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【共生魔法】の絆紡ぎ。  作者: 山本 ヤマドリ
3章・親善大使として親書を届けに。
60/291

新たな絆。

 今、俺達は雪豹のフェリスに案内されて、子供達が待つと言う彼女の巣に向かっていた。


『最初会った時、何であんなに警戒していたのかだって?』

「あぁ、山が想像しくなったから出て来たのは分かるが、あんたは言ったよな。 自分を狩に来たのか、と」


 雪が積もる雪原を掻き分けながらただ進むのも何なので、俺は彼女に色々と尋ねて見た。

 

『・・・・昔は私達雪豹の珍しい模様を目当てに襲ってくる奴等が結構いてね、私の両親もかなり昔に密猟者によって殺されてしまった……』

「すまない、無神経な質問だった……」

『当時は悲しかったが、今は子供達もいるし平気だよ。 そう言う経験をして来たからこそ、あんた達人間を見た時は警戒したのさ。 まさか私の子供達を狙って……。 ってね』

「でも、そんな辛い経験をしたのに、最初は威嚇で済ましたのは何故なんだ?」

『意味も無く同族で殺し合う事が出来る人間や魔族と一緒にしないでおくれ。 私達は理由の無い殺しは絶対にしない。 だからこそ、怒りを抑えてこの山に来た理由をお前達に尋ねたのさ』

「フェリスのその言葉は、地球人である俺達にも刺さってしまうから耳が痛いな……」

「室生……」


 室生の言う通り、今こうしている間も、地球の何処かで人間同士が殺し合っているのだろう……。 理由は様々で、領土、経済、宗教、こうして上げて行けばきりが無い……。


 そう思うとフェリスの言葉は人間と言う種を良く理解している、彼女の後ろを付いて歩く俺達は何も言い返す事が出来なかった。


 そして、今まさに世界を巻き込んだ戦争を人類と魔族でしているエリア達は、その人と魔族の本質を語ったフェリスに対して何も言い返す事が出来なかった。


「そう落ち込むなエリア。 確かに今は魔族と戦争をしているが、菊流達が会った獣人のガルボも戦争は望んでいないって話だったじゃないか。 そうなんだろ、菊流?」

「えぇ、明らかに人とは違う見た目に誤解しがちだけど、中身は私達と同じ気の良いただの……変態のおっさんだったわ」

「クス、それって普通じゃないじゃないですか。 でもありがとう共也さん、そうですよねたった数時間で魔族の方と分かり合う事が出来たのです、何時か私達も……」

「そうよ、意思疎通が出来るんだからガルボみたいに一定数は私達と友好を結びたいと願っている者はいるはずよ。 でも、それを実現する為にはエリアちゃん。 シンドリア王国第一王女であるあなたの存在が、必要不可欠だって事は忘れないでね?」

「……はい」


 その後は雪を踏みしめる音だけが辺りに響く中、俺達が拠点にしていた洞窟とはまた違う洞窟が大きく口を開けていた。

 そして、その洞窟の前で4~5匹程の小さな存在が、興奮してチョロチョロしている姿がここからでも見て取れた。 


『私の子供達だ、間違っても攻撃しないでおくれよ?』


 皆がフェリスの言葉に頷き、洞窟の入り口に近づくとフェリスにソックリな子供達がわらわらと彼女の足に嬉しそうに絡みついた。 


『坊や達、戻ったよ。 動物達が興奮して騒いでいたのは、こいつらが原因だったみたい。 でも、こいつ等は敵じゃないみたいだから安心おし』

(母ちゃんおかえり~、それなら安心だね!)

「えっ、念話!?」

『あっ……。 はぁ~~、だからあれ程出力はちゃんと調整しろと言っていたのに、この娘ったら……』

(うっ……、母ちゃん、ごめん……)


 5匹いる子供の内1匹が念話で返答をした事に驚いていると、俺達の視線に気付いたフェリスはバツが悪そうにその子供の事を教えてくれた。


『この娘はどうやら特殊個体として生まれたらしくてね。 他の子達は会話どころか、まだ念話を使う事すら出来無いのに、この娘はすでに魔法も使う事が出来るんだよ』

「えっ? この娘って今何歳なんですか!?」

『今年の春に生まれたばかりだから、まだ1歳にもなっていないね』

「それは……。 確かにこの子は特殊個体ですね……」

『だろう? この娘は将来、私を軽く超えて強くなって行くだろうから、今から楽しみでは有るんだけれど、こんな狭い雪山しか知らないままでは宝の持ち腐れになっちまいそうでね……」

「フェリス……」

「……すまないが今のは忘れておくれ、さっそくだが洞窟内を案内するよ』


 何処か悲しそうに語るフェリスの姿に、俺達が何か協力出来ないかと考えるがこれは彼女達一家の問題だ、今日会ったばかりの他人である俺達が口を出す事じゃ無い……。

 その後はその話題を振る事を控え、氷の魔石を受け取りに彼女達の暮らす洞窟の中に足を踏み入れた。


(母ちゃん、奥にある変な石をこの人達に上げるのか?)

『反対かい?』

(ううん、前から邪魔だな~~って思ってたし、母ちゃんが決めたなら文句は無いよ。 でも、どうやってあれだけの量を運び出すのか見て見たいから私も付いてく!)

『邪魔だけはするんじゃないよ?』

(分かった!)


 その子の言葉に全員が思った。


(あれだけの……量?)


 そして、フェリスの案内で洞窟内へと足を踏み入れたのだが、どうやら先程の特殊個体の子供に俺は何故か気にいられたらしく、ずっと足元をウロチョロされて大変だった。


 最終的に歩くのが困難になり始めたので抱き上げると、抵抗する所か喉をゴロゴロと鳴かせる上に特徴的な長い尻尾を腕に巻き付けて来る姿は、雪豹と言うより猫その物だった。


 その子の行動に癒されながら洞窟内を順調に進み始めたのだが、その間菊流の羨ましがる視線にずっと晒される事となったが……。 


『着いたよ、いるだけ持って行きな』


 そして、目的の氷の魔石が貯蔵されている部屋へと案内されたのだが、先程の子が言っていた『量』と言う言葉の意味が分かった……。


「これは……」


 案内された部屋の中に見える光景に、長年冒険者をやって来たはずのバリスさんやオリビアさんも絶句していた。

 割と大きめに作られいる3つの部屋に収められている魔石は数百、数千、もしかしたら万に届くんじゃないかと言う量が部屋を埋め尽くしていた。


「凄まじい量の氷の魔石だな……。 一体どれくらいの数があるのか見当も付かんぞ……」

「そ、そうね。 確かにこれだけあれば、邪魔って言うのも分かるわぁ……」

「バリスさんやオリビアさんでも、この光景は初めてなのですか?」

「当たり前だろ。 こんな光景なんて、恐らくどのギルドのマスターも見た事が無いぞ……」

『最初は集まる事が面白くて貯めていたんだけど、流石に子供達が生まれちまったら手狭になり始めてね……。 だから、いくらでも持って行って良いよ。 むしろこの邪魔な石が無くなれば、沢山の部屋が使えるようになるのだから、全部持って行っておくれ』

「……エリア、全部の魔石を収納袋に入れる事って出来そうか?」

「多分入れる事は出来るとは思いますが……。 勿論、皆さんも手伝って下さいますよね?」

「え? この量の魔石を全部回収するの!?」

「鈴さん、まさか私1人に魔石の回収をさせるつもりですか?」

「そう言う訳じゃ無いけど……。 やる、手伝わせて頂きます!」


 ニッコリ微笑むエリアの笑顔を見た鈴は、流石にヤバいと思ったらしく手伝う事を約束した。


「では皆さん、頑張って回収しましょう!」

「「「「は~~~い…………」」」」


 そして、全員で魔石を回収し始めて数時間後……。


「お、終わった~~~!!」


 疲労困憊の男性陣が最後の魔石を収納袋に収めた頃には、すっかり洞窟の外は真っ暗になっていた。


『ご苦労さん、思ったより早く終わったじゃないかい』

「本当ならもう少し早く終わっていたんだけど、途中から人手が少なくなったからな……」

『……うちの子達も人が珍しくてしょうがないんだ、許して上げておくれ』

「フェリスや子供達は悪く無いさ。 悪いのは……あいつ等なんだから……」


 視線の先では、魔石の回収作業をサボりフェリスの子供達を膝に乗せて可愛がる女性陣達がいた。


 ごろごろ、ごろごろ……。


 女性達が擦る事によって気持ち良さそうに喉を鳴らす子豹達は、すでに長年飼われている家猫の様に懐いていた。


「はぁ~…。 何なのこの可愛い生き物達は、この子達がいるなら私はずっとここで暮らしたい!」

「うむ、可愛いは至高!」

「ちょっと菊流ちゃん、あなただけ抱っこするなんてずるい! 私にも抱っこさせて!」

「愛璃ちゃんも可愛い物が好きだったっけ?」

「……私は動物が好きなのよ……悪い?」

「悪く無いよ! 一緒に抱っこしましょ!?」

「う、うん……。 ふわぁ……、毛並みがモコモコしてて触り心地抜群ね……」


 女性陣も、最初の頃は真面目に手伝ってくれていたのだが、部屋の入口に勢ぞろいした雪豹の子供達を見ていると、とうとう我慢が出来なくなったらしく、現在は見ての通り子供達に夢中で俺達の事は眼中にすらない状態である……。


「共兄、私が代わりに沢山ん魔石を運んだんですから、そう怒らないで上げて下さい……ね?」

「はぁ……。 ジェーンだけだよ、俺達の癒しは……」

「だな……。 心が洗われる様だぜ……」


 首を傾げて拝み許しを請うジェーンの可愛い姿に、俺達男性陣は目尻をだらしなく下げてしまうのであった。 


「……共也さん、ずっと収納係として手伝っていた私に対しては、何も言う事は無いのですか?」

「……収納係として手伝ってくれて助かった……。 じゃ駄目?」

「ヒドィ! もう共也さんなんて知らない!」


 ドスドスと足音をさせて女性陣の方に歩いて行ったエリアの姿を見て、ダグラス達に口パクで『俺、何か間違った事言ったか?』と尋ねると、呆れられるのだった……。


「共也、エリア嬢もお前がいるから残ってくれていたのは分かっているんだろ? じゃあ、もうちょっと心の籠った感謝の言葉をだな?」

「ほう……。 じゃあダグラス、因みにお前ならどんな言葉を送ったんだ? 参考までに教えてくれるとありがたいな~~?」

「…………室生、任せた!」

「おいぃぃぃ!! 俺だってそんな気の利いた台詞なんて言った事『異議あり!』五月蠅いなダグラス、急に何なんだよ!?」

「俺は知っているんだぞ、愛璃に時々甘い言葉を囁いているのを!」

「……ダグラス、何故その事をお前が知っているんだ? お前まさか覗いて……」

「あ、やべ!」

「「ダグラスーーー!!」」


 必死に逃げるダグラスを捕まえるべく、俺と室生は協力して洞窟内を追い回すのだった。


(母ちゃん邪魔な石が無くなったから、今度からこの部屋も使える?)


 特殊個体である子豹の視線の先では、全ての魔石が無くなった事でフェリスが飛び跳ねても大丈夫なくらい広々とした空間が広がっていた。


『部屋を埋め尽くしていた魔石が無くなったから、今度からあんた達が使う子供部屋にしても良さそうだね』

(わ~~い! 自分達の部屋を持てるなんて最高だよ母ちゃん!)

『……あんたは本当にそれで良いのかい?』

(母ちゃん、何を当たり前の事を言ってるんだ?)

『そうかい。 あんたが本当にそれで良いと思ってるなら、これ以上私が口を挟む事じゃ無いね……』

(母ちゃん……)


 魔石が無くなった事で広くなった部屋を眺めるフェリス親子は、その後何となく2人の纏う空気が悪くなり会話が一切なくなるのだった。


 そして、フェリスはすでに真っ暗になった洞窟の外を見ると何か思う事があったのか、1つ提案をして来た。


『共也、魔石を手に入れる目的を達成した以上早く下山したいだろうが、流石に今から山を下るのは危険すぎる。 だから、今日はここに泊まっておいき。 歓迎するよ』

「良いのか? 迷惑じゃないのであればお願いしたい所だが……」

『迷惑では無いし、お前達を信用して巣に案内したんだ、今更だよ……。 それに……』

「それに?」

『今も私の子供達を可愛がっている女性達に、危険だけど急ぐから今から下山しようって言えるのかい?』

「え~~っと……」


 女性陣をチラリと見ると彼女達は先程のフェリスとの会話が聞こえていたらしく、全員が笑顔だが目が笑っていない(勿論帰るって言わないわよね?)と……。


「はぁ……。 フェリス、今日1日泊らせてくれ」

『あいよ!』


 女性陣の圧に負けた訳じゃないが、しょうがないので今日の所はフェリスの温情に甘えて宿泊させてもらうと伝えると、彼女達は皆大喜びするのだった。


「珍しく共也がとても良い判断をしたじゃない、誉めて上げるわ!」

「柚葉、何でお前は上から目線で言ってんだよ……」

「あ~~。 はいはい、ありがとうありがと、これで良い? 子豹達が待ってるからもう行くわね!」

「・・・・・・・・」


 そんな子豹達にメロメロにされた女性達の言葉が、洞窟内に響き渡る。


「ふふふ、今日1日は楽しんで過ごせそうね♪」

「長い尻尾がフワフワの上に、私の腕に絡んで来るから可愛い……。 この愛らしさは反則……」

「オリビアさん見て見て、この子私の膝の上で寝ちゃった!」

「あら可愛い。 でもテトラちゃん、その状況だと暫く動け無いわよ?」

「う、可愛いから我慢するもん!」


 そんな女性陣達が楽しそうに子豹達と触れ合っている間に、俺達男性陣がする事はと言うと……。


「なぁ共也、何で俺達は寒空の下で全員分の飯を作ってるんだ?」

「じゃあバリスさん、今の彼女達に飯を作る手伝いをしてくれって言えます?」

「……無理だよなぁ……」

「でしょ?」


 全員分の食事を用意するともなれば、当然作る量も多くなる。

 そうなると、一酸化炭素中毒が怖いので洞窟内で作る訳にもいかず、雪が降る寒空の下で調理するしかないのだった。


「ほら共也さん、女性である私とジェーンちゃんが手伝ってるんですから、文句言わずにスープをかき混ぜて下さい」

「エリア姉、私は魚を焼けば良い?」

「助かるよ、ありがとうな2人共」

「「えへへ♪」」


 男性陣+エリア、ジェーンで晩飯を作っている間も、何故か特殊個体の子豹が俺の足元から離れようとせず、ずっと纏わり付いて来るのだった。


 そして、暫くすると晩飯も完成し……。


「ほら皆、晩飯出来たから各自食器を用意してくれ。 冷めない内に食べるぞーー?」

「了解!」


 そして、フェリス達親子との不思議な食事会が始まった。


『へぇ、あんた達は異世界から召喚されて、この世界に来たのかい』

「そうなんですよ、だけど召喚の儀式を行ったシンドリア側だけど、こっちが申し訳なくなる位サポートが充実していてですね!」


 そんなフェリスと会話する鈴の声が聞こえて来る中、またも例の特殊個体の子豹が胡坐をかいて座っている俺の前に立つと、しばらくジッと顔を見つめて来た。


「どうしたんだい? 兄弟達の所でご飯食べなくて良いのか?」

(もう食べ終わったから。 ねぇ、そこで寝て良い?)

「そこって、俺の胡坐の部分か? 俺は構わないが……」


 そう言い終わる前にその娘は俺が胡坐をかく場所に飛び込んでくると、そのまま丸まって寝始めてしまった。


「お、おい……」

(すぅ~~~……)


 相当眠かったのだろう、俺が何か言う前にもう寝息を立て始めていた。


『おや、やっぱりその娘はお前にだけは心を許した様だね……』


 フェリスの言葉にそう言えばと、ここに到着してからの事を思い出す。


(フェリスの言う通りだ。 この子は俺には積極的に触れ合いに来るけど、他の皆には近づいて行かなかったな……。 でも、フェリスの奴、こうなるって分かっていた様な口ぶりだな……)


 そんなフェリスは、今も気持ち良さそうに男の膝の上で寝ている我が子を見て決意した。


『ねぇ共也、その子が了承するならだけど。 この娘に世界を見せてやってくれないかい?』


 思いがけない提案をして来たフェリスだったが、その眼は期待と悲しさが入り混じっていた。


 自分の子供を託そうとしているんだ、そりゃあ不安になるのも当然か……。


「フェリス、この子が本心から俺達に付いて行きたいと言った場合、あんたは素直に認める事が出来るのか? 期待を持たせておいて断る事ほど残酷な事は無いぞ?」

『……私だってお腹を痛めて産んだ娘がいなくなるのは寂しい……。 でも、その可愛い我が娘が見聞を広める機会が目の前にあるんだから、旅立ちを応援しないのは嘘ってもんだよ……』

「そうか、ならこの娘が起きたら希望を聞いてみるよ。 それで良いか?」

『あぁ、その娘の事を頼んだよ、共也』

「お、そう言えば何気に名で呼んでくれたのは初めてじゃないか?」

『ふふ、そうだったかね。 しかし、久しぶりにこうして人と喋った気が…………』


 その瞬間、私の脳裏に1人の少女が涙を流しながら微笑む姿がフラッシュバックした。


「フェリスさよなら、元気でね……」


 あんたは一体誰なんだい……。


 困惑する私だったが、徐々に離れていく彼女の手を取ろうとするがそれは叶わなかった。


「……リス、フェリス!」

『共也、ここは……』

「何を言ってるんだよ。 雪山にあるあんたの巣じゃないか……」

『そうだった、ここは私が子供達と暮らしている巣だったね……』

「どうしたんだフェリス、急に無言になったかと思ったらボ~~っとして……」

『いや、何でも無い……。 何でも無いんだよ……』


 あの娘が誰だったのか、今の私に思い出せない……。

 とても大切な人物だった気がするが、今も名前すら思い出せないのだ、これ以上は考えるだけ無駄だと判断した私は、未だに共也の膝の上で寝続けている子豹に視線を送って起きるのを待った。


(う、う~~~ん……)


 そんなフェリスの視線を感じ取ったのか、目を覚ました子豹は未だに寝ぼけて呆然としていたが、お構いなしに質問するフェリスの言葉に、子豹の目はランランと輝き始めるのだった。


『で、どうするんだい? 共也達に付いて行って見聞を広めるのか。 それとも、兄弟達と一緒にこの山で暮らすのか。 どっちにするか、選びな』

(行く! 共也に付いて行って世界を見て来る!)

『本当に行くんだね? 辛いからと言って途中から逃げかえって来たら追い返すよ? その覚悟はあるんだね?』

(……ねぇ母ちゃん、母ちゃんから見て、私って他の兄弟と比べて成長が異様に早いよね?)

『どうしたんだい急に』

(答えて、大事な事なの……)

『……早いね。 しかも、それはあんたが早熟だと言う訳では無く、これからもその成長速度が衰える事は無いだろうね』

(やっぱり……。 例えば、このまま大きくなって兄弟達とじゃれ合ったとしたら……)

『あんたの予想通りだよ。 手加減を間違えると……殺しかねないだろうね』

(やっぱりそうだよね……。 うん、正直に答えてくれてありがと、母ちゃん。 自分の為にも、そして兄弟達を傷付ける前に、私は共也に付いて旅に出るよ)

『そうかい……。 元気でやるんだよ?』

(うん!)


 元気よくその娘が応えると、フェリスは俺に向き直り静かに頭を下げた。


『少し調子に乗る所が気になるがとても優しい子だ、よろしく頼むよ共也』

「分かった。 この娘が無事に成長して、この山に帰れる事が出来るように責任をもつよ」

『ありがとう。 一緒に行動する以上その娘じゃ不便だろう、名前を付けてやっとくれ』

「良いのか?」

(良い! むしろ付けてくれると嬉しい!)

「そうか、素敵な名前を送らせてもらうよ」


 気軽に引き受けたが、心の中ではネーミングセンスの無い俺が母親の前で名付けすると言う拷問に、悲鳴を上げそうになっていた……。 


 悩む事数分、俺の目端にふと洞窟の外で今も降り注ぐ雪が目に入ると、この娘の名を自然と呟いていた。


「スノウ……、って言うのはどうだろう? 俺達の世界の言葉で雪を表す言葉なんだが……」

(スノウ、スノウ……、気に入った! 私は今からスノウね!)

『スノウか、良いじゃないか。 良かったね、スノウ』

(うん!)


 雪豹の特徴である長い尻尾を振り回し喜びを表現しているスノウがとても可愛く思っていると、フェリスが思いがけない事を口にした。


『スノウ、今から言う言葉を共也と2人で復唱しな、《これから共也、スノウは常にずっと一緒にいる》とね』 

「フェリス、それはもしかして……」

『気が変わらない内に早くしな』


 俺とスノウはお互い頷き合い、手を握ると先程フェリスの言った言葉を復唱した。


「(これから俺、スノウは常に一緒にいる事を誓う)」


 お互いが宣言すると同時に体が淡く光り始め、体の中へと入って行った。


『無事に絆を紡いだようだね、スノウ、これからは共也と一緒に助け合って行くんだよ?』

(分かった! 共也これかずっとらよろしくね!)

『共也、スキルカードを確認してみな、スキル項目にスノウの名前が増えてるはずだよ』



――――――――――――――――――――――――

【名前】

  ・最神 共也


【性別】

  ・男


【スキル】

  ・共生魔法

  ・水魔法:(近くにディーネがいる時限定)

  ・氷魔法:(近くにスノウがいる時限定)

  ・剣術


――――――――――――――――――――――――



「本当に増えてる……。 フェリス、最初に会った時も共生魔法を知ってる風な口ぶりだったけど、人族の専門家ですら知らなかったこのスキルの発動条件を知ってるんだ……」

『前にも言ったが、私は知っていただけ……』


「フェリス、生き残る為に私は戦うわよ!」

『え?』


 先程の少女とは違う緑髪の女性が、リンゴを持って微笑んでいる光景が一瞬にして脳裏に再生された事に困惑するが、私はこの光景を知らない……はず。


「フェリス?」


 平静を保ち動揺を悟られない様に、私は先程の質問に答える。


『さ、さてね……。 共也には悪いが、先程言った様に偶々私が知っていただけであって、詳しい事は説明出来そうに無いんだ』

「そうか……。 分かった、何度も聞いて悪かった」

『良いよ、自分のスキルの情報は知りたい物だしね。 そうそう、後で良いからその魔剣に魔石を吸収させておいておくれ。 ずっとスノウを抱っこして旅する訳にもいかないだろ?』

「魔剣の事まで……。 何故知ってるのか聞いても説明出来ないか?」

『わかってるじゃないか、まあ理由を思いだしたら何かしらの手段で伝えて上げるよ、今はそれで勘弁しておくれ』

「良いように誤魔化された気もするが、まあ自分でスキルを調べるのも楽しみの1つだしな」

『そう言う事。 それじゃ食事も終わった事だし、そろそろ寝るとしようかね。 明日は山を下りるんだろう?』

「まあ……ね……」


 フェリスにそう言われた俺達は、ここまで歩んで来た道程を思い出し辟易するのだった。


『なら山を早く下るのに私に良い考えがあるから、明日を楽しみにしておきな』

「本当か!? 助かるよフェリス!」


 その提案に全員が喜んでいる中、俺達はフェリスの意地悪く笑う顔を見損ねた事を後日心の底から後悔する事となるのだった。 



 =◇===



 俺達が洞窟内で就寝の準備をしている前日の王都では、黒のローブを纏った怪しい集団が、グランク王への謁見を求めて門番と接触している所だった。



新しい絆を結び新魔法獲得回でした

次回は破滅思想の集団で書いて行こうかと。

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