表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【共生魔法】の絆紡ぎ。  作者: 山本 ヤマドリ
2章・新たな出会い。
40/286

魔剣の秘密。

 共生魔法の初めての契約者となってくれたディーネが、大量に水を生成してくれたお陰で命を繋ぐ事が出来た事に感謝するのだった。


 エリアと共に、水の大切さを改めて実感したよ……。


 本当に久しぶりに喉を潤す事が出来た、俺達がまずしないと行けない事は……食事だ!


 洞窟の中で火を焚き、食事の準備をしているとふと俺の膝の上でポヨポヨ跳ねているディーネの食事事情が気になった。


「そう言えばディーネって食事はどうしていたんだ?」

(食事?)

「そう、このクラニス砂漠って、餌になりそうな小動物や昆虫もそうだが、水も見当たらなかったじゃないか。 どうやって体を維持しているのかなって疑問に思ってさ」


 俺とエリアが食事を始めても、膝の上で跳ねてばかりで何の反応も示さないディーネ。


(私は……大気に漂ってる魔素を吸収……してるから食事は必要無い……よ?)

「じゃあ食事は必要無いって事か?」

(ううん……。 食べなくても……良い、ってだけ……。 食べれない訳じゃ……ないよ?)


 へぇ、便利な体なんだな。


「そっか。 普通に食べる事が出来るなら、この干し肉を食べてみるかい?」

(うん。 頂戴)


 干し肉を差し出すと、ディーネは体内に引き込むとゆっくりと消化していった。


 ディーネの蒼く透明な体の中で消化されて行く干し肉の様子を、俺とエリアは興味深く眺めていた。


(美味しい……。 お肉を食べたのなんて……、本当に何時ぶり……だろう?)

「そうか、喜んでくれたなら良かったよ」

(ご馳走様、美味しかった!)


 余程干し肉が美味しかったのか、体を伸ばしたり縮めたりしてディーネは感情表現をしているらしい。


 2人して微笑みながらその様子を眺めて居たのだが、ディーネを見ていてある疑問が頭を過った。 


「共也さん、どうしたんです?」

「いや……。 ディーネをどうやって運べば良いのかって思ってさ……。 まさかずっと手に持って運ぶ訳にはいかないし……」

「あぁ、確かにそうですね……」


 何とかディーネを運搬する手段が無いかエリアと2人で考えていると、当のディーネが念話でその解決方法を提示して来た。 


(私の移動が……問題なんだね……。 共也……。 剣を、抜いて……?)

「この魔剣の事か?」

(そう……。 それ……)

「それは構わないが……」


 剣を抜くと薄く青白い放っていた樋だったが、見て明らかに違いが分かる程前より強く輝いていた。


 ディーネと契約したタイミングでこの現象が起きたって事は、この剣と共生魔法は何か関係があるのか?


(共也、ある程度……大きい……魔石って……持って……る?)

「魔石? そういえば鈴に貰ったやつがあったな。 え~っと、あった。 ディーネ、これくらいの大きさで良いか?」


 俺が鈴から貰っていた魔石を見せると、ディーネは嬉しそうに飛び跳ねる。


(そう……。 それそれ……、それを剣の……柄にある石に…近づけて……みて?)

「柄の……この透明な石の所か、わかった」


 ディーネに言われて手に持つ魔石を、剣の柄に嵌められている石に近づけた瞬間、一瞬にして吸収してしまった。


「ディーネ、これは一体!?」

(見てて……)


 魔石を吸収した石が光り輝くと、青白い光を放っていた樋の方へ流れて行く。 そして2つの光りが合わさった事で今までとは比べ物にならない強い光を放った為、腕で光を遮らないと目を開けていられない程だった。 


「共也さん、この光りは一体?」

「俺にも分からん! ディーネこれは何なんだ!?」

(すぐに分かる……よ?)


 ディーネの指摘通り、あれだけ眩しかった光りも徐々に落ち着いて来たので魔石を吸収した石を見ると、何処か薄黒く染まっている気がした。


「さっきの光はいったい……」

(共也……。 石をこっちに……向けて~?)

「こ、こうか?」


 向けたら何かが起きるのか? いや、この現象を知ってるディーネが言うんだ、最後まで指示に従ってみよう。


(うん…。 ありがと~…いくね)

「はっ?」


 ディーネが俺の持つ魔剣に飛びつくと、あっと言う間に石に吸収され……。 いや、中に入って行ったのか?  


「ディ、ディーネ!?」

(共也、どうしたの~?)


 何事も無く返事を返してくれたディーネに対して、俺は一安心したと同時に困惑する。


「ディーネ、何とも無いのか!?」

(うん~、むしろ快適空間~、それに…、いつで……自由に出れる……よ?)

「う、うわ!」「きゃあ!」


 石から触手を伸ばしてから上下に振っているディーネに、俺とエリアはつい驚きの声を上げてしまった。 どうやら、自分は無事だとアピールしているようだ。


「ほ、本当に外で活動するより快適なら、そこに入って生活してもらっておく方が安全か?」

(うん~、何か……用があるなら……言っ……て?)


 そう言い残すと、ディーネは触手を石の中に引き戻したが、そのまま寝そな雰囲気だったので俺は慌てて声を掛けた。 


「いやいや! ディーネ、待って待って!」

(な~~に?)

「どうしてこの魔剣に魔石を吸収させると、その機能が使える様になる事をディーネが知ってたんだ???」


 そう、俺とエリアはそれが一番知りたい情報だった。 ディーネとは今日初めて会ったばかりなのに、遥か遠くのシンドリア王国にいるドワンゴ親方に託されたこの魔剣の事を知ってるなんて、余りにも不可解だ。


 俺達がディーネの回答を息を飲んで待っていると……。


(ん~……。 なんと……なく? それに、その剣をどこかで……見た……気がした……からかも?)


 だった……。


「そ、そうなのか? まあディーネも良く分かって無いならこれ以上は聞かないけれど、取り合えず問題を解決する事が出来たから良いか」

「気になる事は多々ありますが、今はそれしか無いですね……」

「ディーネ、引き留めて悪かった。 また何か聞きたい事が出て来たら質問するから、それまでユックリと休んでくれ」

(は~い、おやす……み)


 ディーネのノンビリした口調に、俺とエリアは顔を見合わせると久しぶりに心の底から笑い合う事が出来たのだった。


 ==


 その後、久しぶりに真面な食事を終えた俺達は、ディーネと同じく夜になるまで睡眠を取る為に横になろうとしたのだが、エリアが真剣な顔つきで待ったを掛けた。


「エリア、どうしたんだ?」

「…………共也さん、このまま夜まで寝ても良いのですが、その前にどうしてもお聞きしたい事があるので少しだけお時間を頂いてもよろしいですか?」

「俺に答えられる事なら答えるが……。 何を聞きたいんだ?」


 どうやらエリアは俺に何か聞きたい事があるらしいが、聞こうかどうか迷っている様で、口を開けたり閉じたりしていた。

 だが、少しの時間を置いて覚悟が決まったのか意を決して口を開いた。 


「共也さん……。 瀕死の私にポーションを飲ませたと言ってましたけど、私ってその時意識を失ってましたよね? どうやって飲ませて貰えたんです?」

「あ、えっと……」


 まさかその質問をされるとは全く想定して無かった俺は、咄嗟にエリアから視線を逸らしてしまった。


「ちょっと、共也さん! 何でそこで目を逸らすんですか!!」

「いや……。 まあ……エリアの命が助かったんだから、この問題はもう終わりにしない?」

「終わりにしない? じゃありませんよ、そんな反応されると余計に気になっちゃうじゃないですか! 怒りませんから、どうやって飲ませたのか教えてください!」

「本当に怒らない?」

「本当に怒りません!」


『怒らないから』そう言う奴ほど、話を聞いた後で怒るんだよな……。


 散々悩んだが、涙目でずっと俺の事を見て来るエリアに根負けした俺は、正直に話す事にした……。


「え~っとな……。 最初はそのまま瓶から直接飲ませようとしたんだけど、エリアって意識を失っていたから飲み込んでくれなくてさ。 ここまでは良いかな?」

「はい……。 それで?」

「手首からの出血も多いしもう時間も無いと判断した、俺はこうポーションを口に含んでだね、『まさか口移しですか!?』そうとも言う……ね……。 すまない……」 

「・・・・・」


 説明を終えた途端に、羞恥心からの行動なのか手で顔を覆い隠すエリアの肩に手を置いた俺は必死に謝った。 


「エリア……。 今回の事は、あくまで人命救助が目的の事故みたいなものだと思って、ノーカウントにすれば……って。エリア……」


 てっきり口移しされた事実に悲しんでいるのかと思ったのだが、どうやら違うようだ……。


「と、共也さん、今は見ちゃ駄目ですよぉ!!」


 耳まで真っ赤に染まった顔を俺に見られた事が余程恥ずかしかったのか、再び手で覆い隠すと岩穴の端に逃げて行ってしまった。


 軽蔑されなくて安心したが、エリアのあの反応は俺に口付けをされて嫌だったじゃなくて、むしろ喜んでいたのか?


 それだったら嬉しいが……。 ん? 嬉しい? 俺が?


 暫く自問自答をして己自身の心と向き合っている間に、エリアも落ち着きを取り戻したのかこちらに戻って来た。 


「共也さん失礼しました……。 先程の話を再開しましょう」

「まださっきの話を続けるんだ!?」

「当たり前じゃないですか! 私にとっては重要な事なんですよ!?」

「はぁ……。 それで、どこまで話したっけ?」

「ポーションを口移しで私に飲ませたって所ですね。 共也さんは忘れてるかもしれませんが、私はシンドリア王国の王位継承権第1位の人間です。

 人命救助とは言えそんな人物の唇を奪った以上は、責任を取っていただかないと収まりません……。 貴族もそうですが、特にお父様が……」

「あぁ、なるほど……」

 

『お父様が』この一言に、どれだけグランク様が、彼女をどれだけ溺愛しているのかが分かってしまったが、ある違和感をエリアから感じたので逆に質問してみた。


「エリア……。 確かに俺は王位継承第1位のエリアの唇を結果的に奪ってしまった。 その事で責任を取れと言われるのも分かるんだが……」

「だが?」

「なぁエリア、気のせいなら良いんだが。 もしかして、今話に出て来た内容って俺に無理矢理責任を取らせようとして、さっき思いついたって事は無いよな?」


 聞き返されるとは思っていなかった彼女は完全に油断していたらしく、俺の質問に彼女の目は激しく動き回っていた」


「エリア……。 まさかお前……」

「そ、そんな事は無いでござるよ? 王女としても1人の女性としても、私の唇を奪った共也さんに責任を取って貰おうとするのは、当たり前だと思うのですわ?」

「ござる、ですわって……。 地球でもそんな言い方をする人なんていねぇよ……」

「むう! でも乙女の唇を奪ったのは本当じゃないですか……うぅ……」

「でもさ、エリアさん……あれは人命救助……」

「とって……」

「へっ?」

「責任を取って私と婚約するって言って……。 今ここで私と婚約するって約束してくれないと、シンドリア王国に無事帰った時に、お父様達が揃っている場所で無理やり唇を奪われたって言いふらすもん!」

「いや、もんってお前……」


 まさかエリアの命を救う為に口移しでポーションを飲ませたら、とんでもない事態に発展してしまった事に、俺は頭をフル回転させて解決案を導き出したが、どれもこれも決定打に欠けるものばかりだった。


 このままだと口約束とは言え1国の王女と『婚約』を結ばされてしまうが、回避出来そうな案も思い浮かばない以上男としてケジメを取るのが筋だと分かっているのだが、勝手に命を投げだそうとしたエリアへの慰謝返しとして、責任と取る条件として俺はある条件を突き付けた。


「はぁ……。 じゃあ世界に平和が訪れた上で、エリアの父であるグランク王が認めたらって言う条件を付けさせてもらうが、その条件を飲めるか?」

「はい! はい! はい! 飲めます認めさせます平和にしてみせます! 共也さん自ら責任を取ると言ったのですから、もう撤回できませんからね!?」


 さっきまで泣いていた人物とは思えない程元気に返事をするエリアを見て、俺は条件が甘かったかと後悔するのだった……。


「まあこの話も砂漠を生きて抜けれたらの話だって事は、エリアも分かってるよな?」

「はい! でもディーネちゃんの話では、あと2週間ほどで砂漠を抜ける事が出来るみたいですし何とかなると思いますよ。 それに、水の心配が無くなったのが一番大きいですし」


 水……か。


 その『水』と言う言葉に、路地裏で会ったカーラ婆さんの事を思い出した。


〖「共也! 水だ、水がお前の運命を大きく変えてくれるはずだ、焦るんじゃないよ!?」〗


 あのカーラ婆さんの台詞がディーネとの出会いを指しているのなら、俺の運命はこれから大きく変わって行くという事になるが、同時にもう1つ言われた事を思い出した。


(大事な者達との別れか……。 今回の水という占いが当たっていた以上、この別れの暗示もいずれ当たる事になるのだろうか……)


「共也さん、何か考え事をしているみたいですが、どうかしました?」


 何時の間にかカーラ婆さんの占いの内容を考える事に夢中になっていた俺は、占いの内容をエリアに話す訳にはいかないので、慌てて話しの内容を変える事にした。


「いや、砂漠を抜けた後にどうやってエリアとの仲を、グランク様に認めてもらおうかと考えてたら、ぼ~っとしてた、すまない」

「えっ!? そんな、さっき世界が平和になってからと言っていたのに……。 嬉しいです……」


 両手を頬に当てて嬉しそうに体を捩じるエリアを騙すのは心苦しいが、この内容は人に言えるような内容じゃないため俺は心の中で謝罪した。


「エリア、今度こそ陽が落ちるまで少し休もう。 ディーネの言う砂漠の出口までの距離が正確なら、あと2週間以上歩く必要があるんだからな」

「そうですね……。 あの、共也さん…」

「何だ?」

「寝る前に少しで良いですから、抱きしめてもらって良いですか?」

「抱き締めてって……。 エリア、自分が何を言ってるか分かって……」


 抗議の声を上げそうになった俺だが、良く見ると彼女の体が微かに震えている事に気付いた。


 俺の視線に気付いたエリアは強張る顔で無理矢理笑っていた。


「え、えへへ……。 さっき死にかけたていたんだと思うと、体の震えが止まらないんです。 共也さん……、駄目ですか?」


 可愛い女性に、そんな上目使いで言われたら断れる奴なんていないだろ!!


「エリア、抱きしめるけど本当に良いんだな!?」

「はい……」


 ユックリとエリアを抱き寄せると、彼女の体温と共に微かに心臓の鼓動が体を通して伝わってくるのが分かった。


「……………」


 顔を赤くして俯いたまま何も言わないエリアの影響で、こっちもこの状況に恥ずかしくなって来る。

 

 そのまま彼女を抱きしめ続けて2~3分位経つと彼女の震えも徐々に収まって行き、完全に震えが納まるとエリアの方からユックリと離れて行った。


「共也さん、ありがとうございます。 もう大丈夫です」

「良いさ。 色々な条件をクリア出来たらと言う条件付きだけど、俺はエリアの婚約者となった訳だし未来の嫁さんの要望くらいは叶えて上げないとな!」

「ふふふ…。 共也さん、ありがとう……。 では私はそんな未来の旦那様に迷惑をかけないように、早く寝て体力を回復させないといけませんね」

「ああ……おやすみ、エリア」

「おやすみなさい……」


 相当疲れていたのだろう、そのままエリアは数秒と経たずに寝息を立て始めた。 彼女の頭を一度撫でて俺も寝ようと横になったのだが、剣の中で寝ていたと思っていたディーネから念話が届いた。


(イチャイチャ~?)

(違う……とも言えないのか。 夜になったら行動するんだから、ディーネも早く寝るんだぞ!?)

(は~い?)


 そして、ディーネからも念話が無くなった為、今度こそ剣の中で寝た様だ。 


 夜になったら、また沢山歩かないと……。


 外では猛烈の熱波が吹き荒れる中、岩穴の中では俺達の寝息が響くのだった。

ようやく砂漠を脱出出来そうな目途が立ちましたね。

次回は砂漠を超えれたら超えさせたいですね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ