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【共生魔法】の絆紡ぎ。  作者: 山本 ヤマドリ
12章・魔王ルナサスの趣味。
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再びルナサスに会いに。

「いや~、茜さんの様な美しい人を彼女にする事が出来て、俺は幸せ者ですよ!」

「まぁ、近藤さんは人を褒めるのがお上手ですね。 でも、そんな人だから、私も付いて行こうと決めたのですから文句は言えないですね……」


 海を見ながら2人で座っている茜さんは近藤さんの肩に頭を乗せると、腕を抱き締めるのだった。


「お、俺はもう今死んだとしても、一遍の悔いが無い位に幸せだ!!」

「あら、そんな事をされては困ります。 近藤さんが逝ってしまった場合、残された私に悲しんで過ごせと言われるのですか?」


 近藤さんはその言葉にハッとすると茜さんの肩を掴んだ後に、抱きしめた。


「あなたを残して死ぬものか! 死ぬの時は一緒だ、茜さん!」

「ああ、近藤様……。 一生付いて行きます……」


 時代劇の様な会話する近藤さんと茜さんの2人を、船を掃除している船員達が苦々しい顔で見ているが、その甘い会話が止む事は無く甲板上に響き渡るのだった。


「ねぇ、共兄。 そろそろルナサスさんに会いに行く予定の時間だけど、近藤さん達をあのままにしておいて大丈夫かな?」

「どうしたものだろうな……」


 最初は近藤さんに彼女が出来た事を祝福していた船員達だったが、イチャ付く姿をずっと見せ付けられている事で、段々と唾を海に吐き捨てる人達が出てきているのも事実だった……。


「ぺ!」「ぺ!」「ぺ!」「ぺ!」「ぺ!」「ぺ!」


 この状況ってどうしたら良くなるんだろうね……。

 いっそ茜さんが男性だと皆にバラしてみるか?


「共兄、茜ちゃんの性別を皆にバラそうと考えてたりする?」

「バレたか……」

「バレたかって……。 共兄って何か悪い事を考えてると、すぐに顔に出るから分かるよ。

 それに今皆に茜ちゃんの性別をバラしたら、船員達の敵対心は収まるだろうけど、近藤さんの方が絶望して海に飛び込んで自殺しそうじゃない?」


 確かに絶望した近藤さんが、絶叫しながら海に飛び込む姿が容易に想像出来てしまった。

 これは却下だなぁ……。


「ん~~。 今すぐに良い考えが浮かぶ訳でも無いし。 ルナサスの所から帰って来てから、また何か良い手が無いか考えようか!」

「えぇぇ~。 共兄、ルナサス姉との時間が差し迫ってるのは分かってるけど、この状況を解決してから向かう方が良いんじゃ……」


 心配そうに俯くジェーンには悪いけど、そんなにいきなり良いアイデアが頭に浮かぶ訳でも無いしな……。


「ジェーンは近藤さん達の事で、何か良い解決策が有ったりする?」

「思い浮かばない……ね」

「でしょ? だから一旦棚上げにして、ルナサスの所から帰って来たらまた解決策を考えよう?」

「うぅぅぅ……。 分かりました……。 私達が帰って来るまでに、船員の皆さんの不満が爆発しない事を祈っておきます……」


 こうして俺とジェーンは、一旦近藤さんの問題を先送りにする事にした。

 そして、甲板上に集まっていたエリア達と一緒に、ルナサスに会いに城へ向かうのだった。


 =◇===


【ルナサスの城・城門前】


「これは皆さん、ルナサス様にまた会いに来てくれたのですか?」

「そうなんだけど、今って会いに行っても大丈夫です?」

「えぇ、少し前に書類の束を持った職員が、慌てて都市の方に走って行ったので、入稿は終わったのだと思われます」

「なら大丈夫かそうだね。 じゃあ入らせて貰うよ?」

「どうぞ! タナトス様もまだルナサス様の部屋の滞在してると思われるので、出来れば回収の方お願いします……」

「回収……りょ、了解……」


 昨日タナトスに案内された道順を思い出しながら城の中を歩いて行くと、昨日と同じくルナサスの部屋に辿り着く事が出来たので扉をノックするが、反応が無い……。


「えっと……。 エリア、昨日ルナサスが作業してた部屋ってここで合ってるよな?」

「私の記憶でも、ここの場所で合ってると思いますけど……」

「もう一度ノックしてみて反応が無いなら、城に勤めている誰かに聞いてみればいいんじゃない?」

「菊流の言う通りだな、このまま部屋の前であれこれ考えても仕方が無い訳だし、もう一度ノックしてみよう」


⦅コンコンコン⦆


「ルナサスいるか~~? 俺だ。共也だ。 皆も来てるぞーー?」


 何度かノックをするが、やはり反応が無いので諦めて誰かに話しを聞こうと思い、扉から少し離れた時だった。


⦅カチャ⦆


 鍵の開く音が扉のある方から響き、扉が開く音が聞こえたから、中からルナサスが出て来た様だ。


「んぅ~~。 皆、ごめんね。 徹夜で原稿を仕上げてたから、思いっきり寝ちゃってた……」


 部屋から出て来たルナサスに振り向いて挨拶をしようとすると、いきなり誰かの手によって俺の視界が塞がれてしまい、目の前が真っ暗になってしまった。


「共兄、見ちゃ駄目!」

「俺の目を塞いでるのはジェーンなのか!? 一体何で!?」


 何故ジェーンが、俺の目を塞いでいるのか分からずにいると、マリがルナサスを注意する声が聞こえて来た。


「ルナサス姉様、早く部屋の中で着替えて来て! 色々と出ちゃってるから!!」

「んぅ~~? マリちゃん? うわ、本当だ気付かなかったよ、ちょっと中で着替えて来るから待っててもらって良いかな?」

「待ってるから早く着替えて来て! 今のルナサス姉の恰好はパパには目の毒だよーー!」


 目の毒、それはつまり今のルナサスはあられもない姿だと言う事か……。 それはそれで俺も男だから見てみたい気も……。


「共兄? 見たいの?」


 俺の目を塞ぎ続けているジェーンからの威圧する言葉に、俺は首を横に振る事しか出来無かった。


「うん、さすが共兄だね。 分かってる!」


 何が!?


「そうだ、着替えて来る間にこれを誰かに渡して、どっかの部屋に適当に放り込んでおいて、と女中さんの誰かに伝えておいて~~」


⦅ドサ⦆


「タ、タナトスさん!?」


 エリアの驚いた声が廊下に響き渡った上に、ルナサスが部屋の中に入って行ったからなのか、ジェーンの目隠しが解かれる。

 そして、最初に俺の目に入って来た光景は、タナトスが前のめりに倒れて気絶している姿だった。


 タナトスの手はインクで汚れ、何度か寝落ちしてしまったのか、彼の頬にはルナサスの原稿の文字がクッキリと映っていた。


 俺達がどうすれば良いのか分からず困っていると、この城で働いている女中さんが通りかかってくれたので、タナトスの介抱をお願いして、ルナサスからの伝言を伝えると、了承すると両手でタナトスを抱えて連れて行ってしまった。

 その後、俺達はルナサスが着替えを終えて出て来るのを待っていた。


 ==


 その後そう時間が掛からずに扉が開くと、ちゃんと服を着直したルナサスが目の下に隈を作った状態で出て来て、俺達を部屋の中に招き入れた。


「いや~。 期日に何とか間に合ったから良かったけど、酷い修羅場だったから全く休憩無しで作業してたら、入稿した瞬間にタナトスと2人揃って寝落ちてたよ。 アハハ」

「それで部屋の外に出て来た時も眠たそうにしてたのか。 今は平気なのか?」

「えぇ、少し仮眠したから大丈夫よ。 それで、昨日は話す時間が無かったけど、私の所にわざわざ来たと言う事は、神聖国ヴォーパリアへの対抗策の話し合いがしたかったのかしら?」

「やっぱり分るよな……。 じゃあ、もしあの国に攻め込んで滅ぼそうとしたら協力してくれるか?」

「うん、良いわよ」

「軽! 俺が言っておいて何だか決断が早すぎないか?」 


 ルナサスのその答えには感謝するが、あまりにも早い決断にこちらの方が困惑する事になってしまった。


「勘違いしないで頂戴ね。 私は元々いつかあの国を滅ぼすつもりで物資、人材、様々な物を奴らに悟られない様に集めていたの」

「そう……、なのか?」

「えぇ、何でだと思う?」

「いや、分からないが……」

「本当に分らない?」

「全く……」

「はぁ……。 エリア、この人って相変わらず他人の好意が分かって無いのね……」

「あ、あはは。 でもそこが良いと感じているから、私を含めた皆がこの人の周りに集まっているのでしょうから、そう言わないで」


 彼女がエリアの台詞を聞いた後に女性陣達の顔を見渡すと全員が静かに頷いたので、何故戦争に必要な物資などを集めていたのかを、分かりやすく俺に説明し始めた。


「あのね、共也。 私は地球からの転生者だと前に話したわよね?」

「あ、あぁ。 グランク王と謁見する前の話しだよな?」

「そう。 あなたは気付いていなかったかもしれないけれど。 私ね、実はずっと孤独だったの。

 地球の記憶が鮮明に残ってるから、この世界の人達と常識が全く違うから馴染めないし、人と関わる事が気持ち悪く感じていたりしたから、恋愛の話をしてくれる親しい友人を作る事も出来なかったわ。

 だからでしょうね、私の前に現れるのは魔王と言う肩書を利用しようとする者ばっかり……」

「ルナサス……」

「だからね。 共也とジェーンちゃんが路地裏に構えていた私の占い屋に来た時、あなた達が地球から来た転移者だと聞いた時、本当はあなた達に私の正体を明かして語り明かしたかった……。

 その後、リリスと和解した時にあなた達と恋愛話しをした時に思ったの。

 私も気兼ねなく話せる事が出来る、あなた達の輪の中で暮らしたいってね?」


 皆はルナサスが何を言いたいのか分かったらしく、笑顔を作ってうんうんと首を縦に振っている。


 え~~っと……。


 その後もルナサスの話しは続いて行く。


「そんなあなた達と協力してあの戦争をようやく終わらせた英雄達を、あいつ等は不意打ちと言う最悪なやり方で殺害した上に、シンドリア王国の領地を切り取って建国を宣言したわ……。

 そんな奴らを私が許すと思う?

 そして共也、リリスを思考誘導して操っていたグロウを魅了して世界を混沌の渦に叩き落したのが、ダリア……。 ヴォーパリアの現女王よ?

 私からあなた達を奪ったあいつを放置する訳無いじゃない」


 いつの間にかルナサスは、俺達の事をそこまで大切な友人と思ってくれていたのか! と思い涙ぐみそうになっていると、横からジェーンに服を引っ張られたのだが、その顔には呆れが色濃く出ていた。


 何だ?


「共兄、また勘違いしている様なので先に正しておきますが。

 ルナサス姉が言いたいのは、共也兄を失った原因がダリアにあるから、あの国を滅ぼす事を決意した、そう言ってるんですよ?」

「え? そうなの?」

「ジェーンちゃん、ハッキリ言いすぎーーー!!」


 顔を真っ赤にして顔を覆い隠したルナサスは、指の隙間から俺の様子をうかがっているのでジェーンが言った事は本当なのだろう……。


「えっと……。 ルナサスは俺の事を只の友人と見ていたんじゃ無いのか?」

「最初はそうだったけれど、戦争が終わった後にあなたが重傷を負いながらも地球に帰還した事をジェーンちゃんから聞いた時の喪失感で、あぁ、私はあなたに好意を持っていたんだ、と自覚する事が出来たの……。

 だから、昨日あなたが生きて私に会いに来てくれた事が、本当は凄く嬉しかったんだよ?

 ……共也は転生してからも陰キャな性格が抜けない上に、恋愛脳の女は……嫌……かな?」


 その言葉にエリアを含んだ女性陣達は頷き合い、俺がルナサスにどの様な台詞を言うのかキラキラした顔で待っているのだが、本当にルナサスを受け入れて良いのだろうか……。

 と言うのもまぁ、今更か……。


 そう思いエリア達の顔を見ると頷いてくれたので、ルナサスの真摯な告白にちゃんと答える事にした。


「ルナサス、気付いてると思うが俺は沢山の女性と婚姻関係を結んでるんだけど、それは知ってる?」

「皆の態度を見てれば何となくそうじゃないかな、とさすがに分るよ。 それで?」

「皆にも言ってるんだけど、俺はディアナ様と約束していて、その内容が神聖国ヴォーパリアの野望を砕く事なんだ。

 だから結婚するのはその後と言う約束になってるんだけど、ルナサスもそれで構わないかい?

 それで良いなら、将来一緒になってくれるかい?」


「うん……。 こんな喪女だけど受け入れてくれて嬉しい……。 ありがとね……」


 ルナサスが俺の手を握り嬉し涙を流す中、昨日シェリーちゃんに言われた≪このお兄ちゃん、女難の相が出てるよ!≫と言う言葉が頭の中でずっと再生されるのだった。



ここまでお読み下さりありがとうございます。

共也とルナサスの婚約が決まりましたが、彼女はヴォーパリアに対する為に合流する事はありません。


ヴォーパリアの連中を駆逐したら結婚と言う話になります。


次回は『ケントニス帝国に向かうまでの自由時間』で書いて行こうと思っています。


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