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【共生魔法】の絆紡ぎ。  作者: 山本 ヤマドリ
12章・魔王ルナサスの趣味。
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出会いの国クロノス。

「ほらどうした共也、その程度の抜刀の速度だとまだまだ【(またたき)】を使う事など出来無いぞ。 もっとコンパクトに、かつ素早く振り抜く、それを何度も繰り返さないとこの奥義は完成しないんだから頑張るんだ」


 俺は今クロノス国に向かう船の上で、近藤さんに神白流剣術の奥義の1つ『瞬』のやり方を教えて貰っていたが、この技は天照と同じく簡単に出来るような技では無く、こうしてダメ出しばかり受けている状態だった。


「はぁ、はぁ、近藤さんと父さんは、この瞬を教えて貰ってからどれくらいで使えるようになったんです?」

「俺はどうだったかな……。 大体1か月くらいだった気がするが良く覚えてねえな」

「す、凄いですね1か月でこの技が使えるようになるなんて……」

「京谷はその場で使ってみせたがな…………」

「…………相変わらずの化け物っぷりですね」

「本当にな……。 まあ、コツは今の内に教える事が出来るんだから、いずれ使えるようになるだろう。 この瞬が使えるようになれば、天照を使う為に必要な技の1つを覚える事になるんだからな」

「やっぱり、この瞬は天照を使うのに必ず覚えないといけない技なんですね」

「そうだ。 後2つほど使えるようになる必要がある奥義があるが……。 どうする? どんな技かだけでも見せるか?」


 俺は迷ったが今はまず【瞬】を使えるようになるのが先だと思い、時間があった時に見せて欲しいとお願いしておいた。


「お前がその条件が良いなら、早く瞬を撃てるようになるんだな。

 一応何があるか分からん世界だからな、いずれ時間がある時にでも残りの2つの奥義を共也に見せてやるよ」


「瞬を使えるようになりますかね?」

「まぁ、京谷がお前に天照を見せたと言う事は、すでに下地が出来かけているから期待しての事だろうしな。 まあ、焦らず地道に練習しておけばいずれ使えるようになるさ」

「そんな無責任な……」

「ハハハ、そう言うな。 俺もやっとクロノス国で彼女が出来るかもしれないんだ、そうなったら忙しくなるから、奥義を見せてる暇が無いかもしれないしな!」

「確かに近藤さんは良い人なのに、何故か彼女が出来た事無いって不思議ですよね?」

「おおお、共也、お前は分かってくれるか! そうなんだよ、俺が仲良くなった女性は何人もいるのに、好意を寄せると何故か急に断られるんだよ……。

 そうなるとな本気で死にたくなるんだ……ってお前には無縁の話しか……」


 ここ最近いつもこうだ、俺が何人もの女性陣と仲が良いのを嫉妬した近藤さんが、諦めた様な話に持って行く……。


「き、きっと近藤さんの素晴らしさを理解してくれる人が、クロノス国で待っててくれますって! だから今から諦めないで下さいよ!」

「お前に言われても説得力が全く無いが、確かに今から落ち込んでいたら良い出会いも逃げて行くかもしれないよな……。

 だが本当に良い出会いがあれば、俺の人生にも彩りが出て来るんだが……」


 俺と近藤さんがその後も瞬の撃ち方を見て貰っていると、トニーさんの声が船中に響き渡る。


「クロノス国が見えたぞーー!!」


 船室に居た皆も甲板に出て来てクロノス国の方向を見たのだが……。 まだ港に到着するにはまだ距離があるはずなのに、俺の目には不思議な物が見えていた。


「あれがルナサスが治めるクロノス国か……。 ねぇ、近藤さん……」

「何だ共也………」

「俺の目がおかしくなったのかな、空中にドデカイハートが浮いてるのが見えるのですが……」

「共也も見えるなら俺の目がバグってる訳じゃ無いんだな……。 俺もよーーく見えてるよ……」


 多分幻術の類だとは思うんだが、ルナサスの城だと思われる上空に巨大なハートが浮いていて、それを見た女性陣達がキャッキャと大騒ぎしていた。


「ジェーンちゃん、本当にあそこで恋愛のイロハを学ぶことが出来るのね!?」

「はい菊流さん、ルナサス様がアストラさんとココアさんの異種族婚の祝いの席で演説する事になったのですが、その場で『国民全てが人族、魔族、関係無しに恋愛すべし!!』といきなり政策を宣言してしまったので、それがそのままクロノス国の国策になったようでして……。 

 その後クロノス国では、様々な恋愛の仕方を優しく指導してくれる資格が誕生して、役場で申請すれば誰でも指導を受けれるようになっているみたいです……」


 女性陣どころか近藤さんもさっきまであの巨大なハートに引き気味だったのに、必死にジェーンの言葉をメモしている……。


⦅パタン!⦆

「役場だな、良し!」


 手帳を勢いよく閉じた近藤さんは、港が見える手摺に両手を乗せて、クロノス国に着くのを今か今かと待ちわびていた。


 近藤さん、気合入れ過ぎでしょ!! 


 =◇====


「そ、それじゃあ共也、悪いがここからは別行動って事で!」


 港に着くと近藤さんはそれだけ言い残すと凄い勢いで船を降りて行き、あっと言う間に姿が見えなくなった。


「ねぇ共也ちゃん。 近藤さんが凄い勢いで船を降りて行ったけど、役場に恋愛指導の申請しに向かったのかな?」

「エリア、そうじゃないかな……。 近藤さんはこの国の出会いに凄く期待してたから、引き留めるのも悪い気がするし、彼の事はしばらく放って置いて上げよう……」

「う、うん……。 近藤さんに良い出会いがありますように……」


 エリアは近藤さんが消えて行った方角に両手を合わせて、彼の健闘を祈るのだった。


「俺はルナサスに会いに城に行くつもりだけど、皆はどうする?」

「私はこの国にある冒険者ギルドを少し覗いて見たいと思うので、別行動するつもりです。 イリス姉、護衛として付いて来て貰っても良いですか?」

「良いよノインちゃん。 じゃあ私も別行動で」

「了解。 じゃあ、2人以外は俺と一緒にルナサスに会いに行くって事で良いのかな?」


 菊流やリリス達も頷くと、俺達はアーダン船長にルナサスに会いに行くと伝えると、馬鹿みたいにデカイハートが浮いている下にある城に向かう事にした。

 俺達は街中を歩いて城へと向かっているが、その道中もパンを咥えた女の娘が、角を曲がって来た男性とぶつかって頬を染めると言うベタ過ぎる光景を、俺達は何度も目撃した。


「ねぇ与一、あれって絶対ルナサスの指導が入ってるよね? あまりにもベタ過ぎて見せられてるこっちが恥ずかしくなると言うか……」

「うん。 ほら、あそこで壁ドンやってる男の人もいるよ……。 でもラノベや恋愛小説などを娯楽として読む事が少ない世界だと、新鮮に映って恋愛に発展しやすいのかな?」

「う~~ん……。 私はリアルでやられるとちょっと嫌かな……」

「まぁそこは私達には共也がいるから、そう感じているだけかもしれないしね?」

「それもそうか。 ね、共也?」

「あ~~、はいはい。 その話はまた後でな?」

「むう、すぐそうやってこの話題から逃げるんだから!」


 俺達が和気あいあいと城に向かっていると、マリを抱っこしながらタケに乗っている木茶華ちゃんがトゲのある言葉を放つ。


「マリちゃん、共也パパはとてもモテモテだね! 凄いよね!」

「うん、パパは優しいからきっとみんなと良い関係作れると思うの! 木茶華お姉ちゃんもその中に加わる予定なんでしょ?」

「もちろんだよ、マリちゃん仲良くしようね?」

「うん!」


 耳を塞ぎたくなる言葉によるプレッシャーが俺を襲うが、何とか我慢して歩き続けていると、何とかルナサスの城と思わしき場所に到着する事が出来た。

 大きな城の入り口には、肌の青い魔族の門番の人がここに来た要件を尋ねて来たので、ルナサスに会いに来たと伝えたが、予定が無い者との面会は今難しいと言われてしまった。


 俺達が城の前でどうしようかと相談ていると、奥から新たに現れた執事服を纏った人物が、ジェーンの顔を見付けると慌ててこちらに駆け寄って来た。


「もしやあなたはジェーン殿ではないですか!?」

「あ、タナトスさんじゃないですか。 お久しぶりです、元気にされてましたか?」

「ええ、それはもう。 それにしてもジェーン殿はお美しくなられましたね。 一瞬我が目を疑いましたよ」

「え、えへへ。 タナトスさんありがとうございます♪」

「それにしても沢山の方々といらっしゃってるみたいですが、ルナサス様に会いに来られたのですか?」

「そうなのですが、今は会える状態じゃないと門番さんに言われたので、諦めて一旦出直そうかと相談していた所でして」


「なるほど、確かに今ルナサス様は忙しい状態ですが、ジェーン殿になら快く会ってくれるはずですので案内しますよ」


 門番の人も、タナトスが許可するならと快く城の中へと通してくれたのでお辞儀すると、軽く手を上げて返事をしてくれた。

 そして、城の中をタナトスに案内して貰いながら軽く話しをしていると、1つの部屋の前で止まった。


⦅コンコンコン⦆

「ルナサス様、お客様がいらっしゃいましたから少し休憩なさりませんか?」

「お客~~~? 今忙しいんだけど、誰が来たのよ……」

「ジェーン殿とそのお仲間です、忙しいのならまた後日にされます?」

「ジェーンちゃんが会いに来てくれたの!? 会う会う!」

『ガサガサガサガサ』


 恐らくルナサスだとは思うんだが、大量の紙を掻き分ける音がここまで響いて来ている……。


⦅ガチャ⦆

「ジェーンちゃん! 良くここまで来てくれたわね、歓迎するわ! いらっしゃ~~~……い……?」

「やあ、ルナサス」


 俺は軽く手を上げて挨拶をしたのだが、部屋の前に居た人物がジェーンだけでなく、行方不明となっていた俺達を見て硬直するルナサスの恰好は酷かった。

 綺麗だった桃色の髪は艶を無くしてボサボサに。

 そして、目の下には大きな隈を作っている上に、ヨレヨレのセーターを着ているものだから肩まで見えている姿は、まさにザ・引き籠りだった。


「とととととと、共也!? それにエリアちゃん、菊流!? あんた達今まで何処に行ってたの!?」

「私達も居るよルナサス姉!」

「マリちゃん!? その横に居るのはまさか……リリス!?」

「うん、ルナサス久しぶり。 急に会いに来てごめんね、でさルナサスその恰好を共也に見せて大丈夫?」

「ん?」


 俺はすぐに視線を外していたが、女性陣の視線はルナサスの綺麗な胸の谷間と肩へと集中している事を察したルナサスは、顔を真っ赤にして勢いよく扉を閉めて部屋の中へと戻って行った。


『タナトス、あんたこうなる事が分かっててジェーンちゃん達を連れて来たわね!!』

「私は最初からジェーン殿とそのお仲間が、と言っていますよ? ルナサス様がその恰好をして恥をかいたのを、私のせいにされても困ります! プ!」

『…………タナトス、あんた絶対に後でボコるから覚えておきなさいよーー!!』


 しばらく部屋の中で物音が断続的に響いていたが、その音もすぐ終わり再び扉が開かれると、ルナサスがちゃんとした礼服を着て先程の事は無かったかの様に部屋から出て来た。

 髪は未だにボサボサだけど……。


「みんなお待たせ。 少し部屋の中が荒れてるけど中で話しましょうか」

「あぁ、お邪魔しま…………す……。 ルナサス……」

『しょうがないじゃない! 締め切り間近に来たあなた達が悪いんだからーーー!!』


 部屋の中に入った俺達は、足の踏み場が無いほど紙が散乱した部屋を見て絶句していた。


 それにしても、締め切りって何?


「ルナサス、締め切りが近いって何か創作物でも執筆してるのか?」

「う……。 そうよ……、クロノスで恋愛小説を広めようとして、自分で書いて出版してるのよ……。 それより共也、あなた達の事を聞きたいわ。

 今まで何をしていたのか、どうしてこのタイミングでこの国に現れたのか。 ちゃんと説明してくれるわよね?」


 先程までのルナサスと違い、真剣な顔で質問してくる彼女に10年前に起きた事から説明する事にするのだった。



ここまでお読み下さりありがとうございます。

斎藤とイリス、ノインは一時別行動を取る事となります。


次回は『ダグラスとメリムに再会』で書いて行こうと思っています。

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