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【共生魔法】の絆紡ぎ。  作者: 山本 ヤマドリ
1章・異世界に、そして出会い。
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練兵場での訓練を終えて

 太陽が真上に昇り練兵場を照らすまで鍛錬した俺と与一は休憩後、ミーリスに魔法の理論を学びに図書館へと移動している所だった。


「与一がすでにミーリスと会っていたなんて以外だったよ」

「……ん、だって矢は消耗品だから、買ったりしてるとお金がすぐ無くなる。 だから、自分の魔力を使って矢が作れれば安上がりだと思って、魔法の専門家ミーリスを紹介してもらったの」

「そうか、確かに俺達ってこの世界では無一文だもんな……」

「そう言う事。 今は王族のサポートがあるから気にならないけど、旅に出たらそうも言ってられない」

「んだなぁ……。 早くこの世界での金銭を得る方法を得ないとだな」

「ん。 共也が成功したら養ってもらうから、そこの所よろしく」

「お前なぁ……」


 そんな与一と他愛無い会話をしながら歩いていると、目の前に目的の図書館の扉が目に入った。


「じゃあ、ノックするぞ?」


 頷いた与一と一緒に扉をノックをすると、中からミーリスの入室を許可する声が帰って来た。


「すまぬ、今ちょっと手が離せん。 勝手に入って来てくれ」


 図書館の中に入ると、そこは相変わらずミーリスの生活圏と言う場所か、乱雑に積み上げられた大量の本が目に入った。


「ミーリス。 何処だ~~?」


 図書館に声が木霊すると、前回と同様に奥から宙に浮かぶ豪華な椅子に座るミーリスが俺の隣に立つ与一を見つけると、何か悪戯を思い付いたのか意地悪そうな笑顔を浮かべていた。


 あ、こいつ絶対何か悪戯するつもりだな?


 心の中で警戒する俺の目の前にミーリスの座る椅子がユックリと着地すると、彼女が口を開いた。


「共也お兄ちゃん、ここに来たと言う事は魔法の理論を学びに来たと言う事で良いのかの?」


 この世界に来てまだ数日の俺を『お兄ちゃん』と呼ぶミーリスに、一歩俺から距離を取った与一が冷めた目を俺に向けて来ていた。 


 やっぱりこういう悪戯を仕掛けて来たか……。


「共也……。 まさかすでにミーリスに、お兄ちゃんと呼ばせる調教を施しているなんて……。 まさかあなたは真正のロリ〇ン?」

「違うわ! お兄ちゃんと言う呼び方も、ミーリスが面白がって言ってるだけだ! 見てみろよお前が過剰に反応するものだから、後ろを向いて震えてるじゃないか!」

「おぉ、まだ4日目なのにそこまで仲良くなる事が出来るとは……。 さすが共也、こちらでも女垂らしは健在?」


 俺は無言で、与一の頭に軽く手刀を叩き込んだ。


「痛い……。 共也の怒りんぼ……」

「俺は女を口説いた事も無いし、された事もねえよ!!」

「無自覚な女たらし程罪な奴はいな……。 何でも無い……」


 もう一度手刀を叩き込もうとして右手を上げた事で、危険を感じた与一はそれ以上言う事を止め俺から距離を取るのだった。


「お前等、幼馴染と言う話しじゃが妙に仲が良いではないか」

「うん。 私は共也の将来の妻……嘘、ただの仲が良いだけ……」

「・・・・はぁ。 そうだミーリス、俺さ―――」


 ついさっき目標だった剣術スキルを取得した事をミーリスに伝えると、やはり彼女もこんなに早くスキルを取得出来た事に驚いていた。 


「はぁ!? もう剣術スキルを取得したって、いくら何でもちょっと早すぎやしないか? お前がスキル取得の為に訓練し始めてまだ数日じゃぞ!?」

「そうは言っても、取得出来たもんはしょうがないじゃないか」

「むう、一般の兵士が剣術スキルを取得するのに、遅い奴だと数年かかる場合もあるというのに……」

「ジーク君にも早すぎるって言われたよ。 確かに地球でお世話になった人に武器の扱いを教えて貰っていたけど、俺自身何故こんなに早く剣術スキルを取得出来たのか分からないんだから、答えようが無いじゃないか……」

「ふむ……。 まあ、何故これ程スキルを取得出来たのか、それはいくら考えても分かる事では無いから取り合えず置いておいて。 最初の目標だった剣術スキルを取得する事が出来たのだから、ここは素直に喜んでおけば良かろう」

「そうかな。 いや、そうだよな」


 猫耳の生えた頭を感謝の意味を込めて優しく撫でると、まるで猫の様に気持ちよさそうに目を閉じてされるがまま撫でられているミーリスだったが「ハッ!」と我に返ると顔を一気に赤らめ、慌てて俺の手から逃げるのだった。 


「コホン。 2人共、先程見た事は忘れるように。 良いな?」

「え、別に恥ずかしがる様な事じゃ……」

「い・い・な!?」

「分かったよ……」

「分かった……」

「うむ、それで良い。 それで、そこの女、え~っと名は何と言う?」

「私の名は、日番谷 与一。 あなたに魔法で作る矢の理論を教えて貰いに来た」

「ふむ。 魔力矢か、まぁそこまで時間が掛かるものでも無いから構わんぞ? しかし、何故魔力で作る矢を習いに来たのじゃ?」


 沢山ある魔法の中で、何故魔力矢を選択するのか気になったミーリスは興味を抱き与一に質問した。


「私は弓術適正と言われたのだけど、毎回消耗する矢を買う金も無いし、もし今冒険に出る事になって矢が尽きれば私だけならまだ良いけど、仲間にも命が危険に晒される事は許容出来無い。 それを補う為にも魔力で作る矢を覚える事は必須だと思った」

「ふむ……。 弓術士として矢を補える魔法か。 確かに与一の言う通り、一応全属性の初級魔法に魔力で作る矢はある。 お前がどの属性の矢を覚えたいのか分からんが、まずは1つの属性を覚えて生成する事に慣れたら別の属性を覚える事が近道であろうな。 で、お主が最初に覚えたい属性はあるのかの?」


 的確なアドバイスをするミーリスに感服した与一は、素直に覚えたい属性を口にした。


「もし早めに覚える事が出来るなら、最初に覚える属性は水か氷属性かな?」

「ふむ、水か氷か……」


 何かを思案するミーリスは指を鳴して空中に浮かんでいた黒板を地上に降ろすと、チョークで何か模様の様な図形を描き始めた。


 これは、魔法陣……か?


 カカカカッカッカ・・カン!


 黒板に図形を書き上げたミーリスは、強めにチョークを叩き付けた。


「与一、共也、まずはこの図形を頭に叩き込むんだ。 これは全ての魔法に関係する図形だからな」

「おぉぉ、流石魔法兵団大隊長ミーリスさん。 師匠と呼んでも?」

「唐突じゃな……。 まぁ、魔法を教える以上立場をはっきりさせておく方が後々困らなくて良いか」

「じゃあ?」

「うむ。 まぁ好きに呼べばよかろう」

「ありがと。 ミーリス師匠」

「ではついでと言ってはなんだが、氷と水の構築式を黒板に書くからメモでもして覚えるのじゃ」


 背を向けて黒板に術式を書き始めたミーリスは、その術式がどの様な作用をもたらすか俺達2人に丁寧に説明をしてくれていた。 


 ペタン、ペタン。


(与一、止めろって!)


 だが、早々にミーリスの魔法講座に飽きた与一は、俺にオモチャの矢をくっ付けて遊び始めてしまった。


(両方の術式を覚えたから構え!)

(俺が覚えてねえんだから、邪魔すんなって!)

(構え)

(止めろって!!)


 あまりにもしつこくオモチャの矢を撃って来るものだから、つい腕で払いのけたその中の1本がミーリスが術式を書き込んでいた黒板に張り付いた。


 ペタン!


((あっ!))


 黒板に細かく術式を書き込んでいたミーリスだったが、オモチャの矢がくっ付いたと同時に動きと説明が止まり、図書館に痛い程の静寂が訪れ俺と与一は生唾を飲み込んだ。


「共也、パス!」

「は? お前、何を!」


 オモチャの弓を俺に強引に手渡した与一は、明後日の方角を向き私は関係無いと言う体を取った所で、ミーリスがユックリこちらに振り向いて俺が弓を持っているのを見た彼女の顔は怒りに染まった。


「ほう? 共也、儂の講義はそんなに暇じゃったか?」

「ちがっ! この弓の持ち主は『問答無用じゃーーー!!』話を聞け、ミーリス!!」


 余程講義を邪魔された事が気に食わなかったのか、周りに様々な属性の魔法陣を展開したミーリスは、その魔法陣の魔法を今にも俺に向けて放とうとしていた。


「与一、お前が原因なんだから、何とかミーリスを説得してくれよ!」

「無理。 私の為に頑張って逃げ切ってね、共也」

「おま! 後で覚えておけよ!!」

「部屋で待ってるから何時でも!」

「何でお前が言うと、卑猥に聞こえるんだよ!」

「愛ゆえに?」

「絶対違うわ!!」


「共也、そうやってイチャ付くのも、この魔法から逃げ伸びてからにせい!!」


 その後、俺を狙っていたミーリスの魔法が発動した事で、命からがら図書館から逃げ出す事に成功したが、余りの理不尽さに後で絶対与一に復讐する事を心の中で決めるのだった。


「ぜぇ、ぜぇ……。 与一の奴覚えてろよ、絶対後で仕返ししてやるからな……」


 疲労困憊の体を引きずりながら廊下を歩いていると、ふと庭園で動く存在が目に入った。


「あれは……。 ジェーンか?」


 誰かを探しているのか庭園を涙目で歩いてるジェーンが気になり、俺は声を掛けた。


「ジェーン、どうした、何か探してるのか?」

「共也兄さん? 共也兄さん!」


 声を掛けた事で俺の存在に気付いたジェーンは、全力でこちらに走って来る。


「共也兄さん。 えっと、えっと……緑色と水色と黒色の髪を持つ女の娘を、3人見かけませんでしたか!?」

「ジェーン、落ち着け!」


 焦りを滲ませたジェーンに落ち着く様に伝えると、1度深呼吸して落ち着きを取り戻すと再び子供達の行方を聞いてくるが、俺は見掛けていない事を伝える。


「さっきまで図書館に居たから、そんな髪色の女の娘は見掛けてないが……。 ジェーン、見当たらないのか?」

「はい……。 一緒に召喚された子供達を点呼していたのですが、その娘達が居ない事に気付き探しているのですが見当たらないのです……。 私、どうすれば良いのか分からなくて……」


 見つける事が出来ない不安から、溢れ出る涙を袖で涙を拭うジェーンを落ち着かせる為に、俺は彼女の頭に手を置き一先ず安心させる事に勤めた。


「共也兄さん……」

「頼りないかもしれないけど、俺も一緒にその3人を探すから安心しろジェーン、な?」

「う、うん……」


 泣き止んだジェーンに、ここに来るまでに何処を探したのか聞いてみると、図書館からここまでの道のりは俺が歩いて来たから除外すると、城の中は粗方探し終わってる様子だった。 


「ジェーン、こうして見ると城の中は粗方探し終わっているのに、それでも見つからないと言う事は城の外に出てしまったとしか……」

「そんな……。 もう陽が落ちかけているのに……」


 ジェーンの言う通りすでに太陽は傾きかけている。 後数時間もすれば太陽が地平線に沈んでしまいそうな時間帯だった。


「急いで城の外を探そう。 お金を持っていない子供達が過ごすのは、いくら治安の良いシンドリアだとしても危険な時間帯だ」

「は、はい!」


 一緒に行動する事になった俺達だが、まずは本当に城の外に出たかどうかを確認する為に、城門を守る兵士達に声を掛けた。


「こ、ここに緑色と水色と黒色の髪の3人の女の娘が来ませんでしたか!?」

「3人の女の娘だって?」


 俺の唐突な質問にも嫌な顔をせずに、門番をしていた2人の兵士の内1人が質問に答えてくれた。


「いや、俺はさっき交代したばかりだから見てないが……。 お前は昼前にはここの警護についてただろ、どうだ?」

「あぁ~、確かに見た記憶があるな」

「本当!?」

「あぁ、確か昼をちょっと過ぎた辺りで街の方に歩いて行ったな。 楽しそうに話していたから引き留めなかったが……。 もしかして、まだ戻って来ていないのか!?」

「はい、まだ戻って来てい無いんです……。 あの子達、銅貨すら持ってない上に、もう少ししたら陽が落ちちゃうのに……」


 少女3人がまだ街に出たまま戻って来ていない。 その事を聞いた兵士達も流石に慌て始め、他の兵士にも捜索を手伝うように指示を出し始めた。


「おい、お前達も転移者の少女3人を探すのを手伝う様に、警備隊の奴らにも連絡を入れるんだ!」

「わ、分かった!」


 慌ただしく動き出した兵士達を尻目に、俺とジェーンは街に出て探す事を選んだ。


「ジェーン、街中を移動したなら必ず誰かが見てるはずだ。 街の人に聞いて回りながら、探しに行こう」


 兵士達も3人の行方を探ってくれるなら、必ず見つかるはずだ……。


「3人共、無事でいて……」


 3人が無事な事を祈りながら、俺とジェーンは街に向かって駆けだすのだった。



同郷の子供が3人行方不明に。

次回は子供達の捜索で書いて行こうかと思ってます。


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