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【共生魔法】の絆紡ぎ。  作者: 山本 ヤマドリ
10章・今の魔国オートリス。
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魔王オートリス城で。

「ひっく……、ひっく……ううぅぅぅ……」


 今、アーヤに羽交い絞めされて動きを封じられているミーリスは、泣き喚いた事によって、顔が涙と鼻水でグシュグシュとなって酷い状況になっていた。


「はぁ、ミーリスはそんなに男の人にモテたかったのか?」


 俺はハンカチを取り出して、ミーリスの顔を綺麗に吹いてやると、彼女は小さく呟いた。


「モテたかった、と言うより……」

「違うのか?」


 ミーリスは、アーヤとテトラの2人をチラリと見ると、観念して語り出した。


「アーヤとテトラを見たら分かるように、今の2人は立派な大人の女性に成長しておるじゃろ? それに比べて儂は全く成長出来ずに、こんなチンチクリンの体型のままじゃ……。

 こんな儂が2人と一緒に街に出ると、アーヤとテトラにばかりに男が言い寄って行くが、儂は見向きもされんのじゃ……。 歳はほとんど変わらないのにな……。 それが何日も続いたら、儂だって女なのだから悔しいと思うのは当然じゃろ……」


 確かにミーリスは美少女だけど、美しく成長したアーヤとテトラの2人と一緒に歩いていると、どうしても男はそちらに行ってしまうのか……。


「ミーリス、本当に1人も誘われた事は無かったのか?」

「あるにはあったが……」

「なら良いんじゃ」


 俺のその言葉にミーリスは目を鋭くして、口を開いた。


「赤ちゃん服を着ておしゃぶりを咥えてくれだの、赤ちゃん言葉で喋ってくれだのと言う奴が、私を1人の女性として誘っているとでも言うのか!!」

「あー……それは、何と言うか……」

「良いんじゃよ……儂はずっと1人身で過ごす事になるんじゃ……。 儂を女として見てくれる者など、何処にも居らんのじゃよ……。 ぐす……」


 ミーリスの耳と尻尾が垂れ下がってしまっているのを見て、何か言葉を掛けるべきだと思い、ミーリスの頭に手を置いた俺は思っている事を口に出した。


「ミーリスは俺から見ても十分魅力的な女性だと思うぞ?」

「慰める為の嘘じゃ無くてか?」

「あ、あぁ。 きっとミーリスを1人の女性として見てくれる男が絶対に現れるさ、保証するよ」


 また涙と鼻水でグシュグシュになっているミーリスは、ジッと俺を見た後に唐突に爆弾を投下した。


「なら共也が儂を貰ってくれ。 お前から見て儂は1人の魅力的な女性なのじゃろ!?」

「あ、それはお断りします。 神聖国ヴォーパリアの野望を阻止出来たら、俺はエリアと結婚する予定なので!」


 即断れるとは思っていなかったミーリスは、先程とは比べ物にならない位の大声で泣き喚いた。


「何なのじゃそれはーー!! 嫌じゃ、嫌じゃ! もうこの国に()儂を1人の女性として見てくれる男はおらんのじゃ! 共也が儂を貰ってくれると言ってくれるまで、共也の悪口を言い続けてやるんだから!! わぁ~~~ん」

「ちょ、ミーリス!」


 俺がミーリスの口を塞ごうとすると、与一が俺の肩に手を置いて来た。


 こんな時に一体何だよ!?


「師匠の気分を上げて落とす、共也の手段は見事!!」


 俺は与一の額にデコピンを食らわせると、意外と良い音が辺りに響いたので、取り合えず放置してミーリスをどうするか考えていた。


「与一、後で覚えておけよ!!」

「デコピンしたのに!?」


 与一が俺に文句を言って来るし、ミーリスは泣き続けるしでどう収集付ければ良いのか分からないでいると、エリアがミーリスの前に歩み出て来た。


「ミーリス大隊長、お久しぶりです」

「グス、エリア王女久しぶりなのじゃ……。 お主が無事な事は菊流達から聞いていたから知っていたよ。 無事に再会出来て嬉しく思っておるのじゃ……」

「ありがとうございます。 それで、ミーリス様は思い付きではなくて、本気で共也さんの嫁の1人になりたいとおっしゃっているのですか?」 


「嫁の……1人とな?? 何だかその言い方だと何人もいるかのような……」

「えぇ、私が本妻で、菊流ちゃんの他に候補が何人か居ますよ?」

「な、なんと……」


「はい、はい、エリア、私も共也の嫁に立候補する!!」

「分かったから、お前は少し黙ってようか?」

「恥ずかしがって共也、可愛い……。 あ、またデコピンしようとするの止めて!」


 与一は額に手を置いて、デコピンされない様にガルボの後ろに隠れた。


「コホン! 話を戻しますが、共也ちゃんを慕う人は意外と多いのですが、ミーリス様はそれでも構わないですか?」

「うん……。 共也の事は、昔から憎からず思っておったし、儂を女性として扱ってくれる者も共也以外おらんかった……。 だから、他の嫁達と同等に扱ってくれるなら、儂は共也の元に嫁ぎたい!」

「と言う事らしいですが、共也ちゃんはミーリス様を嫌いですか?」

「嫌いな訳無いだろ……。 ただ最初に婚約したエリアとの条件が、『世界を平和にしたら』だっただろ? だから、ミーリスにそう言われるのは嬉しいけど、俺がそんな気軽に決めれる話じゃない……」


 ミーリスを嫌ってはいないが、エリアとの婚約を大切にする事が俺の誠意だと思っていた、のだがその彼女がいきなり俺を抱きしめて来た。


「共也ちゃん、私を立ててくれるのは嬉しいけど、こんな公衆の面前であなたに嫁ぎたいと勇気を出して言ってくれたこの人を無下に断るのは駄目。

 ミーリス様なら昔から知ってるし、皆とも良い関係を築く事が出来ると思うの。 だから、ね?」


 エリアの後ろで期待を込めた目で、ジッと俺を眺め続けているミーリスに、俺は観念して溜息を吐いた。


「ミーリス、本当に俺で良いのか?」

「共也が良いんじゃ!!」


「…………分かった、でもさっきも言った通り、神聖国ヴォーパリアの野望を砕いた後でって言う事を忘れないでくれ。 要するに婚約って事だな」

「本当か!? 嘘だったら、お前を道連れにして自爆するぞ!?」

「ストーカーより危ない存在じゃねぇか!!」

「ニヒ! そうなりたく無ければ儂を大切にしろって事じゃ!!」


 はぁ……。 与一に続いて、ミーリスまで嫁候補に……。

 そう言えばスキルカードにも「これからも続々と増える」とか書いてあったな……。


「ミーリス様、共也さんといきなり婚約しちゃうとは凄いです! おめでとうございます!」

「アーヤ、テトラ、ありがと!」


 さっきまで顔をグシュグシュにして泣いていたミーリスだったが、俺との婚約が決まった事で、自分は誰にも女として必要されていない、と言う思いが解消された事で、彼女は両手を広げて回ると今まで見た事が無い位、良い笑顔で笑っていた。


「共也、いや、旦那様。 これから末永くよろしくなのじゃ♪」



 =◇===


 “ドン! ドドン!!”


 上機嫌のミーリス達の案内で、俺達は魔王城オートリスの前まで来たのだが、城の方から轟音が響いて来る事を不思議に思いながら近づいて行くと、轟音を立ててリリスが壁を突き破って出て来た。


 “バガン!!”


「リ、リリス!?」

「い、痛たたたた……。 あ、共也、用事が済んだんだね、ちょっと今立て込んでるから待ってて……。 って与一!? あんた何でそこにいるの!?」

「え!? リリス、今与一って……。 与一!!」

「与一姉!!」

「よ、与一姉様!!」


「皆、ただいま」


 リリスの言葉を聞きつけた菊流、ジェーン、木茶華ちゃんが、与一を見つけると涙を流して抱き着いた。


「与一の馬鹿! あんた今まで何処に行ってたのよ! 本当に心配してたのよ!!」

「菊流、心配かけさせてごめんね……。 時間は掛かったけどこうして会えて嬉しい……」

「謝るくらいなら、謝るくらいなら!! でも、与一が生きててくれて良かったよ~~」 

「ジェーンちゃんも立派に成長して、美人さんになったね。 顔に面影があるからすぐに分かったよ」

「与一姉……うぅぅぅ」


「そして…………。 あなたは誰?」

「あら」


 ずっこけそうになった木茶華ちゃんだったが、思い出せずにいる与一の為に改めて自己紹介をする事にするのだった。


「もう! 分からないのは当然ですが、少しは悩んで下さいよ! 地球に居た頃にたまに遊んで貰っていた黄昏木茶華です。 与一お姉様」

「あ~~。 もしかして、共也が地球に帰った時に付いて来たって言うのは」

「はい、私です」

「木茶華、向こうに居る両親の事は良かったの?」

「…………はい、その事については、後で説明しますので、今は……」

「ん。 じゃあ、この場ではもう聞かない。 ところであなた達は何をしていたの?」


 与一が、菊流達にそう尋ねると、広場の方から声が響いて来た。


「おいリリス、大して効いてやしないだろ、さっさと戻って来て俺に1撃入れてみろ! それすらも出来ないなら、例の約束は無しにするぞ!?」

「シュドルム……。 今行くわ……」


 袖で汗を拭ったリリスはすぐに立ち上がり、大きな剣を肩に担いでいるシュドルムの元に走って行った。


「はあぁぁぁぁ!! は! てい!」

「どうした、どうした! 立派なのは掛け声だけか!?」


 リリスが魔力を纏った拳で何度も攻撃するが、シュドルムは涼しい顔で回避し続けている。


「五月蠅いな! すぐに1撃入れて上げるから少し黙っててよ!!」

「そんな事言っても、足元がお留守だぞ! ホラ!」

「キャ! 痛たいじゃないこの鬼!!」

「そうだぞ? 俺は鬼神のシュドルムだ! ハハハハハ!!」

「そんな事を言ってるんじゃないわよ!! こんのぉ!!」


 リリスは意地になってシュドルムと言う人物を攻撃し続けているが、何故あそこまで鬼気迫る組み手をしているのか理由が分からないので、隣に居る菊流達に理由を尋ねる事にした。


「菊流、リリスとシュドルムと言う人物は組み手をしていると思うんだが、何であんなに鬼気迫る感じで訓練をしてるんだ?」

「最初は私達も参加型の訓練だったんだけどね。 途中シュドルムさんが、リリスの耳元で何かを呟いたと思ったらあんな事になったのよ……」


 今もリリスの攻撃を余裕を持って受け流しているシュドルムは、俺達の中にガルボが居るのを見つけると、リリスを強めに弾き飛ばすと休憩の合図を出した。


「リリス、一旦休憩だ。 ガルボ達も帰って来たみたいだから、今度の事を話し合うぞ」

「嫌! まだシュドルムに1撃入れてない!」

「また後で相手してやるから休め。 指示に従えないなら、このまま終わりにするぞ?」

「…………絶対に後で組み手に付き合ってよ?」


 渋々構えを解いて休憩に入ったリリスは、俺達の元に来ると水を頭から被るのだった。


「絶対にシュドルムに1撃入れて、皆と一緒に旅に出る事を認めさせてやるんだから……」


 リリスの小さな呟きは俺達に聞こえる事は無かったが、その必死な目に何も言う事が出来なかった。



ここまでお読み下さりありがとうございます。

ミーリスとの婚約まで急遽決まりましたが、あくまで神聖国ヴォーパリアの野望を砕いた後になるのでどうなるのでしょうね?


次回は『認められる想い』で書いて行こうかと思っています。

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