室生の新たな力、そして武器新調。
【ドワンゴ武具店】そこは幼馴染の1人である鉄志が弟子入りして、住み込みで働いている鍛冶店だ。
鉄志から室生へ重要な伝言を頼まれていた事を、すっかり忘れていたダグラスが愛璃に殺されない為に、予定に無かったその店に急遽訪れる事にしたのだった。
「なぁ、室生の射撃スキルを活用する武器が出来る『かも』ってどう言う意味なんだと思う?」
「前貰った手紙では、黒色火薬はまだ見つかっていないと書かれていたから、火縄銃の類では無いと思うが……。 正直、鉄志に会って説明を受けないと何とも言えないな」
「う~ん、黒色火薬って硫黄を使うんだよね。 どこかに火山でもあれば案外簡単に採れるんじゃないかしら?」
「愛璃、ガスマスクが開発されていないこの世界では、火山ガスの対策が出来ないからそれは難しいと思うぞ」
「そっかぁ……」
皆で入り口前でああでも無い、こうでも無いと話し合っていると、とうとうダグラスの我慢が限界に達してしまったらしく早く中に入ろうと騒ぎ始めた。
「なぁ、外で話し合っててもしょうがないし、いい加減中に入ろうぜ?」
「……ダグラス? こうなったのは誰のせいだか分かってる?」
「ひっ! と、取り合えず先に入るからな!!」
「あっ! 待て、ダグラス!」
―――カラン、カラ~~~~ン。
ダグラスが扉を開けると最初に目に入ったのは、カウンターの席に座りドワンゴ親方が様々な武器の手入れをしている所だった。
「何だ、ダグラスじゃねえ……か……って、共也、それにエリア嬢ちゃんもいるじゃねえか!? 生きてたのか!?」
「えぇ、何とか生きて帰って来ました」
「ご無沙汰しております親方」
「おぉ、おぉ! 良くぞ、良くぞ生きて帰って来た。 そんな所に突っ立っていないで、さっさと中に入って来い!」
慌ただしく人数分の椅子とお茶を用意したドワンゴ親方は、俺達が生きて帰って来た事が余程嬉しかったのか、終始笑顔だった。
「それで、今日来たのは鉄志への生存報告か?」
「それもあるのですが、俺は親方にこの魔剣の報告と、室生が何日か前に鉄志に呼ばれていたらしくて。 その要件も済まずつもりで、この武具屋に訪れたんです」
「鉄志が? あぁ、それでか。 納得したぜ」
「何かあったのです?」
「あいつ、何日か前から店の隅でいじけてやがったから、鬱陶しいったらなかったぜ……」
「そ、それは申し訳なかった……。 全ての苦情はこのダグラスに言って下さい、親方!」
「悪かったって! 何度も謝ったんだから、もう許してくれよ!」
謝罪するダグラスの姿に、ドワンゴ親方も不思議そうに頭を捻っていた。
「おい共也。 何でダグラスは室生に謝ってんだ?」
「実は……」
俺は数日前にダグラスが鉄志に室生への伝言を受けていたけど、すっかり忘れていた為、来るのが今日になった事を伝えると親方は大声で笑っていた。
「アッハッハ! それで室生への謝罪か。 そんなミスを仕出かした彼奴を弄るだけで済ませる、お前達の関係が眩しく見えるよ。 共也、あいつ等の事を大切にしろよ?」
「はい……」
今も言い合いをする2人だが、どこかお互い楽しそうにしていた。
「ふふ。 共也、取り合えず鉄志の奴を呼んで来るから少し待ってろ」
そう言うと、ドワンゴ親方は鉄志を呼びに店の奥へ入って行った。
鉄志と会うのも久しぶりに感じるな。
親方に俺とエリアが帰還した事を伝えられたのだろう。 店の奥から慌ただしく駆けて来ようとしている足音が数人分聞こえて来た。
「共也! エリア王女!」
「鉄志!」「鉄志さん!」
「本当に2人共生きてる……。 良かった……、本当に良かった……。 自分はてっきり……」
余程俺とエリアが行方不明だったのを気にしていたんだろう。 跪き両手で顔を覆った鉄志の指の間から、数滴の涙が零れ落ちた。
「勝手に殺すな! ほら、立て鉄志……。 心配してくれて……ありがとうな」
最後は小声だったから、鉄志に聞こえたか分からないが、もう一度言えと言われても恥ずかしいので確認はしないが……。
そして、鉄志の後を追って店の奥から出て来たリルちゃんとサラシナさんを加えて、俺達が帰って来てから起きた事を話すのだった。
「この世界に来てから何処かおかしいとは思っていたが、そこまで堕ちていたのか光輝の馬鹿野郎が!」
「鉄志兄……」
悔しそうにする鉄志をリルちゃんに任せて、ドワンゴ親方は豊満な顎髭を撫でながら俺の説明を黙って聞いていた。
「そうか、お前達は冒険者ギルドのクエストで、バリルート山脈に氷の魔石を取りに行くのか……。 共也、ここに来たのも何かの縁だ。 装備を新調して行け」
「え、でも……」
「お前、砂漠を抜けてから装備の手入れをしていないだろう? その皮鎧、お前の目から見たらまだまだ現役に見えるだろうが、儂から見たら何時壊れてもおかしくない状態だぞ。 それと……」
ドワンゴ親方はジロリと幼馴染達を見渡すと、大きく溜息を吐いた。
「お前達はバリルート山脈を舐めすぎだ。 防寒具はオリビアが用意してくれるかもしれんが、このままの装備で向かってみろ。 まず間違いなく手酷い痛手を受ける事になるぞ!?」
「うぐ……」
「鈴、分かってくれた様だな。 ではサラシナ!」
「あいよ。 さあ、女性陣は店の奥で採寸しようかね」
ゾロゾロと店の奥に連れて行かれる女性陣達を見送ると、鉄志は室生に真っ白な布に包まれた棒の様な物を差し出した。
「鉄志、これは?」
「布を取って見てくれ」
絹擦れ音を響かせながら巻かれていた布を取ると、そこには装飾の施されたライフル銃の様な物体が現れた。
「て、鉄志、これはまさかライフル銃か!?」
「いや……。 室生、興奮してる所悪いんだが、銃口を見てくれ。 穴が開いてない代わりに白い宝玉がはめ込まれているだろ?」
「あぁ、確かにあるな」
「その宝玉から魔法攻撃を……いや、説明するより実際に見て貰った方が早いな。 室生、何の属性でも良いから魔石をマガジンの部分に取り付けてある透明な宝石に吸収させてくれ。 すると宝玉の色が魔石の属性に合わせた色に染まるはずだ」
前に鈴に貰った魔石を取り出した室生は、鉄志の言う事を素直に聞きマガジンの部品に取り付けてある宝玉に近づけるとスッと何かが抜けた感覚と共に、宝玉の色が水色へと変化した。
「鉄志、水色に変化したぞ?」
「じゃあ、さっきの魔石は水属性だったって事だ」
「なるほど! で、次はどうすれば良いんだ!?」
「室生、落ち着けって。 使い方を説明する前に、聞きたい事があるんだよ! 室生、銃を構えて見てくれないか?」
「こうか?」
言われた通り銃を構えた途端、室生の雰囲気が変わった。
「どうだ? スキルが発動してる感触はあるか?」
「不思議な感覚だな。 一歩引いた場所から自分を見ている様な感覚だ……。 鉄志、これが射撃スキルが発動しているって感覚なのか?」
「恐らくな。 その武器を構えた途端に室生のスキルが反応する以上、その武器は成功って事で良さそうだな」
「助かったよ室生。 これで俺も皆の足手まといにならなくて済む」
「ふふ、お前の事が心底羨ましいよ、室生」
「俺がか?」
「あぁ、自分は戦闘力が全く無いから、お前達と一緒にバリルート山脈に登ると言えないから……」
「あっ……」
俺は……馬鹿だ……。 鉄志のスキル構成は完全に鍛冶師向きで、もし戦闘に巻き込まれた場合ゴブリンにさえ苦戦すると言う事を知っていたはずなのに……。
「良いんだよ室生、自分は戦闘で貢献出来ないが、代わりに将来優秀な武具を制作してお前達を守ると決めたんだからな。 そんな決意の元作り上げたこの魔道銃は、与一の弓に組み込まれた親方の技術で作り上げた、自信を持ってお前達に提供出来る自作第1号の武器だ! 遠慮なく受け取ってくれ!」
「鉄志……。 この魔道銃、必ず役に立てて見せるからな!」
「あぁ!」
室生は感動して魔道銃を握り締めていたが、ふとまだ使い方を教わっていない事を思い出した。
「鉄志、魔石を吸収させた所までは教わったが、まだ打ち方を教わっていないんだが……」
「あ、悪い……。 使い方は……」
マガジンの部分には6個の透明の魔石が取り付けられており、1発撃つごとに色が上がって来るなど、詳しく説明している鉄志だった……が。
「はぁ~~、やっと計測が終わったわ……」
菊流達が計測を終えて店内に戻って来たが、一様に疲れを見せていた。
「それにしてもさ、愛璃~~」
「何よ柚葉、さっきから嫌らしい目付きでジロジロ私の胸を見ないでくれるかな……」
「いや、中学の頃に比べて随分と育ったな~~ってね?」
「しょ、しょうがないじゃない、勝手に育つんだから……って、きゃあ! 与一!?」
「おぉ、この弾力、張り、ボリューム、まさに美乳……」
その瞬間、男達全員の視線が愛璃に向けられた。
「ちょ、ちょっと与一。 男達に見られてるから、いい加減に止めて!?」
「もうちょっと、もうちょっとだけ……」
「や、やめてぇ~~~!」
恥ずかしそうに身悶えする愛璃の姿に、男達の視線は釘付けだ。
「……与一、いい加減にしなさーーーい!」
我慢の限界を迎えた愛璃は、与一を背負い投げの要領で投げ飛ばした。
「あ~~~、れ~~~~!」
「ちょっ!? 与一、こっち来んな!」
だが、与一を投げ飛ばした方角には、魔道銃を持つ鉄志達がいた。
「「「グベ!」」」
3人が折り重なった拍子に、室生は無意識に引き金を引いてしまった。
「あっ……」
その間抜けな室生の声と共に、魔道銃の先端が強く光り輝くと店内に大きな音を響かせた。
―――バガーーーーン!!
「うわあぁぁぁぁぁぁ!! こ、小遣いをつぎ込んで、ようやく直したばかりの店の壁がぁ!!」
魔道銃に充填されていた色は水色だった……。 どうやら誤射したアイスアローが、店の壁を破壊して大穴を開けてしまった様だ……。
「あぁ、また店に大穴が……」
崩れ落ちてしまった親方に、俺達は何も言う事が出来ずにいた。
そんな中、俺の袖を引くのはこの惨状を招いた与一だった……。
「ねぇ共也、私悪く無いよね?」
「誤射したのは室生だが、原因を作ったのはお前だろ、与一……」
「私は悪く無いもん。 ただ愛璃の胸を揉んでいただけだし、過剰に反応した愛璃が悪い」
その無責任すぎる与一の良い訳を聞いた愛璃がブチ切れた。
「与一~~~~~!! 一発殴らせなさい!!」
「助けて共也、庇ってくれたら恋人になって上げる」
「いらんし!」
「なん……だと!?」
本気でショックを受けている様子の与一だが、俺を盾にして愛璃から逃げるのは忘れない。
「共也、退いて! 与一を殴れ無いわ!」
そんな大声で騒いでいる以上、店の奥で女性陣のサイズを纏めていたサラシナさんも何事かと慌てて飛び出して来た。
「あんた等、五月蠅いよ! それに、さっきの破壊音は一体何だ………い」
「わぁ、またお店に大穴が空いちゃってる!」
店に再び大穴が空いている現状を見てしまったサラシナさんはそのまま固まってしまい、リルちゃんは何故か楽しそうにはしゃいでいた。
「か、母ちゃん、リル、これにはちゃんとした理由があるんだ!」
『まずい!』と思った親方だったが、よくよく考えると今回の事に関しては自分が一切関わっていない事に思い至った親方は、鉄志達を指差した。
「こ、今回の件は鉄志達が引き起こした事だ!」
「何ですって!? 鉄志、よくも店に大穴を開けてくれたね!?」
「違うんです、サラシナさん! 今回のは事故。 そう、事故なんですよぉ!」
「ほう、事故かい。 鉄志、40秒以内に説明しな!」
その某有名アニメの台詞に吹き出しそうになった俺達だったが、何とか耐えきる事に成功した。 説明を求められている鉄志も勿論気付いているが、サラシナさんの迫力にそれどころじゃない。
「は、はい! 幼馴染の室生の為に作った武器が暴発してしまい、店の壁を破壊してしまいました……」
「父ちゃんと同じことするんじゃないよ! 壊れた壁の修繕費はもちろん鉄志の給料から天引きするから、そのつもりでね!?」
「はい……」
鉄志の給料がいくらか分からないが、暫くタダ働きなのは確定だろう……。
全員がそう思っていると、無意識とは言え壁を破壊した張本人である室生が立ち上がると、サラシナさんの前に跪くと優しく右手を手に取った。
「サラシナさん」
「ど、どうしたんだい、室生君!?」
イケメンの室生に手を取られたサラシナさんは、頬を染めながらも手を振りほどこうとするが、どうやら満更でも無さそうだ。
「か、母ちゃん!?」
「今良い所なんだから少しお黙り、ドワンゴ!」
「奥さん、今回は本当にすみませんでした。 壁を破壊したのは私の不注意でもある為、鉄志だけの責任ではありません。 ですから、ここは寛大な処置をお願い出来ないでしょうか?」
いくら室生の行動に頬を染めているとは言っても、あの金銭に厳しいサラシナさんだ。 必ず彼女は室生の願いを切って捨てる。 俺達はそう思っていた。
「あ、あらやだ! 室生君って眼鏡の似合う良い男じゃないかい。 そんな君にお願いされたなら、聞かない訳にはいかないじゃない」
「え!? 母ちゃん!?」
「お黙りドワンゴ! でもねぇ、許すとなると私もいくらか金銭的ダメージを受ける以上、もうちょっとサービスしてくれても良いとは思わないかい?」
「どうかよろしくお願いします、サラシナ様」
何を求めているのか理解した室生は、サラシナさんの手の甲に軽くキスをした途端、壁を破壊された事での怒りは何処へやら、そこには今まで見た事が無い程だらしがない顔で微笑む彼女がいた……。
「もう、しょうがないねぇ♪ 室生君に免じて今回だけ許して上げるよ!」
「ええぇぇぇぇぇ~~……、儂の時と対応が違い過ぎねえか……」
「ドワンゴ、さっきから五月蠅い! それと鉄志」
「は、はい!」
「いくら許したとは言っても、壁の破片は除去しておきなさいよ? それじゃあ私は、女性陣のサイズ調整の続きをする為に店の奥に戻るから、男共の作業もチャチャっと済ませなよ。 ふんふふ~ん♪」
サラシナさんはそれだけ言い残すと、鼻歌を歌いながら奥に戻って行った。
「…………室生ーーー!!」
「鉄志、抱き着くなって!」
「そうは言うが、4か月位タダ働きになる所を救われたんだ。 お礼位言わせてくれよ!」
「お前にはこの銃を作って貰った恩があるからな、それでチャラって事で良いからさ? ……分かったならいい加減に離れろ!」
「グス……。 分かった、でももっと良い物を作るから、その時は遠慮なく受け取ってくれよ」
「あぁ、期待しとくよ、室生」
握手をして約束を交わした2人は、その後銃のメンテのやり方を話し合ったりしていた。
そして、その後は順調に男性陣の装備も更新された所で、俺は魔剣の報告をするべくドワンゴ親方をカウンター席に誘った。
魔剣の話しだと察したドワンゴ親方は、人数分のお茶を用意すると全員の前に置いて行った。
一口お茶を含み落ち着いた親方は、早速話を切り出した。
「さて共也、お前は店に来た時に、儂に魔剣に関する報告があると言っていた。 行方不明になっていたこの1か月半で、その魔剣に関して何か分かった事があったのか?」
「はい。 それでですね親方、魔剣の事を報告する前に紹介したい者がいるのですが、驚かないで欲しいんですが約束出来ます?」
「偉く慎重な物言いだが……。 まぁ良い、色々な多種族と取引をして来た儂が今更ちょっと見た目が違うからと言って驚く様な事は無いわい。 良いぞ、そいつを呼んで来い」
「ありがとうございます」
親方から約束を取り付けた事で、俺は剣の柄に手を触れてディーネに念話で話し掛けた。
(ディーネ、出て来て貰って良いかな?)
(は~い)
カウンターの上にポヨンと現れたディーネは器用にスライムボディを凹ませて、親方に対して頭を下げた様に見せていた。
(ディーネです、よろしく……ね?)
「…………はぁ? そのスライムは何処から? いや、その前に今の念話はスライムから?? いやいや、ハッキリと意思を持つスライムなぞ聞いた事が無いぞ???」
理解が追いつかず興奮する親方が少し落ち着くのを待ってから、俺はディーネや魔剣に関して説明していく。
「なるほど……。 柄に嵌められていた宝玉に魔石を吸収させる事で……。 儂達が発見した新技術に少しにているが、そもそもディーネは何故魔剣にその機能がある事を知っていたんだ?」
そう、それは俺もずっと知りたかった事だ。
暫く沈黙していたディーネだったが、少しすると何時もの間延びした念話で返答してくれた。
(ん~~~~。 ディ~ネにも何故知ってたのか、分かんな~い、何となく知ってたの~。 ごめん~ね?)
ん~~。 やっぱり前回と同じ答だったか……。
「そうか、分からないと本人が言う以上、答えを求めてもしょうがないな。 そういう機能が付いていた魔剣があるって分かっただけでも良しとするべきだな。 ついでに聞きたいんだがディーネ。 他に何か魔剣に関する事で何か知ってる情報とか無いか?」
(魔剣? ん~、やり方は、わかないけど~、魔剣と魔剣を~融合させるやり方があったはず~?)
「なっ! 出来るのか! 魔剣と魔剣との融合が!」
(やり方は~、分からないけど~。 見た事があるよ~な? 無いよ~な?)
「マジでか、本当に出来る事が証明出来れば世紀の大発見じゃねえか! ディーネありがとうよ、また一歩魔剣制作に必要な情報が手に入ったぜ!!」
親方は凶悪な笑顔をディーネに向けると、触手を左右に振って嬉しそうにしている。
(作れると良い~ね、魔剣)
「ああ! 俄然やる気が出て来たぜ! でも魔剣を融合させるって事は、魔剣が2本必要って事じゃねえか……。 ふぅ~む……母ちゃんに頼む」
『そんな金は出さないよ、やるなら自分の小遣いでやりな!』
店の奥で作業をしていたはずのサラシナさんの声が店内に響き渡った事で、親方も諦めた様だ。
「はぁ…。 まぁ、急ぐ研究でも無いし、またゆっくりするか……」
こうして魔剣の報告、装備の新調をした事で用事を終えた俺達は、店を出ようとした所で鉄志に止められた。
「皆の武器にも属性石を嵌める技術を使ってあるから、後で使ってみた感想を教えてくれ」
「わぁ、ありがとう鉄志! さっそくクエストの時に試してみるね?」
「あぁ、何か違和感があるようなら言ってくれ、調整するから」
そう言って各々が得意とする武器を手渡して行く鉄志が前行っていた台詞を思い出した。
(皆の命を守る武器を作る……か)
その言葉を思い出した俺は彼の肩に手を置いた。
「何だよ共也……」
「鉄志って本当に俺達の事好きだよな!」
「共也、お前急に何を言って……ぶん殴るぞ!」
「あはは、顔を真っ赤にして怒っても全く怖く無いぞ?」
「ああもう! 取り合えず、バリルート山脈はこの時期かなり寒いって話しらしいから、気を付けて行って来いよ? もう幼馴染がいなくなるなんて嫌だからな?」
その鉄志の言葉に皆黙り込んでしまう。
「鉄志……、そうだな。 無事に帰って来たらお前も誘うから、みんなでどこか飯でも食いに行こうぜ」
「その時を楽しみに待っているさ。 じゃあ皆、バリルート山脈へのクエスト、頑張って来いよ!」
鉄志や親方達に見送られて店を後にした俺達は明日クエストを受ける為の準備を終え、城へと帰還するのだった。
鍛冶屋回でしたが室生に銃?が手に入り戦力が上がりました。
次回はバリルート山脈へを書いて行こうと思います。




