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【共生魔法】の絆紡ぎ。  作者: 山本 ヤマドリ
9章・神聖国ヴォーパリア。
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精霊と化した一撃。

「エリア、頼む」

「はい、皆さん、どうか安らかに眠って下さい《浄化魔法》……」


 今俺達の足元には、動けなくなったアンデット達が沢山横たわっている。

 そして、エリアの浄化魔法を受けた事によって、先程のように体から何かが抜けたと思うと人の形を取り、エリアに一礼すると満足そうな顔をして消えて行く。

 その後は、残った体は塵と化して消滅して行く。


 そんな事を繰り返しながら、俺と京谷父さん達は外壁の上にいたアンデット達を倒して回っていたのだが、エリアの顔色は優れなかった。


「やっぱり駄目だね、味方だった兵士さん達の魂は開放が出来るけど、ヴォーパリアの兵士達のアンデットは、体が光に包まれた後は、塵となって消滅するだけみたい……。 これが意味をする事は……」

「すでに魂が体の中に無いって事か……?」

「うん、そうだと思う……。 1人、2人の魂がすでに無いって話しなら、何かの要因ですでに抜け出たんだろうと思えるんだけど、全員だからね……」

「う~ん……」


 俺達がああでも無い、こうでも無いと話し合っていたのだけども、イリスが袖を引いて来て何か伝えたい事があるようなので、皆と話し合う事を一時中断する事となった。


「イリスどうしたんだ?」

「ディアナ様からの伝言で、敵兵のアンデットに魂が無いのは、多分と言う前置きがありますけど、すでに暗黒神へ捧げられた可能性があるとの事です」

「イリス、ディアナ様に聞いてほしんだけど、10年前の暗黒神は力を取り戻すために、俺達転移組の魂を狙ってたと言う話しだったけど、今はそうじゃないのか?」


「ディアナ様、共也兄ちゃんが……はい……なるほど……」


 しばらくディアナ様と念話で会話していたイリスだったが、通話を終えると俺の疑問に答えてくれた。


「どうやらすでに何人もの転移者の魂を吸収した事で、現地の人間の魂でもある程度の力を取り戻す事が出来る様になったんだろう、というのがディアナ様の考えらしいです」

「そうか……。 すでに何人もの転移者の魂を……。 分かったイリス、ディアナ様に質問に答えてくれた事に感謝している、と伝えておいてくれ」

「あいよ~~!」


「共也ちゃん……」

「エリア、言いたい事は分かるけど、今はこの戦いを切り抜ける事を優先しよう」

「うん……」


 外壁の上に居たアンデットを粗方片付ける事に成功した俺達は、城門を守っている菊流達と合流する為に急いで移動しようとしたのだが、城門がある方向から巨大な火柱が立ち昇ったのだった。


「きゃあ! あの火柱は一体……」

「冷華急ごう、あそこには菊流が居るはずだ」

「そうね、冬矢急ぎましょう」

「そうだ、冷華」

「何?」

「きゃあ!って言葉、可愛かったぞ!!」


 冬矢さんが、冷華さんに向かって親指を立てると、先程の自分が発した台詞を思い出した冷華さんが、顔を真っ赤にして、冬矢さんを追いかけ始めた。


「あんたね~~~!!」

「ひぃ!! 共也君、俺は先に城門の所へ行くから、後から追いついて来てくれよ!!」

「冬矢、逃げるんじゃない、待ちな!!」


 鎖分銅を振り回しながら、猛スピードで消えて行った2人を俺達は追いかけて行たが。 道中もアンデットが多数出現していたので、エリアに浄化魔法を使ってもらい土に帰って貰った。


 そして、俺達が城門前に到着すると、そこにはアストラやココア達が城門の外側で、何度も立ち昇り続ける火柱を呆然と見つめる姿が、そこにはあった。


「アストラ、ココアさん!」

「共也、良かった、無事だったか!!」

「ああ、何とかな。 それよりあの火柱は一体?」

「あれは菊流とヒノメが起こしてる現象らしい……」

「菊流とヒノメが!?」


 アストラの話しによると、菊流が提案して来た内容はこうだ。

 自身の精霊としての能力を全開にしてアンデット共を焼き払う、至極単純で効果抜群の作戦……と言う事らしい。


 ……どんな脳筋が思いつく作戦だよ……。


 “ドン! ドドドドド!!”


 今も城門の外で連続して爆発が起きていると言う事は、未だに菊流とヒノメは大量のアンデットと戦っているのだろう。


 そう言えば、ガルボ達が見当たらないな。


 その事に気付いた俺は、辺りを見渡すと城門の上で菊流に指示を出しているガルボとジェーンに気付いたので、合流する為に外壁の上に登ると、眼下では様々なアンデットが菊流に群がっている光景が目に入って来た。


「良いぞ菊流! そこに居る奴らを排除すればスペースが出来るから、少し楽になるはずだ!」

「菊流姉、後ろから迫って来ている奴が居ます。 気を付けて!!」


 指示を出す事に必死の2人は、俺達が来た事も気づいていないようだった。


「ジェーン、ガルボ、今どんな感じだ?」

「おお、共也か。 今菊流が火の精霊の能力を使ってスケルトン達を駆除してくれている所だが、昔と同じように数が減った様に見えなくてな……。 今はまだ菊流も元気だから良いが、いずれこちらがジリ貧になるのは目に見えているから、どうした物か……」

「ヴォーパリアの兵士達のアンデットは、火に焼かれて消滅してるから良いのですが。 どこから現れたのか分からないですがスケルトン達が次々と押し寄せて来るので、どこまで菊流姉の力が持続するか分からない状態です……」


 ジェーンとガルボの状況説明を受けた俺は、必死に戦っている菊流を良く見ると、子鳥タイプとなったヒノメもジッと身動き1つせずに肩に乗っている。

 その様子から、必死に菊流の火の力を制御しているのが分かる。


「ガルボ、ディアナ様からの助言で、ネクロマンサーの力を行使している奴が、何処かの丘の上に居るらしいんだが、何処にそいつがいるのかガルボの予想で良いから、心当たりは無いか?」


「丘の上か……。 それなら、このスケルトン共が流れて来ている先に、この街の様子を一望できる丘が1つ有るな。 だが、場所が判明したとしても、こうもスケルトン達が密集して断続的に流れて来ていたら、とてもじゃないが身動きが取れなくて目的の丘に行くなんて絶対に無理だぞ……」

「そうだよな……。 エリアの浄化魔法でも、さすがにこの数はなぁ……」


 俺達がどうやって元凶の居る、丘の上に行こうか悩んでいる時だった。


 巨大な緑色の光りがスケルトン達を薙ぎ払い消滅させてしまった。

 その突然の光景に唖然としていた俺達だったが、良く見るとネクロマンサーの力を行使している元凶がいる丘までの道が出来ていた。


「な、な、な、何が起きたんだ???」

「俺に分かるわけが無いだろ!! でもこれは好機だ、元凶の元に向かうなら今しか無いぞ!!」

「ああ! アストラ、ココア! 謎の光りのお陰でスケルトン達が一掃されたから、俺達はこれからこの騒動を起こした元凶がいる場所に特攻をかける!! お前達は俺達が万が一負けてしまった場合は、門を固く閉じて時間を稼げ。

 そして、その隙にルナサスが居るクロノスまで落ち延びろ、良いな!?」


「待って、ガルボ様!?」

「今しか無いんだ、グダグダ抜かすな!!」

「ココア、ここは皆に俺達の命運を託そう……」

「アストラ……」

「共也、皆、港町アーサリーに居る全員の命運を託す。 だから必ず勝って帰って来るんだぞ!?」

「ああ、任せろ!! 必ず勝って来てやるさ!!」


 俺とアストラは拳を高く突き上げ、生きて帰って来る約束を交わすのだった。


「皆さんに浮遊魔法を掛けます。 ルフちゃん、みんなに【浮遊魔法】を掛けて」

「あい!!【風精霊魔法・浮遊】」

「おお、これなら!」


 ルフの浮遊魔法により僅かに足元が浮いた事を確認した俺達は、次々と外壁の上から地面へと飛び降りて行った。


 凄い速度で近づいて来る地面に恐怖を感じながらも、浮遊魔法の影響によって徐々にその速度も落ちて行き、最終的に全くの衝撃も無く地面へと降り立つ事に成功した。


 先程の光がスケルトン達をほぼ殲滅した後に俺達全員が外壁の外に降りて来た事を見た菊流も、必ず何かするつもりだと思ったらしく近寄って来てくれた。

 菊流にディアナ様からの情報を伝えると、一緒に特攻をしかける事となり、今回の元凶が居ると思わしき丘に向かって走り始めた。


 丘を目指して走っていると、ディーネが浮いた状態で俺と並走すると、どうやら先程スケルトン達を一掃した攻撃について、どうも見覚えがあるらしく走りながら説明を受けた。


「共也さん達には話したと思いますが、私が人だった頃のウルザお母様が愛用していたバルムンク。 その剣で魔物の大群を殲滅する時に使用していた能力の光りに似ていたんです」

「バルムンクって確かデリックさんが持っていたんじゃ……。 でも、元王都の掲示板にはデリックさんの手配書には✕印が付いていたよな……。 じゃあ一体誰が……」


 魔剣バルムンクからの攻撃に似ていた事はディーネからの説明で分かったが、今は元凶を倒す事に集中しようと思っていると、感知魔法を展開していたディーネから、誰かが近づいて来ている事を告げられる。


「共也さん、誰かがこちらに近づいて来ます。 敵意は無いみたいですが一応注意をして下さい」

「分かった!」


 “ガサ、ガサガサ”


 ディーネが教えてくれたその誰かは、草むらから出て来たが、やはり敵意は無いらしく俺達と並走して来た。


 その人物の顔は見えないが、マントと一体化している白のフードを被っていて、その隙間からジッとこちらを見て来ている。

 俺達の予想道り、その男はバルムンクを背負っていたのだが、驚いた事にマントの胸の部分にはシンドリア王国の紋章が刻まれていた。


 デリックさんが持っていたはずのバルムンクを背負っていて、崩壊したシンドリア王国の紋章が刻まれたマントを持っている人物はそう多くない。

 そして、デリックさんから奪ったのでは無く、バルムンクは託されたと考えると、自ずと1人に絞られた……。


「君はまさか……ジーク君……かい?」

「良かった、やっぱり共也さんだったんですね、見た目が10年前から全く変わっていなかったので、偽物かと思って緊張しましたよ……」


 フードを取って笑うその人懐こそうな顔は、10年前の練兵場で見た面影を残したまま、立派に成長したジーク君の笑顔がそこにあった。

 俺は走りながら港町アーサリーで起きている事を説明すると、ジークもこの特攻に付いて来る事となった。


「ああああああああぁぁぁぁぁ!!!」

「きゃあぁぁぁぁぁ!!!」


 俺達が丘に近づくいている事を感知したのか、先程とは色の違うスケルトンやゾンビ達が、次々と地面を突き破って現れた。


「共也、ここは私達が何とかしてみせる。 だからお前等は先に行け!」

「京谷父さん!」

「共也君、ここは京谷達と何とかするから先を急ぐんだ、こいつらの殲滅に時間をかけていると、次々にスケルトン共を呼ばれて物量に押しつぶされるぞ!」

「菊流、気を抜かないでね。 これで終わるとはとても思えないわ」

「冷華母さん……はい! 行って来ます!」


 明らかに先程とは強さの違うアンデット達を京谷父さん達に任せて、俺達は元凶のいる丘に向かう事にするのだった。



ここまでお読み下さりありがとうございます。

魔剣バルムンクを持ったジークと合流する事で戦力が強化されましたが、先程まで現れていた只のスケルトン達と違い、強化されたアンデットが現れ始めました。


次回は“対峙”で書いて行こうかと思っています。

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