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第50話 ごめんなさい

 レク、肝試し。

 まさに修学旅行といえば、という行事だ。

 かねてより待ち望んでいた生徒も多いだろう。

 それもそのはず。

 この肝試しには何年も前から伝わっている()があるからだ。


 内容は確か――――


 思い出そうとしたところで前を歩いていた明がバッとこちらを向いた。


「わー!見てみてこれ!」

「ホタル〜」


 懐中電灯を包んでホタルを捕まえたように見せたいらしい。


 ため息を付く。



 ……噂の内容は()()()()()()()()()()()()()()というものだった。


 僕はなんやかんやあってクラスの余り物になったため、明の「組もう!」に二つ返事でOKしたのだ。

 感謝の件も伝えたかったし。


 でも最初は少し意識した。

 まぁね?僕も年頃の男だし、向こうも向こうでわざわざ話しかけに来てるんだからもしかして?でも僕には心に決めた人が〜っとか思って遊んでたよ。でもこの感じを見て察したよ。

 あ、壮大な勘違いだったなぁって。



 そんなこんなで肝試しのルートである森の中を突っ切っているのだ。


「……一応肝試しだよ?通常じゃ絶対聞かないような発言してるけど」

「アハハ、まだまだ会場は先だよ〜」


 笑顔だ。笑顔だな。



 ……彼氏と別れてから明が変わりすぎて、本当怖くなるよ。

 もともとこんな感じな人じゃなかったのに。


 僕はまた、ため息を付いた。


 ……ギネス取ろうかな、もう。ここまでやってたら取りたくなってきたよ。


「はぁ……」



 いつの間にか歩幅を合わせるように隣を歩く明を横目で見る。

 ……なんでそんな僕といて楽しそうなんだ。今のところただ雑談してるだけだぞ。僕も少し楽しいと思ってしまっているのが悔しい。



「……明さ、本当に僕で良かったの?」


 暗い道を歩きながら、思ったことをそのまま述べる。

 なぜだか言葉がスルスルと出た。


「んー?別にー?何なら春馬が……ヨカッタヨー……」


 顔が赤くなったように見えたが、そっぽを向いてよくわからない。最後らへんえらくカタコトになってた気もするし。


「なんか最後適当じゃなかった?」

「ソンナコトナイヨ」

「なんでカタコト」


 なんだか今なら素直に言葉が出るような気がした。

 誰も見ていないからなのだろうか。


「明」

「なーに?」


「色々ありがとう」


 僕は言って当然なのだと言い聞かせるように話していたと思う。

 ずっと言いたかった言葉だった。でも、正面から言うのは恥ずかしくて、少し逸れた軌道を描く言葉を投げたのだ。


 隣の足音が徐々に離れていく。


「どうした?」


 明は俯いたまま、その場に立ち尽くしている。

 辺りは妙に静かで、自分の脈拍を感じられた。暖かい格好をしているからか、はたまた明といるからか。

 前者であることを願う。


 明はふーっと長く息をつくと、勢いよく顔を上げる。


「危なかった。ちょっと抑えきれないところだったよ」

「何を?」

「……殺意の波動?」

「なんで急に豪◯?」


 そう言うと彼女は朗らかな笑みを浮かべた。







「どう?来てる?」

「おーん、良い感じ!」

「偵察班ナイスすぎ」


 驚かせ班、2-6。肝試しというイベントにおいていちばん大事な幽霊、の要素をかたどっているいわば顔だ。

 毎年毎年何組か抽選で選ばれるのだが、今回は2-6と2-8がやることになったのだ。


 僕こと、中原文はその中でも幽霊役という大役をやらされています。

 おかしい。おかしいって。

 僕幽霊苦手なのに。

 「中原さん身長高いし、メイクすればめちゃめちゃ怖くなるよ!」なんて言葉を鵜呑みにするんじゃなかった。

 トイレの鏡を見て倒れそうになったの初めてだよ。


 何だよこの血の量、貧血になるぞ……


 おのれ、クラスの荒原(ギャル)さん。普通に良い人。


「ん!?偵察班からの連絡……なんか……イチャイチャしてるって」


 煩悩の塊だ。一度お寺行ってきなさい、叩いてもらえるよ。


「うわぁ、行きづらいやつじゃーん。大丈夫?行ける?文ちゃん」

「大丈夫ですよ〜」


 お化けの指示役兼メイク係の荒原さんに断りを入れると、腹積もりを決めた。

 えげつないくらい怖がらせてやる。


 それはそれはもう、嗚咽を吐きながら悶え苦しむくらいの……あれそれってほぼ呪いじゃないか?


「すごいなぁ、僕なんかちょっと気まずそうで行きづらいよ……」


 もう一人のお化け役、木野さんがワントーン下げた声で呟いた。

 見るからに自信なさげといったところ。


 残念ながら今まで怖がってった人はみんなあなたを見て逃げてます。


「まぁまぁ、気にせず行きましょう。それに私達がトップバッターってだけでこのあとも控えてるので」

「それもそうだよねぇ〜……」



「そろそろこっち来るって!用意!」

「はい!」


 ボソボソと遠くの方から声が聞こえ、懐中電灯が私達の隠れている草むらの上を照らす。

 男女二人、あらかた噂を信じて来た口だろう。


 ……コウタ、他の女とやってないかな。


「……で、さ……」

「……ほ……や」


 なんか聞いたことある気がする。

 ま、まぁいい。

 僕は僕の仕事をやるだけだ。


 ゆっくりと顔を荒原さんに向ける。

 今ですか?ああ、まだ……


「……らは、凄いな」

「そんなことないよ、私なんて……」


 荒原さんが頷く。


「ワァ!!」

「ウガァ!!」


 木野さんが体を大きく見せようと手を上げた状態で二人の前に出る。

 それにつられて僕も勢いよく前に出た。




 明と春馬だった。




 え?もうできてるんですか?

 噂を知っていて二人で来てるんだったらそれはもう両思いってことでは?


 しかも、距離近くない?付き合ってるよね?やっぱり。

 春馬が誰を好きかなんて知らないけどこんな感じなんだったら。

 明もチャンスが有るのでは?

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