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【共生魔法】の絆紡ぎ。  作者: 山本 ヤマドリ
12章・魔王ルナサスの趣味。
212/286

ダグラスの愛娘シェリー。

「ダグラス、お客が来たみたいだが誰なんだ?」


 家の奥からメリムの懐かしい声が聞こえて来ると、ダグラスは嬉しそうにその問いに答えた。


「メリム、聞いて驚け! 行方不明になっていた共也達が会いに来てくれたんだ!」

「本当か!? じゃあ中に入って貰ってくれ、私はその間にお茶でも用意しておく!」

「分かった! さあ皆メリムの許可も出たし、家の中に入ってくれ!」

『「お邪魔します」』


 俺が靴を脱いで入ろうとすると先程の少女が、俺の事をジッと見上げていた。


「シェリー、その人達はお父さんの大事なお友達だから、失礼な事をしたら駄目だぞ?」

「は~い! でもお父さん、この男の人って女難の相が出てるよ?」

『「「ブフ!!」」』


 いきなりそんな事を言い出したものだから、俺の後ろに居た女性陣が盛大に吹き出してしまった。


 自覚してるから何も言わないけどさ……。 酷くね?


「こ、こらシェリー! 悪いな共也、この娘ちょっと占いの能力があるみたいで、時々こうして無意識に占いをしてしまうから目が離せないんだわ。

 と、取り合えず上がってくれ」


 俺達が家に上がり廊下を歩いていると、ニヤニヤと笑いながら横に来た与一が口を開く。


「共也、あんな小さな女の娘にまで女難の相が出てるって言われたんだから、諦めて私達全員を娶る事をさっさと認めなさい、そうすれば楽になれるよ?」


⦅パチン!⦆


「痛い!」


 俺は無言で与一の額にデコピンをお見舞いすると、額を押さえて大袈裟に痛がっていた。


「私は皆が思ってる事を言っただけ。 私は悪く無いのに……」


 俺はもう一度デコピンの構えをすると、与一は攻撃範囲外にササっと離れた。


 俺と与一のやり取りを見ていたダグラスは、懐かしいものを見る目で俺と与一を眺めていた。


「何だよダグラス……」

「いや、共也と与一のそのやり取りを見てると懐かしく思えてな……。 行方不明だった菊流もいるし、この10年間お前達がどうしていたのか詳しく話してくれるんだろ?」

「勿論だ」


 俺達が話しながら歩いていると、木茶華ちゃんがダグラスに声を掛ける。


「ダグラスお兄様、お久しぶりです」

「お、お兄様!? え~っと君は……」

「成長したので大分見た目は変わってしまったかもしれませんが、私は黄昏木茶華です、覚えてらっしゃいませんか?」

「は? え? 光輝の妹の木茶華ちゃんか? マジで?」


 ダグラスは俺に確認の為の視線を送って来たので、頷くと本気で驚いていた。


「え? どうやって惑星アルトリアに?」

「共也君、それも含めてこれから話すんですよね?」

「ああ、俺もお前に聞きたい事が沢山あるしな」

「はは、分かったよ、それにしても木茶華ちゃん綺麗になったな~」

「そ、そうですか? そう言ってもらえると嬉しいです……、共也君は中々言ってくれないので。 ね?」

「ほう? そう言う会話が出て来ると言う事はお前等の関係はそう言う事か?」

「さあ、ダグラス早く奥に案内してくれ!」

「あ、共也君逃げるなんて卑怯だよ!!」


「エリア、いや千世ちゃんか。 いつもこんな感じなのか?」

「あはは、まあ共也ちゃんが私との約束を律儀に守ってくれてるので嬉しくはあるのですが、そろそろ手を出してくれても良い気はするんだけどね……」

「まあ、共也も色々拗らせてるからな……。 まぁ、気長に待ってやってくれ」

「うん、それは大丈夫」

「そうか。 共也の事、よろしく頼むな」

「任せて!」

「ふ、愚問だったな。 あ、こら与一、勝手に置物に触るんじゃない!!」

「えーー……」



 その後ダグラスに拳骨を落とされた与一を尻目に、少し広めの居間に通された俺達は用意された椅子に座ると、沢山のコップと飲み物を台所から持って来たメリムが入って来た。


「本当に菊流達じゃないか、久しぶりだな」

「メリム、久しぶりだね!」


 手に持っていた飲み物などをテーブルに置いたメリムは、ゆったりとした白の服を着ていてその下腹部は大きくせり出している。

 その様子を見た女性陣達は驚きの声を上げた。


「メリムさん、まさか妊娠してるんですか!?」

「あぁ、今8ヵ月くらいだと言われてるからもうすぐだな、日々重くなって行くから大変だよ」

「お茶の用意くらい私達がしますから座ってて下さいよ! ダグラス、あんたが率先して動かないでどうするのよ!!」

「菊流、ここで俺を非難するのって何か違わないか!?」

「ああ菊流良いんだ、私がダグラスにお願いして動かせて貰ってるんだ。 見て貰っている医者にも、少しは動いた方が良いと言われてるんでな」

「そ、そうなのね。 それなら良いわ!」


 メリムにそう言われた菊流はバツが悪そうに話を終わらようとするが、ダグラスは菊流の肩に手を置きその濃い顔で笑顔を作り、彼女に向ける。


「菊流さ~~ん。 俺に何か言う事は無いんですかねぇ?」

「あ~~。 えっと……。 そうだダグラス、シェリ―ちゃんって今は人間の姿だけど、海龍の姿に変身出来たりするの?」

「話題変えるの下手くそか! まぁ良い、幼馴染と言う事で勘弁してやるよ! あぁ、メリムが言うには、何年かに1度は海龍の姿に戻らないとどうも存在が固定されてしまうらしくてな。

 だから俺達の家は海が近い場所に建てたんだ……が、どうしたんだ皆、顔が真っ青だぞ?」


 今ダグラスは何て言った?

≪何年かに1度は海龍の姿に戻らないと存在が固定される≫そう言ったのか?


 先程のダグラスの会話を聞いた事で俺達の視線がマリに向かっている事を知ったメリムは、何故俺達が彼女を見ているのか理由を察して、慌ててマリの両肩を思い切り掴んで問いかけた。


「マリ! お前が行方不明になっていたこの10年の間に、1度でも良いから海龍の姿に戻った事はあるのか!? あるんだよな!?」


 マリは涙が溢れそうになっているメリムの顔を悲しそうに見ながら、静かに首を横に振った。


「そんな……。 マリ、すまない……。 お前が行方不明になる前に、1番近くに居た同族として、私がちゃんとこの事を教えておくべきだった……。 許してくれ……」


 マリを強く抱き締めるメリムは、涙を堪える事が出来なくなりポロポロと泣き出してしまった。


 抱き締められているマリは、メリムを優しく抱き締め返すと、先程とは打って変って笑顔を彼女に向けていた。


「メリム姉、じゃあ私はこれからは人として生きて行けば良いんだね!?」

「ん? う、ん……? 確かにマリの言う通りだが、何でそんなに嬉しそうにしてるんだ?」


 マリの弾む明るい声に、先程まで悲しくて泣いていたメリムの涙も引っ込んでしまった。


「えへへ~~。 人として生きていけるって事は、これからもパパとずっと一緒に生きていけるって事じゃない?

 もし、海龍として生きて行かないといけない時期が来たら、パパとお別れしないといけないのかなって、ずっとビクビクしてたんだ♪」


 これからはずっと人として暮らして行ける事と知ったマリは、両頬に手を当てて蕩けた表情を浮かべていた。


「えへへ~~♪」


 マリのその表情を見てから、俺の背中に変な汗が流れて来て、嫌な予感がしてしょうがなかった……。



 =◇===


「ちょっとしたトラブルはあったが、まあマリちゃんが未だに部屋の隅で嬉しそうにしてるから放置しておくとして……。

 共也とエリアが、リリスの魔法で地球に帰還したのはディアナ様から聞いたが、そのお前がどうしてまたこの惑星アルトリアに帰って来たのか、そして何故俺に会いに来たのか、その話を聞いても良いか?」

「あぁ、まずはそうだな……。 エリアと一緒に地球に到着した所から話そうか……」


 それから俺は地球であった事。

 呪いによって変異したエリアの時空魔法を使って、父さん達と一緒に地球から惑星アルトリアに来て、ここまで来るまでにあった事などを出来る限り詳しく説明すると、ダグラスとメリルは緊張からか、目の前に置かれているお茶を口に含むと飲み干した。


「そうかグランク様は満足して逝ったんだな……。 グランク様がデュラハンとなって街を守っていると言う噂は、この国まで聞こえて来ていたからずっと気になってはいたから、解決したなら良かった。 

 それにしても、今ここに居る菊流はヒノメのお陰で精霊化しているとはな。 見た感じ全く変わって無いから分からなかったぞ?」

「それはそうよ。 ヒノメの説明を聞く限りでは、共也の中に居た私の魂を核に体を構成したみたいだから、死ぬ前の姿にソックリなのは当たり前よ。

 それに、死ぬ事はほぼ無くなったから、強くなるには便利な体よ?」


「お前が困って無いなら、俺から何か言う事は無いが……。 それで、お前達はただ俺に会いに来たって訳じゃ無いんだろう?」


 真剣な眼差しで問いかけて来るダグラスに、俺は誤魔化す事無く正直に話した。


「あぁ、今俺達は神聖国ヴォーパリアに対抗する為の戦力を、様々な所を回って集めているんだ。 クレアやジークとも、すでにタイミングを合わせて同時に攻め入る事を約束しているんだ」

「そうなのか? 随分と大規模な作戦になりそうだな」


「ああ。 こっちの世界に帰って来る時に、ダグラスがこの国にいるとディアナ様から聞いていたから、お前に戦力になって貰おうと会いに来たんだけど……」

「共也?」


 ダグラスは俺の視線がメリムの膨らんだお腹に向いている意味を察して、何も言えなくなっていた……。


「共也……。 俺は……」

「いや、もうこの国で幸せな家庭を築いてるお前を誘う事は、止めるから安心してくれ。 俺達は強くなったから、きっとお前1人いなくても神聖国ヴォーパリアの連中の野望くらい見事に砕いてみせるさ! だからダグラス、お前はメリムとその生まれて来る子供を大切にしてやってくれ」

「…………すまん」


 ダグラスは自分がヴォーパリアとの決戦に参加出来ない事を、テーブルに頭を打ち付ける位の勢いで謝罪して来たが、むしろ彼が家庭を大事にして生きて行く選択をしてくれた事を、俺達は安堵していた。


「お兄さん、お父さんを連れて行かない?」

「シェリーちゃん、大丈夫だよ。 お父さんは君達を守る為に何処にも行か無いって決断したみたいだから安心して良いよ」

「本当!? 良かった~。 このままお父さんが何処かに行っちゃったら、2度とここに帰って来れない気がしたから不安だったけど。

 何処にも行かないならそんな事が起こるはずがないんだから、きっと私の気のせいだったんだね!!」


 みんながギョッとしてシェリーちゃんを見ると『何?』と、何故自分が注目されているのか分かっていない様で、可愛らしく首を傾けていた。


「シェリー……」


 シェリーちゃんの言葉に絶句した俺達だったが、占いとは言えダグラスの死を連想させられた以上は、もう彼をこの戦いに誘う気は失せていた。


「ダグラス、俺達がここに来た目的は話したけど、お前がこの世界で過ごした10年間の話しをまだ聞いて無いから、聞かせて貰っても良いか?」

「共也……。 ああ、良いぞ! メリムと一緒に過ごしたこの10年の話しを嫌と言うほど聞かせてやるよ! メリム、話が長くなるから皆の晩飯も作ってくれ!」

「はいはい、シェリ―、お父さん達はこれから話に夢中になるでしょうから、料理のお手伝いをお願いしても良いかしら?」

「する~~! お母さん何を作るの?」

「そうね~~。 あなたの大好きな具沢山のクリームシチューってのはどうかしら?」

「わ~~い! 楽しみーー!!」


 その後、ダグラスの旅をして来た10年間の話しを聞いて楽しんだ後、メリム特製のクリームシチューを含んだ晩御飯などを皆で頂く事となった。

 俺達はその後も楽しく話していたのだが、ダグラスの膝の上に座って大人しくしていたシェリーちゃんが、眠そうに目を擦り始めたので、迷惑になる前に俺達はクロノスの街へ帰る事にするのだった。


「共也、皆、本当に泊まって行かなくて良いのか?」

「あぁ、暗いとは言っても、この世界には月が2個あるから歩いて街に戻る分には十分明るいしな、大丈夫だよ。

 それにこの人数の寝る場所を確保するのは大変だろう?」


 ダグラスは俺の後ろに居る女性陣達を見て納得してくれた様だ。


「共也、お前もヴォーパリアの連中との決戦を早く終わらせて、俺の様に早く身を固めるんだな。 皆それを望んでいるんだろ?」

「そう。 共也が意気地が無いから、まだ誰にも手を出してないから本当に困ってる……。 ま、待って共也! あなたのデコピンは本当に痛いんだから止めて!!」


 馬鹿な事を言う与一に、またデコピンをしようとしたが逃げられてしまった。


「ダグラス、ヴォーパリアの連中との闘いは俺達が必ず勝ってみせる。 だからお前はメリムやシェリーちゃん。 そして、生まれて来る子供を守ってやってくれ」

「分かったよ……。 死ぬなよ共也、みんな……」


 俺とダグラスはお互いの拳を合わて健闘を祈ると、皆と一緒に夜の草原を歩いて都市まで戻る事にするのだった。


ここまでお読み下さりありがとうございます。

ダグラスはメリム達を守る目的の為、決戦に参加しない事を心に決めたみたいですがどうなりますか。


次回は『近藤さんのパートナー!?』で書いて行こうと思っています。

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