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【共生魔法】の絆紡ぎ。  作者: 山本 ヤマドリ
1章・異世界に、そして出会い。
22/285

弓術師 日番谷 与一との訓練

 シンドリア王国に召喚されてから4日目の朝となった。


 城の食堂で朝食を食べ終わった俺は、旅に出ても足手まといにならない為に、剣術スキルをなるべく早く取得する事を目標に練兵場で素振りをしていると、どこからともなく吸盤が付いたオモチャの矢が何本も飛んで来ると頭に張り付いた。


「このオモチャの矢を、俺は地球で何度も見た気がするんだが気のせいか……?」

「見た事あるのは当たり前。 だって私の物だもの」


 聞き慣れた声がした方向に視線を向けると、そこには黄緑色の髪を偏り少し長くした幼馴染の日番谷 与一(ひつかや よいち)と言う女性が灰色の目でこちらをジッと見続けていた。 そう、まるで獲物を見るかの様な鋭い目で……。 そんな彼女は、玩具の弓を俺に取られない様に左手で後ろに隠しながら、右手を上げて近づいて来た。 


「……共也、おはよう」

「与一、相変わらず眠そうな目をしているな……」

「余計なお世話……。 それに眠たそうにしている理由も、私は弓術士だから普段目を酷使しないようにしてるだけ……」

「お前は相変わらず本当の事なのか嘘なのか分からない事を、良く真顔で言えるな……」

「凄いでしょ? ブイ」


 Ⅴサインを向けて来る与一に、俺は呆れるしか無かった。


「誉めてねえし! はぁ、まあ良いか。 ところで与一、このオモチャの弓はどうやって手に入れたんだ?」

「このオモチャの弓? んとね。 この世界へ召喚された時にこれで遊んでたから、こちらに持って来てたみたい」


 そう言えば、昔から与一はオモチャの弓矢で遊ぶ事が好きで、子供の頃的にされたダグラスがガチ泣きして家に帰った事があったっけ……。


「共也?」

「あぁ、悪い。 ちょっと昔のダグラスに同情してな」

「ふぅん???」

「それで話は変わるが与一。 お前が得た能力は、弓に関係するスキルで揃ってたんだっけ?」

「うん。 スキルカードに表示された能力を見て嬉しかった。 で、共也が得たスキルは結局あの魔法1個だけだったの?」

「そうだよ……。 結局獲得出来たのは使用条件の分からない魔法スキル1個だけだったけど、すぐに剣術スキルを獲得してやるから見てろよ与一!」

「うん。 応援してるから頑張れ共也」


 そう言うと与一は無表情のまま、俺の頭を優しく撫でた。


「はぁ、長年一緒に行動しているが、今でもよく分からない奴だよ、お前は……」

「ふふ。 良い女には秘密があるもの。 何だったら私に惚れても良いよ? そうしたら、私のこの豊満な胸で優しく受け止めて上げる」


 そう、与一は華奢な様に見えて、意外と……。 はっ!?


「じ、冗談でもそんな事を言うなよ!」

「でも、共也の視線はさっきから私の胸の谷間に釘付け……」

「はいはい、そう言って胸を強調しない! もうその話は終わりな!!」

「むう、好きなくせに……」


 これ以上与一と話していると兵士達にも悪い影響が出そうだったので、この話は強引におわらせたのだった。 


―――――――――――――――――――――――――――――――――――

【名前】

 ・日番谷 与一(ひつかや よいち)

 

【性別】

 ・女


【スキル】 

 ・弓術

 ・精密射撃


―――――――――――――――――――――――――――――――――――


 そこから与一は俺のスキルに関する質問をして来た。


「共也、剣術スキルか、それに代わるスキルを取得する事は出来そう?」

「刀があれば京谷さんに教わった神白流抜刀術の経験が生きて来るだろうけど、兵士達に聞いてもそんな武器は見た事が無いって言うから、抜刀術の方は絶望的だな……」

「そう……」

「でも、せっかくタダで魔剣を譲って貰ったんだから、せっかくなら剣術スキルを会得してこの剣の性能を生かしてやりたいと思うじゃないか」

「そう言う共也の前向きな所好き……」


 …………はっ!? え!? 


 唐突な与一の告白に、俺は二の句を告げないでいた。


「何を本気にしてるの、冗談……」

「…………お前なぁ……」

「ふふ。 あなたをドキドキさせたお詫びと言う訳じゃ無いけど、私も矢を使った近接格闘術を練習してるから……一緒に練習する?」

「与一が矢を使った格闘術、そして俺が剣を使った異種武器の模擬戦か……」


 模擬戦の提案を受けた俺はジーク君が来ていないか練兵場を一通り見渡して探したが、どうやら彼はまだ来ていないようなので、隅の方で与一と近接戦闘の模擬戦をする事にした。


「行くぞ、与一!」

「良いよ」


 型の確認も含めてゆっくりとした動作で攻撃し合っていると、ダグラスと魅影がこちらに向かって歩いて来た。


「何だ何だぁ共也、昨日は王女様とデートをしておいて今日は与一とか節操ねえなぁ……ぷっ!」

「ダグラス、後で泣かす!! それに昨日は菊流もいたからデートじゃねえ!!」

「そんな嘘はつかなくて良いって! 俺達の仲じゃねえか!?」

「嘘じゃねえし、ちゃんと証人も沢山いるんだからな! 魅影もダグラスに何とか言ってやってくれよ!!」


 魅影ならダグラスを諫めてくれる、そう期待して話を振ったのだが、何故か彼女から返事が返って来ない。 


「おはようございます与一ちゃん、その訓練に私達も参加させてもらってよろしいですか?」


 あれ? 魅影が俺の事を居ない者として扱ってる? いや、まさか……だよな? あの大和撫子と言われた魅影が俺を邪険にする訳が……。


「魅影さん、お~~い」

「あれ~~? 共也君、居たのですね。 おはようございます」


 額に青筋を浮かべる彼女に、これ以上話し掛ける事は不味いと直感が告げている。 一旦魅影から距離を取った俺は、ダグラスにこっそり耳打ちをした。


(ダグラス、魅影は何であんなに不機嫌そうにしてるんだ?)

(はぁ? 共也、相変わらず……。 いや、素直に教えるのも癪だから、友として1つアドバイスをしてやるが、このままだとお前何時か刺されるぞ?)

(はぁ!? 何で俺が刺されるんだよ!?)

(いや、お前むしろ何で気付かない!?)

「ダグラス君、共也君、そろそろお口にチャックをしましょうか」

「「は、はい!!」」


 直立不動になる俺とダグラスだった。 そして、先日魅影に見せられたスキルカードの内容は、こんな感じだ。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

【名前】

 ・金鳴 魅影(かねなり みえい)


【性別】

 ・女


【スキル】

 ・槍術スキル+1

 ・分体生成


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「魅影ちゃん、ダグラス、共也を弄るのはそこまでにして、型を確認する模擬戦するなら早くやろう?」

「そうですね。 取り合えずスキルを得て強く成る事を優先しましょう。 与一ちゃん、行きますよ!?」

「何時でも良いよ」

「はっ! やっ!」

「ちょいさ」


 2人が模擬戦を始めてしまった為、結果的に俺の相手はダグラスになってしまうのだった。


「……取り合えず2人の稽古を見てないで俺達も始めるか」

「んだな」


 その後、俺とダグラスも型の確認をしながら、ユックリとした動作で模擬戦を開始した。


 ちなみに、先日ダグラスに見せて貰ったスキルカードの内容がこれだ。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――

【名前】

 ・ダグラス=相馬(そうま) 


【性別】

 ・男


【スキル】

 ・両手武器

 ・身体強化


―――――――――――――――――――――――――――――――――――


 ダグラスのスキル構成は単純だが、かなり近接戦闘に特化している為、近い将来かなり強くなる未来が見えそうだった。 


「共也、ストップ」


 だが、俺との模擬戦の中で自分の欠点に気付いたダグラスは、大きく息を吐き両手剣を地面に突き刺した。


「ふぅ~~。 このままだと駄目だな……」

「何が駄目なんだよ、ダグラス」

「何が駄目って、お前も気づいてるんだろ? 今の俺はただこの重量武器を振り回してるだけだとな…」


 その事は確かに気付いていた。 俺の知っている人物は、自分の身長より大きな両手剣を使っていても、自身の体の一部化の様に見事に扱っていたからだ。


「あ~あ……。 カードのスキル欄の中に両手武器って名を目にした時は、あの漫画キャラに成れる! って思って興奮したんだが、理想に追いつくにはまだまだ時間が掛かりそうだな……」

「お前もあのキャラを真似て前髪の一部を白く染めてみるか?」

「何だそりゃ。 俺がコスプレしたからと言って似合う訳ねぇだろ!!」 


 俺達は、もう読む事が出来なくなった漫画の話題でしばらく笑い合った。


 子供の頃は楽しかったな……。 少ない小遣いの中で漫画などを買い、菊流の家に集まってこの作品が良い! これはこうなるのが良い! 偶に方向性の違いから取っ組み合ったりしたけど、その度に菊流の母さんから拳骨を貰ったっけ……。 そう考えると、ラノベや漫画で盛り上がっていたのは良い想い出だな……。 


 もう戻る事が出来ないかもしれない地球の思い出話に花を咲かせていると、見覚えのある矢が俺とダグラスの頭にくっ付ので気になってしょうがなかった……。


「ちょっと与一ちゃん、2人共楽しそうに話してるんですから、邪魔しちゃ駄目ですよ!」

「むう……。 しょうがないな、魅影ちゃんに嫌われたく無いから止めて上げる」

「……なぁ与一」

「何、共也?」

「その言い方だとさ、俺が止めろと言った場合は矢を射る事を止めるつもりが無かったと聞こえるんだが?」

「その通りだけど、そんなに褒められると照れちゃう……」

「「・・・・・与一?」」


 俺達2人の異変を感じ取った与一は、魅影を盾にするかのように素早く背後に隠れると、顔を半分だけ出し半目で睨んで来た。


「魅影ちゃん、2人が私を虐める……」

「いや、むしろ虐めてたのは与一ちゃんの方だよね!? それに、2人が怒るのは当然だよ。 いくら私が注意しても、与一ちゃんが悪戯を止めないから……」

「が~~ん! 魅影ちゃんが庇ってくれなかった!!」

「はいはい、そんな茶番劇は良いから、もう少し稽古に付き合ってもうわよ?」

「むう……」


 その後、魅影の監視のお陰で与一も俺達にちょっかいを出す事が出来なくなり、大人しく模擬戦を続ける事になったのだが、俺とダグラスは実に充実した鍛錬が出来た。


「共也さん、遅くなりました!!」

「ジーク君、おはよう!」

「??? 皆さんは、そんなユックリした動きで何をしているのですか?」


 不思議そうな顔をするジーク君に、地球の武術家の一部では有名な訓練法だと伝えた事が不味かったのか、今日は俺達と訓練すると言い出してしまい我が子大好きデリック隊長に殺気の籠った目線で睨まれて怖かった……。


 デリック隊長が放つ重圧の中を5人で模擬訓練をしていると、有る時を境に体が勝手に動くと言うか補助されている様な不思議な感覚に、もしやと思いスキルカードを確認するとそこには、旅をする上で必要だと思っていた剣術スキルの名が刻まれていた。


「共也さん、いきなりスキルカードを取り出してどうしたんですか?」

「剣術スキルを……獲得した」

「え!?」


 剣術スキルを取得した事をジーク君に告げると、大いに驚かれた。


「こんなに早く剣術スキルを取得した前例なんて、聞いた事無いですよ! もしかして昔から剣を扱った事がありました?」

「別系統の武器だけどね……。 でも良かった。 これで旅に出ても、皆の足を引っ張らなくて良さそうだ……」


 これでこの世界を旅する事が出来る……。 俺が剣術スキルの記載されたスキルカードを見て安堵していると、吸盤の付いた矢がまた何本も飛んで来て頭にくっ付く。


「共也、剣術スキル取得おめでとう……。 でもずるい……」

「何でだよ! お前は戦闘スキルの弓術をすでに持ってるじゃないか!」

「…………それはそれ、これはこれ」

「理不尽がすぎないか!?」


 オモチャの矢を撃ち続ける与一を静止しようとすると、唐突にダグラスが爆弾を投下した。


「あはは! 与一はお前と一緒に訓練する口実が減って怒ってるんだよ!」


 ダグラスの衝撃発言に、普段眠気眼の与一が大きく目を見開き顔を真っ赤にした。


「えっ……それってどういう」

「相変わらず鈍感だな。 与一はな、本気でお前の事を―――」

「ダグラス、それ以上言うなら幼馴染とは言っても容赦はしない……」

「お? 与一やるか?、まだ技術系のスキルは無いがお前程度に負ける俺じゃ無いぞ?」

「そんな重量武器なんて、当たらなければ只の団扇だと言う事を体に教えて上げる……」


 睨み合う2人が心配になったのか、ジーク君が大丈夫なのかと声を掛けて来た。


「共也さん、与一さんとダグラスさん、何だか殺し合いでもしそうな雰囲気ですが、放置してて大丈夫なんですか?」

「ジーク君、あの2人だけじゃなくて、俺達全員がいつもあんな感じだから、気にしてたら体が保たないよ?」

「へ? そう……なんですか?」

「うん。 ほら、あれだけ切れてるように見えて、さっきと同じ様にユックリと型を確認しながら動いてるだろ?」

「本当だ……」


 与一とダグラスはお互い攻撃し合っている様に見えるが、型を確かめるためにゆっくりと動いてるだけだしな。


「さて共也君、私とも模擬戦をしてくれるよね?」

「魅影、剣術スキルを取得したから今日は休もうかと思って『模擬戦をしてくれるよね?』えっと……『ね?』……『ね?』……はい」

「うん。 よろしく共也君!」


 その後、力尽きるまで魅影と模擬戦をさせられる羽目になるのだった。 


―――――――――――――――――――――――――――――――――――

【名前】

 :最神 共也(もがみ ともや) 


【性別】

 :男


【スキル】

 :【共生魔法】

 :【剣術】New


―――――――――――――――――――――――――――――――――――


剣術スキルを取得し共也が少しですが強くなれましたね。

次回、召喚された子供達を書いてみようと思います。

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