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【共生魔法】の絆紡ぎ。  作者: 山本 ヤマドリ
14章・龍達が住む大陸。
228/286

商業都市ボルラスへ。

【商業都市ボルラスの議会室】


 ここボルラスの会議室では代表となったマリーダが、諜報部から神聖国ヴォーパリアの現状報告を受けている所だった。


「そうですか、やはりヴォーパリアで活動していた商人達は、兵士達に難癖を付けられて財産を奪い去られる事例が後を絶ちませんか……」

「はい。 それどころか一家全員が有りもしない罪状によって何処かに連行された後、帰って来なくなる事も珍しく無く……」

「ふぅ……。 まだあの国を興されてから幾ばくも時が経って無いですから、特定の大店も在りませんし商人達に取ってはチャンスと見えるのかもしれませんが、これは……。

 私達がいくら商人達に注意喚起しても、もしかしたら一財産気付く事が出来るかもしれない、と思った人達を止める事は出来ませんしね……」

「マリーダ様、あなたが気に病む事はありませんよ、商人達も危険な地域だと分かった上であの国に商売をしに行ったのでしょうから……」

「柚葉さん、分かっています。 どうしようも無いと分かっているんです、だけど……」


 そう、ここの議会室には少し大人となった柚葉がマリーダの相談役として在籍していた。


「酷な事を言うようですが、商人達がそうやって商売をして集めた金が奪い取られた事で、ヴォーパリアの国力増強に使われる方が問題なのです。

 それをさせない為にも、もう少し考えを絞り出して下さいマリーダ姉」

「ノクちゃん、私ばかりに答えを出させようとするのは駄目なんじゃない? あなたも議会の1員なんだから少しは考えを出しなさい!」

「そうですよ、ノクティスさん。 私も良い策が無いか考えますから、あなたも一緒に考えましょう?」

「う。 しょ、しょうがないですね、柚葉さんにそう言われたらこのノクティス、良い策を考える事にしましょうじゃないですか!」


 あの人魔将ノクティスと呼ばれていた人物も、ここボルラスに帰って来てから役員の1人として、柚葉と共に働いていた。


「ノクちゃん、あなたあの【人魔大戦】の後に柚ちゃんを連れ帰って来てから性格変わったわよね……。 前は私がいくら話し掛けても聞き流して『はいはい、一緒に良い案が無いか考えますよマリーダ姉』そう! まさにそう言う所だよ! そう言う所が柚ちゃんに振られ続けてる一因だと何故気付かないかな!?」

「五月蠅いな~。 マリーダ姉はそう言いますが、柚葉さんとは良いお付き合いをさせて貰ってますし~~!! あなたに注意されるまでも無いですし!!」

「嘘つけ! この間も家まで送り届けようとして断られてたじゃないか!」

「な、何故それを!?」

「ふふ~~ん♪ 私の子飼いの諜報部の情報網を甘く見て貰っては困るな! 何だったら家まで送る事を断れた後、君が酒場に『分かった! 私の負けで良いですからそれ以上柚葉さんの前で言わないで下さいよ!』よろしい。

 じゃあ、商人達がヴォーパリアに行かない様にする良い案を考えるよ!」

「クソ! この行き遅『ノクちゃん、私に何が言いたいのかな~?』……何でも無いよ!!」

「あはは、2人共相変わらず仲が良いですね」

『「どこが! その発言の撤回を要求する!!」』

「いや、息ピッタリじゃない……」


 マリーダさんとノクティスは私の言葉を聞いて、無言となって睨み合っている……。


「「…………」」

『「真似すんな!!」』

「はぁ……。 夫婦漫才もそこまでにして、会議を続けましょう?」

『「ぐぎぎぎぎ!」』


 いつもの光景に私が呆れながら見ていると、慌てた様子で1人の衛兵が議会室に駆け込んで来た。


「報告します! 1隻の船舶がボロボロの状態で入港を求めていますが、いかがいたしましょう!?」

「何ですって!」


 その言葉を聞いて私達はすぐに動き出すと、議会室を飛び出して港へと向かった。


「それで。 その船の船員は無事なの? すぐに沈みそうなら造船所の方に回って欲しいのだけれど」


 マリーダさんの質問に並走していた衛兵さんが、答えてくれる。


「今は沈まない様に船体を氷で覆っている為に、すぐに沈むと言う事は無いようですが、やはり氷ですので何時かは解け始めるので、そうなると危険な状態になってしまいます。 ですので急いで報告に上がった次第です」

「氷で船体を覆うなんて凄まじい魔力ね……。 分かったわ。 私達はこのまま向かいますから、あなたは造船所の方に1か所空けて貰うように通達して確保して貰って頂戴。 その時、私の名を出して貰って構わないわ」

「分かりました。 では後の事はよろしくお願いします」


 そう言うと衛兵さんは造船所の在る方に走って行った。


「ノクちゃん、柚ちゃん、急ぎましょう。 船体がそこまでボロボロと言う事は何かに襲われてここに寄港したはずだから、怪我人も出ているはずよ」

「はい!」「了解!」


 =◇===


【ボルラス港】


 入港して来た問題の船は本当に船体が氷に覆われていて見た目が太陽光を反射してキラキラと輝いて綺麗な為、その船が留まっている場所から見える周りは人が沢山集まり、ちょっとした観光地となっていた。


「うわぁ、光を反射してキラキラと輝いて綺麗だけど、船体自体は相当なダメージを受けてて何時沈んでもおかしくない状態ね……」

「急ぐわよ2人共、入港させるにしても修理させるにしても本当なら予定に無い入港なのだから、私達が許可を出さないと船員達が陸に降りる事も出来ないのだから」


 そう言ったマリーダさんは船に近づいて行くと、代表者達が船から降りて来た。


(あれ? よく見たら、この船って見た事があるような……、それにあの人って……)


「予定に無い寄港なのに港に停泊してすまないマリーダ代表、この通り謝罪する。 私はこの船の船長をしている『あ~~! アーダン船長だ!』……そうだが……ん? 待てよ、お前は柚葉か! 久しぶりだな、元気にしてたか!」

「アーダン船長こそ、見た目変わって無いですね!」


 私がアーダン船長との再会に喜んでいると、マリーダさんが話し掛けて来た。


「柚ちゃんの知り合い?」

「はい! 昔、ケントニス帝国まで乗せてくれた時に良くしてくれた船長さんです! わぁ、懐かしいな~」

「柚葉、俺を見た位で懐かしいと言って良いのか?」

「え?」

「お前の知り合いが今沢山船に乗っているぞ!?」

「へぇ~。 と言う事はダグラス達が乗ってるのかな? でもあいつ等とはたまに連絡を取ってますし、そこまで懐かしいとは思わないですよ?」

「菊流やリリスが居たとしてもか?」


 私はその名を聞いて心臓が大きく跳ね上がる音が聞こえた。 ……え? 菊流? それにリリスちゃんも?


「え? え? え? 本当に菊流が!?」

「リ、リリス様がこの船に乗っておられるのですか!?」

「あぁ、リリスも乗ってるよ、お前は?」

「わ、私はノクティスと言う者です、人魔大戦の時にリリス様に雇われていた……」

「あぁ、お前が。 リリスが言ってたよ、人魔大戦の時に優秀な奴を1人引き抜いたが、結局報いてやることが出来なかったとな。 そうか、お前の事か」

「リ、リリス様がその様に……」


 その時、マリーダさんが私とノクティスさんの肩を船体が有る方に優しく押した。


「マリーダさん?」

「2人共行って来なさい。 大切な人がこの船に乗っているのでしょう?」

「「あ……」」

「後の手続きは私がやっておくから」


 マリーダさんからその言葉を聞いたと同時に、私とノクティスさんは弾かれるように船に乗り込むと、そこには怪我を負った船員達の介抱をしているダグラスやジェーン、そして菊流の姿を見つけた私は人目も憚らず抱き着いた。


「ふぇ!? も、もしかして柚ちゃん!?」

「菊流! 菊流! 菊流!! ディアナ様からあなたが光輝に殺されたって聞いたから……。 実は死んで無かったのね、本当に良かったよぅ……」


 泣いてまで心配してくれていた柚ちゃんに何と答えて良いか暫く悩んだけど、彼女には正直に今の私の状態を説明する事にした。


「……ごめん柚ちゃん」

「え? 菊流、何で謝るの?」

「私はディアナ様の言う通り、一度あの時死んだのは本当だよ……。 そして、ヒノメによって火の精霊として復活したの……、ほら、こうすると……」


 菊流は自身の手を炎と変化させてみせた事で、私は彼女が言ってる事は本当なのだと理解してしまった。


「そう……なんだね……。 でも、今ここに居るあんたは私達の幼馴染の菊流なんだよね?」

「うん、それはヒノメが保証してくれてる。 そうなんだよねヒノメ」


 肩に乗って小さな鳥となっていたヒノメが私の質問に答えた。


「はい、それは保証いたします。 共也お父さんを守っていたあなたの魂を復活させたのですから、間違いなくあなたは私の知る菊流お母様で間違いありません」

「……他にも聞きたい事が出来たけど、今はそれよりも……。 お帰り菊流……」

「ただいま柚ちゃん……」

「ただいま~柚ちゃん」

「ん?」


 菊流とは別の声が背後から聞こえて来たので振り返ると、そこには行方不明となっていた与一が立ってあの日と変わらない容姿で……、いや、髪が伸びて、目の色が変わった状態で立っていた。


「与一……。 あんた、一体今まで何処にいたのよ……」

「……柚ちゃん、何だか菊流と違って私の扱い方が雑じゃない? 私ショックで寝込んじゃうよ?」

「その言い方は間違いなく与一ね……。 あなたも生きててくれて嬉しいわ、おかえり与一」

「ん。 ただいま柚ちゃん。 他にも柚ちゃんに紹介出来る人が沢山いるよ? ダグラスは当たり前として。 皆甲板に出て来てーー!」


 与一の言葉を聞いて、何だ何だと様々な人達が甲板に集まって来た。


「お! 柚葉じゃないか久しぶりだな!」

「柚姉、お久しぶりです!」

「あ、柚葉だ。 久しぶりー!」


 ダグラス、ジェーン……、この銀髪の獣の耳が生えた娘は誰?


 私が銀髪の獣人の娘の事が分からないで固まっていると、ボソっと与一が耳元で誰かを教えてくれた。


「スノウちゃんだよ、柚ちゃん」

「え!? スノウちゃんもとうとう人型になれたんだね、うわぁ可愛くなったね!」

「ありがとう柚葉!」


 こうして辺りを見渡すと、私の知った顔がチラホラある事に気付いた。


「こうして見るとチラホラと見知った顔が乗ってて驚いたけど、知らない人も乗ってるんだね」

「うん、でも共也とエリアが船から投げ出されて行方不明になってるんだ……」

「さっきから共也の名前が出て来てたから気になってたけど、まさか共也ってこっちの世界に戻って来たの?」

「うん、それとね柚ちゃん……」


 菊流は手招きをすると、1人の金髪の美女を呼び寄せた。


「光輝の妹の木茶華ちゃん。 共也と一緒にこっちの世界に来たの」

「柚葉姉様、お久しぶりです……」

「本当に木茶華ちゃんなのね、あなたも可愛く成長しちゃって……。 どうしてそうなったのか聞きたいけど情報量が多すぎて理解が追いついて行け無いから、夜にでも私の家で聞かせて貰って良いかな?」

「はい、私も聞いて欲しい事が沢山ありますのでお願いします」

「それで……。 そこに居る狼犬は話の流れから行って、君は神白神社に居たタケかな?」

(そうだよ! 良く分かったね柚葉、久しぶりだね!)


 自身の名を言い当てられた事が余程嬉しかったのか、尻尾をブンブンを振って喜ぶタケを見て何となくだが仮説を立てる事が出来た。

 恐らく地球に帰った共也に何かあった為、様々な人達を連れてまたこの惑星アルトリアに帰って来たのだろう……。


「菊流、夜に室生と愛璃も私の家に呼んで情報を共有したいと思うから、その時に色々と聞かせてくれると嬉しいわ。 良いかしら?」

「え? 室生と愛璃もここに居るの?」

「そうよ? ダグラスには、私達がこのボルラスに住んでる事を伝えていたと思うけれど……。 ダグラス、あんたまさかこんな重要な情報を菊流達に伝え忘れてたの?」

「さぁ~~てと! 夜まで俺は船室で寝て来るかな!! じゃあ柚葉、また夜にな!」

「逃がす訳無いでしょ!」


〖シュパン!〗


 船室に逃げ込もうとしたダグラスの足に、柚葉が手から魔法糸を作り出して絡める取ると、足元まで手繰り寄せると背に足を乗せて逃げられない様に押さえつけた。


「ぐえ! 悪かったって! 俺も今の今まで忘れてただけなんだから許してくれよ!!」

「あんたって奴は……。 昔も鉄志からの伝言を忘れて怒られたのに……、こうして捕まえた事だし丁度良いわ、あなただけこのまま私の家に先に招待して(連行とも言う)みっちりお説教をして上げる♪」

「や、止めろ! 止めてくれ! この歳になってまで幼馴染からの説教なんて嫌だ! 菊流、与一、助けてくれ!」

「ん~~。 後で私達も柚葉の家に行くからその時に合流しましょう?」

「そんな菊流! 与一、お前なら助けてくれるよな!」

「大丈夫、柚葉の説教はきっとダグラスの今後の為になる」

「違う! 俺が言いたいのはそうじゃない!」

「さあ、行くわよダグラス!」

「嫌だぁぁぁぁぁーー!!!」


 柚ちゃんに引きずられて、徐々に声が遠くになって行くダグラスの姿を見送った私達は、今は船に乗り込んで来てから、ずっとリリスちゃんの前に跪いているノクティスさんの姿を見ていた。



最後までお読みいただきありがとうございます。

今回は商業都市ボルラスで菊流達の活動の話しとなりますが、楽しんでくれると幸いです。


次回は『室生と愛璃』で書いて行こうと思っています。

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