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【共生魔法】の絆紡ぎ。  作者: 山本 ヤマドリ
16章・再び訪れたケントニス帝国
253/286

悪魔ベルゼブブ。


「カア!」


―――バアン!


「アハハハハ! 無駄だ無駄だ! その程度の爆裂魔法で倒せる昆虫の数などたかが知れている。 ほら、追加の虫達が来たぞ?」

「この!」


 周囲を角を持つ虫達に包囲されている俺とマトーヤは、範囲攻撃で何匹もの虫を倒して行くが一向に数が減らないどころか、むしろ増えて行っている。


 爆裂魔法で虫の数を減らしていたマトーヤだったが、魔力の残量が気になるのかここぞと言う場面に絞って撃ち始めていた。


 だが、それではさらに虫達が増えかねないと思い、俺はマトーヤに指示を出した。


「マトーヤ、魔力の残量が気になるなら俺の魔力を使え!」

「か……」


 何かを言いかけたマトーヤだったが、現状を打破する為にはバルトスの言う事を聞くしか無いと判断した様で、愛用のワンドにさらに魔力を籠めた。


「そう……だ、それで良いんだマトーヤ……」


 魔力がマトーヤに持って行かれている感覚に倦怠感が襲って来るが、強力な範囲魔法を撃とうとしているマトーヤの邪魔をしようとする虫達を迎撃する事に手一杯で気にしている暇などない。


「やれ! マトーヤ!」

「アハハハ、いくら強力な魔法を撃ったところで、俺の可愛がってる虫共がそう簡単に倒せると思わないことだ!」


 そんな台詞がベルゼブブから聞こえた気がしたが、マトーヤが独自に開発に成功していた魔法が発動した事で、奴の顔色が一気に変わった。


「【完全同調魔法・エクスプロージョン】」


 その瞬間、俺達を包囲していた虫達や隣国の兵士達を巻き込んで、()()()()()2つの極大爆裂魔法が発動した相乗効果によって信じられ無い熱と威力を発揮した。


『ぎゃああああああ!!』

『キイイイィィィィィ!!』

「な、何だ、この馬鹿げた威力の爆裂魔法は!?」


 ベルゼブブは自身に強力な防御魔法を事前に張っていた様で無事だが、俺達を包囲していた虫や兵士達はそうも行かず、マトーヤの爆裂魔法によって次々に消滅して行った。


 そして、ベルゼブブの周りにを飛んでいた虫達が消滅したこの隙を好機と捉えて、俺は奴の頭上に飛び上がり剣を振り下ろした。


「くたばれ、ベルゼブブーーーー!!」

「あめえよ、お前の行動を俺が予想出来無いとでも思ったか!?」


 奇襲を察知していたベルゼブブは防御魔法をさらに厚くした事で突破出来ない、俺の攻撃は奴に届かなかった。


「この!!」

「アハハハ、ざ~~んねん! さあ、死ね! 勇者バルトス!」


 奴が何かを撃ち込もうとして俺に指を向けた所で、硬質な何かが何本も突き刺さる音が聞こえて来た。


―――ガシャガシャ、カカカ!


「俺の防御魔法に食い込んでいるだと!? アンデット、貴様何をした通常の魔法程度ではこの様な結果にならないはずだぞ!?」


 愛用のワンドを掲げたマトーヤは先程と同じ様に完全同調魔法で属性魔法を発動したが、先程と違う点は爆裂魔法ではなく、今回は大量のアイスランスを発動した事だ。


 ベルゼブブの張った防御魔法に何本ものアイスランスを食い込ませたマトーヤは、そのまま連続で撃ち続けた事で奴を守る防御魔法に大量のヒビが走り、あと少しで崩壊しかねないと所まで来た事で奴も焦り始めていた。


「く、クソ! 虫達よ、こいつ等を止めろ!」


 そのベルゼブブの指示を聞いた虫達が奴を守ろうとして、俺とマトーヤの周りを再び囲み始めた。


 そして、その光景を見た俺は決断した。


「これでお前達も終わり……って待て! バルトス、何故人間であるお前にもう1組の腕が生えている!?」

「さあな……、何でだろうな……」


 そう、魔物としての能力を得ていた俺はさらに2本の腕を肩から生やすと、得意の土魔法で2本の剣を生成するとヒビだらけの防御結界に向けて一気に振り下ろした。


―――バリーーーーン!!


 大量のアイスランスが食い込んでいた事によって、ヒビが入って限界を迎えた奴の防御魔法は、俺の攻撃でガラスが割れる音を響かせるとあっけなく砕け散ったのだった。


「クソがーーーーーー!!」

「その命、貰ったぞベルゼブブ!!」


 勝利を確信した俺は、手に持つ4本の剣をベルゼブブに突き刺した。


「貴様の死によって、この馬鹿げた侵攻も終わりだ!」


 俺がさらに剣を押し込むと、奴は盛大に笑い始めた。


「・・・・く、くくくくく。 アハハハハハ!」

「な、何が可笑しい、ベルゼブブ!!」

「何が可笑しいかだって? それはお前の能天気さにだよ、バルトス! 俺はこの程度では死なない! そう、存在そのものを消滅させる位の威力の攻撃で無ければなぁ!」


 その瞬間、奴の体は黒く小さな煙のようになって後方に逃れると、確実に剣が刺さっていたはずの4か所もすっかり痕跡すら残っていなかった。


「ざ~~んねんでした!」


 そして俺は、奴が先程まで立っていた場所に落ちている小さな虫の死骸を見つけた事で、ある結論に至った。


「ベルゼブブ。 貴様は1個の生命体では無く、多くの虫が集合して意識を共有している生命体か……」

「へぇ、気付いたのか。 そうだよ、お前の言う通り俺は小さな虫の集合体だ。 だから言っただろう、存在そのものを消滅させる位の威力を持つ攻撃で無ければ俺を倒す事など出来ないとな!」


 4本の腕で構える俺に対して、奴は再び虫を呼び集めて自身の周りを取り囲ませた。


 そして、ベルゼブブは獲物を見る目を俺に向けると、舌なめずりした。


「さて。 お前の奥の手は見せて貰ったし、そろそろ死んどくか?」

「く、お前を殺して侵攻を食い止めるまで、俺はここで死ぬ訳にはいかないんだ!」


 マトーヤの奥の手も見られた以上、次から奴は完全同調魔法を必ず警戒してくるはずだ……。


 アリシア、レレイ、すまん。 今の俺ではこいつに勝てないかもしれない……。


 俺は未だに2体の悪魔と戦っている仲間に、心の中で謝罪する事しか出来なかった……。



 ==◇===


【アリシア側】


「ほらほら! 早く何とかしないと兵士達が次々と消滅していきますよぉ!?」


 バルトスから指揮権を譲られた兵士達を次々と突っ込ませて盾として扱っていたが、ディアブロはそれをメス1本で苦も無く消滅させて行く。


 レスターも隙を見つけては合間合間で攻撃を仕掛けるが、致命傷には程遠い。


「この! 調子に乗るな!【神聖魔法・ホーリレイ】」

「いたたたた。 そうですよ、その様な攻撃魔法があるのなら、もっと撃って来ても良いのですよ? ですが解析してすぐに無効化して上げますけどね。 この様に!」

「なっ! また!?」


 そう、奴は私が放った攻撃魔法を解析してしまいすぐ耐性を持ってしまう為、有効打となる攻撃手段が限られ始めていた。


「レスター、一旦引いて!」

「か!」

「おやぁ? 神聖魔法での攻撃はもう終わりですか? せっかく神聖魔法と言う珍しい使い手に出会えたのですから、もう少し味合わせて欲しかったのですがぁ?」


 …………もう、私の手札であいつに致命傷を与える事が出来る可能性のある技は、あの手しか無い……。


 側に着地してナイフを2本構えるレスターと視線を合わせると頷き合い、私は覚悟を決めた。


「兵士達全員であいつに突っ込んで!」


 指示を受けた骸骨兵達は、訝し気にこちらを見ているディアブロに突っ込んで行った。


「はぁ、あなたには失望いたしましたよ。

 今更こいつらをけしかけた所で何の役にも立たない事くらいあなたも分かっているでしょうに……。 まぁ、良いでしょう。 どのような手段で私に手傷を与えようとしているのか興味がありますし、付き合って差し上げますよ!」


 次々に襲い掛かって来る骸骨兵達に流石に手数が足りないと判断したのか、ディアブロはもう1本メスを取り出すと魔力を纏わせて魔力剣を作り出した。


(さあ、何処から来ます? 早く私を攻撃しないと目くらましが居なくなってしまいますよぉ?)


 そしてその時は訪れた。


 1体の兵士を切って消滅させた背後から、レスターと呼ばれたナイフ使いが突っ込んで来たのだ。


「はっ!? この程度があなた達が考えた策ですか!? もう良い、消えなさい!!」


 心底ガッカリしたディアブロは、2本の魔力剣でレスターを薙ぎ払った。


 だが、ディアブロの思惑と違い、レスターは2本のナイフに魔力を纏わせて受け止めていた。


 そうレスターも魔力剣の使い手だったのだ。


「この! だが、私の魔力剣を受け止めたからと言って、何が出来ると…………ゲボオ!!」


 腹部に激痛を感じたディアブロが慌てて視線を下に向けると、そこには光の魔力で出来た槍がレスター諸共突き刺さっている光景が目に入ったのだった。


「何だこの槍はぁ!?」


 激痛に悶えるディアブロは、光る槍を抜こうとして掴もうとするが拒絶するかのように弾かれてしまう。


「この槍は我々悪魔を拒絶しているのか!? 待て、この現象何処かで聞いた事が……。 まさか『聖女』だけが使えると言われたスキル『神属性』か!?」


 その光景を見届けたレスターが消滅すると、そこには自身が持つ全ての魔力を纏わせて光の槍と化した愛用の杖を突き出しているアリシアが、体を光り輝かせていた。


「貴様がまさか聖女だったとは夢にも思わなかったよ。 しくじったなぁ……。 だが、それでも俺を倒せる程では無い! 死ね、聖女アリシア!」


 その宣言と共に、ディアブロが操る2本の魔力剣が私の体を激痛と共に通り抜けて行った事で、私は血を吐き地面に仰向けに倒れたのだった。


「ゲホ……」


―――ドサ


「これで終わりですねぇ、まさかこんな辺境に聖女のスキルを持つ者が紛れ込んでいるとは……。 だが、私に手傷を負わせたとは言えこの程度の傷などすぐに……」


 だが光の槍によってディアブロの腹に空いた傷が塞がる事は無かった。


「な、何故だ! 何故傷が塞がらないのですか!?」

「は、はは。 それは……神属性の攻撃だから……。 ですよ……」


 意識が朦朧とする中、私は何故傷が塞がらないのか種明かしをする事にするのだった。


「神属性によって付けられた傷が塞がる事は決して無い……。 決してね……」

「貴様ーーー! この傷を塞ぐ手段を死ぬ前に教えなさい、今すぐに!」

「そんな手段など私にも分かりませんよ」

「ぐ、く!!」


 ディアブロは私の襟首を掴み悔しそうに歯軋りしているが、私も本当に知らないので答えようが無い。まぁ、知っていても答えるつもりは無いんだけどね……。


「さ、さて。 何十、何百年生き続けるか分からないあなたに取って、その傷はどう影響するのでしょうね……。 あの世でジックリ見させて頂きます……よ」

「うがああああああああああ、人間如きが!!」


 苛立ちのあまり横たわる私に向けて、ディアブロは魔力剣を振り下ろそうとしていた。


 ごめんなさいバルトス。 手傷を与える事で精一杯だった私を許してね……。


 こうして私はディアブロの足止めをする事には成功したが、命を落とす結果となってしまうのだった。



ここまでお読みいただきありがとうございます。


少し短かったですが、アリシア戦は終わりにしたいと思います。


次回はレレイアーラ戦から始まります。


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