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【共生魔法】の絆紡ぎ。  作者: 山本 ヤマドリ
4章・ノグライナ王国での出会い。
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【過去編】戦争が終わり。①

 俺達は暗黒神の憑依体による、世界を征服するための進行を食い止めたシル。

 そして攻め込まれた都市の王の娘だったディーネ。

 その2人の過去実際にあった話を、俺達は口を挟まずに無言で聞いていた。


 そして話はシルが消滅してしまった後に起きた事を、ディーネが語り始めた。


(シル。 私がスライムの恰好になっているから結末は分かってるでしょうけど、今から話す事はあなたに取っても気分の良い話しじゃないから、それだけは覚悟してね) 

「えぇ。 ディアナお母様があなた達に関する記憶を封じたと言う事は、私が消えた後の話しは決して良い結末を迎えた訳じゃ無いと分かってるわ……。

 教えてディーネ、私が存在力を使い切って消滅してしまった後、何があったのかを……」


 少しの沈黙の後、ディーネは語り始めた。


(どこから話せば良いのかな……。 ねぇシル。 あなたは都市の至る所で大爆発を起こしたのを見た所で意識が無くなった……。 で合ってる?)

「えぇ……。 その光景を見た所で意識が無くなって、再び意識を取り戻した時にはここに居た……、で合ってるわ」


(分かった。 漆黒の玉が落下して至る所で大爆発が起きた所から語る事にするね。

 ……あの時、漆黒の大爆発がようやく収まった時、街中は酷い状況だったわ……。 都市の至る所では家の崩壊が起きて、至る所で死体が転がっていたわ。

 でもね、あの爆発の中でも生き残った人が沢山いたんだよ?)


 そして私は漆黒の大爆発を生き延びて、ボロボロとなった城のテラスで意識を取り戻した。


 =◇====


【???城のテラス】


「うっ……ここは……。 そうだ、シル!! シルは何処!?」


 私はシルが都市全体に魔法障壁を張りながら、徐々に薄くなって消滅した場面を思い出してしまい泣き崩れた。


「シル……。 そんなのって……ないよ…。 ああぁぁぁ……」


 両手で顔を覆い泣いていた私だったが、都市全体で大爆発が起きていた事を思い出すと、不安定となって居るテラスから都市を見渡すと、そこには凄惨な光景が広がっていた。


「そんな……。 お父様達が頑張って作った、あの美しかった都市が見る影も無いじゃない……」


 都市の中央に設置されていた噴水も……。 綺麗に区分けされた都市も、何もかもが大爆発の影響でクレーターがあちこちに出来ていて、瓦礫の山と化していた。 


「あぁ、シル。 私はこれからどうしたら良いの……」


 崩壊した都市を見た事で私は暫く呆然としていたのだが、あの爆発でも生き延びた人達がこの城を目印に集まり始めているのを見た私は涙を拭うと、王の娘としての役割を果たす為に避難誘導をする為に城の前に移動する事にした。

 移動しようとしたけれど、私は最後にシルが消えてしまった場所を振り返って1度だけ見ると、その場を後にした。


(シルが守ってくれた命を守らないといけないのは分かってるけど、どうすれば良いの? そうだ、あそこなら暫く暮らして行けるかもしれない……)


 私は暫く大人数が雨風を凌ぐ事が出来る場所を作っていた事を思い出したので、暫くそこで暮らす事を皆に提案してみようと思うのだった。


 そして、城門の前に出ようと急いでいた私だったけど、城の至る所が崩れ始めていて、いつ崩壊してもおかしく無い状態だったため、壁伝いにユックリ、ユックリと進む事にした。


〖カラカラカラ〗


 今、私の足に当たった小さな石の欠片が音を立てて地上へと落ちて行った。


「ひぃぃ、怖いいいいぃぃぃ!!」


 そして何とか無事にみんなが避難して来ている城の庭に出ると、私の生存に気付いた人達が私を中心に輪を作ると、涙を流してお互いの生存を喜びあった。


「ウルザ様……。 良くぞあの爆発の中ご無事で……」

「姫様。 私達は何とか生き残る事が出来ましたが、多くの人があの爆発で亡くなり生活する為の物資も有りません……。 私達はこれからどうすれば……」

『「「姫様」」」』


 皆が私に期待する視線が痛いが、こんな時の為に王家が進めていた計画を教える事で、みんなに選択して貰う必要が出て来た。

 都市を復興させる為に残るのか。 それともこの都市を捨てて、暗黒神の軍勢によって荒らされた土地へと旅に出るのかを……。


「皆さん、残念ですが都市にこれだけの被害が出てしまった以上、しばらくまともな生活は送れないと思って良いでしょう……」

「そんな!」

「ですが! 私達王家が建築している途中だった地下神殿があります。 もしかするとそこでなら、今集まっている人数でも生活出来るだけの空間が十分確保出来るかもしれません」

「おお! さすがギルバート王だ!」

「ああ、これで何とかなるかもしれない!」


 住む場所が確保出来るかもしれない期待から皆明るい笑顔を見せるが、これだけは伝えないといけない……。


「皆さん落ち着いて聞いて下さい。 住む場所は確保出来るかもしれませんが、必ず食料などの問題が出て来るでしょう」

「そうか、食料の問題が……」

「はい、そこでの生活を希望される方々には過酷な生活を強いる事になるはずです。 もしそれが嫌だと思われる方達は、今の内に遠くの地に引っ越す事も検討された方が良いかもしれません」

「……姫様。 姫様はどうするのですか?」

「私は王家の者の務めとして最後までここに残ります」

「そんな……。 姫様、一緒に外の世界に生きませんか? 今なら暗黒神の軍勢が率いていた魔物達も居ないですし、あなたが居てくれればきっと安全な国を作る事が出来るはずです……」


 私はその提案にハッキリと首を横に振って断った。


「心配してくれるのは嬉しいですが、私はこの国に残ります。

 シルやお父様達が最後まで守ってくれたこの地を守りたいのです、分かって下さい……」

「分かりました……。 ですが本当に私達が都市の外に旅立っても良いのですか?」

「構いません。 その判断はあなた達にしか出来ないので尊重いたします。

 ですが、食料などの問題もありますから今日中に決めてもらう事になります。

 もし、地下神殿での生活を希望される方は、明日太陽が昇る頃にここに集まって下さい。 繰り返しますが、あなた達の判断で、この地に残るのか、それとも旅に出るかどちらかを決めて下さい。

 命に係わる選択なので、私からは何も言う事が出来ませんので……」

「姫様……。 分かりました、今日1日考えて決めたいと思います……」

「はい、では明日陽が昇る頃にお待ちしています」


 私は生活が過酷になる事を前提に話したので、残ってくれる人は少ないだろうなと思いながら、チラホラと崩壊した都市に戻って行く皆の背を見送った。


「さて、私も引っ越しに必要な物を集めにもど……。 戻るの? あの中を?」


〖カラカラカラ……〗


 崩れかけている城の中を引っ越しの為に戻るのかと思うと怖くてしかたなかったが、お父様達との思い出の品も多いから、そうも言ってられない……。

 そうして私も地下神殿に引っ越しするための準備をするために、城の中に入ろうとすると聞き慣れた声が聞こえて来た。


「ウルザ! ウルザ! あなた生きていたのね!! 良かった……」

「マーサお母様!? お母様! お母様!!」


 マーサお母様に抱擁された私は嬉しくて抱き返すが、父であるギルバートの姿が無い事に気付いた。


「マーサお母様が無事なのは嬉しいですが、お父様の姿が見えませんがどこかで復興のための陣頭指揮を取ってらっしゃるのでしょうか?」

「ウルザ…」

「そうですよね……。 お父様はこの都市の王様なんですから、これだけ荒れ果ててしまった都市を早く復興させないとを市民達に影響が……」

『ウルザ!!』

「ひっ……。 お母様……、うぅぅぅ……」


 そう。 マーサお母様がここにいるのにギルバートお父様が居ない。 その時点でそういう事なんだと私は理解してしまっていた。


「ギルバート……。 あなたのお父様はとても立派な最期でしたよ。 あの人が命を懸けてまで守ったこの都市の人達を……、今度は私達が守る番です。

 そしてウルザ。 先程は遠くから見ていましたがギルの娘として立派な姿でしたよ?」

「本当ですか?」

「ええ、王族としての責務から良く逃げずに、良く迷っている人達を導きましたね……。 これなら私が居なくなっても……」

「お母様!?」

「ふふ……。 もし、ですよ? 母をそんなに早くギルの元に行かせたいのかしら?」

「嫌です……。 マーサお母様、何処にも行かないで下さい……」


 私は泣き顔を見られるのが嫌でお母様の胸に顔を押し付けたのだが、この時の母の顔をちゃんと見ておくべきだったと後日激しく後悔する事になるのだった。


「それにしても、お城が見事にボロボロになっちゃったわね。 確かにここまで破壊された以上は地下神殿でしばらく生活した方がまだマシでしょうね。 ウルザ、良い判断だったわ」

「私の勝手な判断で決めて良いのか不安でしたけど、お母様が認めてくれたのなら決めて良かったです」

「ウルザ、この城で生活するのも今日で最後になるでしょうから、久しぶりに一緒に寝ましょうか」

「本当ですか!? 一緒に寝たいです!!」

「じゃあ、今日はさっさと引っ越しの準備を終えたら寝ちゃいましょう!」

「はい!」


 ==


 そして、夜になる頃には引っ越しの準備も終えた私達は、マーサお母様と一緒にベッドの中で寝る事になったのだが……。


「お母様……」

「ウルザ、どうかしたの?」

「壁の至る所に大穴が空いて寒いですね……」

「……そうね。 そうだわ、ウルザもっと私に密着して私を温め頂戴……」

「ひゃ! お母様の体冷たいです!!」


 そう、お母様の体がビックリするくらい冷たくなっていて、体調に異常が無いのか心配になる程だった。


「ふふ、私の事は大丈夫だから、あなたの体温で温めて?」

「むう……。 しょうがないお母様ですね……てい!!」

「あぁ……暖かい。 私の愛しいウルザ……()()()()()()()()()()……」


 私はお母様が荒い息をしている事に気付き、何かあったのかと思い慌てて顔を見上げるが、そこにはいつもと変わらないお母様の優しい笑顔があるだけだった。


「お母様……?」

「どうしたの?」

「いえ、私の気のせいだったようです」

「そう? おかしな娘ね。 それじゃもう寝ましょうか、お休みなさい、ウルザ」

「おやすみなさいお母様…」


 こうして世界の命運を懸けた暗黒神との戦いも勝利の2文字で終わりを迎える事が出来た私達だったが、その対価として大切な人達を沢山失ってしまった。

 たけどこれで世界は平和の時代へと進み、いずれこの暗黒神との戦いも記録の残らない過去の話しとなるのだろう。

 この戦いを生き残った私達はこれから復興に向けてやる事が山積みになっているため悲しんでばかりもいられないけど、今日だけは……。

 そう考えていると、いつの間にか私とお母様はお互いを抱きしめ合いながら眠りに付くのだった。


 ギルバートお父様、ウルザは頑張って都市を復興させてみせます。 だから、私達の事を天国で見守っていて下さい……。


 私はお父様の弔いも込めて1粒の涙をベッドの染みにするのだった。

 そして、都市に住む人々も夜には疲れ果てて寝入ってしまったが、遠くの岩山でイタチの魔物が憎悪の眼差しを生き残った都市の人々に向けていたのを、熟睡している私達が気付く事は無かった。


 ===


 朝日が昇り、地下神殿への引っ越しに必要な物資をかき集めた人達が、城の広場に集まってくれていたが、前日の半分以下にまで人が減っていた。


 大半の人は旅に出る事を選択しましたか……。 いや、これで良かったのです。

 もし、私達が再建に失敗したらそれこそ人と言う種の存続が危ぶまれるのですから、各地に種が蒔かれたと思う事にしましょう。


 私は集まってくれた人達にお礼を言うと、地下神殿へ案内を開始した。


「皆さん! これから地下神殿に案内しますが、内部は十分な広さがあるので慌てずに付いて来てください! では移動を開始します!!」


 私の案内で地下神殿を目指して進んでいると、マーサお母様は冒険者風の男の人と何か話しながら歩いていたが、声が小さくて聞こえないので大した内容では無いだろうと判断して案内に集中していると、地下神殿へ降りる為の扉が見えて来たのだった。


 隣に立つマーサお母様の顔を見ると頷かれたので、私は王家特有の青く光る魔力を扉に流し込んだ。


〖ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……ゴン〗


『「おおおおおぁ、さすが姫様だ!」』


 すると扉全体に複雑な模様が青く光り輝くとユックリと左右の扉が開いて行った。 そして、開き切った扉の先には地下へと向かう階段が現れた。


「皆さんこの階段を下って行けば地下神殿に着きます。 前の人を押さないよう注意して移動して下さい! 慌てずに! ユックリと!」


 こうして皆が地下神殿とはどの様な場所なのか、期待に胸を膨らませながら次々と扉の中に入って行った。


「ウルザ、引っ越しは何とかなりそうね」

「はい、最初はどうなるかと冷や冷やしましたが、みんな私の言う事を聞いてくれたので助かりました」

「ふふ。 あなたの言う事だから、と言うのも有るのかもしれないわね」

「そんな……。 私なんてお父様と比べると、まだまだです……」

「なら、将来お父様に負けないくらいの実力を付けてね?」

「お母様、何故私の成長を見れないような言い方をするのです?」

「あら、それはあなたの気のせいよ」

「……本当にそうなら良いのですが」

「ほら。 そんな事より扉の前に残ったのは私達だけになったわよ」


 お母様に言われて気付いたが、扉が設置されてある広間に残っているのは私とお母様、それにケイレスと紹介された冒険者とそのパーティーメンバーのみとなっていた。


「これで残っているのは俺達だけになりましたから、そろそろ俺達も地下神殿に向かいましょう」


「えぇ……そうね……」


 お母様の歯切れの悪い返事を不思議に思いながらも、私達も地下神殿に向かうために扉の中に入ると背後から聞き取れるかどうかの小さな声で謝罪の声が聞こえて来た。


「ウルザ……。 ごめんなさい……強く生きてね」

「え……?」


〖ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……〗


 扉が閉まり始めた音に気付き私が後ろを振り向くと、マーサお母様が扉の前に立ち塞がる様に魔剣バルムンクを構えていた。


「お母様!?」


 一瞬こちらを振り向き微笑むと、広間の入り口を睨み声を掛ける。


「いるんでしょう? 背後を襲おうとしても無駄よ、さっさと出て来なさい!」


 お母様がそう言うと奇襲が失敗したと判断したのか、広間の入り口からイタチの魔物が歯を剥き出しにしながら現れた。


『グルルルルルル……』


「お前は憑依体の横に居た……」

『貴様等のせいで暗黒神様が消滅してしまった!!

 しかも暗黒魔法アポカリプスが発動したと言うのに、貴様等が生き残っている事は許されない事だ!! 殺してやる……、貴様等全員殺してやる!!』


 血走った目で私達を睨みながら、涎をだらだらと垂らすイタチの魔物は正気とは思えず私は恐怖を感じて足が竦んでしまった。


「ひっ! 何、あの魔物は……」

「あの魔物は暗黒神の使役していた魔物の1体です。 逃げずにわざわざここまで追って来るとは……」


 ケイレスにあの魔物の事を説明された私は、お母様に早く扉の中に入ってと伝えるが断られてしまった。


「お母様、何で来てくれないのですか!?」


 私はお母様を連れ込もうとして扉の外に出ようとしたが、急に後ろから抱き抱えられてしまう。


「ケイレス!? 放しなさい! お母様が!!」

『逃がす訳無いだろう!! 暗黒神様を消滅させた貴様の娘など抹殺対象に決まっているだろう!!』


 イタチの魔物は1本の矢となって私目掛けて突進して来たが、お母様が間に入り受け止めてくれたが私の頬に血が飛び散り膝を付いてしまった。


『はっはっ!! 娘を庇って致命傷を貰うとは案外脆かったな女!!』

「えっ?」


 膝を付くお母様を良く見ると、右脇腹が大きく抉られてしまい大量の出血をしていた。


「お母様!!」


 目の前で起きた事が信じられ無くて大声でお母様の名を叫ぶが、勝利を確信したイタチの魔物が見逃すはずも無く、今度は止めを刺す為にもう1度お母様目掛けて突っ込んで行った。


『止めだ! 女!!』


 駄目! お母様が殺されてしまう!!


 私は目を逸らす事も出来ずにその光景がユックリと流れて行くのを感じていた。



ここまで読んで下さりありがとうございます。

暗黒神の憑依体が消滅したので戦争も終わり復興の開始ですが生活空間を確保する為に王家が建設していた地下神殿で生活する為に引っ越しする事になりましたが追手の登場です。

次回も過去編です申し訳ない。

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