第十三章 桜の幻影と雷の咆哮
聖雷が空から次々と落ちてくる中、四人は必死に連携を保っていた。
零は正面に立ち、鬼哭丸を両手で構え、青白い光を最大限に放ちながら聖雷を切り裂き続けていた。
左肩に受けた雷の直撃が激しく疼き、黒い羽織が焦げて煙を上げている。
「零! 左から重装が二十人以上来る!」
蓮の鋭い声が響く。
零は低く応じた。
「わかった! 蓮は右側面を崩せ!
シルフィア、結界を優先! ルリアを守れ!」
零は深く息を吸い、鬼哭丸を大きく振りかぶった。
「——桜一閃!」
青白い光が刃全体を走り、雨を切り裂きながら美しい弧を描く。
一瞬で五人の重装騎士の盾を同時に切り裂き、血しぶきが上がった。
蓮は二本の刀を交差させ、右側面から高速で回り込んだ。
「俺も行くぜ——双影旋風!」
二刀流の機動力を活かし、敵の死角に入り、主刀で肩を、副刀で脚を同時に斬りつける。
騎士がバランスを崩したところを、零の鬼哭丸がとどめを刺した。
シルフィアは杖を強く握り、緑色の防御結界を全力で展開していた。
淡い緑の光が四人を包み、聖雷の直撃を何とか防いでいる。
しかし結界は激しく揺れ、ひびが入り始めていた。
「結界が……持ちません! もう少し時間が……」
ルリアは岩陰で体を縮こまらせながら、震える声で叫んだ。
「みんな……無理しないで……!
私のせいで……みんなが傷ついて……」
その瞬間、聖雷の一撃がシルフィアの結界を突き破った。
激しい雷光が零の左肩を再び直撃し、焼けるような痛みが走る。
「ぐっ……!」
零の体が大きくよろめいた。
その隙を突いて、敵の指揮官が前に出た。
**ガルド・ヴァルハラ**
身長190センチを超える巨躯に、純白のフルプレートアーマーを纏った冷徹な男。
左頰に古い火傷の痕があり、兜のスリットから覗く目は復讐の炎を宿している。
過去に魔族の襲撃で妻子を失い、それ以来「魔族はすべて穢れ」と信じ、聖騎士として魔族討伐に人生を捧げてきた。
彼の右手に握られた大剣は聖なる光を強く宿し、刃の長さは1.5メートルを超える。
ガルドは大剣を振り上げ、冷たい声で叫んだ。
「鬼哭の零……お前が魔王の娘を守る侍か。
家族を魔族に奪われたこの俺が、許すはずがない。
今日こそ、お前の桜を血に染めてやる!」
その隣に立つのは、神官騎士の長**エレナ・ソルティア**。
銀色の長い髪を後ろでまとめ、純白のローブに金糸の刺繍を施した美しい女性。
冷たい美貌の持ち主で、聖なる光を操る魔力は部隊随一。
彼女はルリアを「魔王の血を引く穢れ」と呼び、捕らえて公開浄化儀式を行うことを強く望んでいる狂信的な人物だった。
エレナは杖を掲げ、冷たい笑みを浮かべた。
「穢れの王女……今日こそお前の血は聖なる炎で浄化されるわ」
弓使い隊長**クロード・シルバン**は高所の岩の上から冷静に狙いを定めていた。
黒髪を短く切り、細い目をした知性派の男。
零の剣術を「桜の幻」と分析し、弱点を的確に突く冷徹な狙撃手である。
重装騎士副隊長**バルド・クロムウェル**はガルドの右腕として前衛を指揮する巨漢。
身長2メートル近くの巨体に、巨大な戦斧を振り回す力任せの戦士。
ガルドへの忠誠が厚く、命令を絶対視している。
戦いは激しさを増した。
聖雷が連続で落ち、地面を焼き、岩を砕く。
重装騎士たちが盾壁を形成しながら前進し、神官たちが雷と炎を同時に浴びせてくる。
零は鬼哭丸を振り回し、雷を切り裂きながら敵の波に斬り込んでいく。
零は再び技を放った。
「——桜乱舞!」
鬼哭丸が連続で閃き、八人の騎士を同時に切り裂く。
血しぶきが弧を描き、桜の花びらが血に混じって赤く舞い上がった。
蓮が右側面から二刀流で敵の側面を崩し、シルフィアが緑色の結界を張りながら回復魔法をかけ続ける。
しかし敵の数は圧倒的だった。
ガルド・ヴァルハラが大剣を振り上げ、零に迫る。
「侍よ! お前の限界を見せてみろ!」
零は鬼哭丸を両手で構え、青白い光を最大限に集中させてガルドの大剣を受け止めた。
ガァンッ! 二つの刃が激しくぶつかり、火花と魔力が爆発的に散った。
零の体が後ろに押し込まれるが、すぐに踏みとどまり、反撃の横薙ぎを放つ。
刃がガルドの鎧の隙間を捉え、血が噴き出す。
蓮が右から飛び込み、二刀でガルドの側面を攻撃する。
「零! 今だ!」
シルフィアが緑色の回復魔法を零に集中させ、傷を癒しながら結界を維持しようとする。
しかし聖雷の攻撃は容赦なく続き、四人の体力を確実に削っていく。
エレナ・ソルティアが杖を高く掲げ、冷たい声で叫んだ。
「聖なる光よ! この穢れを浄化せよ!」
巨大な光の柱が四人を包み込もうとする。
零は鬼哭丸を回転させ、光の柱を切り裂きながら叫んだ。
「ルリアを……絶対に渡さない!」
戦いは長く続き、四人は傷つきながらも必死に連携を保っていた。
零の剣が閃くたび、桜の花びらが雨に打たれながら赤く舞い、戦場を彩る。
しかし敵の聖雷は容赦なく落ち続け、四人の体力が限界に近づいていた。
零は内心で思った。
(このままでは……いずれ本当に限界が来る。
もっと仲間が必要だ……
この逃避行を生き延びるために……)
雨と雷の中、四人の戦いはまだ続いていた。




