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【共生魔法】の絆紡ぎ。  作者: 山本 ヤマドリ
12章・魔王ルナサスの趣味。
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各々の自由時間①

【木茶華、リリス組の視点】


「ねぇ、リリス。 何処に行くつもりなの?」


 私はケントニス帝国? と言う名の国まで船旅をする前に、リリスと一緒に自由時間を過ごす事にしたのだが、どうやら彼女はこの都市に付いてから気になる場所を見つけたらしく、行ってみようと誘われたので、2人でそこに向かう事となった。


「ん~~。 朝、ルナサスの所に向かう時に面白そうな施設を見かけたから、木茶華と一緒に行ってみたかったんだ」

「……変な施設じゃ無いでしょうね?」

「違う違う! 私達には共也が居るのに、わざわざそんな所に行く訳無いじゃない。 ほら、見えて来たわよ!」

「へ~。 どれどれ?」


 リリスの案内で到着した建物のショウウィンドウには、今まで来てくれたお客の写真が飾ってあるようで、どんな写真なのかと思い近づいて見て見たのだが、その飾ってある写真を見て私は絶句した。

 その写真に写っている人達は、普段着ない様な色彩豊かな服を着て楽しそうにポーズを決めていて……。


 まさか……。


「さあ、木茶華行くよ!」


 コスプレハウスだ!!


 気付いた時にはすでに遅く、リリスは両方の口角を上げて三日月にして意地悪く笑いながら、私が逃げられない様にガッチリと腕を組むと、引きずられながら写真館へ入店させられるのだった。


「2名ご来店です、いらっしゃいませーーー!!」

「ち、ちが! 私はむぐむむむむ、ムーーーーー!!」


 リリスに手で口を塞がれた私は抗議するが、言葉にする事が出来ず聞き入れて貰え無かった。

 そして、リリスによって私はそのまま奥へと連れて行かれてしまい、様々な衣装が置いてある部屋へと連れて来られた事で、諦めるしか無かった……。


「うぅ、どうしてこんな事に……」

「はい、木茶華の衣装はこれね?」

「ん? へ?」


 リリスが渡して来た衣装を持たされた私はそのまま更衣室に押し込められたが、改めて渡された衣装を見て私は言葉を失った……。


 その衣装はあまりにも布の面積が少なかったからで……。 腹出てる、肩出てる、胸の谷間も出てる、黒のタイツが申し訳程度に付いてるけど……。

 え? これを私が着るの!?


「木茶華準備出来た~~?」


⦅シャーーー!!⦆


 私が着替えるかどうか悩んでいると、更衣室のカーテンがリリスによって開かれた。


「ちょ! ちょっと、リリス!?」

「何だ、まだ着替えてないじゃない!」

「だ、だってこの衣装の布面積が少な……って、リリスも同じの着てるの!?」

「そうよ。 だから恥ずかしがらずにさっさと着た着た!」


 リリスがこの衣装を着た姿はとても綺麗で、女の私から見ても素直に美しいと思える程だった。


「もう、木茶華ったら恥ずかしがって!」

「だって、こんなに布面積の少ない服を着て人の前に出るなんて、恥ずかしいよぅ……」

「むう。 いや……。 そうね、時間もそこまで無い訳だし、私が着替えるのを手伝って上・げ・る♪ グヘヘ」

「え、ちょっと? リリス? わ、分かった、もう自分で着替えるから、その手をワキワキして近づくのを止めて貰って良いかな!?」

「遠慮する事無いわよ! すぐ終わるからさ!!」

「い、いや~~~!!」


 写真館の店員さんも心配になって更衣室に来てくれたが、すぐに木茶華を着替えさせる作業を終了して出て来た私達を、撮影場所へと案内してくれた。


「うぅ、リリスに穢された……」

「何を大袈裟に言ってるの!! さあ、良い感じに撮ってもらいましょ!!」

「はい、お二人とも笑ってーー!」

「分かったわよ! もう楽しんでやるんだから!!」

「アハハ、そうだよ木茶華その調子!」


 私とリリスは何度か写真を撮ってもらうと、最初の頃の羞恥心は何処かに行ってしまった様で、最後の方はリリスと一緒にノリノリでポーズを決めて楽しんでいた。


「アハハ、リリス楽しいね。 まるで自分じゃないみたい!」

「でしょ? たまには良いかなと思ってね?」

「うん、最初は嫌だったけど、今は感謝してる。 ありがとね!」

「はい、お疲れ様でした! 現像された写真は港に停泊しているアーダン船の()()()()()()()送っておきましたが良かったのですよね?」


『え!?』


「それでは、これが今回の請求書になります」

「はい、大丈夫ですよ」


『えぇ!?』


「ではこれが代金です」

「確かに。 ではまた機会がありましたら、是非こちらをご利用下さいね!」

「ちょ、ちょっとリリス!?」

「ありがとうございましたーー!!」


「リリスってば!!! 共也君に、あのコスプレした写真を送ったなんて嘘だよね!?」

 写真館を出た私は、リリスの服を引っ張って先程店員さんが言っていた事の真相を尋ねたが、一向に答えてくれない!!


「さあ木茶華、次の所に行くわよ!」

「つ、次!? は、離してリリス! いやーーーー!!」


 こうして私はコスプレした写真を共也君に見られない事を祈りながら、リリスに連れられて出会いの街にある様々な施設を回る事になるのだった。


 =◇===


【与一とミーリス視点】


「師匠、自由時間一緒に行動しない?」

「……唐突なお誘いじゃな与一。 まぁ構わんが……、あと師匠じゃなくてミーリスで良い。 これから同じ男の元に嫁ぐ事になったんじゃからな、儂も嫁同士仲良くして行きたい」

「ん。 じゃあミーリス、この国に有る雑貨店を見に行ってみない?」

「そうか、与一はまだ魔族が扱う雑貨を見た事が無かったのじゃな。 なら一緒に行くか」

「うん、何処に行くのが良さそう?」

「何処でも良さそうだが……。 そうじゃな、まずは薬局に行ってみるか?」

「行く!!」

「お、おう……。 凄い食いつきようじゃな……。 なら魔国では割と名が知られている店舗の看板をさっき見かけたから行ってみるか?」

「お願い!」


 儂は与一を連れて、先程見かけた杖に蛇が蒔き付いている姿が描かれている看板を掲げている【魔国薬局アクスレピオス】の前に来ていた。


「おおお、ここが魔国の薬局! ミーリス早く入ってみよう!」

「こ、こら。 待たんか与一!」


 与一は儂の制止を振り切って店の中に入ると、所狭しと並べられた雑貨や薬を見て、入り口の所で呆然と立ち尽くしておった。


「はぁ~~。 こんなに沢山の薬品が……」

「こら、与一。 どんな薬品か分からんのに、無暗に触ろうとするでない!」


 与一が近くの棚に置かれている何の薬品かも分からないのに、手に取ろうとしていたので慌てて止めると、店の奥からいきなり声を掛けられた事で儂は咄嗟に戦闘態勢に入ってしもうた。


「お嬢ちゃん大丈夫だよ。 ちょっと触ったからと言って壊れるように作って無いからね。 だから、取り合えず戦闘態勢は解除してくれるかい?」

「あ、済まぬ。 全く気配を感じていない所で声を掛けられたから。 つい……」

「良いって事さ。 私も不用意に声を掛けちゃったからねぇ。 お嬢ちゃんごめんよ」


 あ、ミーリスがお嬢ちゃんと言われて額に青筋が浮き上がってる……。


「失礼な店員じゃな。 儂はれっきとした20歳じゃし~~? こう見えて婚約者もおるんじゃぞ?」

「え? そんな小さい体で20歳の上に婚約者? マジで!?」

「本当。 それにこう見えてミーリスの胸のサイズはBか『与一、お前は初対面の相手に何で儂の胸のサイズを言っとるんじゃ!! と言うか何で知っとるんじゃい!!』……ミーリスが悔しそうにしてたから、つい……。 胸のサイズは着替えを覗いたから知ってた」

「お、お前は……。 はぁ、後で共也に報告しとくからの?」

「!!」


 儂が共也の出した途端に、額を押さえながら与一の視線が彷徨い始めた。


「ミ、ミーリス、それだけは止めて! また共也の強力なデコピンが飛んで来る!」


 与一の奴が、何だか本気で怖がっているので共也に報告するのは一旦止めるとするか……。


「与一、なら一旦この事は棚上げにするから、お主も少しデリカシーと言うものを覚える事を約束してくれるか?」

「する! するから共也に報告するのだけは止めてね!?」

「分かった、分かった……」


 儂が与一を一旦この話題を終わらせた所で、先程の店員が声を再び掛けて来た。


「…………何だか、複雑な関係みたいだけど……。 大丈夫?」

「やかましいわい!! 所でお主は儂らの名を知ったのに、自分だけは名を名乗らぬつもりか?」

「あれ? 言って無かったっけ、ごめんごめん。 私の名は【ライフ】って言うのさ。 よろしくねミーリスちゃん、与一ちゃん」


 儂と与一が気付いた時には、そのライフと名乗った女性店員はすでに目の前まで移動して来て儂らの頭を撫でていた。

 その事に対して驚いていた儂等だったが、頭を撫でているその女性の容姿は魔族特有の青い肌に、白目が黒く、瞳孔が赤、そして茶色の髪をウェーブさせて肩の辺りでスッパリと横に切り揃えていた。

 そして体型は……、悔しいが見事の一言じゃった……。


「胸がバインバイン揺れてる……」

「君……。 さっきこの娘にデリカシーを覚えるって、約束してなかったかい?」

「あ……」

「……今の反応で何となく、君がどんな性格をしてるのか大体わかったからもう聞かない事にするよ……。

 それで。 2人はこの薬局に何を求めて来たのかな?」

「儂はそこまで欲しい薬品は無かったんじゃが、こっちの与一が魔国で使用されている雑貨を見るのが初めてでな、どんな品があるのか一緒に見に来たんじゃ」

「なるほどね。 与一ちゃん、ここは薬局なんだから君が見てみたい薬品があったりしないのかい?」

「どんな品があるのか見に来ただけだから、これと言って『例えばこんな品とかあるよ?』ぬ?」


 ライフは指の間に、ピンク色の液体が入った試験管の容器を1本持っていて、それを左右に振って存在を誇張していた。


「それは何の薬?」

「あ、それってもしかして……」

「ミーリスちゃんは気付いたか。 そう【媚薬】だよ。 同じ婚約者が居るなら何時か必要になるんじゃないかと思ってね。

 因みに避妊具も沢山置いてあるよ?」

「何と!」

「与一、さっき共也にその話題でデコピンを食らいかけてたのに、懲りないや奴じゃの……」

「でもミーリス、何時か必要になるのは確かなんだから、ライフさんの言う通り買っておいた方が良いんじゃ?」

「それはそうなんじゃが……」


 ミーリスは、堂々と夜の生活用品を買う事に抵抗があるのか、媚薬に視線を向けたり外したりしていたのだが、意を決して購入する事を決めたのだった。


「毎度有りがとね! 大量に購入してくれたお礼に今度何か困った事があったら、何処の視点でも良いからこの手紙を店員に見せると良いよ。

 私が出来る範囲内って条件は付くけど、出来る限り助けて上げようじゃないか」


 ライフはそう言うと1枚の高級紙で作られた封筒を取り出すと、儂に渡して来た。


「ライフよ、何故ただの客である儂等に、ここまでの事をしてくれるのじゃ?」

「ん~~。 君達なら今後とも良いお客さんになってくれそうって思ったのもあるけれど、一番は私が君達の事を気に入ったってのが大きいかな?」

「気に入られるのは嬉しいが、お主に気に入られる様な事をした覚えが無いんじゃが……」

「確かに何かをしてくれたって訳じゃ無いけど、初々しい人を見ると応援したくなるんだよね。

 ほら、与一ちゃんを見て見なよ、あれだけ媚薬とか必要だと言ってたのに、手に入った途端に顔を真っ赤にして無言になっちゃったんだよ? 可愛くて応援したくなるじゃんね?」


 ライフに促され儂が与一の顔を見ると、指摘された事が余程恥ずかしかったのか、与一は耳の先まで真っ赤になった顔を両手で覆い隠して座り込んでしもうた。


「と、言う訳だから何か困った事があるなら何処の支店でも良いからその手紙を見せると良い。 きっと君達の助けになってくれるはずだ」


 儂は暫く手渡された封筒を眺めていたが、持っていても損は無いと判断して、自身が持つ収納袋に入れる事にした。


「分かった。 ありがたく頂いておこう。 それにしてもライフがいくら店員とは言っても、ここまでのサービスを提供出来る権限を持っているとは……。 お主は一体……」

「ふふ、私は君達2人を気に入った薬剤師のライフ。 それで良いじゃないか、また会う事もあるだろうしね?」

「教えてはくれそうに無さそうじゃな……。 まぁ良い買い物も出来たから、今はそれで勘弁してやろう」

「そうそう、美人の正体は分からない事が魅力の1つなんだからね? こんな風にね」


 ライフはそう言うと、見せつける様に自身の豊満な胸を持ち上げてみせた。


「捥ぎ取るぞ!?」

「アハハ、2人共、その婚約者さんと仲良くね?」

「あぁ、お邪魔した。 与一そろそろ別の店に向かうぞ?」

「うぅ、分かった……」


 こうして儂達は様々な品を購入したのでこの店を出る事にしたのだが、出口の所でふと上を見上げると、ライフに良く似た人物の肖像画が掲げられているのを目にした儂は後ろを振り返ると、ライフはすでに何処にも居なくなっていた。


「まさかな……。 これだけの規模の組織のトップがこんな支店に居る訳が……」

「ミーリス、次に行くんでしょ?」

「あぁ、今行くわい」


 他人の空似だと自身を納得させた儂は店を出たのだが、今回の戦利品を嫁候補達でどう分けようかと楽しくなるのだった。


ここまでお読み下さりありがとうございます。

前話の最後で書いていた菊流編は最後に持って行くつもりなので気になってしまった方は申し訳ないですがもう少しお待ちください。


次回も『各々の自由時間②』で書いて行こうと思って居ます。

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