ダリアへの対応と対策
ダリアから宣戦布告を受けた俺達はしばらく呆然としてしまい、その場に立ち尽くしていた。
そして、暫く時間が経ちようやく我に返った俺は、今度起こりうる事態を与一とジェーンの2人と予想する事にした。
「与一、ジェーン、ダリアが宣戦布告と言っていたが、何を仕掛けて来ると思う?」
「予想がつきませんね……。 普通の人は菊流さんを捧げろ、とか頭がおかしい事を言いませんから……」
「ジェーンちゃんの言う通りよ共也。 でも、この事を菊流に言った方が良いの悩む所ね……」
本当なら言った方が良いんだろうが、東門出る時に散々ストレスを掛けられた菊流にさらにダリアと言う問題を抱えさせるのもな……。
「……止めておこう」
「それで良いの?」
「あぁ、光輝本人がダリアに命令して動いていると言うのなら流石に菊流に伝えても良かったが、ダリアが独自の判断で動いていると言うのなら俺達が未然に防げば良いけだし、これ以上菊流の心労を増やさない為にも黙っておこう。 それに、ただでさえダリアの思考パターンが読めないのに、菊流に話した事を知られた場合、どんな行動を取るか予測が付かない」
キャンプ地点に戻る為に森の中を移動しながら、俺達はダリアが取る行動の予測を立てながら移動していると、俺に起きた現象に付いて与一が訪ねて来た。
「それで共也。 ダリアに見つめられた時に思考が鈍くなって行ったって言ってたけど、今は平気?」
「あぁ、今は大丈夫だ。 多分だけど、与一のおもちゃの矢が当たった事で、そっちに意識が逸れたから、スキルの効果が表れなかったんじゃないかと俺は分析している」
「でも共也に効果があったけど、私とジェーンちゃんには何も効果が無かった事を考えると……、恐らくあのスキルが頭に浮かぶわね」
「【魅了】か?」
「男の共也に効果があって、女の私達には効果が無い状況を考えると、その可能性が一番高いと思うけど……。 それだけの情報でダリアの能力を特定した気でいるのは、さすがに危険よね……」
「そうですよね……。 わざわざあの場所で私達が来る事を待ってた事も不自然ですし、きっとまだ何か隠している情報があるはずですよね……」
「あぁ、クソ! 何で光輝はダリアに愚痴ったんだよ、菊流の身に危険が及ぶ可能性を考え無かったのかよ……」
その後も俺達は森の中を移動しながらダリアの能力や今後取る行動について、ああでも無い、こうでも無いと話し合っていたが、当たり前だが出来る限り目を合わせない、と言う答え以外出て来るはずも無く、仕方なくエリアと菊流が待つキャンプ地点へと戻る事にした。
「そろそろエリア達が待つキャンプ地点が見えて来るはずだが、一度だけ周囲を探索してから戻ろうか」
「分かりました!」
「分かった」
こうして俺達は陽が落ちて紅く染まる森の探索を終え異常無しと判断した事で、2人の待つキャンプ地点に戻る事にしたのだが、与一とジェーンを俺は呼び止めた。
「何、共也?」
「相談したい事があるから、夜番の時に少し話を聞いてくれないか?」
「私とジェーンちゃんへの愛の告白?」
「違うわ!!」
「ちっ!」
「おま、舌打ちを……。 はぁ……、俺が言いたいのはダリアの事で相談したいって事だよ」
「分かってる。 それで?」
「…………与一、後で覚えておけよ?」
「まぁまぁ、共兄。 どうせ兵士さん達も大勢いるのですからトラブルが起きる事も無いでしょうし、私は大丈夫ですよ?」
「ありがとう。 なら夜番の時にでもダリア対策会議をしよう。 あそこまで大々的に宣戦布告したあいつが、このまま指を咥えたまま何もしないとは流石に思えないし、無いとは思うがあいつが強襲して来た時にすぐ動ける様に、少しでも話をすり合わせておいた方が良い気がする」
いくら何でも襲って来る事は無いとは思いたいが……。 あの時の狂気を孕んだ目をする奴は何を仕出かして来たとしても不思議じゃないと、京谷さんに教わったから警戒しても損じゃない。
「うん……。 でも、今回の合同訓練中は、流石に何もして来ないんじゃないかな?」
「私もそう思いたいですね……。 自分の国が主催した訓練で問題を起こしたら、流石に今度は軟禁じゃ済まないでしょうけど、その可能性すら考えずに絡んで来るようなら、グランク王に直接報告した方が良いかもしれませんね」
「そうなら無い事を祈っておくか……。 お、松明の灯りが見えて来たしそろそろ宿営地に着きそうだな。 2人共、また夜番の時にでもこの続きを話そうな」
『「了解!」』
話しを終えた俺達が森を抜けると、そこにはエリアと菊流が設営したテントの前で料理をしている姿が見えて来た。
2人がいる場所から良い匂いが漂って来る。 どうやら2人は煮込み料理を作っているらしく、鉄製の鍋を焚火の上に釣るして中身をユックリとかき混ぜながら談笑をしていた。
色々あったので早く休みたかった俺達がテントでに近づいて行くと、2人も俺達が帰って来た事に気付いたらしく手を大きく左右に振ってくれた。
「3人ともお帰りなさい、薪集めに行ったきり帰って来なかったから心配してたんだよ?」
「あ、あぁ……。 森の中にある薪になりそうな枝がほとんど濡れて使い物にならなくてさ、少し森の奥に進んでたら遅くなってしまったんだよ。 2人には心配かけたみたいだな、すまん」
「そうです。 ここって前日に雨でも降ったんですかね?」
「としか思えない程森の入り口に落ちてた枝は湿ってた。 でもこうして良い薪が手に入ったから許して?」
乾いた薪を2人に差し出して俺達が言ってる事は本当の事だと証明するが、菊流は何処か信じ切れていないらしく目を細めて睨んで来る……。
「怪しいなぁ……。 ジェーンちゃん、本当にその薪は森の奥で手に入れた物なの?」
「おま! 俺達の言う事が信じられ無いって言うのか!?」
「はいはい、信じてる信じてる。 で、ジェーンちゃん、本当の事は?」
「本当の事ですよ。 森の入り口付近では乾燥した薪はすでに皆が集めてしまったようで、私達は仕方なく森の奥まで進んで薪を集めましたよ?」
森の入り口付近には湿った薪しか無かった。 森の奥まで進み乾燥した薪を集めた。 この2つは本当の事だが、ジェーンは上手くダリアに遭遇した事を喋らずに話しを終えてくれた事に感謝した。
ジェーンの証言を聞いた菊流は眉間の皺を取ると、笑顔を向けて来た事に驚いた。
「そっかぁ、ジェーンちゃんがそう言うなら、私の勘違いだったみたいね。 それじゃ料理の仕上げをするから、あなた達が拾って来た薪を頂戴♪」
謝罪も無しに両手を差し出して薪を要求する菊流に、俺はイラっとしてしまった。
へぇ……。 俺の言葉は信じなかったのに、ジェーンの言葉は無条件で信じるんだ??
「菊流さん、薪をお渡しする前に先程の発言はどういった意味が込められているのか、お伺いしてもよろしいでしょうか?」
「どう言った意味かと言われても……そのままの意味だよ。 ジェーンちゃんは可愛いから信じられる! これ以上の理由なんて必要無いじゃない!」
菊流はそう言い放つと、ジェーンに凄い速度で近づき抱き締めた。
「く、菊流姉!?」
ジェーンに抱き付くその姿はとても人様には見せられたものではなく そんな緩み切った顔を晒す菊流に俺達は呆れてしまい盛大に溜息を吐いた。
「はぁ~…。 菊流、今は火が近くて危ないんだから、ジェーンを解放してやってくれ……」
「あ! ジェーンちゃんごめんね……つい……」
「大丈夫ですよ、むしろ…その……。 菊流さんに抱き締めて貰って嬉しかったです!」
一度はジェーンを解放した菊流だったが、指を絡めながら恥ずかしそうに懇願する彼女の姿を目撃してしまった事で、感情が爆発してしまい再び強く抱き締めた。
「勿論よ、ジェーンちゃんが望むなら何時でも撫でたり抱き締めて上げる! エリアと与一もジェーンちゃんを抱きしめて上げて」
「菊流さんの言う通りですね。 ジェーンちゃんこっちに来て」
「私も一緒に抱き締める」
跪いて両手を手を広げている2人の元へと歩いて来たジェーンを、エリアと与一は優しく抱き締めた。
「ジェーンちゃんは本当に頑張ってますね。 召喚された年少組の立場が悪くならない様に1人でこの合同訓練に参加するなんて……。 そして、あなたが皆のお姉さんの役をやってくれている事を、私達はとても感謝していますよ?」
「ジェーンの柔らかいほっぺは至高。 何時でも私が抱きしめて上げる」
……与一の台詞はかなりズレていると思うが、ジェーンを大切に思ってる事は伝わった……のか?
与一の頓珍漢な台詞とは違い、エリアが語った台詞はジェーンの胸に来るものがあったのか、彼女はしゃがむエリアの腰へ腕を回すと鼻を鳴らし始めていた。
「エリア姉、もう少し。 もう少しだけ、このままいさせて下さい……」
「気が済むまでどうぞ」
優しくジェーンの頭を撫で続けるエリア。 その彼女の胸に顔を埋めながら泣き続けるジェーンを見ている俺達の間には、ユックリと時間が流れて行くのを感じていた。
その横では、手持ちぶたさとなった与一が、抱きしめる相手の居なくなった両手を握ったり開いたりしていた。
「ねぇ共也。 私のこの抱き締める相手の居なくなった、両腕はどうしたら良いと思う?」
「知らん!!」
「むう……」
暫くすると抱き着く事に満足したのか、ユックリとエリアから体を離したジェーンだったが、自分が取った行動を思い出すと、相当恥ずかしかったのか顔を赤くすると俺の背後に慌てて隠れるのだった。
「あの……エリアさん、付き合ってくれてありがとうございます。 でも今はあなたの顔が恥ずかしくて見れないので、もう少しだけ待ってください……」
「慌てなくて良いんですよ、落ち着いたらまた顔を見せて下さいね?」
「はい……」
背後に隠れているジェーンの頭を、俺は優しく撫でてやる。
「共兄もありがと……」
頭に乗せている俺の手に自分の手を重ねたジェーンは目端に涙を浮かべたまま、嬉しそうに微笑むのだった。
「さて、あと少しで2人が作った夜食が完成するのかな? 今日は歩き通しだったから腹が減ったよ」
「そうね、あとはもう少し煮込むだけで完成するから、椅子に座って待ってて!」
俺、ジェーン、与一の3人は切り株を利用した簡易的な椅子とテーブルを用意して、夜食が完成するのを今か今かと待っていると、先程ジェーンに抱き付かれなくて悔しい思いをしていた与一は、ジェーンを背後から抱きしめて満足そうに微笑んでいた。
「私もジェーンちゃんに抱き締めて欲しかったんだよ? それにしても君の髪はサラサラの上に良い匂いがするね……。 すぅ~~~」
「あうう……。 与一姉、あんまり髪の匂いを嗅がれると恥ずかしいですよぉ……」
与一とジェーンがじゃれ合っていると待っていた夜食が完成したらしく、テーブルの上に熱々の料理が入っている鍋が丸ごと置かれた。
「お待たせ! 外での料理だからあまり凝ったものは出来なかったけど、体が温まるホワイトシチューを作ってみたわ! あとは配給されたパンと干し肉ね!」
「良い匂い……。 とても美味そうです」
「では、頂きましょう!」
皆の皿にシチューを入れてテーブルの上に並べ終わって準備が完了すると、俺達は合唱して一緒に食べ始めた。
「「「「「いただきます」」」」」
こうして夜食を食べ始めた俺達だったが、ふと気になった事があったので食事の手を止めた俺はエリアに尋ねてみた。
「エリア、今回菊流の料理を手伝ってみてどうだった?」
「楽しかったですね。 普段料理自体をする機会が無いので、とても楽しみながら作業が出来ましたし、新鮮でした。 皆さんが今食べられているシチューの具材を切るお手伝いをしていたのですが、中々上手く素材を切る事が出来ずに、デコボコになっちゃったりしました……」
余程料理をする事が楽しかったのか、エリアは話をしている間ずっと笑顔だった。
「初めて料理を作って、ちゃんと食材が切れてるなら十分合格点。 私が素材を切ると、何故か全部1つに繋がってる……」
「与一のあれって狙ってやってたんじゃなかったのか……。 前にソーセージがアコーディオンの蛇腹みたいになってた時は……、痛った!」
「共兄?」
急に足先に鋭い痛みが走ったので、何事かと思いテーブルの下を覗いて見ると、そこでは与一が俺の足の甲を踏んで捩じっている場面が目に入った。
「共也、私が……何?」
「何でも、無いです……」
「ふん……」
過去の事を暴露された事が相当腹に据えかねたのか、明後日の方向を向いた与一に何言えず、甘んじて足を踏まれる行為を受け入れていた。 すると、テーブルの下で何が起きているのか察知した菊流が一度溜息を吐くと、エリアが料理を手伝ってくれた話に戻してくれた。
「そう言えばエリアって調理の手際も悪く無かったし、これからも練習すればかなり上手になるんじゃない?」
「ほ、本当ですか? ならこれからは料理の練習もしようかな?」
「その方が良いでしょうね。 料理中に何回も指を切ってたけど、共也に食べて欲しくて頑張ってたんだもんね!」
菊流の指摘に、エリアは顔を赤く染めると同時に自分の手を咄嗟に後ろに隠した。 すると、彼女は頬を膨らませて菊流を非難した。
「むう! 菊流さん、それは言わないでって約束したのに!!!」
「ごめん、ごめん、エリアがあまりにも嬉しそうにしてたからつい……ね?」
「つい……ね? じゃないですよぉ、菊流さんの意地悪!!」
今も菊流を非難し続けているエリアだが、何かを期待するように彼女はこちらをチラチラと見て来ている……。
(え~っと、これって何か言わないといけない奴だよな……)
「エ、エリアは料理初心者なんだから、指を切っても全然おかしい事は無いと思うぞ? むしろ指を何度も切ったのに頑張って料理を作ってくれる人の方が、俺は好感を持てるぞ?」
「だってさ、エリア良かったね」
「あ、ありがとうございま……す……」
消え入りそうな声でお礼を言っているエリアだが、最後の方は聞き取る事が出来なかった。 余程俺が好感が持てると言った事が嬉しかったのか、耳まで顔が赤くなったエリアは誤魔化すように横髪を撫でたりして落ち着きが無かった。
「エリアさん、顔が真っ赤ですが大丈夫ですか?」
「!!?」
「ジェーンちゃん、言っちゃ駄目! シッ!」
「???」
良く分かっていないジェーンに指摘された事によって、さらに赤くなった顔を両手で覆い隠すエリアだった。
色々とトラブルはあったが、何とか無事に夕食を終えた頃にはすっかり夜も更けていた。
「エリア、菊流、俺達3人が夜番をするから先に寝て良いぞ?」
「りょうか~~い。 エリア、寝ましょうか」
「はい!」
「…………共也、寝顔を覗いたら殴るわよ?」
「覗かねえよ!!」
2人がテントの中で完全に寝た事を与一に確認して貰った事で、森の中で約束した通り焚火に当たりながら今日あった出来事、そして菊流を狙うダリアへの対策を話し合うのだった。
「ごめんなジェーン」
「んん?? 共兄、急に謝ってどうしたのです?」
「本当ならまだ幼い君には夜の間ずっと寝かせて上げるべきなのだろうけれど、今後もパーティーの1員として活動する以上、夜番に少しでも慣れてもらわないといけなかったんだ」
「あぁ、そう言う事ですか。 共兄それは当たり前の事なのですから、謝らないで下さい。 これから一緒に旅をする事になるのですから、まだ私が子供だからと言ってもそこはハッキリした方が良いですよ」
「ジェーンちゃん、偉い! 光輝の馬鹿に爪の垢を煎じて飲ませたいくらい!」
「むぐ! 与一姉、苦しい!」
またも与一に抱き付かれて胸に顔を埋めるジェーンは息が出来ない様で、必死に逃げようとしていた。
こうして見ると、与一って意外と……。
2人のやり取りを眺めて居た俺の視線の行き先に気付いた与一は、俺の弱みを握ったとばかりに粘つく様な笑顔を見た瞬間、心の中で『しまった!』と思ったがもう遅かった。
「共也ったら、しょうがないな~~。 ……触りたいの?」
そう言いながら胸元を開いて谷間を見せてくる与一の誘惑に、俺は必死に抵抗した。
「さ、触りた……く無い!!」
「ふふ、でも共也の視線は私の胸から外れて無いよ?」
「男の本能なんだからしょうがないだろ!! そんな事より、ダリア対策を話し合うんだろ!?」
「しょうがないな、共也で遊ぶのはここまでにして上げよう」
「真面目な話をする為に集まったんだから、俺で遊ぶなよ……」
「ねぇ共也」
「何だよ!?」
「吸う?」
―――パーーーン!!
また谷間を見せてアホな事を言って来るものだから、つい反射で与一の頭を引っぱたいてしまった。
「いっった~~~い!!」
「与一しつこいぞ!!」
「むう……。 共兄を誘惑しようと思っても、与一姉みたいに胸のボリュームが無い……」
ジェーン、自分の胸を揉みながら不穏な事を口走るんじゃありません!
「そろそろ時間が無くなるし、ダリア対策を話し合うぞ……?」
話が進まないので、強引に話題を『ダリア』対策に変えた事が功を奏した様で、2人もやっと真面目に話し合う気になってくれた様だ。
「共也、ダリア対策の前に相談したい事がある見たいか事を言ってたけど、どんな相談事なの?」
「……2人に相談したかった事……。 それは、もし俺が菊流の近くにいてやる事が出来ない状態が作られてしまった時の事なんだ」
「そんな縁起でも無い事を言う時じゃ……」
「与一、まずは反論する前に、俺が予想している事を聞いてくれ」
「……分かった」
「あれだけの啖呵を切ったダリアの事だ。 きっとあいつはどんな手段を使ってでも、菊流を光輝のパーティーに入れようとして来るはずだ。 じゃあ、菊流が光輝のパーティーに入る可能性を引き出すのに、邪魔な存在は誰だ? 俺だよな……」
「菊流はあなたに依存しているものね……」
「どんな手段を用いて俺を排除しようとするのかは流石に分からないが、あの目をした奴は絶対に何かを仕掛けて来るはずだ……。 もしも、俺が本当に排除されて近くに居る事が出来ない場合、出来る範囲で構わないから、菊流を守ってやってくれないか?」
「うん。 元々今の光輝は好きじゃないから、菊流を奴のパーティーに入れさせる気は無いから安心して。 でもね、そんな状態にならない様に、共也が努力すれば良いだけの話しじゃない?」
与一の光輝へのディスもそうだが、俺への正論にも苦笑いするしかなかった。
「いや、まあ、それはそうなんだが……」
「でもあの女が危険だと思うのは私も同意……。 光輝の願いを叶える為なら、本当に何をしても許されると本気で考えてそうな気配を感じた……」
「私もそのように感じました……。 共兄、今以上に身の回りに気を付けて下さいね?」
「あぁ、分かってる……」
分かってる……か。 地球でもあんな精神が崩壊してる人間に会った事が無い俺は、この時ダリアへの認識の甘さを、後日嫌と言う程味あわされる事になるのだった。
「でも今日はもう遅いですし、流石に何か仕掛けて来るとは思えないですが……。 与一姉?」
「何? ジェーンちゃん」
「いえ……。 その……。 何故共兄の膝の上に腰掛けているのですか?」
そう、何故か与一が俺の膝の上に腰掛けているのだ。
「与一さんや、何故そこに座るんですかね?」
「私にとっての休憩場所……」
スッと与一の頭に手刀を落とす構えを取ると、信じられ無い速度で離脱しやがった。
「残念……。 また今度座る」
「俺は椅子じゃない!」
「ふふ、共兄と与一姉は本当に仲が良いんですね」
『「幼稚園からの腐れ縁だからね!」』
そして、その後も何事も無くエリアと菊流に夜番を交代すると、俺達はモソモソとテントの中に入り仮眠を取る事にするのだった。
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そして、合同訓練2日目の朝を迎えた。
「共也、与一、ジェーンちゃん朝だよ、起きて」
「共也さん、朝になったので朝ご飯にしま……。 共也さん……」
鳥達が鳴き始めたタイミングで、エリアと菊流が俺達3人を起こそうとしてテントの入り口を開いたのだが、中に太陽の光が差し込み逆光となってしまった事で2人の顔が良く見えない……。
「ん? どうしたんだ2人とも……」
寝起きの為、目を擦りながらエリアと菊流に問いかけると、何故か2人は俺の腹を指さしている。
「俺の腹に一体何が……」
2人の指刺されたその場所には、猫の様に小さく丸まって眠っているジェーンの姿があった事に、俺自身が一番驚いていた。
何で?
ダリアへの対策と夜番回でした
次回は『魔物討伐』を書いてみようと思います。




