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【共生魔法】の絆紡ぎ。  作者: 山本 ヤマドリ
1章・異世界に、そして出会い。
2/278

始まりの異変、そして決意。

「この制服を着るのも今日が最後だな……。 行って来ます」


 制服を着込んで玄関の扉を開けた俺は、高校の校舎に向かった。


 親護父さんと綾香母さんが事故で亡くなってから10年の歳月が経ち、今日、俺最上 共也(もがみ ともや)は人生の節目である高校の卒業式を迎えていた。


 だけど……。


「え~、君達は今日をもって大人の仲間入りを果たします。 それ故、各々が取った行動に責任が生じてしまい~、うんたらかんたら」


 高校最後の行事である卒業式。

 普通なら今までの出来事を振り返り感動して泣くところなのだろうが、壇上に立ち延々と祝辞を述べる校長先生の為に全部がぶち壊しだった……。


 勘弁してくれ、もう1時間喋り続けてるぞ……。


 流石に長すぎる校長先生の祝辞に、先生方も慌て始めていた。


「さて、ここまで長い祝辞を言いましたが、皆様の今後の活躍を~~」


 腕で✕印や腕を指差す先生達の姿を見た校長は、仕方なしに祝辞と言う名の拷問を切り上げる事にしたようだ。


 そして、先生方が次のプログラムで必要な卒業証書を用意している時に、それは起きた。


『きゃーーーーーー!!!』『うわぁあああああ!!』


 後方に設置されていた保護者席から悲鳴が上がった事で、そんな緩やかな空気も一気に吹き飛んでしまった。


『ゲギャギャギャギャア!!』


「「「は?」」」


 聞いた事も無い雄叫びを聞いた俺達は後ろを向いた瞬間、自分の目を疑った。


 え? は? あの姿は……、ゴブリン!?


 そこには緑色の肌を持つ小鬼、ゴブリンが大量に体育館の中に現れて、その場に居る人達を襲い始めたからだ。


「痛い痛い痛い痛い、止めて、私の腕を嚙まないで!!」

「貴様等は何者だ!? この体育教師の俺がいるからには好きにはさせんぞ! ぐはぁ!」


 自信満々でゴブリンの前に立ちはだかった体育教師だったが、そのゴブリンの1撃で簡単に伸されてしまった。 だが俺達はゴブリンと言う存在をラノベで慣れ親しんでいた為、真っ先に動き出した。


『おらあああああ!!』『やあああああ!!』『はあああああ!!』

『あなたは戦う術を持たない人を守って上げて!』『了解だ! チェスト!』

『魅影、あなたは周りの娘達を守って上げなさい!』『はい、お母様!』


 幼馴染や、その保護者達の何人かが手に武器を持ちゴブリンに反撃をし始めていた。


『おらぁ! かかって来いやゴブリン共!』


 座っていた椅子を手に取り殴り付けたり。


「やあああぁぁぁ!!」


 モップを圧し折り槍にする者。


『はあああああ!!』


 空手を習っていた女性は、正拳をゴブリンの顔面に叩き込んで吹き飛ばしたりしていた。


 俺もパイプ椅子で応戦している中、幼馴染の女性が襲われている場面を目撃してしまった為、その間に割って入った。


「いやあああああ!!」

「鈴! この、どっか行けゴブリン!」


―――バキィ!


『げぎゃあ!』


 何とか吹き飛ばして距離を取ったが、未だにゴブリンの数が増えて行っていた。


 どうして幻想の生物だと思われていたゴブリンが、今こんなに沢山いるんだ……。


 今も増え続けるゴブリンを見ていたが、今は助け出した鈴を守る方が先だと思い至り鈴と言う女性の腕を引いて立たせるのだった。


「と、共也、ありがとう!」

「鈴、今は俺の後ろに隠れてろ」

「う、うん」


 パイプ椅子を握り締め迎撃態勢を取った俺は、ゴブリンが何時襲って来ても良いように構えを取った所で、奴らは何を思ったのかいきなり動きを止めた。


 何だ?


「共也、私の気のせいじゃ無ければ、奴等の体が徐々に透けて行って無い?」

「本当だ……。 しかも奴等、次々と消えて行ってる」


 次々に消えて行くゴブリン達に俺達が安堵していると、俺の耳には金属を擦りつけるような音が徐々に聞こえ始めた。


―――キィィィィ~ン、キィィィィ~ン


(何だ? こんな時に耳鳴り?)


―――キィィィィ~ン、キィィィィ~ン!!


 徐々に大きくなって行くその音は最終的に最大音量で流すハウリングの様な状態となり、俺の頭を襲って来た。


『キィィィィ~ン・・ キュイイイイイイイイイイイイイイイン!!!』


 この音は俺だけが聞こえている訳では無いらしく、何人もの卒業生も頭を押さえて苦しんでいた。


『うわあああああああ~!! い、痛いぃぃ!! 何なんだよこの音は!』

『いや~~~!!』『きゃ~~~!!!』

「ど、どうしたんだ、お前等!?」


 先生達にはこの音が聞こえていないらしく、不思議そうな顔でゴブリンによって負傷させられた保護者達の看病を行っていた。


 何故苦しんでいるのか分からない先生達は、あたふたとするばかりで動けないでいる様だった。


 この音は耳を塞いでも全く意味が無いらしく、最早音波攻撃と言っても差し支えない音に意識が持って行かれそうになりながらも何とか立って意識を保っていると、急に変化が訪れた。


〖ザッ、ザザザ……ザ~~~~〗


 今度はノイズ!? ハウリングの次はノイズって、何なんだこの状況は!!


『み……けた…』


(何だ? ノイズが激しくて上手く聞き取れないが、これは女の人の声か?)


『……けて……人達を………おね……がい……、後日………かん……ます…こんな事をする私を許して……ごめんな…さい……』


―――プツン。


 途切れ途切れに聞こえて来る女性の声が止んだと同時に、女性の声が聞こえていたであろう生徒がその場に倒れ込んだ。


 勿論俺の後ろに居た鈴も例外では無かった。


―――ガシャガシャ~ン! ドサ!


『きゃーーー!!』

『うぅ、鈴しっかりして!!』

『担架だ! 無事な先生方は保険医や消防に連絡をして、早急に救急車を回してもらいなさい!!』


 校長先生の指示の元、次々に怪我を負った人達が担架で運ばれて行くのだった。


「中止! 卒業式は中止だ!!」


 そして、1人の先生が卒業式の中止を宣言した所で、何とか意識を繋ぎとめていた俺も限界が来たらしく徐々に目の前が暗くなって行った。

 意識を失う寸前、白髪を腰まで伸ばして綺麗な緑眼でこちらを心配そうに見下ろしている15歳位の美少女の姿が見た様な気がした。


(君は一体誰だ……)


 その光景を見たのを最後に、俺は意識を失った。


 =◇===


 再び意識を取り戻した俺が最初に目にしたのは、ベッドを区切る為のカーテンと天井だった。


「ここは……」

「あら共也君、目が覚めたのね」

「あなたは保健の……。 と言う事はここは保健室ですか?」

「そうよ。 沢山の人が運び込まれたけど、あなたが最後の1人よ。 待ってね、一応検査するから痛い所が有るなら教えて頂戴」

「はい。 あの先生、あの後どうなったんですか?」

「大変だったのよ?」


 保険の先生が俺を触診している間に教えてくれたが、緑色の肌を持つ者に襲われる上に何人もの卒業生が倒れるしで、学校としてもそのまま卒業式を続けられる訳もなく、卒業式は中止。


 そして、あの後警察の事情聴取や、怪我を負った人を治療する為に救急車が校庭に陣取っている為、式を再開出来るはずもなく、無事だった卒業生は教室で担任の先生から卒業証書を貰って帰宅すると言う何とも味気ない卒業式になってしまったと、苦笑いする保険医の先生だった。


「最上君、あなた以外の子はもう目を覚まして卒業証書を受け取ったはずだから、あなたも担任の先生から忘れずに卒業証書を受け取るのよ?」

「分かりました。 先生、3年間お世話になりました」

「ふふ、最後まで礼儀正しいのは最上君らしいわね。 これからの人生、楽しい事ばかりじゃ無いだろうけど頑張るのよ?」


 最後に保健の先生に頭を撫でられた俺はその足で自分の教室へと戻るのだった。


 教室の扉を開けると、そこには3年間お世話になった担任の先生が、俺の卒業証書を持って待っていた。


「おう、最上来たか。 まさか卒業式でこんな事になるとは、お前も運の無い奴だなぁ……」

「そう言う先生も腕に包帯を巻いてるじゃないですか」

「これは良いんだよ。 可愛い生徒を守った勲章なんだからな!」

「それって女生徒だったりします?」

「そうそう、良く分かったな!って何を言わせるんだ!」

「あはは、先生らしいですね」

「ったく……。 ほら、これがお前の卒業証書だ。 卒業おめでとう、元気でな最上」


 先生から卒業証書を受け取ると、別れを惜しみながらも最後に礼儀として頭を大きく下げた。


「先生、お元気で」


 =


 校門を出た所で振り校舎を眺めて感傷に浸っていると、知り合いから声を掛けられた。


「あれ? 共也兄様じゃないですか。 卒業式はかなり前に終わったはずなのに、今から帰るのですか?」

「木茶華ちゃんじゃないか、どうして高校に?」


 後ろを振り向くと、そこには金髪を後ろで緩く三つ編みで纏めている女の娘が、鳶色の目でこちらをジッと見つめていた。 彼女の名は黄昏 木茶華(たそがれ きさら)7歳。


 その木茶華ちゃんが、俺に会えた事がとても嬉しかったのか微笑みながら近づいて来た。


 そして、彼女は昔から因縁深い幼馴染の妹だ。


「小学生の君が高校の卒業式に来るなんて聞いた事が無いけど、何かあったのかい?」

「ゴミ……じゃない。 血の繋がっただけの兄が倒れたと聞いたので、チャンスとおも……。 心配だったのでわざわざ回収しに来たのですが、すでに自力で帰った後だったみたいなので、私も今から帰宅する所だったのですよ。 共也お兄様♪」


 この娘って話す相手が俺だと、所々本性を隠そうとしないのが怖いな……。


「相変わらずの腹黒っぷり……」

「ん? 共兄様、今なんと?」

「な、何でも無い! でも木茶華ちゃん、あいつを虐めるのもほどほどにしておきなよ?」

「気が向いたらそう致しますわ」


 気が向いたら、ねぇ……。


「まぁ良いや。 また会える時があったなら、今度はユックリと話そう」

「あら、共也兄様、もう行ってしまいますの?」

「ごめんね。 今日はちょっと予定が立て込んでるんだ。 また会おう、木茶華ちゃん」

「はい! きっとですよ!!」

 

 ずっと手を振ってくれる木茶華ちゃんの姿に、ちょっとホッコリする俺だった。


 木茶華ちゃんと別れたその足で、卒業式を終えたら来る予定だった【神白神社】に俺は向かっていた。


「相変わらず殺人的な段数の階段だな……。 絶対参拝者を拒んでるだろ、この神社……」


 眼前に続く長い長い登り階段を見て、俺は盛大に溜息を吐いた……。


「良し、上るか!」


 ===


「ぜぇ、ぜぇ、はぁ、はぁ! ラスット、登り切ったぞ!!」


 上り終えた俺だったが運動不足の影響か足が生まれたての小鹿の様になっていて、情けない事にまともに動くすら出来ない状態だった。


「はぁ、はぁ、はぁ~…。 この神社に来る度に、何時もこの殺人階段に苦労させられるな……。 す、少し休憩するか……」


 階段を上り切る事にすっかり体力を使い果たした俺は、神社の境内に設置してあるベンチに座り休憩する事にしたのだった。


「はぁ~~。 いつもこのベンチには助けられるな。 あ、いつもと言う事は……来たーー!! や、止めろ! 飛び掛かって来るなぁ!!」

「わぉ~~~~ん!」


 ベンチの横に聳え立つ鳥居の柱の陰から現れた大きな影が、俺に覆いかぶさって来た。


「ぶ! 退いてくれ【タケ】重い!!」

「ウワン!!」


 そう、覆いかぶさって来た大きな影はタケと言い、この神社で飼われている巨大な体格を持つ狼犬だった。

 何故ここに狼犬がいるのか。 それは俺が会いに来た人物が子供の頃に拾った犬だからだ。


 拾った当初は小さな子犬だったので狼犬だと気付けなかったが、日々体が大きく成長して行くタケに流石に普通の犬じゃ無いと気付いた人達によって、正体が判明するのだった。


 タケ、御年15歳♂だがまだまだ元気な狼犬だった。


「ハッハッハ、タケも久しぶりに共也君に会えて喜んでいるんだよ」

「タケちょっとストップ!! 京谷(きょうや)さん、お久しぶりです。 今日も彼女に会いに来たのですが良いですか?」

「あぁ、千世(ちよ)も喜ぶだろう是非会って行ってくれ」


 そう、俺は卒業式を終えたこのタイミングで、この神社の娘である千世ちゃんに会いにここまで来る事を決めていた。


 その後、俺達は神社の裏手に回り京谷さん達が普段住まいしている母屋の前に来ていた。


「千世、共也君が来てくれたよ。 しかし君も律儀だねぇ、時々とは言えこんな寂れた神社に足繫く通うなんて。 なぁ、タケ」

「クゥ~ン……」

「千世ちゃんは俺にとって一生忘れる事の出来ない人物ですから……」


 神社の裏庭にある()()()()()の前に来た俺は跪くと、持って来ていた白い花を静かに添えた。


「千世ちゃん、少しトラブルが合ったけど、今日無事に高校を卒業する事が出来たよ。

 君に助けてもらったこの命で何が出来るのかまだ分からないけど、君に恥じない生き方をするつもりだ。 だから……。 俺の生き方を空から見続けて欲しい……」


 小さな墓の前で手を合わせた俺は、今後の目標を千世ちゃんに報告するのだった。


「決意表明をすると言う事は共也君、やはり君はこの街を出て行くつもりなんだね?」

「はい……。 京谷さんや沢山の人達に今まで支えられたお陰で今日と言う日を迎えられたのも事実ですが、それ以上にこの街で俺は大切な人を失い過ぎました……」

「そうか……。 確か今日は親護達の……」

「はい、命日です。 今日はこのまま帰って、仏間で眠る両親に俺が考えている事を報告するつもりです」


 そう、今日は俺の両親の命日だ。


「しかし、親護達が事故で死んでからもう10年以上か、私も白髪が増える訳だ」

「ええ、当時の事は気絶していた為覚えていませんが京谷さん、本当に父さん達は事故で亡くなったんですよね?」

「私は何度もそう言ってるだろう?」


 当時は両親が事故に巻き込まれて亡くなったと京谷さんやメディアの両方から発表があった為信じていたが、最近ふと気になって遺品を眺めて気付いた事がある。


 父さんの衣服が修繕された跡がある事に……。


 京谷さん達が何故俺に事実を隠しているのかは分からないが、1つ確信した事がある。 親護父さん達は事故に巻き込まれた訳じゃ無く殺されたのだと。


 だが、俺はその事を京谷さん達から強引に聞き出す気は無かった。 何故なら、当時2人を亡くして泣き続けていた俺を優しく慰めてくれたのが、この京谷さん達だったからだ。


 そんな京谷さんは急に両親を亡くした俺を、彼はこの歳になるまで優しく見守ってくれた上に鍛えてくれた。


「君に神白流刀剣術を教えたが、免許皆伝とまで行くにはまだまだ時間が必要だろう。 だからサボらずに振り続けなさい。

 そして、この街に戻って来た時はまた千世に顔を見せに来て上げてくれ。 それまで元気でな、共也君」

「はい、京谷さん。 砂沙美(ささみ)さんにもよろしくお伝えください。 感謝していると」

「あぁ、必ず伝えよう」


 こうして階段の上で見送ってくれる京谷さんとタケに別れを告げて家に帰って来ると、タイミング良くスマホに着信を知らせるアラームが鳴り響いた。


「誰だ?」


 スマホの画面を見ると、そこに表示された名前は今日同じく高校を卒業した同級生だった。


「もしもし?」

「お! 共也か、体の方はもう良いのか?」

「あぁ、丁度家の前に帰って来た所だよ」

「そうか、無事帰宅出来たなら安心したぜ。 それにしてもお互い大変だったよな……。 まさかゴブリンが卒業式を襲撃してくるなんて夢にも思わなかったよ……」

「そりゃ世界中あれだけ探していなかった奴らが卒業式を襲撃しに来るなんて思わんだろ……」

「あはは、そりゃそうだよな!? それで本題なんだが。 もし体調に異常が無いなら、高校の最後くらいどこかに遊びに行かないか?」

「悪い、本当なら一緒に遊びに行きたかったんだけど、今日は無理だ……」

「あ、そう言えば今日はお前の両親の……」

「そう、命日だ……。 すまん」

「謝るなって共也。 また時間が取れそうなら連絡するから、その時に予定が空いてたら一緒に食事とかに行こうぜ!」

「ああ、俺の分も楽しんで来てくれ。 またいつか必ず会おうな、元気でな」

「共也もな! じゃあな」


―――ブツ……


 通話を切った俺は卒業証書を持って家の中に入る事にした。


―――カチャ。 キーーー……


 鍵穴に鍵を差し込み回すと解除された音が鳴り、俺は扉を開けた。


 家の中に入るといつも通り真っ暗で誰の気配もしない。 手でまさぐり玄関の壁に付いているスイッチを押して電気を付けると「ただいま」と呟いた独り言が玄関に虚しく響く。


 誰かが返事を返してくれる訳でも無いのに、俺は子供の頃からのクセでいつも言ってしまう。


 靴を脱ぎ玄関を上がると、リビングのドアを開けた。

 すると、そこには父さんと母さんが居て。


「お! 共也帰って来たか、今日は卒業式だったんだよな? 今日で大人の仲間になったんだから、1杯くらい酒を飲むのを付き合え!」

「あなたったら……。 共也、嫌なら嫌と言うんですよ? 大人になったのですから、曖昧な返事をする事が相手に失礼になる可能性があるのですからね?」

「酷いな母さん! 今日くらい良いじゃないか!」

「ふふふ、あなたったら……、しょうがないですね」

「良し来た! さあ、共也、椅子に……………」


 ()()()()()真っ暗なリビングを眺めながら、俺は両親が生きていたらそう言ってくれたのだろうか?

 と思うと、無性に悲しくなり一筋の涙が頬を流れるのだった。


 仏壇の有る部屋に向かい扉を開くと、俺は両親の位牌に手を合わせて祈った。


 今日無事に卒業した事。

 そして、前々から考えていた事を両親に報告し終えると、どことなく両親が許してくれた様な気がした。


 その後、激動の卒業式の疲れが出たのか自室でウトウトしていると、家の呼び鈴が何度か鳴った事に気付かずに、俺はそのまま寝続けてしまった。

 少しして目が覚めた俺は慌てて玄関まで降りて扉を開けると、そこにはすでに誰も居なかった。


「気のせいだったのか?」


―――ガサ。


「何だ? ビニール袋?」


 音のした方を見て見ると、そこにはビニール袋がドアノブに掛けられていた。 中を覗いて見ると、温かい料理が沢山のタッパーと小さな手紙が1枚が袋の中に入れられていた。


「これは……。 菊流(くくる)か?」


 そのビニール袋の中に入っていた1枚のメモにはこう書かれていた。


【呼び鈴を鳴らしたけど反応が無いから料理をドアノブに掛けておくわ。 もし共也が見つけた時に冷めているようなら、温め直して食べてね。 菊流より】


 寝ていた謝罪文と、ありがたく料理を頂くと言う文章を菊流に送ると、すぐに『気にしないで、また明日行くわ』と言う文章が綴られていた。


―――チーーーン。


 その食事をありがたく頂いた後は、今日あった不思議な出来事を思い出しながらのんびり過ごしていると、いつの間にか自分のベッドで眠りに落ちしていた。

 

 寝る直前に見た光景はかなり特徴的だった。

 1人の美少女がステンドグラスを背にして立ち、その少女から差し出された手を俺が握ると花が咲くような笑顔を俺に向けている光景がハッキリと映し出されていた。


 初投稿になります、なるべく完結まで書き切りたいと思うので少しでも気に入ったと思って下さる方がいたなら、モチベーション維持の為にブックマークなどしてくれると幸いです。


 文章がおかしい所は所々修正していきますが、ストーリーには影響が出ないようにしています。


 次回から2話ほど過去編を書いて行こうと思っているのでお付き合いをお願いします。

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