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【共生魔法】の絆紡ぎ。  作者: 山本 ヤマドリ
1章・異世界に、そして出会い。
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部屋の中の出来事ー前編


 明日の予定を伝えたクレアが去った後の会場は食事を楽しむだけの場となった事で、腹が満たされた者から順に自分の部屋に戻り始めていたので、俺も自室に戻る事にした。


「ダグラス、今日1日で色々な事があったからそろそろ部屋に戻って寝ようと思う」

「確かに色々な事が今日1日で起こり過ぎだ……。 了解、俺ももう少し食ったら戻る事にするかな。 共也、姫さんの言う通り早く寝て寝坊なんてするなよ?」


 口角を上げて意地悪く笑うダグラスの顔にイラっとするが、流石に今から寝るならそれは無いだろう。


「まだ夜になってそんなに時間が経って無い今から寝るなら、さすがに寝坊はしないんじゃないか?」

「それもそうか……」

「じゃあなダグラス、おやすみ」

「おう、また明日な共也!」


 晩餐会上から廊下に出ると、今は夜なのに妙に明るい事に気付き不思議に思い空を見上げると、そこには青と黄色の月?の2つが浮かんでいた。


 しばらく2つの天体を眺めて呆然としていたが、我に返った事でここは地球で無い事を改めて思い知らされるのだった。


(あの青と黄色の月が空に浮かんでいるのを見ていると、ここが地球じゃない事を再認識させられるな……)


 元々旅に出ようとしていたのだ、今更異世界に来たからと言ってもあの街に未練など有るはずが……。


(いや、京谷さんや砂沙美さん、他にも俺を支えてくれた人達には会いたい……かな……)


 微妙な心境のまま自室に戻り寝る準備をしていると、ドアをノックされる音に気付き返事をすると、外から俺が良く知っている声が聞こえて来た。


「共也、起きてる?」

「菊流か? 寝る準備をしているだけだから、まだ起きてるつもりだったけど……。 何か用があるのか?」 

「うん。 今日色々あったから少し話したい気分なの。 部屋の中に入れて貰っても良い?」


 男の1人部屋に女性を招き入れると言う行為に少し悩んだが、よくよく考えると地球では菊流と半同棲の様な状況の中でも何も起きなかった事を思い出し、今更か……と思った俺は快く承諾した。


「少し待ってくれ、今ドアを開ける」


 カチャ


 ドアを開けると、そこには髪色に合わせて赤く可愛らしい寝間着を着用した菊流が、恥ずかしさからなのか体を揺すりながら立っていた。


 視線がジッと寝間着を見ている事に気付いた菊流が、どうやって入手したのか説明してくれた。


「え~っと、この寝間着? 女性陣ってさ、いきなり呼び出されたから着替えや生活用品が全然無いでしょ? この国の女王様や侍女さん達が、女性陣の為に集めてくれた生活用品を皆に配ってくれたの。 この寝間着もその中の1つだよ」


 え? 俺達男性陣には何も無いと言う捉え方で良いのかい?


 そう言えば明日からの着替えってどうしよう……。


 そんな的外れな事を俺が考えている事を付き合いの長い菊流は察した様で、少し頬が赤く染まった顔を近づけて来た。


「な、何だったら私があなたの下着とかを洗濯をして上げる……。 ってそうじゃ無くて! 私が話したいのはそう言う事じゃ無くて!」

「違うのか?」

「違わないけどぉ! ああ、もう! その話しは後で聞くから、取り合えず部屋の中に入れてよ! この恰好で廊下にずっと立ってるのも、それはそれで恥ずかしいんだから!」

「あ、ああ、悪い……。 どうぞ?」

「お、お邪魔します……?」


 部屋に招き入れた菊流が俺の横を通ると甘い花の様な良い匂いが鼻腔を擽った事で、ハッキリと鼓動が跳ね上がったのが分かった。


 だが、そんな俺の様子に気付かない菊流は、部屋の中の装飾を見渡していた。


「へぇ……。 当たり前だけど部屋の作りは一緒なのね」


 部屋の中を一通り見渡して満足したのか、菊流はベッドに腰掛けた。


「疲れてる所にごめんね? 少しこれからの事を共也と話したくなってさ……」

「いや、俺も今の状況を整理したかったから、菊流の申し出はむしろありがたかったよ」

「ふふ、そう言ってくれて助かるわ。 …………ねぇ共也」

「何だ?」

「私の家が格闘道場を経営しているのは、あなたも知っているわよね?」

「知ってるさ。 何時も皆と遊ぶ為に集合しているのは菊流の家だったじゃないか」

「うん。 だから知ってるよね? 私が暴漢などに負けない様にって、父さんや母さんに小さい頃から色々叩き込まれたのを」

「空手の全国大会〖大人の部〗でも菊流は毎回良い所まで行ってたのを知ってるよ。 それで?」

「し、知ってたんだ…………。 嬉しい……」


 最後の方は小声過ぎて何を言ったのか聞き取れなかったが、何故か顔を赤らめて下を向く菊流に、俺は頭の上に疑問符が一杯だった。 


「い、今はそれは良いの! 私が言いたいのは、スキルを得る事が出来たけど魔物や魔族を相手して通じるの? って考えが頭の中がいっぱいで、不安で不安でしょうがないって事なのよ……」

「異世界に来れたって事で俺も浮かれていたけど。 そうだよな、訓練の後になるだろうけどこれから俺達は命のやり取りをするんだよな……」


『命のやり取り』この一言を自分の口から発言した事で、心の何処かで異世界に来れたと言う現実に浮かれていた自分を恥じた。


 これから様々な味方や敵との出会いも有るだろうが、自分の身は自分で守らないといけない世界。

 そんな日常が日々繰り返される世界に、俺達は連れて来られたのだ……。


 敵と命のやり取りをする場面を想像してしまった菊流は、自分の両腕と膝を抱きかかえて身を震わせていた。


「ごめんね共也……」

「何で菊流が謝るんだよ……」

「だって……、私は自分が得意とする分野を伸ばすスキル構成だったからすぐ分かったけど、共也は全く魔法の内容が分からないのにこうして私の愚痴を聞いてくれてるじゃない……。 何だか申し訳なくなったから、つい謝っちゃったの……。 私、嫌な女だね、さっきから自分の事ばっかりだ……」


 抱え込む両膝に自身の顔を埋める菊流を励ます意味も含めて、俺は勤めて明るく振舞う事にした。


「まあ、何とかなるんじゃないか?」

「どうしてそう思うのよ……」

「確かに俺一人だったら絶望していたかもしれないが、ダグラスや魅影、鈴もいる。 きっと皆が協力してくれるだろうから、いずれどんな魔法なのか解明出来るさ」

「……そう上手く行くと思うの? 現地の人達ですら知らないスキルだよ?」

「行くさ。 現地の人達が分からなくても皆が居る! どれだけのラノベ作品を読んで来たと思うんだよ。 いずれ小さなヒントが向こうから近づいて来るさ!」

「……ふふ。 そう言う所は何だか共也らしいね。 信じる根拠がラノベを読んでたからだなんて……」

「俺らしいじゃないか!」

「らしいけど……。 そうハッキリ断言されると、悩んでた私が馬鹿馬鹿しくなるんだけど?」

「そう言うなって。 だけど、魅影が言ったように俺の魔法が契約魔法の1つだとして、出会った人と片っ端から結婚するなんて鬼畜の所業なんて出来る訳………」


 ん? 全て……?


 例えばだが、この世界を旅している内に気の合う男の友人が出来たとして、スキルの発動条件が満たされた場合は…………そいつと結婚しないといけないのか???


 あはは! …………ま、まさかだよね?


 様子がおかしくなった俺を心配した菊流は、眉を顰めてこちらを凝視するのだった。


「共也急に黙ったりしないでよ、何かあったのかと思って怖くなっちゃったじゃない!」

「す、すまない、もしスキルの発動条件を満たした相手が男だとしても、そいつと結婚しないといけないのか? と思ったら寒気がさ……」

「ぷふっ!」


 スキルの発動条件に思い付いた事を素直に伝えたのに、菊流は俺の物良いが余程ツボに入ったのか必死に笑いを堪えて誤魔化そうとしているが、両肩を震わせている為全く誤魔化せていない……。


「ぷっっっあはははは! 何を真剣な顔をして考えてるのかと思ったら!っっっっご、ごめん……、笑いを押さえられない……私の笑いのツ、ツボに入って堪えられない……。 く、苦しい!!」

「へぇへぇ。 その可能性も0じゃないんだから、もしそうなった場合は菊流に見せつけてやるからな?」

「止めてって言ってるでしょ!? 私を笑い死にさせる気!?」


 今後どうなるかわからない事を悩むより、今この時間を大切にしようと思い、大いに笑い合った。


 そして、ひとしきり笑い合った後、そこには悩みなんて無かったかの様にスッキリした笑顔の菊流がベットの上に居た。


「はぁ~笑った! ここ最近こんなに笑った事なんて無かったもんね」

「へぇへぇ……。 そりゃようございましたね!」

「ふふ……」


 1度含み笑いをした菊流は何かを思いついたのか、俺の顔に付くか付かないかの距離まで顔を近づけて来た。


 菊流の吐息が俺の顔に掛かる……。


「ねぇ共也……。 スキルの発動条件が満たされる条件が分からないなら、あなたさえ良ければ私と結婚して試してみるってのはどう?」


 急に真剣な顔をしてとんでもない事を言い出した菊流に、俺は目を剥いて驚きを隠せないでいた。


「ねぇ、共也の答えを、あなたの口から聞かせて?」

「俺は……、そんな実験の様な結婚を菊流としようだなんて考えていない……」

「ふ~ん。 その言い方だと、私が本気で求婚した場合は結婚を承諾しても良いって聞こえるんだけど?」

「そ、それは……」


 菊流は俺の反応を楽しむかの様に、目を潤ませながらユックリと口を開いた。


「あのね共也、私はずっと前からあなたの事を……」


―――コンコンコン!


『「!!?」』


 ドアをノックされると言う予想外の事態が起きた事で、お互い我に返り慌てて離れるのだった。


 そして、部屋の中にドアをノックをした人物の声が響き渡った。


「共也さん、エリアですがまだ起きてらっしゃいますか? 少し遅い時間ですが、お話ししておかないといけない案件が有ったのを思い出したので、少々お時間よろしいでしょうか?」

「あ、はい、起きてますので少々お待ちください」

(ちょっ! 共也、何で返事するのよ!?)

(あっ……)

 

 俺は馬鹿かーー! 何で返事をした!!


 そう、未だにこの部屋には寝間着を着た菊流が居る事を、返事をした後に思い出したのだった。


 誤魔化す為には……。 そうだ!


「菊流、取り合えず布団被って隠れて!」

「ちょ、ちょっと共也!?」


 慌てて布団の中に菊流を隠れさせると、俺はエリア王女が待つドアを開けに向かうのだった。


―――カチャ。


「お待たせしました。 俺に伝えたい事がある様なのですが、どの様な事でしょう?」


 平静を装ってドアを開けた先に居たのは、白の寝間着の上にカーディガンを羽織って恥ずかしそうに立っている白髪翠眼のエリア王女だった。


「随分と慌てていたような音が部屋の中から聞こえてきましたが、何かあったのですか?」

「えっと、まさかこんな夜分にエリア王女が来るとは予想外だったもので、慌てて起きようとしたらベッドから落ちてしまいまして……。 あはは、俺って結構ドジなんですよね、今後は気を付けないと……」

「そうなんですか? 怪我をしてないなら良いですが……」


 首を傾けて心配してくれるエリア王女には申し訳ないが、俺は内心ドキドキしていてそれどころじゃ無かった。


「…………怪我が無いのなら良いです。 それで先程も言ったと思いますが、少しお話ししたい事があるので、中に入れてもらっても良いですか?」

「えっと……。 先程も言ったようにベッドから落ちてしまった時に色々と物が散乱して部屋の中が荒れてしまいまして……。 部屋の中はちょっと……」


 部屋のベッドの中にはまだ菊流が隠れているため、彼女を入れる訳にはいかないと思い必死だった。


 菊流が布団の中に隠れていると言う状況をエリア王女に見られたら、明日から何と言われるか……。


 まだ異世界に転移して初日だぞ??


「大丈夫です。 男は大体ズボラな生き物だと母から聞き及んでいますので、少しくらい部屋が荒れてる位なら気にしないので大丈夫ですよ?」


 どうやって部屋に入って来る事を無難な感じで断ろうかと悩んでいるが、どんどんエリアに逃げ道を塞がれてしまい……。


「共也さん入れて貰って良いですよね? それとも……何か見られてはまずい物でもあるのですか?」

「いえ……無いです。 どうぞ……」


 散々入室を拒む理由を考えていたが、結局疑いの眼差しを向けて来るエリアには勝てず、菊流が見つからない事を祈りつつ室内に入る許可を出すしか無かった。


 入室を許可した事で嬉しそうに微笑むエリアが入室する際、菊流と同じく甘い匂いが俺の鼻を擽った。


「失礼しますね!」


 この時、何故か嬉しそうにしているエリア王女が妙に印象に残るのだった。


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