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【共生魔法】の絆紡ぎ。  作者: 山本 ヤマドリ
12章・魔王ルナサスの趣味。
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ケントニス帝国へ向かうまでの自由時間。

「じゃあ私はオートリスのシュドルムとガルボに連絡を取って、ヴォーパリアの周辺に点在してる村で暮らしている人達を救出して回れば良いのね?」

「あぁ、でも何処に暗黒神の信者が紛れ込んでいるか分からないんだから、もし救助される事を拒むような者が居たらすぐに離れてくれ。

 俺にとってルナサス達の命の方が大切なんだしな」


 俺達は神聖国ヴォーパリアの連中が、周辺の村々を襲って魂を刈り取ろうとしている情報をルナサスと共有して、その妨害の為の作戦を練っている所だった。


「でもこいつ等ってさぁ、いくら自分達の願望を叶えようとしてるって言っても、普通ここまでやるものなの?」

「港町アーサリーを攻めて来た兵士達は、自分の欲望を叶えようと仲間割れを起こしていましたからね、元々が普通じゃ無いのかと……」

「本当~に、あいつ等の行動の1つ1つが、私を最悪の気分にさせてくれるわね……。

 それと共也、あなたに報告しておきたい事があるの」

「ルナサスがそう言うなんてよっぽどの事だろうし聞くよ」

「ありがと。 えっとね、私がずっと諜報部にヴォーパリアの事を調べさせた情報の中には、光輝とダリアがどこにいるのかは判明してるけど、アポカリプス教団の教祖グノーシスの行方だけが一切分からないのよ……」



 グノーシス……。 10年前のケントニス帝国で試練と言う名の厄災を発動させた奴だったな……。

 確かにあれ以降、グノーシスを見かけた記憶が無いな……。


「ミーリス、アポカリプス教団の奴らがシンドリア王国に凱旋して来た人達を襲撃して来た時って、グノーシスは居たのか?」

「あの時か……。 都市の中に入った時に襲撃された事を知った儂は、近くに居たアーヤとテトラを守りながら逃げる事に必死だったから詳しくは分からん。

 だが、儂等を襲って来た黒装束の中にグノーシスは居らんかったの」

「やっぱり、グノーシスはその時にも居なかったのね……」


 ルナサスが顎に手を当てながら、ミーリスから得られたその時の生の情報を吟味している。

 後、情報を持ってそうな人物は……。


「ジェーン、カバレイル辺境伯領で暮らしていた時に噂話し程度でも良いから、グノーシスの事を聞いた事は無いか?」


 10年間もカバレイル領で戦ってくれていた、ジェーンなら何か知ってるかもしれないと思い、俺は声をかけてみた。


「噂話しでも……ですか。 そう言えば諜報部の報告の中に1つ気になる記載がありましたよ」

「ジェーンちゃん、どんな報告だったのか聞かせて貰って良いかな?」

「はい、ルナサス姉。 アポカリプス教団の活動拠点はヴォーパリアなのは皆さん知っての通りなのですが、それとは全く別の場所に出入りしている場所があるらしのです」

「それは初めて聞く情報だね。 続けて」

「はい、諜報部からの報告によると、その場所から血に濡れた麻袋が持ち出されるのを、1日で何度も目撃しているみたいなんです」

「1日で……ねぇ。 確かに奇妙ではあるけど、ジェーンちゃんそれがグノーシスとどう繋がるの?」

「それが……。 遠くて良く聞こえなかったらしいのですが、血に濡れた麻袋を指差してグノーシスの名を呟いていたらしいんです」


 血に濡れた麻袋を指差してグノーシスの名を呟くって、その中身がグノーシスに関係する物だって言う事か?


「その場所の座標とかって報告書に書かれてたりした? 出来れば調べておきたいんだけど……」

「それが……。 報告書を書いた諜報員は、黒のローブを着た連中を偶々見つけた事で怪しいと思って追跡したら、その場所を見つけたらしく、場所は良く分からなかったと書かれてました。

 その後、何とかその場を離れて報告したまでは良かったみたいなのですが、再度その場所を調べようとしたのか、見つかってしまったようでその後、報告が途絶えてしまったんです……」

「確かに怪しいね……。 1日に何度も運び出される血に濡れた麻袋に、グノーシスと呟く黒ローブの連中か……。

 ジェーンちゃんから聞いたその情報は見過ごすには怪しすぎるわね。 ヴォーパリアを調べている連中に、その事を伝えて来るから、ちょっと待ってて」


 そう言い残すとルナサスは扉を開けて出て行ったので、暇になった俺達は部屋の中にある物を物色してみる事にした。


 すると、菊流が何かを見つけたらしく、興奮気味に与一に声を掛けていた。


「ねぇ、与一これ!」

「おおぉぉ! こ、これは!」


 菊流と与一は机の上に置いてあった1枚のイラスト用紙を手に取り興奮している。


「ん? 菊流、与一、何か良い物があったのか?」


⦅ビク!⦆


 俺が声を掛けた途端に2人の肩が跳ね上がった……。 怪しい……。


「と、共也はこっちに来ないでね!?」

「何で!?」


 俺は駄目なのに、2人は女性陣達を呼んでそのイラスト用紙を見せている。


「ねぇ、皆これ!」

『「キャーーー!!」』


 最初は黄色い悲鳴を上げた女性陣だったが、すぐに目を剥いてそのイラスト用紙を食い入るように見ている……。


 マジで何を見てるんだ?


⦅カチャ⦆


 そこに諜報員への伝言を終えたルナサスが帰って来た。


「いや~~。 ヴォーパリアの連中を調べてる奴に詳しく説明してたら遅く……、キャーーーーー!!! 皆で何を見てるのよ!!」


 耳を塞ぎたくなるようなルナサスの絶叫を聞いた女性陣もビックリしていたが、それ以上にルナサスが菊流が持っていたイラスト用紙を奪い取ると胸に抱き締めた。


「皆……。 見たの?」

『「見た! 良い目の保養になりました!!」』

「ううぅぅぅ……」

「そこまで皆が言うのは珍しいな、そのイラスト用紙に一体何が書かれてるんだ?」


 俺はルナサスが必死に抱いている用紙に、どんな物が描かれているのか見せて貰おうと思いイラスト用紙に手を伸ばすと、それに気が付いた彼女は凄いスピードで壁際に移動して行った。


「駄目! 共也には絶対に()()()()()()!!」

「そこまで必死に隠されると、逆に凄く気になってどうやっても見たくなるんだけど?」

「く、来るなーー!!」


 壁際から逃げられなくなっているルナサスのイラスト用紙を奪い取ろうとして俺が歩み寄ると、後ろから菊流達が肩を掴んで止めて来た。


「まぁまぁ、共也、人には見られたく無い物が誰しも有るんだから、しつこく暴こうとするもんじゃ無いよ?」

「そうじゃぞ共也! 乙女達の秘め事を無理に知ろうとしない事も、女性関係を円滑にする秘訣じゃぞ? なぁ、エリア」

「そうですね。 共也ちゃんもそこまで無理に見ようとして無いんでしょ?」

「まぁね……。 ちょっと気にはなるけど無理矢理見るつもりは無いよ」

「流石だね。 じゃあこの話はここで終わりで良いかな?」

「分かった……」


 ルナサスは女性陣達の元に涙目で近づくと、感謝の言葉を口にしていた。


「皆ありがとね……」

「良いよ。 これからは仲良くして行く関係になるんだからね。 でさ、そのイラストを複製する事って……ボソボソ」

「出来るよ! えっと、全員分で良いの?」

「お願いします。 明日の出航までに……。 あと追加でこの様なイラストも……ごにょごにょ」

「任せて! 私の得意分野だから出来るよ!」


 女性達の言葉は小声過ぎて俺には聞き取れないが、これ以上俺が聞こうとすると、また怒られそうなので諦める事にした……。


 そして、女性陣から希望するイラストをメモしたルナサスは、ニッコニコの笑顔でヴォーパリアの連中をタイミングを合わせて攻める事を約束すると、俺達と別れる事を惜しんでいた。


「共也、全てが終わったら必ず迎えに来てね? 約束だよ?」

「娶ると約束した以上は裏切るような事はしないから、安心してくれ」

「うん、待ってる。 皆もまた明日会いましょう」

『「またねルナサス!」』


 こうして俺達が見えなくなるまで手を振り続けるルナサスの城を後にしたのだが、まだ昼を少し過ぎた辺りだったので、久しぶりに夜まで自由時間にする事にした。


「暫くまた海の上の生活になるだろうから、各々動いて必要になりそうな物資を買って来るのが良いと思うんだけど。 皆はどう思う?」

「生活必需品とかも買わないとだから、それで良いと思うわ」

「そうだね。 ねぇ共也、ゴムは何処で売って……。 それじゃまた後でね!」

「与一の奴、逃げるのが早くなったな……」


 皆何だかんだで買わないといけない物が有ったらしく、気付いたら俺の横に居るのはエリアだけとなっていた。


「千世ちゃんは必要な物は無いの?」

「うん、収納袋にはまだ十分な量が入ってるから大丈夫。 それに、共也ちゃんと2人きりになるのって久しぶりだからさ、このままデートしない?」

「え? 良い……けど……」

「えへへ。 じゃあ、行こ!」

「千世ちゃん、引っ張らないで!」


 千世ちゃんに手を引っ張られて都市でデートする事になった俺達だったが、何をして良いのか分からないので、まずは魔道具など地球では見る事が出来ない物を見に行く事にするのだった。


 何か役に立ちそうな魔道具が有ると良いな。


 ==


【イリスとノイン視点】


「イリス姉、あそこに肉串が売ってる屋台がありますよ」

「本当だ! ノインちゃん、共也さんからお小遣いも貰ってるし買い食いしようか!」

「そうですね。 お腹が空きました……」


 良い匂いを放っている屋台に近づくと、魔族のおじさんの威勢の良い声が2人に掛けられた。


「いらっしゃい嬢ちゃん達! 肉串はどうだい?」

「まずは1本づつ頂戴。 味を見て他を買うかどうか考える」

「お、挑戦的で良いじゃないか! 俺が焼く肉は美味いからすぐ焼けるようにしておいてやるよ。 ほら1本づつ」


 握る場所が紙に包まれた肉串を2人が口にした瞬間、目の色が変わった。


「美味しい……。 甘辛いタレが肉の旨味を引き出してるし、この苦みは薬草? これを隠し味にしているからか、芳醇な香りも加わり肉を更に美味しくしてる!」

「お、おう……。 美食家みたいな食レポありがとよ。 で、追加はどうする?」

『「もちろん追加で!!」』

「あいよ! 毎度有り!!」


 こうして店の前で2人が肉串を美味しそうに食べ続けるものだから、近くを通った人達も我慢が出来なくなって、肉串を買って行くと言う流れがいつの間にか出来てしまい。

 気付いた時には屋台には長蛇の列が出来て、すぐに売り切れてしまった。


「悪い、肉串は売り切れだ! また次の機会に買って行ってくれ!」

「えええぇぇぇぇ!?」

「何だよそれ~~~。 ブツブツ」


 売り切れとなった屋台の親父さんは並んでくれていた皆に頭を下げて謝ると、店を仕舞い始めた。


「おじさんごめんね。 私達が忙しくさせたみたいで……」

「何を言ってるんだ。 2人が店先で美味しそうに食べてくれたから良い宣伝となって、こんなに早く売り切れとなったんだから、感謝する事はあれど非難する事などする訳が無いじゃないか」

「おじさん……」

「それとな……。 ホラ、これを持って行け」


 ノインが魔族のおじさんから手渡された紙袋の中には、肉串が30本程入っていた。


「おじさんこれ、品切れになったんじゃ……」

「一気に人が来て無くなりそうだったから、お前達の為に取り置きしておいたんだよ。 もう要らなかったか?」

「ううん。 まだお腹空いてるから嬉しい……」

「なら遠慮なく食べると良いさ。 また来る事があったら買って行ってくれな!!」

「うん、近くに来たら必ず買って行くね!」

「おう!」


 2人はこの後も食べ歩きをしながら、自由時間を満喫するのだった。


 ===


【単独行動中の菊流】


「あんた……。 何でこんな所に……」


 生活必需品を買い求めたりして1人で行動していた菊流は、フラフラと歩いていたローブを纏った人物とぶつかった際に、その人物の顔が見えてしまった事で顔を青ざめさせるのだった。



ここまでお読み下さりありがとうございます。

次回まで自由時間を過ごすメンバーを書いて行こうと思って居ますのでお付き合いの程よろしくお願いいたします。


次回は『各々の自由時間』で書いて行こうと思って居ます。


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