『ありがた迷惑』の”ありがた”って、ありがたくないのだから迷惑だけでいいと思う。
――後日。
「ちわー、宅配便でーす」
「はーい……。……って、あれ!? スーホさん!?」
宅配便を持って玄関に立っていたのは、以前客としてきていた馬頭鬼のスーホだった。
「どうしてスーホさんが!?」
「九緒夢さん、実はあっし、あの後郵便配達員の面接を受けたんですよ。結果は一発合格。一昨日から配達員として仕事を始めているんですよ」
「へぇ、そうなんだ! 制服、似合ってるよ?」
「えへへ、本当ですか!? 嬉しいですね! おっと、こんなこと話してる時間はないんだった! 早速ですがハンコ、お願いできやすか?」
「はい!」
「ありがとうございやす! それではあっしは次の配達がありやすのでこの辺で失礼致しやす。白夢さんにもよろしくお伝えください!」
「うん! 頑張ってね!! スーホさん!!」
スーホの姿を見送ると、白夢が部屋に出てきた。
「宅配便?」
「うん。配達員はスーホさんだったよ! ハクによろしくって!」
「そうなんだ。それで誰からの宅配物?」
「う~んとね。あっ、スノーマンのヒロさんからだよ! きっと報酬だね!」
「報酬にそんなに大きい箱がいるのかな……」
なんだか嫌な予感がした。
「どうなんだろ? 結構重たいんだよ」
九緒夢はその箱を応接間の机の上に置いて、封をしているテープに爪に突き立てた。
「それ、ヴァンパイアクロ~~~」
吸血鬼の爪はナイフよりもよく切れるのだ。
「さてさて、中身は~~~~~」
ガバッと箱をオープン。その中には……。
「ま、ま、マックスコーヒー詰め合わせ……!?」
「……ハク。実は私、この箱を持った時から薄々気づいてはいたんだよ」
箱の中には、マックスコーヒーの缶がこれでもかと敷き詰められていた。
いや、それだけではない。
「ね、ねぇ、箱のそこには本がたくさんあるんだけど……」
「『USUBAKAGEROU』だ……。一冊でも要らないのにこんなに……」
「あれ? 手紙がある」
本の下にぽつんと置いてあった手紙らしきもの。
早速封を開けて読んでみる。
「え~と、何々? ……『今月の給料を全てマックスコーヒー購入金と『USUBAKAGEROU』の自費出版に当ててしまっていたので、現金がありません。その代りに報酬の五倍分のマックスコーヒーと、ベストセラー間違いなしの『USUBAKAGEROU』をお送りします。過剰分は美味しいお鍋の代金だとお思い下さい。お気になさらず飲んでくださいね!』……だって……」
「もしかしなくても現金は?」
「……入ってないね」
「「…………はぁ…………」」
二人揃って深い嘆息。
なんだか最近こういうことが多い気がする。
「どうする? このマックスコーヒー」
「飲むしかないよ。キュー、頑張って!」
「こんなに飲めないよ~~~!!」
二人がこの大量のマックスコーヒーをどうするべきか思案しているとき、またも玄関のベルが鳴り響いた。
「また誰か来たみたいだ」
「……ねぇ、ハク。私今気づいたんだけどさ。この手紙には報酬の五倍分送るって書いてあるよね」
「……うん」
「……この一箱の中身って、報酬の五倍分もあった?」
「……どうだろ。この本、いくらで売るつもりなんだろう……」
二人を急かすかのごとく、もう一度ベルが鳴る。
「もしかしてこのベルって……」
「……もしかしないと思うけど……」
九緒夢は意を決し扉を開けた。
「あ! 九緒夢さん! お届け物です!」
「やっぱりスーホさんだ……」
「すいやせん、またハンコお願いできやす? これ全部に」
見るとスーホの後ろには段ボール箱が山のように積まれていた。
「これ全部マックスコーヒーなの!?」
「いえいえ、中には本も入ってるそうですよ?」
「こんなに要らないって!!」
この日からしばらく、光寺吸血相談所で出されるコーヒーは全てマックスコーヒーになり、『USUBAKAGEROU』は鍋敷きとして重宝されることになったのだそうだ。




