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3/売られた男、真相と出会う

 太陽のヴェルメリオ。

 目の前に現れた銀髪褐色肌の女のことを、リリィはそう呼んだ。しかも名の知られた盗賊だというが、女の態度があまりにもあっけらかんとしていて、彼女が悪党なのだとにわかには信じられなかった。

 もちろん、そんなのは俺の勝手な先入観だ。

 人は見かけによらないというし、そもそもここは異世界。俺が今まで生きていた社会の常識が通じるとは限らない。こちらの世界で生まれ育ったリリィが警戒しているのなら、俺もそれに倣うだけだ。


「ボスコ林道に野暮用があるんだけどさ、この道で合ってるのかちょーっと不安になっちまって。ここまっすぐ行ったらボスコ林道ってことでいいのかな」


 ヴェルメリオが気さくな態度で質問を重ねる。

 俺は横目でリリィに視線を向けた。この世界の地名は、エレメンティアが大陸の名前であることと、俺を売り買いしようとしたガウディウム共和国とフォルミド王国とやらしか知らない。だからヴェルメリオの問いにはリアクションのしようがなく、この場の対応はリリィに頼るしかなかった。


「ええ、この街道をたどって森に入ればボスコ林道よ」


 早口でそう言うと、リリィは俺の肩に手を置いた。


「私達も先を急いでるの。もういいかしら」

「ん、引き止めて悪かったね。助かったよ」


 ヴェルメリオはあっさり俺達の横を通り過ぎ、振り返らずにひらりと手を振った。

 恐らくそれが合図だったのだろう。ヴェルメリオがやって来た方向から、彼女と同じく銀髪と褐色肌の集団が現れ、ばたばたとヴェルメリオの後を追いかけていく。


「待ってくださいよお頭ーっ」

「別にお宝は逃げたりしませんってば」

「なーに言ってんだ野郎ども。今回のお宝は逃げるんだよ。二本の足が生えてんだから」

「ええー、それマジですかー?」


 最後の一言は少女の声だったように聞こえた。見間違いだったかもしれないが、屈強な男達に混ざって年若い少女の姿がちらほらあったような気がした。

 ヴェルメリオ達はそのまま森へ向かうのかと思いきや、途中で進行方向を変えると、俺達が出てきたばかりの店に入っていった。まさか白昼堂々略奪かと思いきや、店から聞こえてきたのは豪快な笑い声だった。


「……あいつら、飲みに来ただけなのか」

「酒場があったから衝動的に立ち寄ったんでしょ。盗賊って奴は行き当たりばったりなんだから」


 リリィは盗賊にやたら辛辣だ。それがこの世界のスタンダードな認識なのだろうか。あるいは……

 何となく思い当たる節があったので、直接リリィに確かめてみることにする。


「なぁ、リリィ。さっきの奴らも元素と精霊のルールに当てはまるんだよな。一体どんな属性なんだ?」

「ピュラリスなんかのことが気になるの?」


 予想的中の気配。リリィはあからさまに不機嫌そうな顔をしている。リリィが嫌っているのは盗賊という職業ではなくあの銀髪褐色の種族そのものなのだろう。


「……火の単元素種族、灼熱の民ピュラリス。私達、森羅の民シルヴァとは相性最悪の種族なのよ。精霊力の相性も悪いけど、それ以上にガサツで力任せで暴力的で……あいつらの炎で燃やされた森がいくつあることか」


 説明というよりも恨み辛みの吐露だった。

 植物寄りの種族に対し火の種族。なるほど確かに相性は悪そうだ。しかしヴェルメリオの気さくな態度を見る限り、嫌悪の感情は森羅の民シルヴァから赤熱の民ピュラリスへの一方通行のようだ。

 リリィには悪いが、今のところピュラリスへの嫌悪感には共感できない。そこは余所者なので仕方がないと諦めてもらいたいところだ。


「ふぅん、色んな奴らがいるんだなぁ」

 

 森羅の民シルヴァ。岩塊の民ペトラス。灼熱の民ピュラリス。酒場で見かけた額に小さな角が生えた種族や鱗肌の種族もいる。これでもまだ、エレメンティア大陸に住む種族のほんの一部に違いない。

 それにしても、何々の民というお決まりの言い回しがあるのは有難かった。

 単にシルヴァだのピュラリスだのと教えられても、俺にとっては未知の外国語に過ぎないので、暗記するだけでも一苦労だ。その点、森羅の民と言われれば森や植物のイメージと結びつくし、岩塊の民や灼熱の民はもっとシンプルで理解しやすい。


「それはともかく」


 リリィが軽く咳払いをして、脱線しかけた話題を元に戻そうとする。


「私がユージを助けた理由、ちゃんと説明し直さないとね。ついて来て」


 俺はリリィに言われるがまま、未舗装ながらしっかり踏み固められた街道を外れ、木々が鬱蒼と生い茂る道無き道へ踏み込んだ。

 硬い低木の枝が容赦なく足に当たる。頑丈なジーンズを履いていて助かった。柔らかい素材のズボンや素肌だったらマトモに歩くことすらままならなかっただろう。バイトのときはジーンズが良いと勧めてくれた先輩に感謝しなければ。


「ところでさ。ユージはテラ・マーテルに……元の世界に戻れるとしたら、やっぱり帰りたい?」

「そりゃあ、正直に言えばそうだけど」

「だよね。変なコト聞いてごめんなさい」

「……?」

「……」


 唐突に問いかけてきたと思ったら、それきり黙り込まれてしまった。リリィの質問の意図を考えながら、大自然の障害物にもめげずに歩き続けていると、不意に視界が開け、眩い光が軽く目を眩ませた。


「……凄いな」


 俺の視界に飛び込んできたのは、巨大な湖だった。

 水面が太陽光を反射して爛々と輝いている。対岸は遥かに遠く、水平線上には影も形も見当たらない。潮の匂いがしなかったので辛うじて湖だと分かったが、それがなければ海と見間違えてしまいそうな大きさだ。


「うーん、ここからだとよく見えないわね。もう少し高いところに行きましょう。ちょっと待っててね。もう『使える』はずだから」

「高いところ? 木に登るのか?」

「そんな感じかな」


 リリィはすぐ近くにあった大木の幹に手を触れさせた。指先から淡い緑色の光が溢れたかと思うと、大木の樹体の隅々まで染み込むように広がっていく。

 その直後のことだった。一番葉振りのいい太枝がミシミシと音を立てて伸び、リリィの目の前に垂れ下がった。


「木が動いた……。それも精霊術なのか……」

「まぁね。ほら、乗って。上まで運んでもらうから」


 お手本とばかりに、リリィは身軽な動きで枝に飛び乗った。俺も後に続いて太枝によじ登る。青々とした葉を茂らせた枝は、俺とリリィの重みをしっかり支えながら、ゆっくりと元の高さまで戻っていく。

 うっかり転落しないように、一番太い枝を握り締める。

 大木の枝とはいえ足場としては心許ないことこの上ない。体重をかけたら簡単に曲がってしまうし、下手をしたら折れてしまいそうだ。

 へっぴり腰の俺のすぐ隣で、リリィは一番太い枝の上に堂々と立ち、手を額にかざして遠くを眺めていた。


「お、おい……よく立ってられるな」

「慣れよ、慣れ。それより、あれ見える? 湖の真ん中に島があるでしょ。建物も見えるかな」

「島? ああ、見える見える。建物っていうと――って、あれは――!」


 絶句した。

 深い森に囲まれた巨大な湖に浮かぶ島。

 文明の手など及んでいないと思われたその島に、長方形の無機質な建造物がみっしりと立ち並んでいる。

 ……いや、この際遠回しな表現は止めよう。

 

 あの島には、近代的なビルディングが幾つもそびえ立っていた。


 本当に信じられない。ここが異世界だと教えられてから、見慣れた町並みには当分出会えないとばかり思っていた。

 ところが、アレは何だ。

 カラフルな看板や、蛍光灯とかネオンといった灯りがなく、全体的に廃墟じみたモノクロの雰囲気こそ放ってはいるが、紛れもなく俺の世界の建物だ。


「どうしてこんな場所にビルなんか……」

「やっぱりユージにも見覚えがあるのね。けど、あそこに住んでるのはテラ・マーテルの人間じゃないわ」


 ビル群を睨むリリィの眼差しには、明確な怒りが込められていた。


「エレメンティアの鉱山には『鉱床の民ゲノムス』という種族がいるの。ゲノムスは金属の精霊に愛されていて、鍛冶の技術ではどの種族にも負けない才能があるけど、金属と岩に囲まれた土地を好んで、滅多に鉱山から出てこない――そのはずだった」

「はずだった?」


 リリィは頷き、更に語り続ける。


「十年以上前だったかな。ゲノムス達があなたの世界(テラ・マーテル)から来た商人と取引を始めたのよ。その過程で、彼らはテラ・マーテルの知識も手に入れた……例えば砕いた岩と砂を糊で混ぜ固めた材料と、鉄の骨組みを組み合わせた建物の作り方とかね。ゲノムスにとっては、故郷ほどじゃないけれど岩や金属に囲まれた住みやすい住居だったみたい」


 つまり鉄筋コンクリート製の建物のことだ。

 大昔のローマ帝国では古代コンクリートという素材で建物が造られていたと聞いたことがある。その時代の人間ですらコンクリートを使いこなしていたのだから、精霊術とやらを駆使すれば、鉄筋コンクリートの建物くらい建てられても不思議ではない。


「だから、なのかな。鉱山の外に住処を広げようっていう考えが生まれて、ゲノムス達の進出が始まった……」

「……リリィ?」


 リリィの声は涙ぐんでいるようにも、怒りを堪えているようにも聞こえた。俺はつい不安になって、太枝に立つリリィの顔を見上げた。リリィは泣いてはいなかった。涙こそ流してはいなかったが……とても辛そうな顔をしていた。

 視線の先には鉱床の民が造ったというビルディングの森。いや、それに隠されて見えない何か眺めているようだった。


「そこから後はもう酷い有様ね。他の種族に服従を迫って、拒絶したらその種族の住処を襲って、あの建物を大量に建てて自分達の土地にしてしまった……あの島だって、そう。今は何も残ってないけれど、昔は私達にとって神聖な森があったのよ」


 俺の視界に映っている島には、森どころか林すら見当たらない。島が占領されたときに一本残らず伐採されてしまったのだろうか。


「……そっか。リリィは、あの島を取り返したいんだな」

「島を取り戻したら、森だって元通りにしてみせるわ」


 強がりなどではなく、リリィは本当にそう考えている。少なくとも俺はそう感じた。


「ゲノムスにはテラ・マーテルの商人の後ろ盾がある。ブランクコードも何人かあちらの味方についてるみたい。ブランクコードに対抗する一番確実な手段は、同じブランクコードの力で挑むこと。だから……」

「だから、俺が欲しいなんて言い出した。そういうことか?」


 リリィは大きく首を縦に振った。


「ユージの力は私達にとって必要なものだから。それと、ガウディウムにちょっとでも打撃を与えられるかなと思って、少し無茶しちゃった」


 可愛らしさを強調した声色だが、実際にやったのは輸送中の馬車の襲撃だ。助けてくれた恩人という事実を棚上げして言わせてもらえば、商品を運んでいるトラックを襲撃して積み荷を奪い去ったようなものである。

 俺がリリィに抱いている感謝の念は紛れもなく本物だが、逆立ちしても可愛く表現できる行為ではなかったと思う。


「ガウディウム共和国だっけ。確か、俺をどっか別の国に売ろうとしてた国だよな」

「ええ。ゲノムス達が興した国でもあるわね。後ろ盾になってるテラ・マーテルの商人からユージを買って、配下のフォルミド王国に大金で売りつける計画だったみたい」

「なるほどね。どいつもこいつも俺をモノみたいに扱いやがって……ん、待てよ……?」


 頭の中で幾つもの情報が繋ぎ合わさり、一本の線になろうとする。

 しかしそれが完了するよりも早く、リリィが太枝の上でしゃがみ込んで、俺と視線を合わせてきた。


「ごめん、ユージ。私、これからズルいこと言うね」


 線の細い片手が自嘲の笑みを隠す。


「ゲノムス達を援助してガウディウム共和国を興させた、テラ・マーテルの商人はね――テンガイジ・コーポレーションと名乗ってるのよ」

「天蓋寺!? やっぱり、そうだったのか……!」


 全てが一本の線に繋がった。

 天蓋寺コーポレーションは何年も前からこの世界で商売をしていたのだ。天蓋寺晴彦はその事実を俺に知られたと思い込んで、口封じのために、こちらの世界で深い関わりがあるガウディウム共和国に俺を売り飛ばした。ガウディウム共和国は俺をフォルミド王国へ転売しようとしたが、そこにリリィが現れて俺を強奪――もとい助けてくれて今に至るというわけだ。


「テンガイジは私にとって敵も同然。ユージにとっては災難の元凶。しかも、この世界とテラ・マーテルを行き来する手段はテンガイジが独占している……それを踏まえた上で、卑怯なお願いをさせて」


 リリィの目線が僅かにずれる。それは罪悪感の現れなのか。


「私と一緒にガウディウム戦って欲しいの。そうすればテンガイジに復讐もできる。元の世界に帰る手段だって手に入れられる! だから……!」

「そんな顔、するなよ。頼むからさ」


 リリィは今にも泣き出しそうだった。

 何がズルいものか。何が卑怯なものか。天蓋寺コーポレーションとガウディウムの繋がりや、元の世界に戻る手段のことを教えれば要求を受け入れざるをえない――そんな考えをズルいと、卑怯だと思っているのだろうか。

 だとしたら、とんだ見当違いだ。


「俺は天蓋寺の野郎にやり返したいし、元の世界にも戻りたい。だけどそれと同じくらい、助けてくれたお礼がしたいと思ってる」

「ユージ……?」

「だからさ、こっちから頼みたいくらいってこと! 仕返しも帰り道探しも恩返しもできて一石三鳥なんだから、断る理由なんてあるわけないだろ」


 どれも俺一人ではできないことばかり。右も左も分からないこの世界では、どれか一つを達成することすら無理だろう。それどころか、数日と持たずに野垂れ死にする未来しか想像できない。

 だけど、リリィが手伝ってくれるならやり遂げられる。そんな予感がしていた。


「……ゆ、ユージぃ!」

「うわっ!」


 リリィが物凄い勢いで飛びついてきた。

 その衝撃で、足場にしている枝が激しく揺れ、危うくズレ落ちそうになってしまう。

 俺も真っ当な青少年であるわけで、普段ならこういうシチュエーションは素直に嬉しいはずなのだが、今回ばかりはドッと冷や汗が溢れ出す。転落死の危機というリアル過ぎる脅威の前に、リリィの身体のどこかが俺の身体のどこかに当たっている、なんて下世話な思考など入り込む余地すらなかった。


「危っ、お、落ちる! 落ちるから! 頼むから落ち着け!」


 ゲノムス達に奪われたという聖地の島は、リリィにとってとても大事なものだったのだろう。だからこそ、ブランクコードが――あえて『俺が』とは言わない――協力してくれることをこんなにも喜び、我を忘れてしまっているのだ。

 とはいえ、せめてそのブランクコードが転落死の恐怖と戦っていることくらいは自覚して欲しかった。本当に死ぬかと思ったので。




    ― ― ―




「ごめんなさい、ちょっと取り乱した……」

「え、今ちょっとって言った?」

「……かなり取り乱しました、はい」


 ようやく落ち着きを取り戻したリリィに頼み、地上へ下ろしてもらう。

 枝が地面まで伸びていく光景はなかなか興味深いが、枝の上に乗ったまま体感するのは少々怖かった。正直に言うと、枝が傾いた拍子に滑り落ちてしまわないか不安でしょうがなかったが、それも杞憂に終わり無事地表に戻ることができた。

 やはり、不安定な足場よりもしっかりした地面に立っている方が安心できる。


「ああ、恥ずかしい……」


 リリィが俺から顔を背ける。

 知り合ったばかりだが、リリィという少女の性格が何となく分かってきた。普段はテキパキ動くしっかり者なのに、感情が大きく揺れ動くと自制が効かなくなる。リリィはそういうタイプのようだ。

 しかも冷静になってから暴走中のことを思い返してヘコむオマケ付き。


「ねぇ、ユージ。本当に協力してくれるの?」

「当たり前だろ」


 これから先、この約束のためにどんなことが起こるのかは分からない。

 ひょっとしたら、ゲノムスやガウディウム共和国に喧嘩を売ったことで、とんでもない結果が訪れる可能性もある。厳しい茨の道が待っているかもしれない。それでも、リリィと約束を交わすことに後悔はなかった。

 誘いを断って、一人きりで異世界を生き残る苦行の道を選ぶか。

 リリィの手を取って、先は見えなくとも希望のある道を選ぶか。

 もしも前者を選ぶ奴がいるのなら、小一時間ほど問い詰めて、血迷った理由を聞き出したいくらいだ。


「本当にありがとう。それじゃあ……これからよろしくね」


 そう言って、リリィは左手で拳を作って俺の方へ突き出してきた。

 この世界のことはまだよく分からないが、この仕草の意味は何となく理解できる。俺は同じように左の拳を握り、リリィの拳と軽く突き合わせた。

 リリィが満面の笑みを浮かべる。

 それを見た瞬間、今更ながら気恥ずかしさに襲われて、つい背中を向けてしまった。


「で、これからどうしたらいいんだ?」

「んー……私の仲間にも会ってもらいたいけど、まずはあの人と会っておいたほうがいいかな」

「あの人?」

「私達に協力してくれてる人で、テラ・マーテルの……」


 そのとき、森の奥で小さな破裂音がしたかと思うと、オレンジ色の光が空中で瞬いた。青空の色とオレンジ色は補色の関係にあるためか、光の色がよく目立っている。


「? なんだ、今の」

「……! まずいわね……」


 リリィは俺の腕を掴んで走り出した。

 突然の行動に驚きながらも、引っ張られるままに駆け足でついていく。


「ガウディウム共和国の信号弾よ。多分、ユージを運んでいたペトラスに向けた信号だと思う。反応がなかったら怪しまれるわね」

「それってつまり……ヤバいんじゃないか?」

「ユージが逃げ出したことくらいは気づかれるかも。今のうちに安全な場所まで移動しましょう。一番近い拠点は森の外だから、そこまで走るわよ」


 信号弾が放たれても、受け取るべき岩人間はリリィの仲間達に捕まっている。当然、信号弾を放った相手は馬車に異変があったことを悟るだろう。リリィの言うとおり、商品が逃げたことくらい想定するはずだ。


「あの信号弾は精霊術の産物だから、しばらく消えたりしないわ。消える頃にはガウディウム共和国かフォルミド王国のどちらかの兵が動くかも……」

「縁起でもないっ……!」


 前途多難なのは覚悟していたつもりだが、まさかこんなに早いとは。

 これから先に待ち受ける苦難の予想を上方修正させながら、リリィと並んで森の外へと走り続けた。

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