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【共生魔法】の絆紡ぎ。  作者: 山本 ヤマドリ
3章・親善大使として親書を届けに。
59/286

氷の魔石を求めて。

 沢山の氷の魔石を求めてバリルート山脈を登っていた俺達だったが、現在山の中腹辺りまで登った所で猛吹雪に襲われてしまった為、見つけた洞穴の中で暖を取っていた。


 少しだけ時間を遡り、登り始めた頃はまだ順調だったが中腹に差しかかった辺りでバリルート山脈に粉雪が舞い、そして荒れ始めると山に住んでいる小さな魔物達は俺達がこの猛吹雪に倒れるのを期待している様で、チラホラと生えている草葉の陰からジッとこちらを見ているのが分かった。


 考えてみてくれ、草陰などの隙間から多数の目玉が光って俺達を見ている光景を……。


「共兄、私が気配遮断を使って辺りを調べて来ましょうか? 地形などが分かれば、色々と動きやすいでしょうし」

「それも考えていたんだけど、吹雪き始めて視界が広く無いこの状況で皆と離れると遭難しかねない。 それに木陰から覗いているあの目玉共は、常にこっちを監視してる様だから下手に皆と離れると、チャンスと思われた襲って来かねないから止めておこう」


 エリアが皆の食糧を収納袋に入れて管理している関係で、もしジェーンに遭難される様な事になれば、食糧を渡す事が出来無い上に下手をすると……。

 せめてこの吹雪が止み視界が確保出来るまでは、皆で一緒に行動するべきだろう。


「バリスさん、オリビアさん、2人が冒険者として活動していた時は、この様な吹雪で視界が全く効かない場合はどうされてました?」


 室生がバリスさん、オリビアさんの2人に今の様に全く動けない状況に陥った時のアドバイスを求めて質問してみると、バリスさんが答えてくれた。


「そうだな……、無理に行動しても体力を消耗してしまうだけだからな。 出来れば皆が入れるくらいの洞窟を探し出して、そこで暖を取りながら吹雪が止むのを待つのが良いだろうな。

 そう言えば昔冒険者として活動してた時に、この辺りで今みたいな吹雪に襲われて身動きが取れなくなった時があったな。

 確かその時にたまたま洞窟を見つけて籠ったな……。 かなり昔の記憶だから正確な場所を覚えている訳じゃ無いが行ってみるか?」


「行ってみましょう。 このまま吹雪の中を無暗に移動していても、こうも視界が効かない以上いずれ誰かが逸れて遭難してしまうのは確実でしょうし、もしバリスさんの記憶のある場所に洞窟があるようなら、この猛吹雪が晴れるまではその洞窟の中でやり過ごしましょう」

「そうね、この吹雪の中を無暗に動き回るよりそっちの方が安全でしょうから、バリスちゃんが昔発見したって言う洞窟に向かった方が良さそうねぇ~」


 冒険者の先輩であるオリビアさんがそうした方が良いと言うアドバイスをしてくれた事で、曇った眼鏡を拭いていた室生もその洞窟でこの猛吹雪をやり過ごす事に決めたのだが、この大人数が入れる位の大きさである事を祈りながら、その洞窟に向かうのだった。


 バリスさんを先頭にして道の無い雪原の雪を掻き分けながら暫く進んで行くと、岩が覗いている崖の一角に割と大きくポッカリと口を開けた洞窟が現れた。


「おお、やっぱりここで合っていたか。 洞窟内は結構な広さがあるからこの人数でもゆっくり休めるはずだから、吹雪が止むまで中に入って休もうか」

「はい」


 ==


 ここで冒頭に戻る事になる。


 洞窟内で休んでいる間も、魔物達から監視されている視線を常に感じて気が休まる事が無かった。

 特にまだ体が幼いジェーンの消耗が激しいようで、早めに休ませる事にした。


「すみません、皆さんも同じようにここまで来て疲れているはずなのに、私だけ……」


 ジェーンの弱気の発言を聞いた俺達は視線で確認すると頷き合うと、休むのは彼女だけじゃないと思って安心出来る様に女性陣にも一緒に休んで貰う事にした。

 女性陣と一緒に添い寝をしてもう事で休んでも大丈夫なのだと、ジェーンには知ってもらう事にしよう。


「ここにいる皆はそんな事で怒ったりしない。 ジェーンちゃんはまだ体が成長し切って無いんだから、疲れたなら早く寝て明日に備える。

 そして天候が回復したら魔物討伐を手伝ってもらうからね? 私達結構ジェーンちゃんの事を頼りにしてるんだから」


 与一に抱き締められて安心したのか、徐々にジェーンはウトウトとし始めていた。


「……はい、与一さんありがとうござい……ます……す~……」

「やっぱりジェーンちゃんは可愛い……。 可愛いは正義……」


 そして寝入ったジェーンの頭を与一が撫でて、そのまま一緒に寝始めた。


(ジェーンと与一のやり取りを俺達は感動して見ているんだから、菊流さんや羨ましそうに見るのは止めようよ……)


 こうして俺達男性陣は、夜明けまで夜番をする事となり薪や椅子を用意していたのだが、鈴が魔物達が入って来られない様に、洞窟の出入り口を強固な結界で封じてくれたお陰で、俺達もそのまま朝まで寝るが出来る様になるのだった。


「ふっふ~~ん。 男性陣の諸君は私に感謝したまえ!」

「はいはい、感謝してますよ鈴様?」

「ぶ~~!」


 この鈴の調子に乗った一言さえなければ、普通に感謝するんだけどな……。


 ==


 朝になると雪は降り続いていたが、吹雪は止み粉雪がチラホラと振る程度で視界も確保出来る程度だったので、今日は氷の魔石を集めるために魔物達の討伐をする事にした。


「バリスさん ダグラス オリビアさんが前衛で その後ろを菊流、テトラ、俺、魅影が3人をカバーする感じで動き、ジェーン、柚葉、愛璃が遊撃として自由に動いてくれ。

 与一、室生、鈴、エリアが後衛、と言う配置で行こうと思うのですが、バリスさんこうすれば良いって言うアドバイスとか有りますか?」


 俺が昨日の夜に室生と話し合って決めた布陣を伝えると、バリスさんがアドバイスをくれた。


「共也この人数の指揮をするのが初めてなら半々に分けた方が良いぞ、指揮になれてない奴がこの人数を指揮しようとすると、混乱してむしろ危険な状態になったりするからな」

「なるほど、そう言う事なら俺のパーティーにダグラスと柚葉を加えて、残りを室生の指揮をバリスさんがサポートする形で魔石集めをして貰って良いですか?」


「良いぞ、だがあの洞窟を拠点にしている以上、そこまで離れないように活動するつもりだが構わないか?」

「はい、ではまた後で合流した時にでもお互い結果報告をする事にしましょうか」

「ああ、それとここの動物達を傷付けないように注意して行動しろよ、少しでも傷を付けると奴らは大量の仲間を呼ぶ習性を持ってるからな」

「大量にですか……、気を付けます」


 俺達はバリスさんのその言葉に頷くと、パーティーを2組に分けて粉雪が舞う雪山で魔石集める為の活動を開始するのだった。




 俺達のパーティーは室生の組と分かれてからも、順調に魔物を発見→討伐を繰り返して魔石を手に入れていた。 だが今、俺達は全速力で粉雪が舞う雪原を走り回っていた、何故かって? それは俺達の後ろから白い体毛に覆われた雪狼達の群れに追われているからだよ!


「共也さん、何でこの雪狼たちは執拗に私達を追いかけてくるんですか~!!」

「与一が偶然近くを歩いていた雪狼に矢をかすらせて怪我を負わせたんだ。 それに怒った雪狼が仲間を呼んだんだよ~!」

「失敗だった……。 共也この償いは私の体で払う!」

「与一随分余裕あるな! そんな冗談を言ってる場合か~!」

「ぬう、共也のガードはいつも固い……」


 こうして逃げ回っている俺達だったが、柚葉がふとある事に気付いた。


「あれ!? ダグラスがいないよ共也!」

「は? 本当にいない! ダグラス~、てめえどこ行った~!!」


 俺達は見当たらないダグラスに悪態を付きながらも、手を出したらいけない以上雪狼達が諦めてくれるまで雪原を全速力で逃げ回るしか無かった。


 当のダグラスはと言うと、この雪原に僅かに生えている草むらの中に身を隠して、俺達が逃げ回っている様子を見続けていた。


「ふう。 この重い両手剣を背負ったままあの数の雪狼から逃げ回るなんて御免だからな、悪いが共也頑張って逃げ切ってくれ!」


⦅トントン⦆


 草むらの中に隠れて、雪狼達から逃げる俺達の様子を伺っていたダグラスの肩を軽く叩く存在が現れる。


「なんだよ、今隠れてる所なんだから後にしてくれ、見つかっちまうだろうが」


⦅トントン⦆


「しつこいな! だから後にしてくれって言ってるだ……って、これ誰の手だ?」


 自分の肩をしつこく叩いてくる存在の手を良く見ると、その手は大きくそして手は白い毛に覆われている事を確認したダグラスは、慌てて後ろを振り向いたダグラスは、自分の背後に広がる光景を見て絶句して息を飲んだ。

 そこには白い体毛に覆われたゴリラ達がダグラスを取り囲む様に並んでいたからだ。


 その中の1頭のゴリラが両手を組んで、ダグラスに熱い視線を送っていた。


「な、なんだよ……」


 ダグラスのその言葉を聞いたゴリラ達は何故かざわつき始め、肩に手を置いていたゴリラが口を開く。


「うほ!!♡♡♡♡♡♡(顔も素敵だけど声も素敵!!)(幻聴)」


 少しずつにじり寄って来る()()()()に、色々な意味で身の危険を感じ取ったダグラスは背を向け草むらから勢いよく飛び出して逃げ出した。 のだがゴリラ達もダグラスを逃がすまいとして狂気の宿った顔で後を追い駆け始めた。


「うっほーーーー!!(逃がさないわよダーリン!)」


 大量のゴリラから求婚を受けたダグラスは雪原を逃げまどう。


「手前ら来るな、どっか行け! 俺は綺麗な姉ちゃんが好きなんだよ!! お前等は同種のオスでも追っかけてろ!!」

「ウホ!♡♡♡」

「違う! 俺はお前等と同種の雄じゃねえ!! と、共也、た、助けてくれ! 俺の貞操がゴリラ達に奪われちまう!!!」

「無理に決まってるだろうが!!」


 ダグラスがゴリラ達から必死に逃げ回っている姿が目に入ったが、俺達も俺達で雪狼から逃げる事に必死でとてもじゃないが助ける余裕なんて有る訳が無い。

 その為、ダグラスが必死に助けを求めて来ても無事を祈る事しか出来なかった。


 追って来ている雪狼を傷付けてしまうとさらに仲間を呼んでしまうため、今はかなり厳しい状況と言えた。


『ガウガウ、バウバウ、ガウガウ!!』


 ああ、追いかけて来る雪狼達の鳴き声が五月蠅い!!


 どうやってこの状況を切り抜けようかと走りながら考えていると、急に雪狼とゴリラ達が追いかけて来るのを止めると体を震わせ始めた。

 さっきまであれだけ獰猛に襲って来ていたのにどうしたのか、と俺が考えていると突如俺達と雪狼達の中間地点の雪原が爆発したかの様に雪煙が立ち昇り、その影響で地面が衝撃で揺れた。


 ダグラスが息を切らせながら、俺達と合流して雪煙が晴れるのを油断しない様に待っていると、雪煙の中から3~4(メートル)ほどある雪豹が現れた。

 そして、その雪豹は狼やゴリラ達を威嚇すると、雪狼やゴリラは大人しくなり俺達を名残惜しそうに何度か見た後に諦めて逃げ去って行くのだった。


 俺達が呆然としていると、その巨大な雪豹が近づいて来たので臨戦態勢を取ったのだが、予想外の事が起きた為、戦う気は失せてしまった。


『ここの動物達が妙に張り切ってたのは、お前達が原因か?』


 巨大な雪豹が喋りかけて来た事に俺達が驚いていると、雪豹は構わずに話しかけて来る。


『普段こんな山奥に来ない人間が何しに来たんだい? 事と次第によっては生きて返す事は出来ないよ?』


 歯を剝き出しにして威嚇してくる雪豹だが、無暗に俺達と敵対する気は無いようで、俺達はどう答えたものかと悩んでいると、エリアが代わりにフワフワの毛皮に覆われた雪豹に答えてくれるのだった。


「雪豹さんと呼べば良いのでしょうか?」

「今は好きに言えば良いよ、それでお前達はこの雪山に何を目的で入って来た」

「私達は氷の魔石がどうしても必要になったので、魔物を討伐をして集めに来てたのです。 途中で色んな動物達に絡まれて追いかけられたのですが、山の平穏を脅かすつもりは全くありません。 もし、山の平穏を乱すような事になっていたのなら謝罪いたします。 申し訳ありませんでした」


 エリアの謝罪を聞いた事で、雪豹もこちらを威嚇する事を止めて話し合う事を選択してくれたようだ。


『ほう、ちゃんと謝罪してくれるのかい。 ならその事に対してはもう何も言わないよ、しかしこんな山奥まで来た目的が氷の魔石を集めに来たのかい。 私達を狩に来た訳じゃないんだね?』

「はい、私達はあなたのように会話を行える雪豹さんがいる事も初めて知りましたよ?」

『そうかい? まあ私達は滅多に人に姿を見せる種族じゃ無いから、知らないのも無理はないか。

 真っ先に謝罪してくれたそこの白髪の嬢ちゃんに免じて、一応その言葉を信じる事にしようじゃないかい。

 それに氷の魔石が欲しいなら私が巣にしている場所に沢山あるから、それを渡すから全部持っておいき』


 俺達は氷の魔石を譲ってくれると言う雪豹の提案に喜ぶが、あまりにも都合が良すぎる展開に警戒を強めていた。


『そう警戒心を強めるものじゃないよ、目的の物を渡してさっさとこの山を下りて欲しい。 それだけだからね。

 こうも山が騒がしいと、子供達も興奮してしまって落ち着いて子育てが出来やしない』


 俺がその言葉を完全に鵜呑みする事は出来ないので、バリスさん達と合流してからその事を相談してみたいと雪豹に伝えると、すぐに了承してくれた。


「俺達の仲間が別の場所で活動しているので、少し時間を貰っても良いかな? え~っと……」

『私の事はフェリスとでも呼んでくれれば良いよ、昔その名で呼ばれていたからね。 それで? まさか私だけに名乗らせるわけじゃないわよね?』

「あ、すいません俺達は……」


 先にフェリスに名乗らせてしまった事を謝罪して、まずはダグラスが名乗り、そして皆が続いて自己紹介を済ませると、最後に俺が名を名乗るとフェリスが妙な反応を示した。


『共也……って言ったね、お前もしかして共生魔法と言う魔法を所持していたりするかい?』


 俺はその一言に心底驚いて、フェリスに返事を返す事が出来なかった。


『その反応はやはりお前はあの魔法を持っているんだね……。 そこの剣の石の中に住んでいるスライム、警戒しなくても攻撃しやしないから安心しなよ』

(本当……に?)

『ああ、私にその知識が有ったから確認しただけだよ』

(了解~。 じゃあ、警戒解く……ね?)


 ディーネが剣の中から警戒していてくれたのにも驚いたが、ディーネを見破ったフェリスにも驚いた。


「フェリス、共生魔法の事を知ってるって言ってたけど、それってどういう……」

『お待ち、お前の仲間達が帰って来たみたいだから、まずは私を攻撃しないように説明しに行っておくれ』


 バリスさんや室生は俺の前に巨大な雪豹がいるものだから臨戦態勢を取ったままこちらにユックリと近づいて来ていた。


「そうだった……。 フェリス、向こうの人達に説明してくるから少しだけ待っててもらって良いか?」

『早くしておくれよ。 幼い子供達が心配なんだから』


 バリスさん達と合流すると、全員が巨大な雪豹のフェリスの姿に警戒をしていた。


「共也……、あれは雪豹じゃねえか。 しかもあれだけ大きな個体は初めて見るぞ……」

「本当ね……、一体何年生き延びた固体なのかしら……」


 ベテラン冒険者だった2人も見た事が無いほど巨大な雪豹であるフェリスの名前や、氷の魔石が巣の中に沢山ある事、それを譲るから早めに山を下りて欲しいとフェリスが願っている事をバリスさんに伝えると、雪豹に交渉が出来る知能がある事にも驚いた様だ。


「言葉を話す雪豹にも驚いたが、沢山の氷の魔石を譲ってくれる事にはもっと驚いたな……。 だが、魔石の数が揃うなら俺達はもうバリルート山に用は無いから、俺はそれは構わないぞ?」

「バリスさんがそう言うなら、フェリスの提案を受けましょうか」


 俺達がフェリスの提案を受け入れて氷の魔石を譲り受けたらなるべく早く山を下りる事を誓うと、彼女は俺達を巣まで先導しようとして、雪原を歩き始めた。


『こっちだよ、ゆっくり歩くから付いといで』


 こうして俺達は予想外の出会いではあったが、フェリスの巣にある氷の魔石を譲ってもらう事になり、予定より随分早く兵士達の為に帰還する事が出来そうだった。


雪豹のシータとの邂逅でした。

次回は帰還まで書けると良いな。

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