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【共生魔法】の絆紡ぎ。  作者: 山本 ヤマドリ
14章・龍達が住む大陸。
237/291

ヴォーパリアの闇

 床の上に座らされている元シンドリア王国の少年兵だったタンブロとアケローの2人は、ダリアの魅了が解除されたお陰で今ではすっかりこちらに協力的になっていた。


「タンブロさん、アケローさん、あなた達の様な不幸な者をこれからも生み出さない為にも、2人の持っているヴォーパリア……、いえ、暗黒教団アポカリプスの情報を知ってる限りで構わないので教えて貰う事は出来ますか?」

「柚葉さん……。 分かった。 俺の知る限りの情報をあなた達に渡そう……、アケロー構わないな?」

「今までダリア達に良いように扱われて来たんだ。 奴らに少しでも嫌がらせが出来るなら拒否する理由なんて無い……」

「と、言う事だ柚葉さん。 だけど俺達でも教団の深淵を知ってる訳じゃ無いから、そこは勘弁してくれ」

「良いわ。 今まで表面的な情報しか手に入らなかったのが、ようやく内部に詳しい人から手に入る情報ですもの。

 知ってる情報を全て語ってくれたなら、あなた達の命は保証して上げるわ」

「ありがとう……」


 そして、2人は語り始めた。


「なぁ、内部の情報を話す前に聞きたいんだが、あんた達は神聖国ヴォーパリア。 今あの国は何を目的に動いてると思ってる?」

「ちょっと、いきなり何の話しをしてるの、それを聞きたくて今、あなた達に話しを聞いてるんじゃない」

「良いから。 予想でも良いからまずはこの質問に答えて見てくれ」

「暗黒神を完全復活させるって言うのが私達の共通認識。 それは間違ってるの?」

「与一さんか。 それは合ってるが、それは通過点に過ぎないんだ」

「通過点?」

「あぁ、暗黒教団アポカリプスの最終目標。 それは魔族、人類を問わず全ての知的生命体の抹殺が教団の最終目標だ」

『「「「はあぁぁぁぁl!?」」」』


 『全ての知的生命体の抹殺』その2人の情報はあまりにも衝撃が強すぎた為、みんなの口から驚きの声が発せられた。


「え、いや。 昔会った教祖のグノーシスは人類の救済と言って私達を襲って来た事があったけど、あれは嘘だったの?」

「グノーシス? あぁ、確かに教祖の席にグノーシスと言う名の奴は居るのは名簿で見たが、俺達が教団に入ってから1度も見た事が無いな……。

 アケロー、お前は教祖のグノーシスを見た事があるのか?」

「いや。 俺も見た事が無いな……。

 もしかしたら俺達が知らない深淵と呼ばれる場所に匿われているのかもしれないが、俺が知る中では教祖グノーシスを見た事が無い。 すまない……」

「諜報部でも教祖グノーシスの足取りは追えないと報告があったけど、暗部のあなた達も会った事が無いんだね……」

「俺達と一緒にダリアに魅了された仲間も誰も教祖に会った事が無いはずだ」

「そう……。 奴の事も気になるけど分からないならしょうがない。

 今は何故知的生命体を殲滅しようとしているのか、その説明を先にして貰って良い?」


 与一は何故教団がそこまで知的生命体を殲滅する事に拘っているのか。

 そこがいまいち分からないので2人に尋ねた。


「分かった。 あんた達も知っての通り教団は表向き、人類をあらゆる災厄から暗黒神に守ってもらうと言う理念の元動いてる組織だが、実は裏で語られている最終目標を達成した時の報酬が提示されていてな」

「報酬ですって?」

「報酬の内容。 それは、惑星アルトリアに存在する全ての知的生命体を排除した後に、暗黒神の手を借りて生まれ変わると言うものだ」

「生まれ変わるって、それに何か意味があるの?」

「…………暗黒神のスキルの1つに魔物召喚があるのは知ってるか?」

「えぇ、確かディーネとシルさんの過去の話しの中でも、大量に召喚してたとか言ってたわね。 それで?」

「魔物ってさ頑強な体を持つ上に、殺されなければ何百年でも生き続ける事が出来るよな?

 もし、寿命が近い事を感じ始めた者が姿形は変わってしまうが、永遠に近い生命が与えられるとしたらどうするだろうな……?」

「まさか、魔物に転生して永遠に近い命を手に入れる為に、人類を裏切るって言うの?」

「ああ、こちらに有利になる様に動いた者ほど強力な魔物に転生させてくれると明言されてるから、必死になる奴らもいるだろうな」


 永遠に近い時を生き続ける事が出来る……。


 その言葉を聞いてノインはある事が引っかかった。


「あ、もしかして、冒険者ギルドのお歴々方がヴォーパリアを国として認めたのって、もしかして?」

「冒険者ギルドの老人の奴らか。 確かにそいつらも教団に協力した人物として、生まれ変わる事が出来るリストに入っていたな」

「そんな……。 じゃあ、冒険者ギルドが各地で集めた情報も全て教団に筒抜けなんじゃ……」

「恐らくな……」

「うぅ。 一体どれだけの冒険者達が、その老害共のせいで亡くなったんですか……」


 ノインちゃんは目に涙を浮かべて歯が割れるんじゃないか、と言うくらい強く噛みしめていた。


「柚葉さん、私は朝一番でボルラスの冒険者ギルドに尋ねて、老害共に情報が漏れない様に出来ないか相談しに行ってみます。

 ですから、この街の顔役であるあなたの力を貸してくれませんか?」

「ええ、良いわ。 ノクティスさん、マリーダさんにも冒険者ギルドに付いて来てもらえるように予定を組んで貰えるかしら?」

「分かりました。 これは緊急性が高い案件なので、今からマリーダ姉を叩き起こして明日の予定を組んで来ます」

「お願いします」

「リリス様、緊急の要件が入りましたので、今日の所はお暇させて頂きます」

「うん、頑張ってねノクティス」


 私がお願いするとノクティスさんは、リリスちゃんに1度頭を下げると慌てて出て行った。


「ねぇ、2人ともベリアルって名前の奴は教団内でどの立ち位置に居るの?」

「ベリアルですか……。 直属の上司と言う訳じゃ無いので良く分からないですが、完全に独立している何かを研究している機関の長官だったはずです」

「もしかして、この人肉を提供してきたのも?」

「はい、ベリアルです。 奴は俺達の前にこの肉を積み上げてこう言っていました『お前達が力を欲する時が来たのなら暗黒神様の因子が組み込まれているこの肉を食べると良い。

 そうすれば魔石を吸収する事が出来る様になり、お前達は新たな力を得るだろう』と……」

「そうですか、間接的とは言え健を殺したのはベリアルって奴なのですね……」

「ジェーン……」


 健を殺した黒幕は分かったが、悪魔の名を持つ人物が後どれだけいるのか私達には分からない……。


「ねぇ2人共、悪魔の名を持つ人物が後どれ位いるのかって聞いても分からないわよね?」

「済まない……。 悪魔の名と言われても元々知らない名だから答えようが無いんだ」

「だよね……」

「なぁ柚葉。 後で俺達が思いつく限りの悪魔の名を書いて2人に確認して貰うのはどうだ?」

「ダグラス、私もそれは考えたけど危険だから止めておきましょう」

「何故だ? 対策が出来て良いと思うんだが」

「健が残してくれた言葉で何人かの悪魔が自分の名を使って動いてる奴がいるのは分かったけど、全員が全員とも正直に自分の名を晒してると思う?」

「思わないな……」

「そうよ。 もし偽名を名乗って私達のすぐ側まで侵入された場合、対処が遅れてしまうわ。

 だから悪魔の名前を語る奴を調べるのではなくて、例えばそうね魔素。

 そう、上級悪魔ともなれば膨大な魔力や魔素を身に纏ってるはずだから、それを感知する魔道具を作れば良いのよ!」

「だがそんな魔道具を誰が作れるって言うん……………」


 丁度その魔道具の専門家がここに居るじゃないか。

 と、ここにいる全員の視線がテーブルに置かれていた果物を食べようとして、大口を開けていたエストに向けられていた。


「あ~~ん……。 な、何ですか皆して私を凝視して……。 この果物は私が食べるんですから、誰にも上げませんからね!?」

「いや、話し聞いてなかったのかよ……」

「ほえ?」

「まぁ良いわ。 丁度エストちゃんも私に聞きたい事があったみたいだし、隣のお部屋でちょっと細かい事を詰めましょうか。 セバス! 〖パチン!〗」

「はい、お嬢様! エスト様、少々失礼しますよ?」


 柚ちゃんが指を鳴らすと、セバスさんはエストの首の裏を引っ張って持ち上げた。


「ちょっと! 何で私が三毛猫の着ぐるみを着てるからと言って、こんな持ち方で持ち上げるの! 普通ここは羽交い絞めかお姫様抱っこをする場面でしょう!?」


 皆は思った。

 お姫様抱っこはともかく、羽交い絞めでも良いのか……と。


「私にもお姫様抱っこをする相手を選ぶ権利位はあるので」

「え? 私って初老のおじいさんにも恋愛対象外の扱いなの!?」

「…………」

「セバスさん何か言ってよーーーー!! 無言で運ばれたら余計に心に来るからーー!!」

「はい、はい、可愛いです、可愛いです」

「おま! このジジイ、ふざけんなーーーー!! ぶん殴ってやるーーーー!!」


 エストは首元を摘ままれて持ち上げられているので、いくら両手足を振り回してもセバスさんに攻撃が届く事は無い。

 そして、エストは散々抵抗しようとしたが、そのまま柚ちゃんと一緒に別室へと連れて行かれたのだった。


「ジジイ! 一発殴らせろーーーー!!」


 そんなエストの怒声が廊下から聞こえて来ていた。


「さて、強大な魔素や魔力を持つ者を感知する魔道具の作成はエストに任せるとして、タンブロ、アケロー、お前達はこの後どうするんだ?」

「え、室生さん、どうする……とは?」

「そのままの意味さ。

 このまま犯罪者としてヴォーパリアとの戦争が終わるまで牢で過ごすのか、それとも俺達の仲間となり奴らに一泡吹かせるのかだよ」


 椅子に座った室生が床に座っている2人に今後の行動の選択を迫ると、タンブロはどうするか悩んでいる様子だが、アケローはすでにこの後どうするか決めた様だった。


「タンブロ……。 俺達はダリアに騙されて悪事に手を染めたとは言っても、実行したのは俺達の意思だったんだ。

 だからもう俺達の手は血に染まっているし、今更善行を積み重ねたからと言っても最早人並みの幸せを掴む事なんて出来ないかもしれない。

 だけど俺はこのまま指を咥えて室生さん達に全てを任せて、牢屋で暮らすなんて真似はしたくない……」

「アケロー……」

「室生さん、皆さん、もし、俺達を暗部でも構わないから雇ってくれると言うのなら命を懸けて働く。 だから俺をあなた達の仲間にして下さい!」

「分かったよ、アケロー。 お前の事は柚葉が戻って来たら相談する事になるだろうから、少し待っててくれ」

「ありがとうございます!」


 アケローの処遇が決まった事で次はタンブロのだが、彼はまだ悩んでいる様子だった。


「それでタンブロ。 お前はどうするんだ?」

「ダグラスさん。 俺はアケローの様にすぐに決める事が出来ません…………。

 だから朝まで。 朝に冒険者ギルドに赴いて証言するまでには必ず決断しますから、それまで時間を頂いて良いですか?」

「分かった。 だけど一応まだ完全には信用する事は出来ないから、朝まで地下牢に入って貰う事になる、それで良いか?」


 2人は顔を見合わせて頷き合った。


「「はい、構いません」」


「そうか。 メイドさん、2人を地下牢に案内して貰って良いですか?」

「分かりました。 一応2人が逃げ出さない様に護衛を何人かお願いしたいのですが……」

「私が行きます」

「ジェーンちゃん……。 良いのか?」

「はい、ちょっと道中で聞きたい事もあるので」

「じゃあ、私も一緒に付いて行って上げるよジェーン」

「スノウちゃん、ありがと……」

「良いよ! 私とジェーンの仲じゃない!」


 こうしてタンブロとアケローの2人は、メイドさん達の案内で地下牢に今日の朝まで入って貰う事となったが、彼等は明日冒険者ギルドに赴いて上層部の椅子にしがみ付いている老害共の企みを暴露すると言う重要な役目がある。

 

「今日も色々と内容が濃かったのに、明日もまた濃い1日になりそうな感じだな……。

 共也~、お前と合流出来るのは何時になるんだろうな……」


 そう星空の輝く空を見上げて、ダグラスは独り言を呟いていた。



ここまでお読みいただきありがとうございます。


もうちょっと話の内容を精査した方が良いのかもしれませんが、もう少し実力が付いたら加筆などして直して行こうと思っています。

 ですので気長にお待ちいただけたら幸いです。



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