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【共生魔法】の絆紡ぎ。  作者: 山本 ヤマドリ
17章・激動のノグライナ王国
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与一組無双。

「行くよ、皆」


 大量のアカシャが次々と森を抜けて来るのを見て、与一、スノウ、タケは迎撃する為にその群れの中に突っ込んで行く。


「姉様達!」

「えぇ、与一さん達に負けていられ無いわね」


 戦乙女の4人は空を飛びつつ、与一を中心とした陣形を構築する。 


「与一、まずは盛大な花火をぶちかましてやれ!」

「メープル……。 了解。 スノウ、タケ、力を貸して!」

「共也から与一に力を貸してやってくれって言われてるんだ、存分に使って!!」

(与一、存分に使って!)


 一度大きく深呼吸した私は、今までずっと考えて来た【氷結】の新しい使い方を実行した。


「大気に存在する多くの水よ、氷結して我が翼と成れ!」


 パキパキパキパキ……。


 スキル発動と同時に与一の背中に透明度の高い1対の氷の翼が生成されて行き、完成すると同時に与一は攻撃に移った。


「【アイスランス】【アイスニードル】同時展開。 タケ、アイスランスの全てに雷魔法を纏わせる事は出来る?」

(任せて!)

「与一、私は?」

「私はニードルの制御に手一杯になるはずだから、ランスの制御をお願い」

「りょ~~かい!」


 氷の翼から大小の氷柱が生え始めると、タケが雷魔法を発動させると1つ1つに纏せ始めた。


「いっけーーー!!」


 その瞬間、大量のアイスランスとニードルが、前方に布陣して与一達を迎え撃とうしていたアカシャ達に向けて放たれた。


『ぎゃ、ぐ、グアアアアア!!』


 雷魔法を纏う巨大な氷柱が前方を走っていたアカシャを貫いて次々と殺して行く中、私が後方に向けて放ったアイスニードルも効果を発揮し始めていた。


『ぐ、グアアアアアア!!』


 パキパキパキパキ!


 ランスにはタケの雷魔法を纏わせていたが、私が操作するニードルには氷結を付与していた。

 その為、巨大な体に対して小さな針が刺さった所で気付いて奴は皆無だけど、その場所から徐々に氷結して行く事にも気付いていないアカシャ達がこちらに突撃して来る。


 その行動が、自分達にどの様な結果をもたらすのかも知らずに……。


 そろそろね。


―――バギン!


『ぐあ!?』


 完璧に凍り付いた足は、アカシャ自身の体重に耐え切れなくなり砕け散る。

 そうして足を失った奴等は立っている事も困難となり、近くで凍り付いていたアカシャに倒れ込んで凍った部分を破壊して行く。 戦闘開始早々そんな状態が辺り一面で繰り広げられるものだから、アカシャ達は大混乱に陥っていた。 


 そんな隙だらけの状態の奴等を、戦いに慣れた戦乙女の4人が見逃すはずも無く。


「は~~い。 楽にして上げるから、暴れないでね~~?」


 おっとり系の3女シシリーが弓を構えているが、肝心の矢をつがえていない。 だが、彼女が弦から手を放した瞬間、1筋の光が飛んで行きアカシャの頭を簡単に貫いて消滅させた。


「……相変わらずシシリー姉の弓は恐ろしい威力……。 絶対に敵に回したくない存在……」

「イリスちゃ~~ん? 無駄口叩く前に、さっさと与一さんが凍らせたあいつ等を討伐して来たらどうなのかしら?」

「……はい」


 相変わらずシシリー姉は普段とてもおっとりしてるけど、こういう時はとても怖い……。


「メープル、1匹1匹破壊して回るんじゃ無くて、一気に倒せる手段は持って無いの!?」

「俺の武器はハンマーなんだから、そんな事言われてもどうしようもないだろサリナ姉! そう言うくらいなら、姉が持つその鎌でこいつ等を処理してくれよ!」

「え、良いの!?」

「あ、ちが! 今のは言葉の綾で!」

「えいや!」


 メープルが何か言い掛けていたが、私は話を聞き終わる前に手に持っていた巨大な鎌をアカシャ達が右往左往している場所に投擲した。


『わああああぁぁぁ!! 馬鹿馬鹿いきなりこっちに向けて大鎌を投げるな!!』


 投擲線上にいたメープルちゃんの髪を少し刈った気がしたが、まぁ本人は無事だったので良し!


 そして、私は自身のスキルを発動させた。


「行け! 【巨大化】!」


 巨大化した事で質量兵器となった大鎌は、大量のアカシャ達を切断するとブーメランの様に私の手元に帰って来たので綺麗に受け取った。


 勿論その時は普通の大鎌に戻しているよ?


「はぁ~~。 快感……」


 サリナの巨大な大鎌の投擲によって、目視できる範囲にいたアカシャの4分の1が上下に切断されて消滅したのだった。


「私達も負けてられない。 スノウ、例の技を使うけど良い?」

「おっけ~~。 行くよ与一。【同調】!」


 光が2人を包み込むがすぐに収まったのだが、2人が居たタケの背中には、雪豹の特徴である斑点模様のある太く長い尻尾、手、耳を生やして獣人となった与一だった。 


(与一可愛い~~。 その恰好で共也と会えばいちころじゃない?)


 何が? とは聞かないでおく……。


「ほらタケ、無駄口叩く暇があったら雷をこの大量に生成した氷の筒の中に流し込んで」

(は~~い。 【雷撃】)


 大量の雷が氷の筒に注がれて行く。 


「行け! 3人の合わせ技の【電磁砲】!」


 乾いた音が大量に響き渡ると同時に、砲身の直線状にいたアカシャのほとんどが風穴を開けて動かぬ屍と化していく。


 流石に分が悪いと判断したのか、森から出て来たばかりのアカシャ達は踵を返して、また森の中へと戻ろうとしていた。


『ぐぎゃあぁぁぁぁ!!』


 だがその逃げ出そうとしていた大勢の個体も、2回り以上も体の大きな固体が現れた事によって「逃亡者には死を」と体現するかの様に、バラバラに引き裂かれたアカシャは断末魔を上げながら絶命した。


「たった6匹の羽虫に情けない。 この【動力のオーガスト】様が、貴様等を地獄に送ってくれるわ!」

「共也に聞いていた通り、やっぱりアカシャを指揮する存在がいた様ね」

「ほう? 指揮官の存在を知っているとは、中々の情報通では無いか。 だが、我をそこら辺にいるアカシャの指揮官と混同しないでくれよ。 何故なら……儂はこの体になる前は英雄の1人だったのだからな!」


 オーガストがそう言った瞬間、奴の姿が視界から掻き消えた。


(消えた!?)

「タケ、後ろに飛んで! 早く!」


―――ゴシャ!


 さっきまでタケといた場所に、オーガストの爪を生やした巨大な獣の手が地面に突き刺さっていた。


 危なかった。 あと少し飛び退くのが遅れて居たら……。


(与一、前方に氷壁を作って! 早く!)

「スノウ!? 大気よ氷結して我の前に壁を作り出せ!!」


 慌てて早口で私の前方に生成した氷の壁に、複数の火花が散った。


 ギギギン!


「ちっ、やるな。 思いの外、決断する速度が早いじゃないか」

「・・・・・・」


 もし、ここにスノウとタケがいなければ、私は先程の攻防で2度死んでいた……。


「見た所、お前の実力は儂とほぼ同じと見たが……。 さて、このアカシャの力を得た儂に何処まで抗う事が出来るかな? 精々儂を楽しませてくれよ!」


 確かに私とこいつの実力は拮抗しているかもしれないけど……。 こいつは本当に気付いてないの?


 そう思った瞬間、一筋の光がオーガストの前足を吹き飛ばした。


「なっ!?」

「なっ!? じゃ無いわよ~~。 あなた、本当に私達の事が目に入らなかったのぉ?」

「そうだぜ。 与一に気を取られて姿を現したみたいだが、それが運の尽きだったな」

「さてオーガストさん? でしたっけ、覚悟は良いですか?」

「お前をさっさと倒してアカシャを無効化した後に、ノインの護衛に戻ります」 


 そう、こいつは戦乙女の4人の事が目に入っていなかったのだ。


 周りを見てもすでに他のアカシャ達は戦乙女達によって無力化されてしまっているし、森から新たに出て来ようとしていた奴らも、先程のオーガストが仲間を引き裂く姿を見てしまった影響で怯えてしまって出て来ない。 そんな奴らがこれから始まる戦いで使い物になる訳が無い。 


 焦り始めたオーガストは額から大量の汗を流し始めると、一歩後ろに下がった。


(儂と同じ実力を持つ奴と1体1で戦うならまだしも、こいつと実力が似たり寄ったりの奴が後4人も居る状態では戦いにすらならん……。 ここは逃げの一手を取るしか……)


『逃げる』オーガストが、それを実行しようとした時だった。


(る……な……)


 何じゃ?


(逃げ……るな……。 命を懸けて戦え)


 この声は光輝様!? 何故彼の声が儂の頭の中に直接聞こえるのだ……。 ま、まさか!?


(逃げようとする者には呪いを……)


 ぐ、ぐええぇぇ!!


「お、おい……。 何だかあいつの様子が変じゃないか?」

「えぇ、黒い霧の様な物が体から……。 いけない! みんなすぐ離れて!」

「シシリー姉?」

「イリスちゃん、早くしなさい!」

「は、はい!」


 黒い霧を纏うオーガストの体は見間違いで無いならば、あの巨体がさらに巨大化して行き見上げる大きさになった所でようやく止まった。 最早こいつの大きさは小さな山だ。


「与一! 僕の邪魔はさせないぞ! こいつを利用して、ここでお前だけでも始末してやる!」

「この声は光輝? そう……。 あなたはもう人ですら無くなったのね……。 良いわ、私がこの光輝の思念の欠片を始末して上げる」

「はっはっは! 蟻のような大きさのお前に一体何が出来ると『五月蠅い』…………はっ?」


 雪豹の腕となっている与一は指先から爪を伸ばすと、長く、細く、硬い氷で補強した腕を一気に振り抜いた事で巨木の様な太さを誇るオーガストの腕を1撃で切断して見せた。


「こ、この程度、再生させれば……し、しない。 再生しない! 何故だ!」

「腕を切断したと同時に、傷口を氷結させたからよ。 いくら強力な再生能力を持っていたとしても、生命活動自体が行えなければ、再生能力自体が発動出来ないでしょう?」

「や、止めろ与一、来るな!」

「さっきまでの勢いは何処に行ったのかしら? 共也の障害になり得そうな存在は、私が排除する」

「……また。 また共也か! 何で彼奴ばかりが皆に大切にされるんだ! 共也さえ居なければ、菊流ちゃんだって僕の嫁になってくれてたはずなのに!!」


 氷の爪で徐々にオーガストの体を削り取っていると、そんな事を言って来るものだから自然と本音が口から漏れ出てしまった。


「キモ……」

「はぁ!? 与一、もう一度言ってみろ! ヴォーパリアの王となった僕の何処が気持ち悪いって言うんだ!」

「保育園の時にこっぴどく振られたのに、未だに引きずってる所。 高校を卒業して成人したと言うのに異世界に来て勇者と言う称号を得たと言うだけで、中二病全開で菊流の意思を無視して強引にパーティーに誘おうとした所など、話題を上げればきりが無いけど……。 まだ言おうか?」

「ぐぎぎぎぎぎぎ!!」


 本当の事なので、何も言えなくなった光輝は歯軋りするしか出来なかった。 それに、追い打ちをかける様にオーガストの体は与一によって削られ過ぎてしまい、最早頭を残すのみとなってしまっていた。


「それじゃあね光輝、共也を相手に精々足掻くと良いわ。 10年前と違って、彼も相当強くなっているからもしかしたら、王に胡坐をかいていたあなたなんか物の数じゃないかもね?」

「じゃあ、共也を殺して僕の方が上だと証明した後に、お前を惨たらしく殺してやるよ」

「出来ればね? さよなら」


 ガシャン!


 最後に残ったオーガストの頭を凍らせて破壊した事で、指揮官を失ったアカシャ達は一斉に森の奥へと逃げて行くのだった。


「共也、こっちは終わったわよ。 光輝相手に死んだら、決して許さないんだからね?」


 王都から東側の安全を確保出来た私達は、他の地域を援護する為に一度王都へと帰還するのだった。





ここまで読んでくれてありがとうございます。


今回は与一と戦乙女が活躍する場面を描いてみましたが、戦乙女の4人の活躍が少ない気もしますが申し訳ないです。



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