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【共生魔法】の絆紡ぎ。  作者: 山本 ヤマドリ
12章・魔王ルナサスの趣味。
211/285

ダグラスとの再会。

「そう……。 共也、あなた達を見かけなかったこの10年間は、ディアナ様の言う通り地球に帰還していたのね。 そして、菊流は……」


 俺は地球に帰還していた事、そして菊流は転移する前に亡くなっていた事などを詳しく説明すると、ルナサスは涙を滲ませて、俺の周りに居る行方不明扱いとされていた者達を眺めていた。


「戦争が終わった後ずっと共也とエリア以外の人達を探させていたけど、何年経っても見つからなかったから、3年目で捜索を打ち切らせたのよ……。

 まさかマリちゃんはフォックス国に。 そしてリリスはどこかの暗い洞穴に……、それじゃあいくら探しても見つかる訳無いわよね……」


 額の位置で手を組んで溜息を吐くルナサスに、俺はずっと探してくれた事に対して感謝を述べると、苦笑いしつつも何とか笑顔を作ってくれた。


「共也はさすがだね、そうやって心に入り込む言葉で、色んな女性を落として来たんでしょ? 一瞬私もクラって来たもの」」

「落として来たとか失礼な事を言うな! 大分嫁候補が増えたのは事実だけど……」

「アハハ! あんまり嫁を増やすと、後ろから刺されるかもしれないからほどほどにね?」

「俺としてはそこまで増やす気は『「「何!?」」』……何でも無いです」


 俺は渋々発言を撤回したお陰で事なきを得たが、女性陣達から厳しい視線に晒されてしまい身動きが取れなくなってしまった。


「いや~~、皆が生きていたのは嬉しいんだけど、その話を聞く限り共也はラノベの主人公みたいな生活を送ってる……わ……ね……。

 ……そうだ!小説の締め切りが近いんだった!! み、みんなごめん本当に今は時間が無いから、また後日来てもらって良いかな?」

「そう言えば締め切りが近いって言ってたな。 じゃあ今日はここでお暇させて貰うよ、会えて嬉しかったよルナサス。

 また話そうな」

「勿論よ! あ、そうだ共也、ダグラス達にはもう会った?」

「いや、場所が分からないからまだ会えてないんだが、ルナサスは2人が何処で住んでるか場所を知ってたりするのか?」

「知ってるわよ。 この街を出て少し海岸沿いを南西に下って行くと、小高い丘に一軒家が建ってるから、そこに行ってみると良いわ。

 でも、きっと共也達はビックリするはずよ」

「お、おう? 取り合えず行ってみる事にするよ。 街を出て南西だな」

「そうよ、明日には終わると思うから、また昼くらいに来て頂戴」

「分かった、ルナサスも無理するなよ」


 こうしてルナサスに別れの挨拶を告げて汚部屋を出た俺達は、ダグラスに会いに行く為に一旦街中に出る事にするのだった。


「それではルナサス様、私は共也さん達を城の外まで送ってまいりますので、執筆作業の方は頑張ってください」

「待ちなさいタナトス……。 お前はこっち、清書などやる事はいっぱいあるんだから手伝いなさい!」

「は、放して下さいルナサス様、私を修羅場に巻き込まないで! あ! ま、まさかさっき笑った事への仕返しで!?」

「さあ? どうでしょ~~?」


 タナトスの襟首を持ったまま、口角を上げるルナサスは部屋の中に彼を引きずり込んだ。


「た、助けて共也さん! ジェーンさ」


⦅バタン、カチャ⦆


「今の音って扉の鍵を締めた音だよね……。 共兄タナトスさん大丈夫かな?」

「まあ、修羅場とは言っても本の制作作業で死ぬ訳じゃ無いから……。 精神的には死ぬか?」


「共也、タナトスさんの事は残念だけど諦めましょう。

 取り合えず私達はダグラスに会いに行った方が良くない? 神聖国ヴォーパリアの事で話す事も沢山あるだろうし」

「そうだな、タナトスは可愛そうだがこのまま見捨てる事にして、ダグラスに会いに行こう」


 部屋の中からルナサスの怒声が聞こえて来るので、巻き込まれない様に俺達は慌てて城の外に出る事に成功した。

 そして、ダグラス達の家に行く前に、冒険者ギルドに向かったイリスとノインの2人を迎えに行く事にした。



 =◇===


【冒険者ギルド・大広間】


 俺達が冒険者ギルドのクエストボードが設置してある大広間に到着すると、ノインちゃんが受付嬢らしき人と口論をしている所だった。


「あなた達は正気ですか!? ヴォーパリアの連中が港町アーサリーを守る為に戦ったと言う嘘を真に受けて、全滅させた者達の情報集めているのは、大量虐殺の汚名を本当に街を救った人達に擦り付ける為に決まってるじゃないですか!」」

「ノ、ノインちゃん、落ち着いて! この手配書もあくまで神聖国ヴォーパリア領内だけの話しでして、他国では効力を発揮しま『じゃあ、何でその手配書がクエストボードに張り出されているんですか!!』そ、それは……。 ギルマスの指示で……」

「…………ギルマスを呼び出して。 今すぐに」

「そ、そうは言われても、1冒険者の指示に従う訳には……」


⦅メキメキ⦆


 ノインちゃんが机に置いている小さな拳に力を入れると、机の軋み始めた音が受付嬢の耳にも届いた様で、彼女は顔面蒼白となりギルマスを呼びに飛んで行った。


「今すぐに呼んで参りますーー!!」


 受付嬢が奥に消えて行ったのを確認すると、横に居たイリスがノインの手を包み込んだ。


「ノイン、落ち着いて。 怒りはギルマスから説明を聞いてからでも遅くないんじゃない?」

「うん。 ごめんなさいイリス姉……」


 少し落ち着いたノインとイリスに俺達が近づくと、2人もこちらに気付いたのか軽くお辞儀をして、何故そこまで怒っていたのか説明をしてくれた。


「最初、私達はこのクロノス国の冒険者ギルドでは、どんな種類のクエストが張り出されているのか、興味本位で調べに来ただけだったのですが……。 その……」

「ノインちゃん、言い難いなら私が言って上げるよ。 良いかな?」

「はい……、お願いしますイリス姉……」


 イリスは先程受付嬢に突き付けていた、1枚のクエスト用紙を俺達の前に差し出した。


「共也兄さん、皆さん、このクエスト用紙に書かれている内容を読んでみて」


 イリスが差し出して来た用紙には。


『港町アーサリーの民を大量のアンデットから救う為に、勇敢に戦った神聖国ヴォーパリアの兵士達を、卑劣な手段を使い皆殺しにした人物達の情報を我々は求めている。

 どんな些細な情報でも構わないから、知っている者は最寄りの冒険者ギルドの受付嬢に申し出てくれると嬉しい。

 情報の報酬として金貨1枚。』


 と、用紙には出鱈目な内容が文章として書かれていた。


 全部逆じゃないか……。

 それに、こんな滅茶苦茶な主張をしたヴォーパリアの言い分を、冒険者ギルドの上層部は本当に信じたのか? そこまで腐っているのだとしたら、ジュリアさんがこの組織を見限るのは当然だな……。


 そう言えばジュリアさんは、今どこに居るのだろうか……。

 あの人くらいの実力者なら、何処でも生きて行けそうだろうけど心配だな……。


 俺がジュリアさんの事を考えていると、奥から先程の受付嬢に連れられて初老の男性が、一緒にこちらに歩いて来て、苦情を訴えたノインの前で立ち止まった。


「君がこのクエストに対して苦情を入れて来た冒険者かね?」

「はい、これはどう言った経緯でクエストとして発行されたのでしょうか? 裏付けは取りました? その報奨金は何処から捻出されるので?」


 ノインは捲し立てるようにギルドマスターらしき初老の男性から、情報を引き出そうとしていた。


「あ~~、待て待て。 そう捲し立てられたら喋る事も出来んじゃないか。 まずは私から名乗ろう、このクロノス国にある冒険者ギルドのマスターをやらせてもらっている【グランデル】だ。 君の名は何と言うんだい?」

「…………ノイン。 今はカバレイル領のギルドマスターをしているバリスの娘、ノイン=ホーク……です」

「君があのバリスの娘か……。 似てないと言われないかね?」

「言われますけど、そこまで似てない訳じゃ……。 ねぇ、皆さんもそう思いますよね?」

「え~~っと……」


 バリスさんの事を知っている俺やジェーン達は言い淀むと、ノインが悲しそうな顔をし始めたので、ギルマスのグランデルを含めた俺達は慌てて言い繕った。


「よ、良く見たらノインとバリスさんは似てる部分が有るかな~~~?」

「本当ですか?」

「あ、ああ。 ほらジェーン!」


 俺が肘でジェーンに続きを促すと、慌てて続きを話し始めた。


「ほら、端正な輪郭などバリスさんにソックリで……。 次、グランデルさんお願いします!」

「お、俺!? あー、え~……力が強い所が似てる……とか……」

「……これは体質的な物です! この件は後でジックリと聞かせて頂きますから。 取り合えず話を進めて下さい!!」

「な、何故俺が……。 え~っと何処まで話したかな?」

「まだ全くです!」

「そうか……。 まずこのクエスト用紙をボードに張っていた事についてだが、これは神聖国ヴォーパリアでのうのうと暮らしている、冒険者ギルドの上層部のアホ共に言い訳が出来る様にする為だ」

「言い訳ですか?」


 言い訳……、意外な言葉がいきなり出て来た事にも驚いたが、公然と冒険者ギルドの上層部を批判したこの人はどうやらバリスさんに似て、現状を憂いているギルマスの1人の様だ。


「そうだ、実際冒険者の誰一人として、このクエスト用紙に書かれている内容を信じている奴なんていない。 むしろ港町アーサリーを襲ったのは奴らの方だと口コミによって真実が知れ渡っているのに、どう報告しろって言うんだ……。

 まぁ、紛らわしかったのは認めるよ、すまなかった」


 いきなりギルマスのグランデルさんが頭を下げたので、ノインも慌てて謝罪を止めさせた。


「グランデルさん、あなた方の事情は分かりましたから、頭を下げるのを止めて下さい! 私も上層部の非常識ぶりに不信感が拭えなかったので……ごめんなさい」

「分かった、この話はこれで終わりにしよう。 それで良いかなノインちゃん」

「はい、でもこの様な指示を出した上層部には、早々に退陣してもらう必要があると思うのですが無理なのでしょうか……?」

「難しいな……年老いたとは言っても、あいつ等は元々類まれなる実力者だから、強引にその席から引きずり落とすとは中々出来ないんだ……。

 その事はバリス達と会った時に何度も話し合っているが、今の段階ではどうしようもないと結論が出てしまってな……」

「バリスお父さん達も現状を憂いているのですね……」

「まぁ、そう言う事だから、このクエストは一応張られてはいるが、誰も信じていないって事だ。 満足したかい?」

「はい、あなたのような方が、バリスお父さんの味方で居てくれて少し安心しました」

「ハッハッハ! バリスとは一緒のパーティーを組んでいたからな、当然だよ!」


 こうしてグランデルさんが奥に消えて行くのを見送った後は、ノインは威圧的な行動を取ってしまった事を受付嬢に謝罪した。

 すると、その受付嬢さんはニッコリ笑うと、その謝罪を受け入れていた。

 その時にノインは頭を撫でられたのだが、ちょっと頬を染めて照れていた。


 ノインとイリスの2人も冒険者ギルドでの用事も終わった様なので、そのまま俺達と合流してもらい、街の外で暮らしているダグラス達の元に向かう事にした。

 街を出て南西の方角に向かうと、ルナサスの情報道りに、小高い丘の上には煙突から煙を吐き出している1軒家が建てられていた。


「あそこにダグラス達が暮らしてるの?」

「与一、そうだと思うけど、ダグラスがどれだけ老け顔に成ってるか見物じゃない!?」

「菊流、お前……。 まあ良い、それじゃ扉をノックするぞ?」


 俺が扉をノックすると、中から返事が返って来た。


『は~~い。 今行きます』


 パタパタと可愛らしい音が近づいて来て扉が開くと、そこにはちょっと暗めの紫の髪を持つ小さな女の娘が、俺達の事を不思議そうに紫の瞳で眺めていた。


「お兄さん達はだあれ?」


 まさかこの娘は……。


「シェリー、またルナサスが来たのか~~?」

「ん~~ん。 知らない人達~~」

「達? 大勢の人が来るなんて珍しいな。 すまないなあんた達、俺はこの家の主のダグラ……」

「よう、ダグラス」


 扉から出て来たダグラスは、俺達を見た途端に硬直してしまって、口をパクパクとするばかりだったが、目から涙が溢れ出すと勢いよく抱き着いて来た。


「共也、馬鹿野郎! こっちの世界に戻って来たのなら何で連絡くらい寄こさないんだよ……!! ディアナ様からお前達が地球に戻ったと聞かされて……クソ、上手く言えねぇ……」

「俺もこっちの世界に戻って来て、まだそんなに日が立ってないんだからしょうがないだろ……」

「そうか、取り合えず入ってくれ! 中でお前に起きた出来事を聞かせてくれ!」


 こうして俺達は幼馴染の1人、ダグラスと10年ぶりの再会を果たす事が出来たのだった。


ここまでお読み下さりありがとうございます。

今回でダグラスと再会する事が出来たので、話がまた少し動き始めます。



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