10/売られた男、白檀の郷と出会う
バラエナ河を小さな外輪船が遡り続けている。出発時点では三人と子供二人が乗り込んでやや手狭だった船上に、今は更に一人が加わって余計に窮屈になっていた。
「さっきも言ったけどさぁ。本当にコイツ連れてくのかよ」
「当然でしょ。あちらの情報を持ってるかもしれないんだから。正式な処遇は、里に着いてから郷長と話し合って決めるけどね」
あまりの狭さにヴェルメリオが不平を漏らし、リリィがそれを諌める。ラールとレイズルも、口にこそ出していないが窮屈さに参っているようだ。かく言う俺も一歩間違えば船から落ちそうで冷や冷やしているのだが。
この狭さの原因は、船の中央で膝を抱える有馬鈴蘭の存在だ。
俺は隣に座るリリィに身を寄せ、小声で話し掛けた。
「なぁ、リリィ。有馬もサンダノン郷ってところに連れて行って大丈夫なのか?」
「……懸念が無いわけじゃないけど。連中は彼女を切り捨てたみたいだし、ブランクコードは一人でも多く味方に付けたいから……場合によっては、傭兵として雇うことも考えてるわ」
リリィ達に船で迎えに来てもらった後で聞いた話なのだが、俺と鈴蘭がバラエナ河に落ちた直後に、ジョーカルは鈴蘭を見捨てて立ち去ってしまったそうだ。そのときは自分達を油断させる演技だと考えたそうだが、実際に鈴蘭の意気消沈っぷりを見て、本当に切り捨てられたのだと感じたらしい。
解せない話ではある。リリィはブランクコードを貴重な戦力と考えているが、共和国はそれをあっさり捨てている。単なる価値観の違いか、それとも一人失った程度では痛くも痒くもないということか。
「…………」
俺は首だけを曲げて後ろを見た。船上はすし詰め状態なので、体ごと振り返ったりはできなかった。
鈴蘭は膝を抱え、黒い髪を無造作に垂らして俯いている。
戦いが終わり、リリィ達が迎えに来るまでの間に、俺はほんの少しだが鈴蘭から話を聞き出すことができた。話自体は、時系列が飛んでいたり脈絡が無かったりとにかく理解しづらかったが、要旨を纏めるとこういう内容になった。
曰く、有馬鈴蘭はあちらの世界で充実した生活を送れていなかったらしい。
周囲の人間とは没交渉。いわゆる虐めの一環として無視されていたわけではなく、人並みのコミュニケーションを取ることができず、自然と孤立していたようだ。本人はそれを周囲の無理解だと主張していたが。
誰にも認められない。誰にも理解されない。第三者視点で言えば責任転嫁でも、本人にとっては強烈なストレスだったことは想像に難くない。
ともかく、有馬鈴蘭は鬱憤と鬱屈に沈んでいた。
そこに現れたのが天蓋寺コーポレーションだった。
――君には知られていない才能がある。
――君のことを認めてくれる世界がある。
――君は特別な存在でいられる。向こうの世界にさえ行けば。
一体どうやって彼女のことを調べたのかは分からないが、奴らは甘い言葉で鈴蘭を勧誘し、この世界……エレメンティアに連れてきた。
以降は、自由に依頼を受ける傭兵という建前で、天蓋寺の戦力として働かされていたらしい。本人はフリーの傭兵であると強調していたが、話を聞く限りでは天蓋寺の思うまま動かされていただけにしか思えなかった。
エレメンティアでの活動は、天蓋寺側の思惑はどうあれ、鈴蘭自身にとっては充実した日々だったらしい。元の世界の人間にも、エレメンティアの人間にもない力を使い、特別な存在として人々の注目を集めている自分こそが、本来の自分なのだと――
あの戦いは、俺にとっては掛かる火の粉を全力で振り払った結果なのだが、鈴蘭にとっては己の存在意義を揺るがす大事件だったということだ。とにかく傍迷惑な話ではあるものの、あんなに落ち込まれたら悪いことをした気分になってしまう。
「……有馬、お前はこれからどうするつもりなんだ?」
「…………」
長い間が空く。
無視を決め込まれたかと諦めかけたとき、鈴蘭はぽつりぽつりと喋り始めた。
「……どうにも、できないよ。やっぱりボクは駄目なんだ……ジョーカルもボクなんか必要じゃなくなったんだ……」
「こいつは重症だな……」
感情の起伏が激しいなんてレベルではない。
船の縁と鈴蘭の間で狭そうにしているラールも、どこか痛ましそうな表情で鈴蘭を見つめている。一方、レイズルは鈴蘭への警戒心を隠そうともしていない。
「ああ、もう!」
リリィが苛立ちを露わに身を捩り、狭い船上で強引に鈴蘭と向かい合った。
「あなたの見聞きしたことも! あなたのブランクコードの力も! 私にとっては必要! これでいい!? いいならウジウジしないで!」
発言した当人は、あまりの後ろ向き加減に嫌気が差して口走ってしまったのだろう。
だが、必要という一言を聞いた途端、今まで絶望的なまでに沈み込んでいた鈴蘭の表情に光が差した。
「本当!? ボクが必要?」
「な、何よ急に……ちょっと、狭いんだから寄らないで! 落ちるから!」
にわかに騒がしくなった船を眺めながら、ヴェルメリオがやれやれと肩を竦める。
「シルヴァのお嬢さんよぉ。その女、かーなーり、めんどくさい種類の女だぜ。気に入られるにゃ覚悟がいるが……こりゃ手遅れみてぇだな。気の毒に」
「分かってたなら最初に言いなさいよ! こら、くっつくな!」
「ボクに任せてくれたら安心だから。ね?」
「いきなり幸先不安よ!」
揺れ動き、傾く船。
俺はただ遠くを眺めながら、目的地に付く前に船がひっくり返らないことだけを祈り続けていた。
― ― ―
結局、予定していた場所に接岸した頃には、既に空が茜色に染まりかけていた。
エベノスへの強制寄り道やジョーカルと鈴蘭の一件があり、時間は大幅にずれこんでしまったが、トラブルの大きさを考えれば夜になる前に着いただけでも運が良かったと思うべきだろう。
「さ、急ぎましょう。森の中で夜になったら最悪よ」
リリィに先導され森に踏み込む。
接岸地点も進行ルートも、素人目には森の他の場所と区別がつかないが、リリィは躊躇いなく接岸を指示したり、道無き道を真っ先に進んでいる。
「ボク、こういうのは、柄じゃないっていうか……」
「つべこべ言わず歩く! 俺だって森なんか歩き慣れてないんだから……」
俺と鈴蘭が慣れない森の足場に苦戦し、ラールとレイズルが疲労に息を切らす。その間にも日は刻々と暮れ、空にまばらな星が瞬き始める。元の世界の感覚で言えば、あと一時間と経たずに真っ暗になってしまうだろう。
「こりゃまずいな。おい、シルヴァの嬢ちゃん! まだ着かねぇのか」
最後尾に付いてラールとレイズルを励ましていたヴェルメリオだったが、一向に到着しないことに痺れを切らしたのか、先頭のリリィに向けて声を張り上げた。
「もう少しよ。それに、もう光蟲の棲息域だから、灯りも心配ないわ」
「ヒカリムシだぁ?」
空から赤みが消え、夕焼け空が夜空へと表情を変える。それと前後して、俺達の向かう先に光の球がぼうっと浮かび上がった。まるでホタルの光を何百倍にも増幅させたかのようだ。
しかも、光の球は一つや二つではなかった。森のそこかしこ、それこそ俺の足元にも光が灯り、森の地表付近をくまなく照らし上げていく。辺り一帯が光の川に沈んだと錯覚しそうなくらいだ。
「わぁ……!」
ラールが感嘆の息を漏らす。
俺も声は出さなかったが、予想だにしなかった光景に目を奪われていた。ヴェルメリオとレイズルも俺と同じように辺りを見渡し、鈴蘭に至っては面白いくらいに目を丸くしていた。
「光蟲。こうやって集団で輝いて、捕食者の目を眩ませながら番を探すそうよ」
唯一リリィだけがいつもどおりだった。やはり、観光客を惹き付ける魅力的な場所も現地の人にとっては退屈なだけ、という例の法則が発動しているらしい。
「ここまで来たら里の警戒網に引っかかってるはずだから、ひょっとしたら里に着くより迎えが来る方が先かもね」
そう言った直後、一羽の小鳥がゆっくり飛んできて、リリィの肩に止まった。カワセミやインコのような緑色の鳥だ。
「ほら、もう来た」
「? どういうことだ?」
リリィの発言の意味を掴みかねる俺の横で、レイズルがあっと声を上げた。
「あの鳥、鳥じゃない」
「鳥が鳥じゃないって……あっ」
レイズルに続いて俺も気が付く。リリィの肩に乗っているのは生きた鳥ではなく、植物のツタと枝葉で組み上げられた代物だった。翼は数枚の葉が折り重なり、それらしい形の枝が足になっている。一瞥しただけでは本物と区別がつかないほどに精巧だ。
しかし、もっとも驚くべきなのは、偽物に過ぎないはずのそれが本物同然に空中を飛んでいたことだ。これも精霊術の作用なのだろうか。
「見てのとおり、連絡用の道具よ。最近は作れる数が少なくなってきてるけど……」
リリィは鳥の足に結ばれていた手紙を取り、一通り目を通した後で、手紙の一部をちぎり取って足に結び直し、再び夜空に放った。きっと、手紙をちぎる場所によって返答を表現する仕組みになっているのだろう。
「もう少し頑張って。里の外まで出迎えてくれるそうだから」
疲れ果てたラールとレイズルを励ましながら、リリィは再び森の奥へ向かって歩き出した。
― ― ―
それからしばらく歩いた後、俺達は開けた土地に辿り着いた。
出迎えてくれたシルヴァの人とリリィが言うのは、ここがサンダノン郷の入り口にあたるそうだ。族長への挨拶は夜が明けてからでも構わないということで、俺達は一番近い建物へ案内され、ここで旅の疲れを癒やすように提案された。
特に山場もなく、いまいち締まらない話だが、これが俺達がサンダノン郷に到着した直後の経緯ということになるらしい。
……どうして全ての表現が曖昧なのかというと、その辺りには光蟲がおらず真っ暗だった上に、到着してすぐ寝床へ案内されたので里の様子を直接目にする機会がなく、しかもその建物がエベノス郷で見た樹館ではなく至って普通の木造建築だったからだ。
要するに『ここがサンダノン郷だという実感』を得られていなかったのだ。
「本当に到着したんだよな、俺達」
建物の入口近くにもたれかかって、誰へともなく呟く。
空は壮大な星空で、冷たい夜風に土と木々の薫りが混ざっている。
「まさか、狐に化かされてるわけじゃないよなぁ」
「はははっ。どうしてそこでキツネが出るんだ」
俺の独り言に割って入ってきたのはヴェルメリオだった。入浴……というより湯浴みを終えてきたばかりらしく、いつもは後頭部で纏めている銀髪を解いていて、肩に掛かる程度のセミロングになっている。
「いや、俺の故郷の言い回しだよ。狐は妖術が使えて人間を騙すっていう言い伝えがあってさ。よく分からないことや、納得のいかないことが起こったときに、狐の仕業ってことにしちゃうんだ」
「なるほどねぇ。あたしの故郷にも似たような言い方があるけど、他所じゃキツネが損な役回りってことか」
ヴェルメリオは俺の横に立って同じように壁にもたれると、小さなバスケットを渡してきた。確か、ラールがいつの間にか手にしていて、ずっと大事に持ち歩いていたものだ。出発した時点ではバスケットなんて持っていなかったはずなので、エベノス郷で貰ったものなのだろう、と思っていた。
蓋を開けてみると、甘い匂いがふわりと鼻をくすぐった。
「エベノスで貰った菓子の余りだそうだ。後でお前さんと嬢ちゃんにもあげたいと言ったら箱ごとくれたんだとさ。三日は持つとか言ってたけど、早いうちに食っとけ」
お菓子に関するボキャブラリーは多い方ではないが、あえて表現するなら、果物のジャムとドライフルーツを思う存分盛り合わせたクッキーみたいなお菓子だ。見た目だけで、甘さと美味しさが頭に伝わってくる。
俺とリリィがエベノス郷を訪れている間、ヴェルメリオとラール、レイズルは里の外で待たされていた。カレンドラはお菓子も出すと言っていたが、まさかここまで手の込んだ品を用意してくれていたとは。
「嬢ちゃんにはもう渡してあるから、残りは全部ユージの分だ。……ま、もう一人のブランクコードに見つかって、思いっきりねだられたんでひとつ渡しちまったけど。同郷の好で許してやれ」
「はは……あいつ神経が細いんだか太いんだか」
あんな性格でも女の子であることに変わりはないので、ひょっとしたら甘味に飢えていたのかもしれない。ヴェルメリオの要望どおり最大限好意的な解釈をしながら、俺も一つ口に運ぶ。
自然な甘みと程よい酸味が口の中に広がる。食べたことのない果物だが、味は苺に似ている。特にジャムの部分はイチゴジャムにそっくりだ。ドライフルーツは噛んだ瞬間こそ弾力を感じたが、すぐに噛みきれて濃縮された甘みを放出する。クッキーには余計な味がついておらず、甘酸っぱさにサクサクした食感を添えていた。
ストレートに言えば、とても美味しかった。動きまわり歩きまわって疲れきった体に、お菓子の甘さがじんわりと沁み込んでくる。
感想を述べる前にもう一つ放り込む。
「……凄いな」
美味しいを通り越して凄い。それが率直な感想だった。
「だろ? あたしも最初に食べたときはビックリしたね」
バスケットにはまだ何個かお菓子が残っているが、もう蓋を閉めてしまう。ここで全部食べてしまうのはもったいない気がしたので、また明日以降に残しておくことにした。
「で、話は戻るんだが。あんた、ここが本当にサンダノンかどうか疑ってるのか?」
「そこから聞かれてたのか。疑ってるっていうか、実感が無いんだよ」
独り言を予想外に長く聞かれていた。何だか気恥ずかしくなる。
「エベノスに行ったときはでかい生垣が集落を囲んでただろ? 家も樹の中に作られてたし、その辺りに置いてある道具も植物をそのまま利用したようなものだった。けど、ここでは生垣の城壁もなかったし、家も道具も普通のものばかりだ」
「なるほどねぇ。この集落はあっちと暮らし方が違うってわけじゃないのか?」
「確かに、エベノスは保守的で家も昔ながらだってリリィも言ってたけど。樹館はこっちの里にもあるみたいなんだ。そりゃ、この家は来賓用っていう可能性もあるけどさ」
「へぇ、よく気が付くもんだ。あたしは一息つけた安心で何にも考えちゃなかったよ」
俺も本気で疑っているわけではない。あくまでここがサンダノン郷だという実感が持てないというだけの話だ。ヴェルメリオにもそれは伝わっているらしく、これ以上根掘り葉掘り理由を聞いては来なかった。
結局は朝になれば分かる程度の疑問でしかない。今夜はゆっくり疲れを取った方がいいだろう。
「そうだ、言い忘れてた。もう水浴び場が空いてたと思うから、ユージも浴びてきちまえ。汗かいてんだろ」
「ならお言葉に甘えて」
「直接火で沸かしちゃ駄目で、焼いた石で温めたお湯を使えだとさ。ずっと火をつけてると、火事になりかねないからとかなんとか。この炎嫌い、間違いなくシルヴァの村だよ、こりゃ」
「あはは……」
一旦、バスケットを置いておくために屋内へ戻る。
この建物は、本当に宿泊のためだけに用意されているようで、リビングルームのような部屋はなく、大部屋に簡素な寝台が幾つも並べられている。俺は自分に割り当てられた寝台――他の寝台から少し離した場所にしてもらった――にバスケットを置いた。
引き返す直前、鈴蘭が眠っている寝台に視線を向ける。
今日戦ったばかりの相手と一緒の部屋だというのに、鈴蘭はすやすやと平和に寝息を立てていた。
思わず呆れそうになってしまうが、天蓋寺の意図はともかく、鈴蘭自身は傭兵として暮らしているつもりだったのだから、俺達に対して特に敵意がないのも当然かもしれない。雇い主を変えようとか考えている可能性もある。
明日になったら、改めてもう一度鈴蘭と話してみる必要がありそうだ。
「さて、と」
一通り準備を済ませ、建物の裏手にある水浴び場へ向かう。建物を回りこんで水浴び場を視界に収めたところで、意識がフリーズした。
湯桶でお湯を汲み取って頭から浴びる小さな姿。濡れた銀髪。褐色の肌。
俺は殆ど条件反射でその場を離れ、建物の影に隠れていた。
「ヴェルメリオの奴……危うく犯罪者になるところだったじゃねぇか……」
今の一瞬で疲労が倍増したような気さえした。まさかラールが湯浴みの真っ最中だったとは予想もしていなかった。ラールのような幼い子への興味関心は断じてないが、覗きの濡れ衣だけは断固として御免だ。
ぶつぶつと文句を言いながら建物に戻る。ヴェルメリオに苦情の一つでもぶつけてやろうかと思ったが、当の本人は既にさっきの場所から姿を消していた。
「うーん、どうやって時間を潰したものか」
建物の入口付近で腕を組んで考えていると、奥の方から可愛らしい欠伸と足音が近付いてきた。
「ふわぁ……あれ、ユージさん……?」
「え、ラール? 中にいたのか?」
「うん……のどかわいたから、お水のみたくて起きちゃいました」
そう言って、ラールは水瓶のところまで歩いていき、こくこくと喉を潤して寝台へ戻っていった。
「ラールがいるってことは、さっきのはレイズルか」
納得と安心が一気に押し寄せる。女の子の入浴を見てしまったなら男として評判は最悪だが、相手が少年ならまだマシで気も楽になる。どちらにせよあまり褒められたものではないが。
安堵したことで別のところに気が回るようになったのか、ふとあることに気が付く。
「……あれ、リリィがいない」
部屋に並べられた寝台は八つ、その隅っこが俺の寝床で隣り合った二つは誰にも割り当てられておらず、残りの五つにリリィとヴェルメリオ、ラールとレイズル、そして鈴蘭が眠るという割り当てだ。
だが、部屋を見渡してみれば誰かが寝ているのは三つだけ。俺とレイズルの分と、空きベッドを除いても一つ……リリィの寝台まで無人になっていた。
「どこ行ったんだろ」
口ではそう言ったものの、実際は大して心配していない。俺にとっては未知の土地でもリリィにとっては他ならぬ生まれ故郷。自分の庭を歩くようなものだろう。
俺は何となくリリィを探そうと思い立ち、建物の外へ出た。
特にリリィを探す理由はない。レイズルが湯浴みを終えるまでの間、時間を潰したいと思っただけだ。
差し当たっては、あの建物。暗闇の向こうで光が灯された場所まで行ってみよう。
暇潰しを兼ねた夜の散歩へと踏み出した――




