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【共生魔法】の絆紡ぎ。  作者: 山本 ヤマドリ
2章・新たな出会い。
41/284

タイムリミットが近づき。

 ふと目を覚ました俺は何気なく外の様子が気になり岩穴の外に視線を移すと、暗くなった空では星が輝きすっかり夜になっていた。


 起きないと……。


 体を起こそうと力を入れ様とするが、何故か後頭部に柔らかい物体がある事に気付いた……。


 何だこれ?


 頭の下にある物体が気になり手を動かしていると、それはずっと触っていたくなる弾力で出来ていた。


「ひゃ! と、共也さん、くすぐったいですから、それ以上は……」

「ん?」


 艶のある声に反応してそちらに視線を向けると、そこには頬を紅く染めたエリアが俺を見下ろしていた……。 


 ん? エリア? もしかして、俺が今触ってる弾力がある物って……。


 慌てて手を放したのだが遅かった。 そして、改めて自分の態勢を確認すると、やはりと言うか彼女が膝の上に俺の頭を乗せていた。


 分かり易く言うと、膝枕だな。 


「エリア……。 何で俺に膝枕をしているのか教えて貰えるかな?」

「あ、共也さん、おはようございます。 え~っと……。 余りにも気持良さそうに寝ていたので、つい膝枕をして上げたくなって……。 嫌でした?」

「そんな事は無いが……。 取り合えず、次からは確認を取ってからしてくれ……」

「え、次もして良いんですか!?」

「嫌だったら、確認を取ってくれとか言わないさ。 で、返事は?」

「はい!」


 少し名残惜しさを感じつつも起き上がった俺が毛布などを片付けて、出発の準備を始めると北を示す星もハッキリと見える。


「これで最後の毛布っと……。 それじゃエリア、忘れ物は無いよな?」

「ええ、岩穴の中を一通り見回しましたが忘れ物は無い様です」


 必要な物はエリアの収納袋に仕舞い込んだ。 そして、忘れ物が無い事を再度確認した俺はエリアの前に背中を向けてしゃがみ込んだ。


「えっと……。 共也さん?」

「あれだけの血を流した後なんだ、足に力が入らないんじゃないのか?」

「……気付いてたんですか?」

「当たり前だ、食事を取った後も動こうとしなかったら、流石に鈍感な俺でも気付くさ。 乗らないと置いて行くぞ?」

「共也さん……。 ありがとうございます……」


 遠慮がちに背中に乗って来たエリアが、腕を俺の首に回してしっかり抱きついたのを確認すると、俺は彼女を背負って夜の砂漠に足を踏み出した。


「共也さん、昼に私に言った事忘れないで下さいね? 私は執念深い女なんですから……」

「それは怖いな。 だけどエリアとの約束を守る為には、魔王を倒して世界を平和に導かないと叶わないから頑張ろうな」

「そうですね、世界を平和にして皆を笑顔にしない……と……」

「エリア、俺に膝枕をし続けていたって事は、あれからあまり寝て無いんじゃないのか?」

「えっと……」

「俺の事は気にしなくて良いから、そのまま寝て良いぞ?」

「わかり……ました……共也さん、すいませんが……あとは……おねがいしま……す」


 すぅ~~。


 余程疲れがたまっていたのか、その言葉を最後にエリアの声が聞こえなくなると同時に、背負っている彼女から寝息が聞こえ始めた。


 1度エリアを背負い直すと、北で輝く星の位置を確認するとシンドリアの方向に向かって、俺は夜の砂漠を歩き出した。


(共也、背中の……柔らか……い感触を楽しんで……る?)

(ディーネ、五月蠅い!)


 急に念話を飛ばして来たディーネにはドキッ!っとさせられたが、どうせ1人で夜の砂漠を歩き続けるのも暇なので、2人で他愛無い会話を念話でやり取りしながら黙々と夜の砂漠を歩き続けるのだった。



 =◇====



 ディーネと一緒に行動し始めてからさらに1週間が経ったが、俺達は未だにシンドリアを目指して夜の砂漠を歩き続けていた。 


 だが前と違い、ディーネが加わってくれた事で、水の確保が容易になった事が大きかった。 今では俺達は、夜の砂漠を楽しむ余裕さえあった。 


 今日も幸運にも太陽が地平線に顔を出し始めた所で、陽の光を遮ってくれそうな巨岩を見つける事が出来た。 俺達は岩陰に移動すると、夜まで休憩する事にした。


 遅めの晩御飯を調理している間に、今も足を擦り続けるエリアに体調の事を尋ねてみる事にした。


「エリア、1週間経ったけど、まだ立って歩くのは無理そうか?」

「はい、まだ無理そうです。 余程出血によるダメージが大きかったのか、まだ足に力が入らないんです……。 多分ですが、あと数日すれば少しは改善されると思うのですが……。 共也さんに負担をかけてしまってごめんなさい……」

「いや、別にエリアを責めてる訳じゃ無いんだから、そう謝らないでくれ。 明日の夜も俺が背負って行けば良いだけなんだからな」

(そうだよ~~。 共也は……エリアを背負うのって……そんなに嫌がってないし……ね?)

「ディーネ!?」


 慌てる俺の姿を見たエリアは、胸を隠すように腕を交差させて俺に見せない様にしていた。


「誤解だって! ディーネ、後で覚えておけよ!!」

(本当の……事を……言っただけなのに?)


 出来る限りの弁明はしておいたが、エリアはまた俺の背中に乗ってくれるのだろうか。


 明日もエリアを背負う事にした俺の言葉を聞いて、妙に嬉しそうな返事をするエリアに、俺はもしやと思ってカマを掛けてみる事にした。


「……エリア」

「はい?」

「もしかしてだが……。 もう普通に歩けたりする?」

「……い、いいえ? まだ歩けませよ? 急にどうしたんです?」

「何だか怪しいな~……。 未だに歩けないと言ってる割りに、俺が背負うと言うと妙に嬉しそうに微笑んでいるじゃないか……」

「そ、そんな事は無いでござるよ?」


 エリアは動揺すると口調が変わるクセでもあるのか、彼女はまたも普段は使わない『ござる』を口にした。 怪しいと思った俺は彼女の目を真っすぐ見据えたのだが、疚しい気持ちでもあるのかすっと視線を逸らした。


「エリア?」

「ち、違うんです! 足に力が入らないのは本当なんです!」

「じゃあ、何で視線を逸らしたんだ?」

「そ、それは……。 です……」

「何だって?」

「共也さんに背負って貰える事が嬉しいからですよ!! これで良いですか!?」

「お、おう……。 ごめんな疑って……」

「謝らないで下さいよぉ~~、余計に恥ずかしくなるじゃないですか!!」


 正面から『背負って貰える事が嬉しいから』と言われてしまっては、流石にこれ以上追及する事など出来ない。 何処となく気恥ずかしくなってしまった、俺は赤く染まった頬を指で搔くのだった。


(いちゃいちゃ~?)


「「違う!!」」


 2人と1匹で雑談や食事をしながら、今日も夜を待つ。


=◇◇======


【シンドリア王国】


 場所は変わりここはシンドリア王国会議室内。


 今日も2人に関する情報が上がって来なかった……。


「とうとうエリアと共也が行方不明になってから、今日で1か月か……。 それにしても、目撃情報すら1件も無しとは、一体あの2人は何処に飛ばされたと言うのだ……」

「陛下……」


 今も各地に散っていた兵士達の芳しくない報告ばかり聞かされて、陛下も何処か落ち着かない様で机を指で何度も叩いている。 


「お父様。 いい加減に諦めて、エリアは死亡したと言う判断を下して下さいませんかね?」


 そこに、最大のストレスの原因である人物が、発言の許可を得ていない状態のままグランク様に声を掛けた。 


「ダリアお姉さま!? まだそんな事を言ってるのですか!!」

「クレアの言う通りだ。 確かにエリア達が行方不明となって1か月、一切の目撃情報すら無い状態が続いている。 だがそれは逆に見れば、発見もされ無い程遠くに転移させられた可能性が有ると言う意味にも取れる。 死亡したと言う結論を下すのは、時期尚早だと思わんか? なぁダリアよ」

「確かに時期尚早かもしれません。 ですが、このままだと国の運営にも影響が出て来ますが、お父様はそれを良しとするお考えなのですか?」

「それは……」


 確かにダリアの言う通り、最近各地の領主に会わないと行けない予定が立て続けに組み込まれ始めているのも事実だ。 だが私はあの2人がそんなに簡単に死んだと言う判断を出す気は無い。


 だが……。


 一度大きく溜息を吐いた私は、改めてダリアに向き直る。 


「ダリアの親族を軽視する言い方には腹が立つが、いつまでもエリアの不在を国民達に黙っておく事が出来無いのも事実……か」

「そんな、お父様!?」


 そのグランク王のエリアの死亡を認めかねない発言に、クレアも驚いて止めさせようとして口を出そうとしたが、どうしてその様な考えに至ったのか。 その理由を父であるグランクが話し始めたため、黙って聞き入るしか無かった。 


「もしエリアがこのまま戻らずに国に問題が起きた場合、民が一番困ってしまう立場にいると言うのは。 クレア、第二王女の立場であるお前なら理解できるだろう?」

「分かってます。 それは分かってます……ですが!! あっ……。 すいません語気を荒げてしまって……」

「良い、内容が内容だ。 私の言葉を批判したくなるのは当然だろう……」


 しばらくグランク王は一言も発せず何かを考えている様子だったが、暫くするとダリアの事を1度鋭く睨むと重い口を開く。


「ダリアよ」

「はい、お父様?」

「2週間だ……。 あと2週間立っても目撃情報すら上がらない場合、2人は死亡したと判断してクレアとお前の王位継承権の位を上げる、それで良いな?」

「それは良いのですが……。 私の継承権はクレアの下ですか?」

「当たり前だ。 元々お前自身の素行の悪さによって1度王位継承権が剥奪されたのだ、自業自得と思いなさい。 その事を考えれば、クレアの下とは言え王位継承権2位と言う地位を得ている現状に満足すれど、不満を言われる筋合いは無いと思うのだが?」


 その指摘を受けてダリアの表情はとても穏やかに見えたが、心の中では父である王に対して毒を吐きまくっていた。


(ちっ! この老いぼれが、昔の事をいつまでもネチネチと言いやがって!! そもそもお前のような老害が国の王として君臨しているから、私の所有物であるこの国の人間共を好きに出来ないんだろうが!)


 だが、ここで素を曝け出してしまうと首が物理的に飛んでしまう事を理解しているダリアは、表情筋が痙攣しそうな程強引に笑顔を作った。  


「はい、お父様、今後は心を入れ替えて国の為に尽くそうと思っているのでご指導の程をお願いします」

「本心から出た言葉なら喜ばしい事だが、お前のその軽い言葉を儂が信じると思わん事だな」 


 そのグランクの言葉に、ダリアは引きつる笑顔を父である王に向けているが、彼を見る目は笑っていない。


(いちいち、いちいち、ねちねちと五月蠅いわね老害が!!)


 そう心の中で罵倒するが、やはり口には出せない……。 


「お父様、2週間ですね? 2週間後に開かれるこの会議までに、エリアの生存か目撃情報が一切上がっていなければ、私の王位継承権の順位をあげてくれると約束してくれますか?」

「お前だけじゃなくて、クレアも……だがな。 だが自分の妹が行方不明なのに、妙に嬉しそうじゃないかダリア」


 『妹』その一番聞きたく無かった台詞を父である王から聞かされた事で、ダリアはとうとう我慢の限界を迎えてしまい弾けたように顔が醜く歪んだ。


「はっ! 妹? 王位継承レースに参加している以上、姉妹などただの政敵! そして、その順位を付けたのは他ならぬあなたではないですか! お父様!」

「……やはりそっちが本性かダリアよ」

「それこそ今更ですよお父様。 それにエリアに王位継承権1位の座を奪われた時に思い知らされましたよ、王族内での姉妹などしょせん政争の相手にしかすぎないのだと」


 その台詞を聞いたクレアが、ダリアに真っ向から反論する。


「ダリア姉さま、そんな事はありません! 私やエリアお姉さまはそんな事を考えていませんし、ダリアお姉さまが王都を追放された時も、2人で悲しんでいた位ですよ? その話しを聞いても、お姉様は私達の事を政争相手としか見る事が出来ないのですか!?」

「あら、私は当たり前の事を言っているだけよ。 実際、私は王位継承3位と言う椅子に座っているし、あなたも前言ったじゃない『王位継承権3位が!』ってね。 忘れたとは言わせないわよ?」

「そ、それは……」


 言い淀んだクレアに興味を失ったダリアは、再び父親である王に向き直った。


「お父さま、取り合えず2週間後に、またこの会議を開いて下さる事を約束して下さいますか?」

「ああ……。 約束しよう……」

「お父様………」

「オホホホ! でしたら、もう今日は話し合う議題も無いでしょうから、私はここで失礼いたしますね? 2週間後が楽しみですわ! オッホホホホホ!」


 勝ち誇ったように高笑いをしながら、ダリアは会議場の扉を開いて出て行った。


「王よ、よろしかったのですか?」

「ギードよダリアの言ってる事は全てが間違っている訳でも無いのだ……。 これ以上、王位継承権1位の座に座る者が行方不明のままでは友好国との交渉事や、魔国に内政が弱っていると見られると攻める口実を与えかねん……」


 王の苦渋の決断を聞いた、宰相のギードさんは静かに頭を下げる。


「王の決断、このギード これまで以上に捜索に全力を注ぎ、動かせる兵力を総動員して2人の探索に力を入れさせます!」

「ああ。 任せた……」


 お父様が椅子に深く座り込み溜息を吐いている。 先程の会議が相当疲れたと言う証拠だ……。


(共也の馬鹿! 生きているなら、エリア姉さまと一緒に早く帰って来なさいよ! もう時間があまり残されていないわよ!!)


 クレア王女は未だに帰って来ない2人の事を思いながら、会議室の天井を見上げるしかなかった。


 ===


【シンドリア城・共也の部屋】


 今共也の部屋の中では、菊流、ジェーン、与一が今後の活動をどうするかと言う会議を開いていた。


「菊流姉、光輝はまだしつこくパーティー勧誘をしてくるんですか?」


 ジェーンの目線の先では、共也の使用していた枕を抱き締める菊流が、彼女の質問に対して力無く首を縦に振る。


「もうね……。 しつこいを通り越して、嫌がらせをしてるのかと思いたくなる程に、何度も何度も勧誘してくるの……。 もうあいつの顔を見ると全身に拒否反応が出る位嫌なの……」


 抱き締める枕に顔を埋めて泣く私を哀れに灯ったのか、与一がある疑問を口にした。 


「前にも思ったけど、最近のあいつは何かがおかしい……。

 昔から人の話を聞かない所はあったけど、菊流が嫌がる事は絶対にしなかった。 それなのに、こっちの世界に来てからの光輝は自分本位になって、あんたが本気で嫌がっていると言う事にすら気付いていない節がある」


 その与一の発言に、菊流も首を縦に振り同意した。


「私も最初の頃は光輝もああして強引に誘って来るけど、何時かは分かってくれると思って我慢していたけれど、何度も懲りずに勧誘しに来る今の光輝の姿を見るだけで、もう嫌なのよ……」

「菊流姉……」

「ダグラスが毎回止めに来てくれてるからまだマシだけれど、すぐに勧誘しに来る奴の姿はまるで前日に注意された事を覚えていない様だった……。 ねぇ与一、彼奴ってあんなに物覚えの悪い奴だったっけ?」

「いや、学年内では常に成績上位に居たはずだから、物覚えが悪い事は無いはず……」

「だよね。 まるで私の言葉なんて聞こえていないような態度に恐怖すら感じるし、私が何度も共也が帰って来るのを待つって言ってるのに、幼馴染である光輝に理解されないのは辛いよ……」


 私は再び枕に顔を埋めて覆うと、2人の前だと言うのに不安と絶望で涙が止まらなかった。


「菊流姉……。 与一姉、どうすれば光輝と菊流姉が接触しないで済むのか、良いアイデアは無いですか?」

「あれ? そう言えばジェーンちゃんの、光輝に対する呼び方が……」

「???」


 どうやら本人は気付いていないらしい……。 まぁ、それを訂正する必要は無いか。


 それだけの事を、光輝はやらかしているし。


「いや、何でも無い……。 ねぇ菊流、ジェーンちゃん。 冒険者ギルドの依頼を受けて1週間ほど遠出してみない?」

「でも……、まだ共也が帰って来て無いよ?」

「菊流……。 あなたがこのまま何もせずに過ごした場合、共也が生きて帰って来た場合、あなたは何て報告するの?」

「えっ……?」

「共也とエリアが転移先で生きているのにも関わらず、私達に連絡の1つも送れない事態に会ってるとするわ。 とても大変な旅をしている2人が無事にここに帰ってきた場合、菊流、あなたは何て彼に言うつもりなの? 共也が居なくて何もやる気が出なかったから、何もして無かったとでも言うつもり?」


 与一からの指摘を受けた菊流はハッとする。 共也がいなくなってから1か月の間、修行どころか何処にも行かず、この部屋に入り浸っているだけで何もしていない事に。


「今の菊流を見たら、共也は何て思うかしら?」

「共也……、悲しむかな?」

「そうね……。 私が共也なら少なくとも喜びはしない……かな」

「ジェーンちゃんもそう思う?」

「そうですね……。 共兄が生きて帰って来た時には、菊流姉の笑顔で出迎えてくれた方が嬉しいと思いますよ?」

「うっ……。 そ、そうだよね……。 光輝のせいで、最近感情をコントロールするのが難しかったから……」


 私は視線を落とし、手の平を開いたり閉じたりして体調を確認すると、共也のベッドから立ち上がった。


「その調子よ菊流。 まずは、冒険者ギルドで1週間程で帰って来れるクエストを受注して、少し遠出しましょう」

「そうしましょう与一姉。 あ、そう言えば、私と与一姉の装備を受け取りに行かないと!」

「そうだった……。 菊流、手続きの方は任せた」

「しょうがないな~~。 一度エリアのやり方を見てるから、先輩である私に任せなさい!」

「急に先輩風を吹かせるのは止めて……。 普通にムカつく」


 2人の装備は一応ドワンゴ親方達の所でもう作られていはいたが、色々トラブルがあって受け取りにいけず、未だに国から借りた装備を使い続けていた。


「じゃあ、私達がまずする事は、ドワンゴ親方の所に行って2人の装備品を受け取る所からね」

「了解!」

「行きましょう!」


 冒険者ギルドでクエストを受けて遠出をする事を決めた私達は、まずはドワンゴ親方の店で与一とジェーンの2人の装備を受け取りに行く事を決めて、共也の部屋から外に出た。


「皆さん会議は終わりですか?」


 声を掛けて来たのは共也の専属メイドとなったミランダちゃんだった。 彼女は、肩まで切り揃えた金髪と頭の上に垂耳を持つ獣人だった。 共也が好きそうだな~~と思いつつも、この娘の容姿を確認する私達。


 きっとこの娘も成長すれば、誰もが振り返る女性になるだろう……。 


 まさかこの娘も共也の事が……。 いや、まさかだよね?


「えぇ、これから2人の装備品を受け取りに行く予定だけど……。 ミランダちゃん、何かあったの?  凄く嫌そうな顔をしてるけど……」

「視線を動かさずに通路の角を見て下さい……。 理由が分かりますから……」

「通路の角……?」 「「「ひぃっ!!」」」


 彼女の指摘を受けた私達が目線に気を付けながら通路の曲がり角に視線を移すと、そこには見覚えがあり過ぎる金髪がチラチラと見え隠れしていた。

 そう、その見え隠れする髪は光輝の物だとすぐに気付いた私達3人は、全身に鳥肌が立思いだった。


「えぇぇぇ……。 まさか私達が共也の部屋で会議してた間中、彼奴ってずっとあそこで監視してたって事!?」

「流石に怖すぎる……。 気付いてない振りして、ドワンゴ親方の所に行こう……」

「はい……。 子供の私から見ても光輝の行動にはドン引きです……」


 私達3人が移動しようとすると、光輝も私達を尾行しようとして通路の陰から出て来ようとするので、焦りが生まれる。


「皆様、私があの人の注意を引き付けておきますので、その間に目的の場所に移動を」

「ミランダちゃん……。 今の彼奴って何処かおかしいから気を付けてね」

「はい」


 改めて移動を開始する私達の後を追って光輝が動き始める。 だが。


「勇者光輝様、我が主の部屋を『()()()()()』ジッと見ておられましたが、何か御用でしょうか?」

「ちょ、ちょっと! 声が大きい!! あ、菊流ちゃん達は何処に!?」


 大声で何時間も共也の部屋を監視していた事を言われては、流石の光輝も無視する訳にはいかずミランダに対して言い訳をしていた。


「だからぁ! 僕は共也の部屋に興味が有った訳じゃ!」

「なら、何故あの通路の角からず~~~っとこちらを監視されていたのです? ま、まさか私を手籠めにしようと!?」

「違うわ!」


 だが、光輝が必死に言い訳をしている間に、私達3人は城から脱出する事に成功していた。 


「ドワンゴさん、サラシナさん、遅くなったけどジェーンちゃんと与一の装備を受け取りに来たよ!」


 鍛冶屋の扉を開けて久しぶりにドワンゴ親方の顔が見れた私だったけど、たった1か月前の出来事がとても懐かしく感じていた。


 共也、エリア……。


「おお、やっと来たか。 随分前に完成していたのに取りに来ないから、要らなくなったのかと思って鋳潰そうかと思っていた所だぞ。 お~~い、鉄志! ジェーンと与一が装備を取りに来たから用意してくれ!」

「はいよーー!!」


 ドワンゴ親方が鉄志を呼ぶ声が店内に響き渡り、鉄志とリルちゃんが与一とジェーンの装備を付けたマネキンを押して店内に持って来た。


「やぁ鉄志、リルちゃんに手を出してない? あなたはロリコンの気があるんだから、節度あるお付き合いを心掛けなさいよ?」

「よう与一、相変わらず眠そうな顔してんな。 そのまま永久に寝ないように気を付けないとな?」

「何よ……」

「何だよ……」


 会った早々に鉄志と与一は睨み合いを始めてしまうが、話が進まないのですぐに止めさせた。


 理由は鉄志の背後でドワンゴ親方とサラシナさんが、額に青筋を浮かべて睨んでいたからだ。 さすがドワーフ、仕事に関して真面目だなぁ……。


「ち、命拾いしたな与一」

「鉄志こそ……」


 地球にいた頃と変わらない幼馴染達のやり取りに、つい吹き出してしまう私だった。


ダリアが本性を現し切れてしまいましたね。

次回は少し共也から離れ王都での出来事を書いて行こうかと思ってます。

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