エピローグ
そして、レフィアを巡る戦いから四日が経った。
「長い間、お世話になりました」
「行ってきます、おじいさん」
統夜とレフィアが、順番にオルバスへと別れを告げる。
「困ったことがあったらいつでも帰って来なさい」
二人はこの森から出ていくことにしたのだった。これはもちろんレフィアが、自分の存在が迷惑になることを気にしてという後ろ向きな理由からではない。
彼女自身の、たっての希望だった。
それは昨夜の事である。
「おじいさん。わたし、決めたことがあるの」
怪我から回復したレフィアは切り出した。
「わたしは今までここに閉じこもってるだけだった。でもトウヤと出会って、それじゃダメなんだって思ったの。この広い世界を見て回って、いろんな人と会ってみたい」
そう言われてオルバスは少なからず驚いた。レフィアから、こんなにも強く何かを要望されたのは初めてだった。
「皆がトウヤ君のように接してくれるとは限らんぞ」
「大丈夫だよ。だって……わたしにはいつも側にいてくれる味方がいるもん」
レフィアの意思はあくまでも固い。それを確認したオルバスが、今度は統夜の方を向いて聞く。
「トウヤ君はどうかね。君だけならば気兼ねなく、どこへなりとも行けるじゃろう。しかしレフィアと一緒にいれば、しなくてもいい苦労を背負い込むことになるかも知れん。彼女の存在が重荷になるとは思わんか?」
「全然思いませんね。レフィアの存在が支えにはなっても、負担になんてなりません」
「ふむ」
オルバスとしては、レフィアの世話を彼女の母親から任された身である。ただ請われたからといって無責任に引き渡すわけにはいかなかった。
(とはいえ、トウヤ君ならば託すに値する実力は兼ね備えておるか……)
現に彼は一線級の代行者である〝剣の王〟を追い返している。そうなると、特に反対する理由は見つからない。お互いの相性がいいことなど言わずもがなだ。
「……よかろう」
こうして旅立つことを認められた二人は、まだ見ぬ冒険の日々へと歩き出したのだった。
見送りも終わってオルバスは家の中に入った。すると、テーブルの上に置かれた小さな袋が目についた。中を開けてみると、買ってあげた剣の代金がそっくり入っている。奔放なようでいて律儀とは、いかにもあの青年らしかった。
「トウヤ君はきっと、一介の代行者には収まらんのじゃろうな」
オルバスは一人、楽しげに呟いた。
彼の予想は違わなかった。
通り名を〝白銀の翼〟と呼ばれる代行者の噂が広まるのは、そう遠くない未来の事である。




