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【共生魔法】の絆紡ぎ。  作者: 山本 ヤマドリ
2章・新たな出会い。
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ジェーンの過去。

 朝を迎えると、猫の様に丸まっているジェーンが、俺にピッタリ寄り添って寝ている姿を目撃したエリアと菊流が、人を殺せそうな目を向けて来ていた。


「共也さん……」

「共也……」

「違う! 俺は何もしていない!!」


 言い訳をしようにも、流石にこの状況では言い逃れが出来ない!


 ジェーンを起こさない様に小声で否定していると、物音で目を覚ました与一も俺とジェーンがピッタリくっ付いて寝ている姿を目撃した事で、眠そうな目のまま親指を立てた。


「ん~~。 共也、それは流石にアウト……」

「共也、あんたジェーンちゃんに懐かれてるのを良い事に、無理やり添い寝をさせるだなんて!!」

「共也さんって、幼女趣味だったんですね! 見損ないました!」

「違うから! っと言うか、エリアと菊流は俺がさっきジェーンが寄り添って寝ている事に、初めて気づいた場面を見ていたじゃないか! 因みに俺は幼女趣味じゃないからな!?」

「本当に~~?」

「共也さんのそんな必死な姿は初めて見ますから、何だか怪しいです……」

「エリアまで……」


 ジェーンを起こさない様に小声でやり取りをしていたのだが、寝返りを打った彼女は夢を見ているのか、ポツリと寝言を呟いた。


「パパ…、ママ……。 兄……。 私を置いて行かないで……。 一人ボッチは嫌だよ……」


 閉じられたジェーンの目端から一粒の涙が頬を伝うのを見た俺達は、何も言う事が出来なくなってしまった。


 パパ、ママ、兄、私を一人にしないで……。 


 ==◇===


【ジェーンが日本に来る前の記憶】


 タタタタタタタ……。 タタタタタタタ……。


 日本に来る前、某大国が予告も無く戦争を仕掛けて来たせいで、私達家族は今必死に生き残れる可能性に掛けて、我が国の大統領が一時的に避難する国民の為に飛行機を手配していると言う噂を信じて、弾丸が飛び交う街中を身を隠しながら移動していた。


 窓ガラスも割れて、いつ倒壊してもおかしくない建物の間を縫うように移動していた私達家族は、ようやく政府軍が防衛している空港まであと少しと言う所まで来ていた。


「はぁ、はぁ、後少しで大統領が手配してくれている空港に到着するはずだ。 【リーリア】、【アロンド】、ジェーン、しっかり付いて来ているな?」

「はい、【トーマス】全員いるわ」

「アロンド兄、怖いよ……」

「ジェーン、お前の事は俺がきっと守り切ってみせる。 あと少しで平和な日本に行ける空港に着くんだから頑張ろう」

「う、うん。 日本に着いたら兄と一緒に色んなアニメを観たい……」

「勿論だ、日本に着いたら嫌って言うほど一緒に観れるさ!」


 自分も何時殺されるかもしれないと言う恐怖が心を占める中、妹のジェーンを安心させる為精一杯の笑顔で微笑んだ。


「良し、今なら銃声が止んでいるから近くに敵兵はいないはずだ。 行くぞ!」


 トーマス父さんの指示の元、俺は一度ジェーンの頭を優しく撫でると左腕に乗せて移動を開始した。


「良し、あの角を曲がれば空港だ!」


 だが、現実は残酷だった。


―――ダダダダダダダダ!!


 あと少しで空港の入り口が見えると言う所で、敵兵の銃弾が私達の足元に着弾したのだ。


「はい、ストーーープ。 ここから先は通行止めだ!」

「ぐ。 こんな所で……」

「あん? 手前ら政府関係者じゃねえのか? ちっ、せっかく手柄を上げられたと思ったのに空振りかよ……」


 男の台詞から判断するに、どうやら敵兵ではある事は確定だが、私達を政府関係者だと思って足止めしたらしく、私達家族を興味無さげに眺めている。


 そこまで真面目そうな兵士には見え無いので、もしかしたら賄賂を渡せば通してくれるかもしれない……。


 そう判断したパパは、今だに私達に銃口を向ける男に交渉を持ち掛けた。


「おい、一般人である私達を殺したからと言って手柄になる訳でもあるまい? どうだろう、私の財布をやるから、そこを通してくれないだろうか?」

「あん? 俺達に賄賂を寄こすから、空港に行かせてくれって事か? ん~~。 お前等、どうするよ?」

「別に良いんじゃねえか? 政府関係者でも無いこいつ等を殺したからと言って、これと言った手柄になる訳でもねえしな。 俺は賛成に1票だ『俺達も文句無いぜ』」

「決まりだな。 運が良かったなお前等。 さっさと財布を寄こして空港に行っちまえ」

「すまない……。 これが私の持つ全財産だ……」


 パパは日本で生活する為のお金を差し出すと、奴らは早速分配を始めた。


 その隙に私達は敵兵の横を通り、空港を目指したのだが……。 兄の腕に座っていた私はふと後ろにいる奴らの事が気になり見た……見てしまった。


 奴らの中の数人が、私達に向けて銃口を向けて今にも引き金を引こうとしている場面を……。


「パパ、ママ、兄、逃げて!!」

「「「!!?」」」

「お前等、何をしている! 止めろ!!」


 敵の兵士の1人が私の声に気付き、奴らの凶行を止めようとしてくれたが遅かった……。


―――ダダダダダダダダ!!


「「「ジェーン!!」」」


 パパとママが私を抱き抱えていた兄毎覆い被さり、飛び交う銃弾から私を守ってくれたが、その代償として2人の体から流れ出た血が、額や頬に大量に付着した。


「パッ……、うぅ……」


 パパとママは重傷を負っているその体で私の口を塞ぎ、奴らに死んだ風に見せかけようとしているのだと理解した。


 そんな私は2人の血で赤く染まり、如何にも致命傷を受けた様な有様になっている。


「ジェーン、喋る……な……。 ごめんな、日本に一緒に行けなく……て……」

「あなたが成長した姿を見届ける事が出来なくて……、ごめんなさい……」


 パパ、ママ!!


 2人の体から力が抜けると同時に、銃声が止んだ。


『お前等ぁーーー!! いくら戦争時とは言え、一般人にこの様な残虐行為は戦争犯罪に該当するのだと分からないのか!!』

「知ってるが、それが何か?」

「な、何だと!?」

「お前こそ分かってんのかよ。 戦争犯罪ってのは、目撃者や証拠があって事の犯罪だってな?」

「な、何が言いたいんだ……」

「こう言う事さ!」


 ジャキ!


「や、やめ!」

「死ね!」


―――ダダダダ!


「ぐふっ!!」

「アッハッハ! これで俺達の戦争犯罪を証言出来る奴は居なくなった。 さて、後はあの死体から金目の物を剥ぎ取るだけだな!」


 パパとママが命を呈して守ってくれたのに、私が生きている事が知られたら絶対に殺される!


(ジェ、ジェーン……)

(兄!?)


 アロンド兄は至る所に銃撃を受けて血塗れだったが、生きていた。 小声でお互いの無事を確認したが、出血量が多いのか兄の目は虚ろだった。


(兄、しっかりして!)

(ジェーン。 僕はもう助からない……)

(そんな……。 兄、私を1人にしないでよ……)

(聞くんだ、ジェーン。 僕は今から父さんと母さんの金品を持って別方向に逃げるけど、何が起きても動いたら駄目だから……ね?)

(兄! 行かないで!)

(ジェーン。 日本に行ったら、友達を作ったり家庭を作ったりして幸せにおなり……。 さよなら、ジェーン……)


 兄はパパの腕時計やママのネックレスなどを剥ぎ取ると、空港とは逆方向に走り出した。 


「おい! あいつ自分の両親の貴金属を持って逃げたぞ、追え!!」

 

―――ダダダダ!! ダダダダ!!


 兄………。


 その後、兄から貴金属を略奪した敵兵達は私の死体を確認しようとらしいが、散々空港前で銃撃戦をやらかした影響で、こちらに気付いた政府軍によって奴らはあっという間に制圧されるのだった。


 その後の記憶はかなり曖昧で、気が付いた時には日本の戦災孤児の為の施設で日がな一日、両親や兄を思い出してボ~~っとする日々を送っていた所に、蒼い魔法陣によって惑星アルトリアに召喚されたのだった。 


 そこで、人種も顔も全く違うのに何処かアロンド兄の雰囲気に似た男の人を見かけたので、つい声を掛けてしまった。 これが、共兄と私の初めての出会いだった。 


 最初は何処かアロンド兄に似たこの人の事が気になる程度だったが、一緒に事件やトラブルを解決して行く内に、何時からか私は共兄の事を暇があれば良く考える様になっていた。 


 共兄、アロンド兄に何処か似た雰囲気を感じさせる男の人……。



 ==◇◇===


 悲しい夢を見ているのかジェーンの目から流れ出た涙を指で拭った俺は、彼女を起こさない様にユックリとテントを後にするのだった。


「そうだよな……。 ジェーンって見た目の割りにしっかりした考えを持っているから、どこか大人びて見えるけどまだ8歳の女の娘なんだよな……」

「そうね……。 あの戦争で肉親を亡くしたのなら、きっと寂しい思いをしてるはずよね……」

「ジェーンちゃん……」


 何とも言えない空気が流れる中でも俺達が朝食の準備をしていると、寝坊したジェーンが慌ててテントから出て来たのだけれど、先程と違い過ぎるその姿に俺達は驚いた。 


「すいません皆さん、寝坊してしまいました。 今から私も手伝いますね!」

「ジェーン……」

「はい、何でしょう。 共兄」

「頭……」

「頭? はわわわわわ!!」

「ジェーンちゃん、朝食の準備を手伝ってくれるのは嬉しいけど、まずは寝癖を直してらっしゃい」

「急いで直して来ます!!」


 寝癖を直そうとして慌ててテントの中に戻ろうとするジェーンだったが、後で聞いた話によると彼女の柔らかそうな毛髪は湿気などの影響を受けると軽く巻いてしまうらしく、手入れには気を使ってしまうらしい。 今の髪型もそれはそれで可愛いと思っていたが、そこは子供とは言え女の娘らしく、俺がいくら『それはそれで可愛いぞ?』と言っても、顔を真っ赤にしても頑として受け入れず髪を自分で櫛で梳かしたて身支度を整えていた。


「ジェーンちゃん、櫛を貸して? 髪を梳いて上げる」


 そこへ、調理などの手伝いを断られた為やる事が無く手持ち無沙汰となった与一が、ジェーンの身支度を整える手伝いをしようと手を差し出した。


「与一姉……。 お任せして良いですか?」

「うん、任せて」


 与一がジェーンの髪を1櫛1櫛丁寧に梳いて行くと、何時もの見慣れた彼女に変わって行く。 


「はい、完成」

「ありがとう、与一姉」


 そして身支度を終えたジェーンは一度その場でクルリと周ると、嬉しそうに与一にお礼を言ってこちらに来るのだった。


「ジェーンちゃん、共也さん達と一緒に朝食をテーブルに並べてもらって良いかしら?」

「はい!」


 朝食の配膳をエリアにお願いされた俺達は腹が減っていた事も有り、次々にテーブルに料理を運んで行った。 

 

 朝食を並べ終わった事でさあ食べようと合掌をした所で、何故か光輝が俺の隣に着席している上に当然とでも言いたげに朝食が運ばれるのを待っていた。


「光輝、何でここにいるの? 邪魔だからどっか行け」


 与一の言う通りこれから朝食だと言うのに、邪魔だからどっか行って欲しいんだが……。


 ただでさ今日は兵士達との魔物討伐の合同訓練があると言うのに、こいつの相手などしている暇など無い……。


 だが、流石は勇者である光輝。 恐れを知らない奴は、俺達を前にして信じられ無い事を口走った。


「菊流ちゃん、僕の分の朝食が無いよ?」


 その一言は、俺達を呆れさせるのに十分な威力を持っていた……。


「光輝……。 あんたねぇ……」


 もう優しく言って追い出そうとする事を止めて、実力行使で追い出そうと考えていた菊流だったが、今後も粘着されても面倒だと思って、それは止めた様だ。


 どうやってこの馬鹿を自然に追い払えるか、必死に脳をフル回転させていたのだが、幸運は馬鹿の背後からやって来た。


「ん? 雲?」


 光輝の座るテーブルに、大きな影が落ちたのだ。


「よう光輝、朝っぱらから他のパーティーに混ざって朝食のおねだりとは、良いご身分身分だなぁ?」


 その声が誰なのかすぐ気が付いた光輝は錆びついた機械のようにゆっくりと首を動かしながら振り返ると、そこには予想通りの人物が額に青筋を浮かべながらニッコリと微笑んでいた。 


「や、やぁダグラス、おはよう……。 今日も良い天気だ……ね?」

「おはようじゃねえ! 他のパーティーに迷惑かけるなとあれ程言ったろうが!」


 そう言うと、ダグラスは光輝の頭に奇妙な音を響かせて拳を叩き込んだ。


―――ゴシャ!!


「ぐっ……ごあ……」


 余りの衝撃だったのだろう。 ダグラスの拳骨を無防備な状態で食らった光輝は、変な声を上げると椅子から地面へと転げ落ちた。


 どうやら光輝は気絶してしまった様で、地面に仰向けに倒れ光輝は白目を剥いたまま動かなくなった。


「共也、皆、すまない……。 俺が目を覚ました時には、すでにテントの中から居なくなっていてな。 もしやと思ってここに来たら案の定だよ……」


 これ以上の追及は、臨時で光輝とパーティーを組んだダグラスにも飛び火しかねないと危惧した俺達は、もう気にしないと彼に伝えた。


「ダグラス、お前が謝る事じゃないさ。 まだ実害は出てないから気にしなくて良いよ、むしろ迅速に対応してくれた事にお礼が言いたいくらいだ」

「うん。 もう少し遅かったら弓で攻撃してた可能性が有る」

「与一、それはそれでどうなんだ?」

「五月蠅い黙れ共也」

「なっ! お前なぁ!!」


 お互いの頬を引っ張り合う姿に、幼馴染の菊流とダグラスも呆れていた。


「まぁ2人の事は放置しておいて。 ダグラス、あなたが来てくれただけで十分よ、責任を感じないで」


 菊流の台詞を聞いたダグラスは、一度鼻で笑うと軽々と光輝を肩に担ぎ上げた。


「被害者の菊流がそう言ってるんだ、俺がこれ以上ウダウダ言ってもしょうがないな」

「そう言う事」

「じゃあ、俺は自分達のキャンプ場所に戻る事にするよ。 今日の魔物退治、お互いに頑張ろうぜ!」

「えぇ、また後でね」


 光輝を担ぐダグラスの姿が人混みの中に消えると、ようやく俺達は安心して朝食を食べ始める事が出来たのだった。


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