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【共生魔法】の絆紡ぎ。  作者: 山本 ヤマドリ
2章・新たな出会い。
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兵士達との合同訓練③


 その後、宿営地を目指して移動している最中にエリアとも合流すると、ジェーンと与一の2人をパーティーに誘ったから加入させても良いかと尋ねると、2人とも2つ返事で了承してくれた。


「ジェーンって、最近共也と良く一緒に行動している、小っちゃくて可愛い金髪の女の娘だよね」

「そうですね。 私も面識がありますが、可愛い娘ですよ」

「へぇ~~、可愛いんだ……」


 こいつ、絶対ジェーンを可愛がるつもりだな?


 にやける菊流に後で釘を刺しておこうと決意する俺の視線に気付いたのか、彼女は慌てて言い訳を始めるのだった。


「と、共也がその娘に問題が無いと思うなら、反対する理由は無いわ。 与一は良く知ってるから問題無しね」

「私も2人の加入に対して、特に反対する理由が見つからないので賛成です」

「なら宿営地で合流したら、2人にパーティー加入の件は大丈夫だと伝えるぞ?」

「はい、ジェーンちゃんは先日会ってますし、与一さんに会えるのがとても楽しみです!」

「エリア、与一はかなり癖がある人物だから気を付けてね?」

「えっ………」

 

 菊流のその言葉に、与一のパーティー加入を早くも後悔するエリアだった。


 ==


 合同訓練に参加した俺達は最初何度も魔物に襲われると警戒していたのだが、宿営地へ向かう道中は流石にこれだけ多くの人がいるからか、魔物達が襲って来る事は無く、ハイキングを楽しむかの様に散歩をするだけの行軍が続いていた。 


「共也、暇ね……」

「だな……。 1匹も魔物が出て来ないから、正直言って拍子抜けだよ」

「まぁまぁ2人共、魔物と戦うだけがこの合同訓練の目的では無い訳ですし、周囲に警戒しつつ行軍するのも訓練の内ですよ?」

「この世界のエリアが言うなら、もう少し気合入れて周囲の警戒を続けて見るか」

「そうね。 どちらにしても近い将来必要になる事だしね」


 その後もしばらく周囲を警戒しながら移動していると綺麗な水の流れる川に出た。 川の両側は木々と背の高い草が生えているが、全く視界が効かない訳では無さそうだ。


「あ、共也、宿営地に着いたみたいだよ。 先行していた兵士達が馬車から荷物を降ろしてるわ!」

「お、本当だな」


 森の中にポッカリと開けた場所が現れ、そこではすでに到着していた多くの兵士達が転移者に貸し出す為の物資が濡れないように、割と大きなのテントを張っていた。


「テントなど、様々な物資を借りたい者はこっちで説明を受ける様に!」


 そして、その大きなテントの前には、多くの転移者達がテントを設営する為に必要な機材を借りる為に並んでいた。 


「テントの張り方はエリアが知ってるだろうし、良さそうな場所を見つけてそこでキャンプする事にするか」 

「そうね。 ってエリア、どうしたの?」

「えっと……。 その……ですね……」

「まさかとは思うが、テントの張り方を調べて無かった……とか?」

「……はい」

「マジか……」

「ごめんなさい……」

「いや、俺もエリアに丸投げする必要が無かった話だし、謝らないでくれ。 テントを張る為の指導員を手配してくれるように言って来るから、エリア達は何処か良い場所を見つけておいてくれ」


 次々と到着する転移者達の最後尾に並んだ俺は、順番が回って来るのを待っていた。


「次!」


 お、ようやく俺の番だ。 


「すでにテント自体はあるのですが、設営に必要な知識が全く無いので、詳しく指導してくれる人が付いてくれるとありがたいのですが……」

「ええっと。 あぁ、エリア姫と一緒にパーティーを組まれた方ですね。 では後でテント設営に詳しい者を1人送りますので、その者の指示に従って組み立ててみて下さい」

「分かりました」

「次の人」


 テントなどの設営の指導をしてくれる人は俺くらいなのかと思ったが、意外にも同じく指導員を付けて欲しいと希望する者が割と多いらしく、兵士達も忙しそうに動いていた。


「さて、エリアと菊流は何処にいるのかな」


 2人を探しながら宿営地を歩いていると、後ろから声を掛けられた。


「共也、見つけた」

「共兄!!」


 後ろから声を掛けて来たのは、与一とジェーンの2人だった。 


「やあ、共也、久しぶり」


 与一。 別れてから、そこまで時間が立って無いのだが……。


 まぁ、タイミング的にも丁度良かったので、パーティー参加の件でエリアと菊流から許可を貰った事を伝えると2人ともとても喜んでくれていたので、このまま一緒にエリアと菊流を一緒に探して貰う事にしたのだった。


「共也……。 まさか、迷子?」

「違うわ!!」

「テント設営の仕方が分からなかったから、指導員の手配をしている間に、2人には場所取りをして貰っただけだ!」

「でも、その場所が分からないと?」

「……ノーコメントだ……」

「あ、あれはエリアさんじゃないですか?」


 ジェーンが指差す先には、川が近くに流れている川岸にエリアと菊流が色々な機材を取り出して、何時でもテントを張れるように準備をしていたので、2人と合流するとジェーンと与一に自己紹介をしてもらうのだった。 


「エリアさん、菊流さん、私はカナリア=ジェーンと言います。 斥候型のスキル構成なので戦闘は今の所あまり得意ではありませんが、頑張りますのでよろしくお願いしましゅ!」


((((噛んだ……。噛んだわよね……))))


「ひぃ~~ん。 そんな憐れんだ目で見ないで下さいよぉ……」


 耳まで真っ赤にして俯いているジェーンが余程可愛かったのか、菊流が何時の間にか彼女の横に移動して頭を優しく撫でていた。

 そして次に、俺と菊流はすでに知っているが、エリアは初顔合わせなので与一に自己紹介をして貰った。 


「私は日番谷 与一、弓主体のスキルだから後方支援として動く事になると思う……。 よろしく」


 与一が軽く頭を下げると、俺達は2人を歓迎した。


「ジェーンちゃん、与一、歓迎するわ! これから一緒に頑張りましょうね!」

「与一さん、お久しぶりです、これからよろしくお願いしますね」


 久しぶり?


「ぬ? 久しぶり???」

「あ、いけない……。 召喚初日に私が一方的に見かけただけだったのに、変な言い方をしてしまって申し訳ないです」

「ん~ん。 気にして無いから大丈夫。 それにこれから一緒のパーティーを組むのだから、私の事は呼び捨てでも良いんだよ?」

「いえ、いきなり呼び捨てにするのは抵抗があるので、後日、慣れて来たらで良いですか?」

「了解。 その時期が来るのを私は待ってる!」


 何処かオタクっぽい事を言う与一は放置しておいて、次にジェーンに目線を移すと未だに菊流に摑まって可愛がられている最中だった。


「本当にジェーンちゃんって可愛いわね。 まるでお人形さんみたい!」

「私もお姉さんがいたら、こんな感じなのかと思えて嬉しいです……」

「菊流ちゃん!!」

「えっと……。 いきなりこんなお願いをするのは駄目なのかもしれないのですが……。 良ければ菊流姉って呼んでも良いですか?」

「い、良いわよ。 今ここで1回ほど呼んでみてもらって良いかな!?」


 ジェーンに顔を近づけて鼻息を荒くする菊流の姿に、ちょっとした狂気を感じてしまう……。 


「えっと、菊流姉……。 こ、これでどうですか!?」


 モジモジと恥ずかしがりながら『菊流姉』と言うジェーンの言葉が余程嬉しかったのか、菊流は彼女に勢いよく抱き着いた。


「何この娘、恥ずかしがって私の名を呼ぶのがすっごく可愛いんだけど! 共也、私にこの娘頂戴!」

「お前も与一と同じ事言ってんじゃねえよ!!」

「失敬な、私はあんなにだらしない顔をしていなかった」

「そうかもしれないが、喋った内容は同じだからな!?」

「共也のそう言う細かい所嫌い……」


 そう言えば与一って、子供の頃から都合が悪くなるといじける癖があったっけ……。


 いじけてそっぽを向く与一に懐かしさを覚えていると、ジェーンが苦し気に呻く声が聞こえて来た。


「むぅ! むぅ~~~!!」


 菊流の大きな胸に埋まって息が出来ないのか、苦しそうに藻掻いていた。


「菊流! ジェーンが苦しそうにしてるから、そろそろ開放してやれ!!」

「う、うわ。 ごめんねジェーンちゃん!」


 我に返った菊流は、慌てて体を離した事で大きく息を吸う事が出来たジェーンだった。


「ぷはぁ!!」

「ご、ごめんねジェーンちゃん。 あなたが可愛かったから、つい力を籠めて抱き付いちゃった……」

「い、いえ……。 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、『グハ!』抱きしめてくれた事自体はそこまで嫌じゃ無かったので大丈夫です」

「うう、ごめんね、ごめんね……」


 普段礼儀正しいジェーンが珍しく毒を吐く姿に驚いたが、菊流が抱きしめる行為自体は嫌じゃなかったらしく、パーティー加入早々2人の間に溝が出来なくて良かったと安堵した……。 


「でも菊流がジェーンちゃんに夢中になる気持ちも分かる!」

「うわぁ! だから与一、いきなり後ろから喋りかけるなって言ってるだろ!?」

「でも共也も実は内心で、ジェーンちゃんの事はとても可愛いと思ってるんでしょ?」

「そりゃ……まぁ……」

「共兄、本当ですか!?」

「うっ! ま、まぁ、その話はまだ今度、機会があればって事で」


 これ以上は流石に不味いと思い、俺は話を切り上げるのだった。


「共兄!! 待ってーーー!!」


 話の続きを聞こうとジェーンがしつこく追いかけて来るが、これ以上ボロが出ない内にこの話は止めておくべきだと判断した俺は、強引に別の話題へと変える事にした。


「ちょっとグダグダになったけど2人とも、このパーティーへようこそ! これからよろしくな!」

『共兄ぃーーーー!!』

「共也さん、流石にそれは酷いんじゃ……」

「ジェーンちゃん、可哀想に……」

「流石共也、少女すら容赦なく上げて落とすとは……鬼畜」


 文句を言って来るパーティーメンバーの言葉は無視だ、無視!


 その後、何とか挨拶を終えた俺達は、テントを張る為に必要な資材をエリアの収納袋から取り出すと、指導員が何時来ても良いように待っていた。 すると、せわしなく動いている群衆の間をを縫う様に動く兵士が1人こちらに向かって来ていた。


 その兵士がやはり指導員だったらしく、俺達が設営しようとしている場所に来ると、右手の先を頭に当てて敬礼するのだった。


「デリック隊長からの指示でテント設営の指導をしに……って、良く見たら共也じゃないか。 そうか、ここはお前のパーティーが設営しようとしている場所だったんだな」


 よくよく見ると、指導に来てくれた兵士は、練兵場で訓練している間に仲良くなったアストラだった。


「よっ!」


 偶然に感謝しつつ、俺達はアストラにテントの設営の仕方を学ぶ事になったのだった。 



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