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【共生魔法】の絆紡ぎ。  作者: 山本 ヤマドリ
9章・神聖国ヴォーパリア。
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神白刀剣術奥義の伝授。

 デリックさんとパペックが赤い転移魔法陣を使って消え去った事で、神聖国ヴォーパリアとの初戦闘が終わったのだが……氷漬けにされている、骨だけとなったドラゴンゾンビの扱いに困っていた。


「このドラゴンゾンビって、どう扱えば良いと思う?」

「どうしましょう……」

「一応まだこいつに意思は残ってるみたいだから、氷の中から開放するのも……ねぇ」

「う~ん……」


 俺達がどうしようか悩んでいると、何処からともなく声が聞こえて来る。


(……て……くれ……)

「エリア、何か言ったか?」

「い、いいえ?」


(浄化魔法を使って眠らせてくれ……)

「浄化魔法でって、もしかして、この声の主はまさか氷に封じ込めたドラゴンゾンビ、お前なのか?」

(そうだ、召喚主との繋がりが切れた事で、意識がハッキリと戻り念話が使えるようになっのだが、私はもう死んだ身だ、お前達には手間を掛けさせる事になるが、安らかに眠らせてくれないか?)


「浄化魔法を使うのは構わないのですが、私の力であなたを眠らせて上げる事が出来るのでしょうか?」

(それは大丈夫だ、極力私が力を落とすから1度の浄化魔法で浄化されるはずだ、頼めるかい?)


 エリアは決意を持った目でドラゴンゾンビを見つめると、嬉しそうな声が聞こえて来た。


(ありがとう。 そうだ。 君達にお願いを聞いてもらうばかりでは申し訳ないから、私の力を託した卵を君達に預ける事にしよう。 そこの白髪の女性が、私を浄化してくれるんだよね?)

「え、ええ、あと私の名はエリアです」

(そうか、エリア、君に託すよ、受け取って)


 氷漬けにされたドラゴンゾンビが光り輝き、そして収束すると、エリアの前で浮かんでいるので手を添えると、手の平に収まるくらいの大きさの純白の卵が現れた。


(近日中に生まれるはずだから、名前は自由に付けて上げてくれ。 これで私の力はほぼ無くなったから、浄化魔法も効きやすくなってるはずだ)

「ドラゴンゾンビさん、最後にあなたのお名前も教え頂いても構いませんか?」


(そう言えば名乗って無かったね。 私の名は『ニーズヘッグ』古代龍の1匹さ。 もし、龍達が集まる場所を見つけたなら、その子を連れて行けば歓迎してくれるはずだ、機会があるなら行ってみると良い)


 純白の卵を優しく胸の前に抱くと、エリアは浄化魔法を発動させるための魔力を溜め始めた。


「ではニーズヘッグさん、あなたが預けてくれた卵は必ず守ってみせます。 おやすみなさい⦅浄化魔法⦆」


 エリアから放たれた浄化魔法の光りは、ニーズヘッグを優しく包み込んだ。


(ああ、良い気持ちだ。 そうだ、私が浄化されても骨は残るはずだから、それを使って武器でも何でも自由に活用すると良い。 それじゃおやすみ、エリア)


 浄化魔法の光が消えると、ニーズヘッグからの念話も消えてしまい、そこには物言わぬ氷漬けの竜の骨だけが残っていた。


「共也、これで今回の戦いは完全に終わったみたいだね」

「ああ菊流、街がどうなったのかも気になるから、骨を収納したら戻る事にしよう」


 龍の骨を収納した俺達は帰る途中で皆と合流して一緒に凱旋すると、城門を守ってくれていたアストラ達に出迎えられる事になったのだった。


「共也! お帰り! やったな!」

「アストラ! ただいま!」


 未だに街の至る所で煙が上がっているが、火災自体は鎮火されたらしくすでに落ち着きを取り戻している、との事だった。


「アンデット達も、召喚主が居なくなったからか消滅したみたいだからな。 共也達はもう今日は宿屋で休んで、後日また今回の事を話し合いたいが、構わないか?」

「ああ、俺達もクタクタだから後日にしてくれるのは助かるよ。 じゃあ今日はこのまま解散で良いか?」

「良いぞ、しっかりと休んでくれ」


 こうして俺達は一旦別れて宿屋ダランに帰って来ると、いきなり木茶華ちゃんに抱き付かれたり、それを見たエリアが怒ったりと、いつもの日常と化した光景を堪能した俺達は、その日は早めに就寝する事となった。



 =◇===


「ぐごーーー!!」


 夜になり、冬矢さんと京谷父さんの3人の相部屋で寝ていた俺だったが、冬矢さんのイビキの影響で途中から目が覚めてしまい、あまりの轟音に掛け布団を被っても再び寝る事が出来ないでいた。


「ぐぎぎぎぎぎ、寝れねぇ!!」


 目が完全に覚めてしい布団から飛び起きた俺だったが、何故か寝ていたはずの京谷父さんが起きていて、自身の刀を腰に差している所だった。


「起きていたかのか共也」

「このイビキの中じゃさすがにね……」

「確かにな。 起きたついでだ、ちょっと付き合え」

「父さん?」


 雷切とカリバーンを投げて寄こした父さんは、部屋の出口に向かって歩いていた。


「ま、待ってくれ父さん、今準備するから!」

「宿屋の入り口で待ってるから、ゆっくり準備して来ると良いさ」


 京谷父さんはそう言い残すと、扉を開けて部屋を出て行った。

 慌てて着替えた俺は剣2本を腰に差して、父さんの後を追って宿屋の外に出ると、そこには壁に寄りかかって俺を待っている父さんが居た。


「共也来たか。 ここではなんだ、海が見える海岸に行こうか」

「あ、ああ、分かった」


 京谷父さんの後を付いて海岸まで来ると、小波の音が聞こえて来る海をしばらく2人で眺めていた。


「地球とは違う世界に来ても、海は相変わらず美しいな……」

「父さん、惑星アルトリアに来た事、もしかして後悔してる?」

「ん? いや、それは無いな。 私だけじゃなく、砂沙美やお前にまで手を掛けようとする奴らがいる、あの街に愛想が尽きていたし、タイミング的には丁度良かったんじゃないか?」

「それなら良いけど、後悔してたらと思って」

「ふふ、共也、心配してくれてありがとな。 千世を亡くして、親友の親護も亡くし、ただ何となく生きて来た俺達だったが、親護の息子であるお前を紆余曲折を経て養子として迎えた事で、私と砂沙美は生きる気力を取り戻す事が出来たよ。 感謝してる」

「父さん、どうして今そんな事を!?」


 まるでもう二度と会えなくなる。

 そんな雰囲気を出して話し掛けて来る父さんに対して、俺は焦りを覚えてしまう。


「ん? ああ、違う違う何処かに消えるとか、そんな話しじゃないから安心しろ」


 違うらしい……。 じゃあ何でそんな話を今ここで!?


「紛らわしい事言わないでよ、父さん! まるでもう会えなくなるような話の流れだったじゃないか!!」

「あはは、会えなくなると言う訳じゃ無いが、私と砂沙美、冬矢と冷華の4人は話し合ってこの街に残る事に決めたんだ。 それを共也には先に伝えておこうと思ってな」


 いきなりこの街に残る事にしたと言われても、はい、そうですかと納得する事は出来ない……。


「父さん、何でこの街に残るなんて重要な事を勝手に決めたんだよ……」

「それはな、いずれお前達が帰って来る予定のこの街を守る為だよ」

「俺達の……ため?」

「そうだ、共也もこの街の問題点は分かってるんじゃないのか?」


 そう、この街は重要拠点の割りに強者が少ない。

 そして、ガルボが新しく俺達の仲間となる事で、さらに戦力が低下してしまう……。

 そうなるとこの街を防衛出来る戦力はアストラとココア、そして宿屋の店主のダランさんと、その妻のサーシャさんしか強者が居なくなってしまう。

 だから父さん達が残れば不安材料が取り除ける、その理論は分かるけど……。


「父さんが言いたい事は分かるよ? 分かるけど、そんな急に……千世ちゃんも何て言うか……」

「そこは共也、お前が上手く慰めて上げてくれ。 もうお前達2人も子供じゃないんだ、頭では分かっているんだろう?」

「確かに、頭の中では分かってるけど……」

「今はそれで良い。 なに、お前達がダグラス君達を集めて帰って来る間、会えなくなるだけだ。 すぐ会えるさ」

「分かった……、なるべく早く帰って来る事にするよ……」


 俺は渋々だが、父さんの提案を受け入れる事にしたが、エリアには何て説明しよう……。


「それでだ共也」

「何? エリアに何て説明しょうか頭を悩ませてるんだけど……」


「う、ま、まあ、それは置いておいて。 ここに来たのはここに残る事を決めた事を伝えること以外に、もう1つ理由が有ってな」

「そうなの? それで理由って?」

「お前の実力ではまだ使う事が出来ないだろうが、神白家に伝わる刀剣術、その奥義を伝授する為だ」

「奥義……それを今から父さんが見せてくれるけど、俺にこの旅で使えるようになれって事で合ってる?」

「そうだ、奥義の名前、それは【神白刀剣術奥義・天照】だ!!」



 父さんが見せてくれた奥義を目に焼き付けた俺は、この旅が終わるまでに奥義を習得して、その姿を父さんに見せる事を心の中で誓うのだった。


「ふぅ……この技を使うのも久しぶりだな。 そうだ、天弧、空弧、居るんだろう? 姿を見せてくれ」


 “ポン、ポン”


「何か用か? 京谷」

「私が言いたい事は分かってるんだろう?」

「まあ……ね。 このまま共也に付いて、世界を回って来いって言いたいのでしょう?」

「頼めるか?」

「……分かった。 京谷、お前は本当にそれで良いんだな?」

「ああ、今はスキルなんて便利な物もあるんだ、お前達が帰って来るまで何とかなるさ」


 父さんの宣言を聞いた2人は、俺の前に来ると片方づつ小さな手を差し出して来た。


「共也、私達の手を握って」

「こ、こうか?」

「そう、そのまま握っててね」


 俺が2人の手を握った状態で、天弧と空弧が何か呪文を呟き始めると、俺達が一瞬光りに包まれ何かの力が、俺の体の中に注がれるのが分かった。

 

「ふぅ、これで私達との契約が成立したわ。 共也、これからよろしくね♪」

「さあ、今日はもう遅くなったから、皆が心配すると行けないから戻る事にしよう」

「分かったよ父さん」


 こうして俺達は、宿屋ダランに戻る事にしたのだった。


「天弧……。 共也と契約したから、ずっと気になってた魔剣の中に遊びに行きましょう!」

「あ、まて空弧! 抜け駆けはずるいぞ!!」


 2人は魔剣カリバーンの中に入り込むと、感嘆の声を上げた。


『ひっろーーーーい!! なに、この空間! あ、自由に物が生成出来るから、好き勝手に快適空間が作れる!!』

『本当だ! 捗るーーー! あ、ディーネ、スノウ、タケ、共也と新しく契約した天弧と空弧だよろしく!!』

『うん、よろしくね。 歓迎するよ。 これから一緒に共也を支えて行こうね』

『2人共よろしくね♪』

『天弧、空弧、これからもずっと一緒だね~~!』


 何だかとても羨ましいワードが飛び交ってるが、次の目的地、平和となった魔国アーサリスに向かう交渉をアストラ達と交渉する為に、冬矢さんのイビキを我慢して眠りに付く俺と京谷父さんだった。


『ぐごーーーーー!!』


―――――――――――――――――――――――――――――――――――

【名前】: 神白 共也


【性別】: 男


【スキル】

 ・刀剣術

 ・金剛

 ・身体強化

 ・水魔法

 ・共生魔法

  (ディーネ・精霊魔法:水)

  (スノウ・氷魔法)

  (マリ・海流魔法)

  (ヒノメ・生命魔法)

  (シル・精霊魔法・樹)

  (タケ・雷魔法)

  (天弧・念動力)

  (天弧・剛力将来)


                 ▼

―――――――――――――――――――――――――――――――――――


                 ▲

  (エリア・回復魔法)

  (菊流・精霊魔法:火)

  (木茶華・付与魔法)

  (ジェーン・忍術)

  (リリス・無詠唱)

  (京谷・刀剣術習得率上昇)

  (砂沙美・医療術の知識)

 

ここまでお読み下さりありがとうございます。

今回で京谷、冬矢、砂沙美、冷華の4人が港町アーサリーを防衛する為に残る事となりました。


次回は“船出”で書いて行こうと思っています。

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