表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【共生魔法】の絆紡ぎ。  作者: 山本 ヤマドリ
9章・神聖国ヴォーパリア。
187/285

【別視点】各々の戦い①。

【京谷達の視点】


 共也達がこの場を私達に任せて、今回の騒動を起こしたらしき人物の元に走って行くのを見送った後、追加で今までとは色の違うアンデット達が、地面を突き破って現れたのだった。


「また上位種らしきアンデットが現れたか、最初の頃とは明らかに敵の強さが変わって来ていると言う事は、こいつらを呼び出しているスキルが強化され始めていると言う事なのか?」


 私は襲って来ようとするゾンビ達を切り捨てながら、共也や千世の無事を願っていた。


「京谷さん、心配しすぎですよ。 あの2人は私達の子供なのですから、きっと無事に帰って来てくれますよ」

「砂沙美、そうか……そうだな。 では、可愛い子供達が安心して戦えるように、こいつらを処理していくとするか。 砂沙美、君も気を付けるんだぞ?」

「はい、京谷さん!」


 群がるアンデット達を倒しながらも、甘い空間を形成する2人を少し離れた場所で戦っている冬矢は呆れた顔で眺めていた。


「冬矢、あの2人はあれが普通なんだから、見ててもしょうがないでしょ! あんたもさっさとこのアンデット共を倒していきなさいよ!」

「分かった、分かった。 ところで冷華」

「何よ、この忙しい時に!」

「京谷達を見て思ってたんだが……俺達も若返ったんだから……さ?」

「な!? …………そ、それは……。 この戦いが終わってから、ね?」


 顔を真っ赤にしながら鎖分銅を使いアンデット達を葬り去る冷華に、冬矢は愛おしさを感じやる気が爆上がりしていた。


「よっしゃーーー! やるぞ!!」


 どちらも似た物夫婦なのは、変わらないようだ。


 そんな2組を見ていた天弧と空弧もアンデット相手に活躍していた。


「おおおぉぉぉ~~~~!!」


 一回り大きな巨人族のゾンビが、天弧と空弧を獲物と定めて襲って来たのだが、2人は落ち着いた様子でその巨人のゾンビに対峙していた。

 天弧は一度大きく息を吐くと、両手を前に突き出した。


「はぁぁ~。 スキルが強化されて強くなったとは言っても、しょせんこの程度か。 何とも手ごたえが無さそうな相手だが、まあ、相手が悪かったと思って成仏してくれよ」


 両手を巨人族のゾンビに向けたままで握り込む動作をすると、ドスドスとこちらに向かって来ていたゾンビがピタリと動きを止めた。


「う、うが!?」


 動く事が全く出来なくなったゾンビは、自分に起きている事が理解出来無いらしく、その場でもがくだけで、動く事は叶わない。


 それでも何とか動こうともがいているゾンビだったが、自分の右肩に何かが乗って来たのを感じが有ったため、そちらを見ると狐の耳と尻尾を生やしている上に、巫女服を着てお祓い棒を持った亜人の女の娘がニッコリと笑っていた。


「成仏するのですよ~~。 えいや!」


 “パカ~~ン!”


 空弧の持つお祓い棒で巨人のゾンビの顔を殴ると、そのあまりの威力に首が何周も回り、千切れてどこかに飛んで行ってしまった……。


 “ずず~~~ん……”


 頭を失ったゾンビの巨体は倒れ込み、そのまま魔石へと変わってしまった。


「ふぅ。 結構飛んで行ったね~~。 ねぇ天弧!」

「ああ、分かった。 分かったから手を握るな! お前がどれだけ馬鹿力なのか少しは考えろよ、空弧!!」

「むう、共也ならそんな事言わないのに~~!!」

「そりゃ共也は優しいからな。 いずれ俺達と契約する男なんだから、強さと優しさを両立させてくれないとな!」


「それはそうだけど。 天弧、私を馬鹿力呼ばわりした事を誤魔化そうとしてない? ねぇ?」

「止めろ! 両手を俺に近づけるな! 来るな馬鹿力の空弧!!」

「カッチ~ン! 待ちなさい天弧ーーー!!」

「来るなーーー!!」


 アンデットの上位種が大量にうろついている場所とは見えないほど、和気あいあいとしている空間がそこにはあった。



 =◇====


【ガルボ組視点】


「【獣神拳・破砕】クソ、こいつらアンデットの数が、無駄に多いから時間がかかってしょうがねぇ!」

「ガルボ、そう言うな。 嬢ちゃん達と、あのワンコが残ってくれてるから大分楽になってるじゃないか」

「それはそうなんだが……」


 ガルボが2人と1頭が戦ってる場所に視線を移すと、あまりの光景にもう一度力也の方を見る。


「なぁ力也。 こう言ってはなんだが……俺達って必要か?」

「そうだなぁ……。 最近の子供達とワンコは凄いよな~~、羽根を生やした上で飛翔して光の範囲魔法を撃ったり。 小さな女の娘が自分の背丈以上もある両手斧を、片手で振り回したり。 雷魔法を撃つワンコだったりな……。 悪い夢を見てるような光景だぜ……」



「【神聖魔法付与】さあアンデット達、成仏して下さいね!」

 イリスは自分の武器であるランスに付与魔法を施し、空から一気に下降してアンデット達に突撃すると、その威力に一瞬で多くのアンデットが魔石へと変わって行く。


「イリス姉も頑張っていますね、私も負けていられません。 タケちゃん、一緒に頑張りましょう!」

(うん、ノイン、僕の背から落ちないでね。 あ、あと【雷属性付与】。 これでノインの斧の威力が上がるから、アンデット達に突貫だーー!!)

「おぉーー!」


 白色、藍色、黄色の閃光となった3人がアンデット達を蹂躙して行く光景を、力也とガルボは呆然と見る事しかする事が無くなっていた。


「なぁガルボ」

「何だよ力也」

「俺って貴重な身体強化の護符まで譲って貰って駆け付けたのに、活躍出来てないなと思ってな……」

「奇遇だな、俺も今そう思ってた所だよ……」


 そこの1体だけゾンビが現れたが、何が起きてるのか分かっていない感じの声を上げていた。


「ヴァ?」

「3人が討ち漏らしたアンデットか……。 取り合えず逝っとけ……」

「!!」


 力也とガルボは3人が討ち漏らしたアンデットを討伐しながら、この戦いが早く終わる事を祈るのだった。


 =◇◇===


【ジェーン組視点】


 風将のバラモンと対峙しているジェーンは、念話でルフに速度上昇の付与魔法を掛けて貰うと、一瞬で背後へと移動して片手刀を振り抜いた。

 だが、バラモンはジェーンの神速の一撃を、奇跡的な反応でギリギリ回避する事が出来たが、頬を大きく切り裂かれていた。


「ぐ、随分と移動速度が速いじゃないですか、だがその程度で私を倒す事は出来ませんよ?」

「あなたのそう言う強がりは結構です。 さっさと共兄の所へ向かいたいので、大人しく撤退する事をお勧めしますよ? え~~っと、バラ、バラ……バラ肉さんでしたっけ?」


「バラモンだ!! くっくっく、わざと間違えて私を激怒させようとするとは良い度胸だ、お前の手足を落として肉人形にして可愛がってやるよ!!」

「先程の攻防であなたの実力を計る事が出来たので、出来るならすれば良いでしょうが……。 あなたって実はそんなに強くは無いですよね?」


 その見下された発言に、バラモンはブチ切れた。


「何だと手前! ちょっと美人だからと言って調子に乗りやがって、ああ良いだろう! 本当に肉人形にしてやるから後悔するじゃねへろ……。 はへ? ろれふが……が、が……」

「ようやく毒が回りましたか。 さすが小姫ちゃんの作り出した麻痺毒ですね、効果抜群です♪」

「まひとくらと、一体いふ……。 ま、まはか……」


 バラモンは先程ジェーンに大きく切られた頬を思い出したが時すでに遅く、すでに足の感覚も消え失せていた彼は前のめりに倒れ伏した。


「ひひょう者へ、正々堂々ひょうふする事ほ、出来んほか……」

「何々? 卑怯者め、正々堂々勝負する事も出来ないのか。 ですって? ふふふ、港町アーサリーに奇襲を掛けて街の人達を殲滅しようとした、あなた達が正々堂々を語りますか……」


 ジェーンは左手に持っていた苦無を倒れ伏したバラモンの左手の甲に突き刺して、地面に縫い付けた。


「ぐ、く……」

「大袈裟な……麻痺しているから痛くは無いでしょう? でもね、10年前の時もそうですが、あなた達アポカリプス教団に無慈悲に殺された人達は、筆舌に尽くしがたい痛みを抱えて死んで行くのです。 そんなあなたが正々堂々と勝負なんて、2度と口にしないで!!」


 ジェーンが激昂して、地面に縫い付けられているバラモンに止めを刺すために近づこうとすると、急にバラモンが赤い魔法陣に包まれてしまったので、一旦離れる事にした。


「これは……。 共兄が強制転移された時の魔法陣に似ていますね……。 まさか!」

「くはははは、ね、念の為に、じ、時間で発動するようにしておいたのだ……。 お、覚えておけ……後日必ずお前に、生まれて来た事を、後悔する程の、痛みや屈辱を、与えてやる……」


 その言葉にジェーンは一度大きく溜息を吐くと、赤い魔法陣の中に手を突っ込み、全身麻痺の影響で身動きの取れなくなっているバラモンの体を掴んだ。


「な、何を!」

「こうするんです!!」


 ジェーンはバラモンの体を赤い魔法陣の外に引きずり出すと、苦無で四肢を地面に再び縫い付けた。 しかし、頭は魔法陣の中にあるが……。


「ぐ、が。 ひ、た、頼む。 か、体を魔法陣の中に戻すか、頭を外に出してくれ! このまま転移が発動してしまうと!」

「頭だけが転移してしまうでしょうね。 良いじゃ無いですか、頭だけでも転移で逃げる事が出来るのですから。 まあ、転移した先で生きていけるかは知りませんが」

「わ、分かってるなら!」


 ジェーンはバラモンの言葉を最後まで聞かずに立ち上がる。


「もう行きますね、ディーネちゃんの様子を見に行かないといけないので」

「ま、待ってくれ! か、金が欲しくないか?欲しいなら全部やる! だから、た、助けてくれ!」


 その言葉にジェーンが足を止めた事で、バラモンは助かるかもしれないと希望を抱いて畳みかける。


「お金……ですか。 何処にあるのです?」

「俺は小さいアイテムボックスのスキルを持っていて、その中に入っている……。 今から全て出してお前にやるから助けてくれるよな?」

「まあ、頂けたなら考えますが……」

「わ、分かった。 今から出す……」


 バラモンが目を閉じて何かを口にすると、いくつもの大箱が大きな音を立てて地面に現れた事に、ジェーンは目を剥いた。


 も、もしかして、この大箱全てにお金が??


 ジェーンは1つの箱に付いている蓋をユックリと開けると、金貨がギッシリと詰まっていて眩暈を起こしそうだった。


「あなた、これって絶対個人で持つ事の出来る額じゃないですよね……。 まさかあなたは、軍の活動資金を管理していた人間だったのですか?」


 ジェーンは収納袋に全ての大箱を仕舞い込みながら、バラモンに確信を付いた言葉を投げかけると、諦めたように自身の正体を明かした。


「そ、そうだ……、俺はアイテムボックスで軍の活動資金を一括で管理ていたから、将として扱われていただけに過ぎん……。 なぁ、その資金が誰の物なのかは、もう良いだろう? 転移魔法陣が点滅し始めたから発動が近いんだ、急いで魔法陣の外に出してくれよ!!」


「なるほど、なるほど。 これは良い情報を仕入れる事が出来ました、バラモンさんには感謝いたします。 では、良い旅を」

「お、おい?」

「何でしょう?」

「俺は約束道り、持っていた全ての金をお前に渡したんだ。 今度はお前が約束を守る番じゃ無いのか!!」

「守りましたよ? 言ったじゃ無いですか⦅考える⦆と」

「じょ、冗談は止めてくれよ、本当にもう時間が……」


 ジェーンはもう用事は済んだとばかりに、バラモンに背を向けたが顔だけを向けて、最後にバラモンに語り掛けた。


「私は共兄に危害を加えようとした人物を絶対に許さない……」

 そう、ジェーンは最初、3本のナイフを共也に投げて来たバラモンに対して心底怒っていたのだった。


 それだけを言い残すと、ジェーンはディーネを援助する為に走り去って行った。 


「は、はははははははは!!」


 バラモンの笑い声は、赤い転移魔法が発動した事で消え去るのだった。



ここまでお読み下さりありがとうございます。

バラモンの正体はただ単にアイテムボックスで軍の資金を管理している、少々腕の立つ人物でしかありませんでした。


次回は“【別視点】ディーネ戦と木茶華の決意”で書いて行きます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ