言われたとおり左岸に顔を向ける。川岸を誰かが走っていた。それも船に並走する速度で。いくらこちらが流れに逆らっているとはいえ、異常な速さだ。

 川岸の人影が弓を構える。


「伏せて!」


 直後、一本の矢が放たれる。それは空中で解けるようにして分裂し、十本近い矢となって船に襲い掛かった。矢の群れは半数が外れ、半数が船体に当たり、一本がヴェルメリオに掴み取られた。


「なんだこりゃ……うわっ! うねうね動くぞ!」


 矢のように見えたそれは、細いツタを捩り合わせて鋭い流線型にしたものだった。ご丁寧に羽根の代わりに木の葉がくっついている。

 ツタは先ほどリリィが大樹を封じた球と同じようにうごめき、船体とヴェルメリオの腕に絡み付こうとした。


「ちっ!」


 ヴェルメリオが着火装置の火花を散らす。腕に絡みついたツタは精霊術の炎で瞬く間に焼却された。船体に絡み付こうとするツタは、リリィとレイズルが冷静にナイフで切り捨てていく。

 だが、船体左側面の水車に当たったものには手が出せそうにない。回転し続ける水車に絡んでいるので、下手に腕を伸ばしたら回転に巻き込まれてしまいそうだ。


「ヴェルメリオ! 一旦水車を止めて!」

「バカ言え! そんなことしたら狙い撃ちだぞ!」


 どちらも正論だ。受けるリスクがそれぞれ異なるだけで。

 そうしている間にも、ツタは水車を強く縛り上げて回転を妨げていく。左側の推進力だけが低下させられた結果、右側の推進力が過剰となり、進行方向が左へ歪んでいく。射手がこれを狙って水車に当てたのだとしたら、恐ろしく厄介な相手に違いない。


「こんにゃろ……!」


 ヴェルメリオが舵を切って進行方向を正そうとする。

 しかし一度左に傾いた流れはなかなか元に戻らず、船が垂直に戻った頃には左側の川岸にずいぶん近付いてしまっていた。

 そして、その距離は相手にとって狙い通りだったらしい。

 川岸を走る人影が跳躍する。明らかに人間離れした高度と飛距離。その人物が精霊術を使っていたことは明確だ。


「来るぞ!」


 人影が舳先に着地、その衝撃で船が大きく揺れ――なかった。

 まるで綿毛が舞い落ちるかのような軽やかな着地。降り立つ瞬間に吹き抜けた微風は、風の精霊術で着地をした余波だろうか。


「停船を。サンダノンのリリィ様」


 人影がフードを外す。

 淡い金色の長髪がさらりと風になびく。白い肌と、横向きに尖った形の耳は、彼女がリリィと同族……森羅の民シルヴァであることを如実に示していた。

 大人びた目元はリリィよりも年上なのではと感じさせる。


「カレンドラ・エベノス……。里帰りまで邪魔しないでくれる?」

「里帰りにしてはお連れ様がいささか異様では?」


 俺の後ろでレイズルがナイフを構える。カレンドラと呼ばれた女はそれを意に介する様子もなく、リリィと話し続けている。


「乱暴な足止め、謝罪いたします。しかし、こうでもしなければ停船いただけないと思いまして。このような強行手段は本意ではないのですが」

「よく言うわ。領地全体に非活性呪法まで掛けてるくせに」

「これは常時の備えです。リリィ様のみを対象にしたものではありません」


 そして、カレンドラは俺に視線を移す。


「……おや……? このお方、精霊のお導きを感じません。まさか……」

「ええ、そのまさかよ」

「そうですか……」


 カレンドラはそっと瞼を閉じて、ゆっくりと開いた。


「でしたら、尚の事ご同行願わなければなりません。そこのお方もご一緒に」

「あん? あたし等は無視かよ」


 口を挟んだヴェルメリオに、カレンドラは一瞬だけ横目を向ける。


「里の掟です。火の精霊の加護を受けた方々は、里の入り口よりお入れするわけにはまいりません。そこでお待ち頂くのであれば歓迎いたします。緊急時であれば例外的に便宜もお図りいたしますが、今回はそのような用件ではありませんので」


 表情ひとつ変わらない。ただひたすらに事務的な口調だ。ヴェルメリオはムスッとしたようだったが、それ以上に食い下がることはなかった。

 改めて、カレンドラはリリィに視線を移す。


「リリィ様。これはエベノスの『聖樹様』からの出頭要請です。どうかご同行を」

「……聖樹様直々に?」

「ええ。それが済み次第、改めて皆様をお見送りいたします」


 聖樹様。また知らない言葉だ。しかし、今は疑問を差し挟める雰囲気ではない。


「どうするよ、シルヴァのお嬢さん。要は寄り道するかどうかだろ? それならあたしはどっちでもいいぜ。こいつを追い払うっていうなら、あたしとユージも加わりゃ何とでもなるだろ」

「それは困りますね。本気で戦ったら命を無駄に落とすことになります。主に私が」


 相変わらずの無表情のせいでジョークなのか本気なのか判別がつかない。ヴェルメリオだけはそりゃいいやと大笑いしているが。

 リリィがさり気なく俺の様子を窺ってきた。なので、小さく頷き返す。


「俺なら大丈夫。無視できないくらい偉い人なら、会いに行ったほうがいいと思う」

「ユージ……」


 もしかしたらリリィの考えを分かってくれるかもしれないだろ。とは、無責任すぎて言えなかった。


「……分かったわ。行きましょう」

「ありがとうございます。お連れ様のためにおもてなしの準備をするよう通達をしておきましょう。果物を使ったお菓子もありますよ」


 最後の一言はラールとレイズルに向けられたものだった。

 ラールはお菓子と聞いて子供らしく目を輝かせたが、レイズルは興味なさそうに顔を背けるだけだった。

 俺は見逃さなかった。ラールの笑顔を見た一瞬、カレンドラが優しく微笑んだことを。我ながら単純で呆れてしまうが、カレンドラを悪い奴だとは思えなかった。


「それと、ユージ様、ですね」

「あ、ああ」

「リリィ様がブランクコードをお探しになっていたことは、以前からお聞きしておりました。里の方針は違えど困難を乗り越えた事実、嬉しく思います。あなたのような殿方であればきっとリリィ様も――」

「カレンドラ! 一言も二言も多い!」


 リリィが勢いよく立ち上がった反動で、船が揺れる。


「あら、そうでしたか。下卑た想像をしてしまいました。申し訳ありません」

「下卑……っ! 私とユージは利害一致の同盟関係! それ以上でもそれ以下でもない! はいおしまい!」


 カレンドラが深々と頭を下げる。無表情なので申し訳無さの欠片も感じられない。

 同盟か。なるほど、リリィと自分の関係を一言で言い表せばそうなる。リリィも上手い表現をしたものだ。

 善意ではない。同情でもない。お互いの目的が、どちらも共和国を敵に回すものだからこその関係性。それ故の同盟関係。とてもしっくりくる表現だ。


「ねぇお頭ー。ゲビたって何?」

「んー? イケナイ想像ってことだな。これ以上はラールにはちょっと早いかな。オトナのナワバリだ」

「ヴェルメリオっ!?」


 俺も思わず苦笑を漏らしてしまう。船上に張り詰めていた緊張感が、僅か数分で跡形もなくなってしまった。

 こうやって駄弁っているのは嫌いではないが、目的地はまだまだ先なのだから、余計な時間を使い潰すわけにもいかない。


「えっと、カレンドラさんでしたっけ。聖樹様のところまで案内してもらえますか」

「それはもちろんです。私はそのために使わされたのですから。ではピュラリスの方、船を河岸に寄せてくださいませ」


 カレンドラが腕を横に振ると、左舷の水車に絡みついていたツタがあっという間に縮んで消え失せた。

 船が左へ曲がり、河岸へと近付いていく。

 聖樹様――名前からして普通の存在ではなさそうだ。

 リリィの横顔もどこか緊張しているように見えた――

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